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■ 「会計帳簿」がそろい踏み

会計(基礎編)
前回」まで、会計帳簿として、登場順に、

  • 「貸借対照表」
  • 「損益計算書」
  • 「キャッシュフロー計算書」
  • 「株主資本等変動計算書」
  • 「包括利益計算書」
  • 「製造原価報告書(明細書)」

を説明してきました。
これで、いわゆる会社の様々な取引を「会計帳簿」の上に「会計取引」として記録する内容と、記録される帳簿が何を意味しているかを全て説明したことになります。
今回は、これまでの総復習と共に、6つの会計帳簿の相関関係を説明したいと思います。

■ 会計帳簿で「儲け」を計算する

下表は、「貸借対照表」を使って、会社の「儲け」=「利益」の計算構造を示しています。
会計(基礎編)_貸借対照表_資金循環と財産法
基本的に、会社の利益は、会社の資金循環から説明できます。
会社の外から、会社運営に必要な資金を調達してきて、それを運用して、増えた分が「利益」となります。
今までの玩具屋さんの例だと、

  • 銀行と株主から200の開業資金を調達
  • 商品:100と、お店(不動産):100に事業投資
  • 商品を200で販売することにより、差額の100だけ会社は儲けた

という感じになります。

■ 「貸借対照表」と「損益計算書」の意味するところ

「貸借対照表」は、常にその瞬間瞬間の会社の保有財産の金額を示すものです。理屈の上では、会計取引が発生した都度、すなわち会計帳簿に何かが記録された度に作成することができます。しかし、「製造原価報告書」でも見たとおり、問屋から購入した商品を売れた分と売れ残った分を区分したりと、いろいろと煩雑な手間が必要になり、実務上は常に完成形のままで姿を保っていることが難しいケースがほとんどです。
したがって、「貸借対照表」は、「決算」という節目のタイミングで、作成することが普通になっています。下表では、学習のための例として、会社の財産が変動するたびに作成したものを表現しています。
会計(基礎編)_貸借対照表_スナップショット
開業資金を集めた時、開店前の準備段階、そしてお店をオープンして手持ちの商品を全部売り切った時の3つのタイミングでの「貸借対照表」をお見せしています。
一方、損益計算書は、そうした、ある時点の「貸借対照表」とまた別のある時点の「貸借対照表」の間に、「貸借対照表」に記録されている会社財産が「損益取引」という種類の商取引によって増減する様(さま)を表現したものです。
会計(基礎編)_損益計算書_一定期間の活動記録
ある時点とある時点の「貸借対照表」の財産増減を表現することで、異時点間の「貸借対照表」をつなぐ役割を担っています。「貸借対照表」を「決算」のタイミングで作り直す、その期間の会社の活動を「損益取引」に定義されているものはすべて記録しておくもの、「貸借対照表」の変化の様子をすべて記録しておくものが「損益計算書」になります。

■ 会計帳簿を「財務諸表」と呼ぶ

これまでご紹介した「会計帳簿」はすべてをひっくるめると「財務諸表」という名で呼ばれています。あるアイドルタレントの事務所ではないですが、個々のスターの名前を紹介してきて、最後にグループ名を発表する、そんな気分になっています。
会計(基礎編)_財務諸表の定義と種類
これまで、文章を書くたびにもどかしい思いをしていましたが、「儲け」→「利益」、「会計帳簿」→「財務諸表」、「貸借対照表」→「B/S」と専門用語が晴れて使えるようになり、少々気楽になっています。
これらの「財務諸表」は、各国の会計ルールごとに、別々の名前が定義されていたり、最近の国際的統一ルールで別の名前が付けられていたり、していますが、ほぼ、上記の表にある呼び方で通じます。
また、日本の会計ルールでも、制度(法律)として、会社外のステークホルダーに一般公開(ディスクローズ)する対象や開示タイミングが細かく決まっています。それら、細かい規則は別の機会に説明する予定です。

■ 「財務諸表」間の相関関係

最近の解説では、「弟」とか「従兄弟」とか表現していましたが、「財務諸表」のメンバーそれぞれが表している金額の間には相関関係がきちんと定義されています。
会計(基礎編)_財務諸表の相関関係
なんといっても、「財務諸表」の現代の主役は「貸借対照表」です、時代によって主役は入れ替わっているのですが、「損益計算書の弟誕生の秘密」で説明した通り、現代はM&Aの活発化により、会社自体が売買の対象となるのが普通になったので、会社の価値を簡単に表すことができる(とされている)「貸借対照表」が主役になっています。そして、その他の「財務諸表」は、「貸借対照表」の増減明細の位置づけになっています。細かく言うと、「製造原価報告書」だけは、さらに「損益計算書」に記録される「原価」の単純明細になっていますが。

■ 「資本」と「純資産」の違い

最後に、おまけなのですが、最近の日本の「貸借対照表」は、「資本」の所を「純資産」と表現してあるのが普通になっています。なぜ、「資本」という名前を避けているのかというと、「負債」とも「資本」とも明確に区別することが難しいものが出現したのですが、とりあえず入れる箱が無いので、「資本」に入れることにした、しかし、厳密な意味では「資本」とは言い切れないので「純資産」と呼ぶことにした、ということです。
会計初学者的には、呼び名の違いだけなのですが、厳密にいうと、下記計算式のように計算構造の思想が少々異なります。
従来は、

