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■ 計画管理のためのガントチャート

プロジェクトマネジメント(基礎編)
前回」は、ゴールからプロジェクト計画を立案する重要性を説明しました。今回は、より具体的に、「ガントチャート」を使って、プロジェクト作業計画を作ってみます。
「ガントチャート」とは、作業日程管理表のことで、ある作業全体を管理可能な工程に分割し、工程ごとに、作業進捗を、計画と対比して管理するときに使用します。横軸に時間(スケジュール)、縦軸に、管理すべきタスクをプロットします。
下図に、サンプルを掲載します。
PM(基礎編)_ガントチャート?
ポイントは、次の3つです。
① 作業進捗を管理したい単位にまで、タスク(作業)を細分化する
② 細分化されたタスクは、開始条件と終了条件を明確にする
③ タスクは、前後の依存関係があるものと、独立的に時間をずらせるものとを識別する

① タスクの細分化

管理会計システム構築プロジェクトを例にとります。
ざっくりと、「要件定義書の作成」というタスクだと、おそらく数週間かかるタスクになると思います。数週間後の締切間近になって、作業が遅れています、と報告されても、取り返しがつかないことが多々あります。
その場合、「要件定義書の作成」というタスクを、「1.要件定義書の目次作成」、「2.関係者へのヒアリング」、「3.要件定義書の下書き」、「4.要件定義書のお客様レビュー」、「5.要件定義書の清書」という風に、前後関係を意識しながら、5つに細分化し、それぞれの納期を設定したうえで、都度進捗を可視化し、ワンステップでも遅れそうなら、すぐに手を打てるようにします。
② 開始条件と終了条件の明確化
細分化されたタスクが、何をもって完了とするのか、きちんと判断基準を設定しておく必要があります。「要件定義書の作成」ならば、『要件定義書』が所定のフォーマットで納品されればタスク完了となります。
難しいのは、開始条件です。何をもって「着手」するのか? おそらく、先行作業として、システムスコープについて基本構想が練られて、「プロジェクト基本構想書」が作成されていたり、「RFP(Request for Proposal)」が発出されているはずです。何某かのトリガーが設定されているハズなので、それらを確認します。
③ タスクの依存関係
時系列に沿って、タスクが順番に片付けられなければならないものは、順序にしたがって、粛々と処理していきます。例えば、自宅での晩餐会のために料理を作るときには、「1.レシピを確認する」「2.買い物する」「3.調理する」という順番です。ただし、料理の最中に、ゲストを迎えるというタスクがある場合には、1.から3.の間に自由にさしはさむことができます。そういう独立的なタスクは、一番手がすいている時間帯に設定する等の工夫をします。

■ クリティカルパスを意識してガントチャートを作る

クリティカルパスとは、ガントチャート上の作業計画の所要時間が最短になるようタスクを配置して得られる作業フローを指します。
では、卑近な例で説明しましょう。筆者は、よく週末に一人でお留守番をすることが多く、昼食を一人で頂きます。しかし、不調法で料理が全くできないため、家人が事前に、筆者一人分の食事を用意してから出かけてくれます。
下記は、漫然と、炊飯器でご飯が炊きあがるのが正午と知らされた筆者が、なんとなく一人で昼食を準備した際のガントチャートになります。
PM(基礎編)_ガントチャート_漫然と作業した場合?
タスクは、至ってシンプルです。
① 炊飯器で炊けたご飯を盛り付ける
② やかんでお湯を沸かして、ティーパックの日本茶を淹れる
③ 事前に用意された惣菜を電子レンジで温める
このガントチャートの例だと一体何が問題でしょうか?
◆ 問題点
① 炊飯器で炊けたご飯を盛り付けて実際に食せるようになるまで、保温中という「アイドルタイム(手待ち時間)」が発生している → もっと時間を短縮できないか?
② やかんでお湯が沸いてから、ティーパックとマグカップを探し始めている。沸かしている間に、探しておけば、余計な時間がかからないはず。
③ そもそも、やかんでお湯を沸かし始めるのが、11:30になっているが、どうしてこの時間から昼食の準備を始めるのか、合理的な理由付けがこのガントチャートからは分からない。
④ お茶を淹れてから、電子レンジで惣菜を温め始めているので、惣菜が温まったころには、お茶が冷めている。もうちょっと後続作業を意識して作業がスケジューリングできないか?
そこで、コンサルタントらしく、お一人様の昼食の準備作業を、ガントチャートを使って、最短時間で効率よく進められるように、作業手順を改善してみたいと思います。
改善後が下記のガントチャートになります。
PM(基礎編)_ガントチャート_クリティカルパスを意識した場合?
◆ 改善点
① 炊飯器でご飯が炊きあがる時間(12:00)が、外部環境から与えられる時間的制約なので、この縛りを第一優先にして、その他の作業の開始時間を調整する

・やかんでお湯が沸くのと、電子レンジで惣菜を温めるのに20分必要。ご飯が炊きあがった時に、一斉に盛り付け作業ができるので、12:00の20分前に作業を開始しても間に合う
(ゴール、すなわち、時間軸の後ろから作業計画を前に向かって立てる)

② ヒトがやる作業と、調理器具を使って行う作業を色分けすることで、同じ時間を使って、複数のタスクを同時進行(重複)させることで、全体の所要時間が縮まるように調整する

・やかんでお湯が沸く時間を待つのと、電子レンジで窓外が温まる時間を待つのを同タイミングに合わせる
(所要時間が同じものは、同タイミングで開始させることで、同期を取ってタスクを完了させられるので、相互に無駄な待ち時間を削減することができる)
・やかんでお湯を沸かしている間に、ヒトがティーパックとマグカップを探すことで、時間の短縮を図る
(ヒトという経営資源を無駄にしないように、常に働かせて、遊ばないように計画する)

たかが昼食の準備ですが、いろいろと工夫することで、当初70分かかっていたものが、30分で済むようになりました。
このように、プロジェクトの作業計画を立案する際には、下記のようなコツが有効なようです。

① 外部から与えられる時間的制約を明らかにする
② 経営資源(ヒト、機械、会議室など)が遊ばないようにする
③ 互いに独立していて、同時進行させても問題が無いタスクは並行して進める
④ いちばん長く時間がかかるタスク(ボトルネックという)の前後に手待ち時間が発生しないようにタスクを意識して並べる

ここまで、「クリティカルパスを意識したプロジェクト計画」の説明をしました。
PM(基礎編)_クリティカルパスを意識したプロジェクト計画

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