コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(35)転嫁法 - 情緒的なレッテルを貼って注意をそらす

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■ 情報システムのお話から

このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、著者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、私のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。

G.W.ワインバーグ氏の公式ホームページはこちら(英語)

ワインバーグ氏がコンピューターシステムを専門とするコンサルタントであるため、彼が示す事例もコンピューターシステムのお話がどうしても多くなります。その中からまずは保守と設計のお話になります。

とあるクライアントから、「うちの保守費が高いので内容をチェックしてもらえませんか」という依頼をワインバーグ氏が請けました。そして、その作業内容を確認すると、2,3ヵ月に一度、商品の価格改定があるのですが、それがプログラムの中に埋め込まれているので、プログラム設計チームが価格改定がある都度、そのプログラムをいちいち修正していたことが判明しました。

ワインバーグ氏はこの問題を単なる「保守」の問題ではなく、「設計方針と保守能力の間の不適合」と呼ぶべきですねとコメントし、問題を取り除くべく、プログラムが参照するのを「価格マスタ」としてテーブル化して、エンドユーザがデスクトップ上でメンテナンスできるように設計を変更しました。ここでいう問題を「取り除く」の意味は、価格改定をなくすのではなく、価格改定の都度発生していたプログラムの設計変更、プログラムの変更作業、プログラムのテストに係る工数をなくし、代わりに「価格マスタ」をユーザ自身で変更できるようにすることで、保守コストを著しく低減させるか、この場合に限っては消滅させたことを指します。

これは、現在のコンピュータプログラミングを学んだことのある人にとってすれば、ずいぶん古典的な手法で、もはやその分野では一般的な常識となっているのですが、本書が書かれた当時においては、ずいぶんと先進的な解決策だったようです。

 

■ 情緒的なレッテルは問題への意識を逸らしたいから

このお話を般化させないと教訓や原則にはならないので、ワインバーグ氏が言う「転嫁法」とレッテルのお話をもうひとつ別の事例で説明します。

とある場所に楽観主義者と悲観主義者がいました。楽観主義者が、「今のこの世は、すべてのあり得る世界のうちで最高の世界だ」と口にしました。それを聞いた悲観論者は、こう続けたそうです。「そうなんだよね」

この話のポイントは、楽観主義者も悲観主義者も今目の前にある「この世界」を見ているにも関わらず、正反対の見解を自分の主義に忠実になって持ってしまっている、というところにあります。驚くべく程に、長年の対立や意見の相違というものは、同じもの、同じ状況に対して、正反対のレッテルをお互いに貼っているところから派生しているのです。

また、ワインバーグ氏が持ち出した事例は、コンピューターシステムのお話なのですが、システム開発プロジェクトで予算超過が起きているということで、ワインバーグ氏に実態調査の依頼があったのですが、ワインバーグ氏がプログラマ達のところに出向いて彼らの話を聞いたところ、プロジェクトマネージャーがケチで、十分な工数を割り当ててくれていない、という不平不満を持っていることが分かりました。その後、ワインバーグ氏がプロジェクトマネージャーから最初に聞いた話では「予算超過」が発生しているということだったはずです。しかし、現場に行って現状を聞き出したところ、現場にいるプログラマの話、共通理解では、「予算不足」が起きている、というものでした。

これが意味するところは、プロジェクトマネージャーが発生した問題について「予算超過」と命名すれば、それはプロジェクトマネージャーの問題ではなくて、現場の方の問題だと定義づけることができます。一方で、プログラマにとっての問題は、プロジェクトマネージャーが十分にプロジェクト予算を確保して必要な工数(人数)を用立ててくれないから問題が起きていると言い立てています。これは、現場からすれば問題はプロジェクトマネージャーの方にある、と責任転嫁をしていることになるのです。

つまり、レッテル貼りというのは、自分ではないどこかへ、問題の責任を転嫁することにつながる、というお話でした。

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小林 友昭
小林 友昭
現役の経営コンサルタントです。経営管理の仕組み構築や経営戦略の立案、BIシステムを中心としたIT導入まで手掛けております。
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