「負債」 + 「資本」 = 「総資本」 = 「資産」

でしたが、
最近は、積極的に「資本」が何者なのか、曖昧になってきたので、

「資産」 - 「負債」 = 「純資産」

という風に消極的に「純資産(資本)」を理解するようになっています。
この計算式の違いと中身を解説し始めると、このシリーズの枠をはみ出すので、別シリーズにてきちんと説明をしたいと思います。
ここまで、「グループ名は『財務諸表』」を説明しました。
会計(基礎編)_グループ名は『財務諸表』

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http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/07/3c971502de75240f1831fd45c1169d291.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/07/3c971502de75240f1831fd45c1169d291-150x150.jpg小林 友昭会計(基礎編)■ 「会計帳簿」がそろい踏み 「前回」まで、会計帳簿として、登場順に、 「貸借対照表」 「損益計算書」 「キャッシュフロー計算書」 「株主資本等変動計算書」 「包括利益計算書」 「製造原価報告書(明細書)」 を説明してきました。 これで、いわゆる会社の様々な取引を「会計帳簿」の上に「会計取引」として記録する内容と、記録される帳簿が何を意味しているかを全て説明したことになります。 今回は、これまでの総復習と共に、6つの会計帳簿の相関関係を説明したいと思います。 ■ 会計帳簿で「儲け」を計算する 下表は、「貸借対照表」を使って、会社の「儲け」=「利益」の計算構造を示しています。 基本的に、会社の利益は、会社の資金循環から説明できます。 会社の外から、会社運営に必要な資金を調達してきて、それを運用して、増えた分が「利益」となります。 今までの玩具屋さんの例だと、 銀行と株主から200の開業資金を調達 商品:100と、お店(不動産):100に事業投資 商品を200で販売することにより、差額の100だけ会社は儲けた という感じになります。 ■ 「貸借対照表」と「損益計算書」の意味するところ 「貸借対照表」は、常にその瞬間瞬間の会社の保有財産の金額を示すものです。理屈の上では、会計取引が発生した都度、すなわち会計帳簿に何かが記録された度に作成することができます。しかし、「製造原価報告書」でも見たとおり、問屋から購入した商品を売れた分と売れ残った分を区分したりと、いろいろと煩雑な手間が必要になり、実務上は常に完成形のままで姿を保っていることが難しいケースがほとんどです。 したがって、「貸借対照表」は、「決算」という節目のタイミングで、作成することが普通になっています。下表では、学習のための例として、会社の財産が変動するたびに作成したものを表現しています。 開業資金を集めた時、開店前の準備段階、そしてお店をオープンして手持ちの商品を全部売り切った時の3つのタイミングでの「貸借対照表」をお見せしています。 一方、損益計算書は、そうした、ある時点の「貸借対照表」とまた別のある時点の「貸借対照表」の間に、「貸借対照表」に記録されている会社財産が「損益取引」という種類の商取引によって増減する様(さま)を表現したものです。 ある時点とある時点の「貸借対照表」の財産増減を表現することで、異時点間の「貸借対照表」をつなぐ役割を担っています。「貸借対照表」を「決算」のタイミングで作り直す、その期間の会社の活動を「損益取引」に定義されているものはすべて記録しておくもの、「貸借対照表」の変化の様子をすべて記録しておくものが「損益計算書」になります。 ■ 会計帳簿を「財務諸表」と呼ぶ これまでご紹介した「会計帳簿」はすべてをひっくるめると「財務諸表」という名で呼ばれています。あるアイドルタレントの事務所ではないですが、個々のスターの名前を紹介してきて、最後にグループ名を発表する、そんな気分になっています。 これまで、文章を書くたびにもどかしい思いをしていましたが、「儲け」→「利益」、「会計帳簿」→「財務諸表」、「貸借対照表」→「B/S」と専門用語が晴れて使えるようになり、少々気楽になっています。 これらの「財務諸表」は、各国の会計ルールごとに、別々の名前が定義されていたり、最近の国際的統一ルールで別の名前が付けられていたり、していますが、ほぼ、上記の表にある呼び方で通じます。 また、日本の会計ルールでも、制度(法律)として、会社外のステークホルダーに一般公開(ディスクローズ)する対象や開示タイミングが細かく決まっています。それら、細かい規則は別の機会に説明する予定です。 ■ 「財務諸表」間の相関関係 最近の解説では、「弟」とか「従兄弟」とか表現していましたが、「財務諸表」のメンバーそれぞれが表している金額の間には相関関係がきちんと定義されています。 なんといっても、「財務諸表」の現代の主役は「貸借対照表」です、時代によって主役は入れ替わっているのですが、「損益計算書の弟誕生の秘密」で説明した通り、現代はM&Aの活発化により、会社自体が売買の対象となるのが普通になったので、会社の価値を簡単に表すことができる(とされている)「貸借対照表」が主役になっています。そして、その他の「財務諸表」は、「貸借対照表」の増減明細の位置づけになっています。細かく言うと、「製造原価報告書」だけは、さらに「損益計算書」に記録される「原価」の単純明細になっていますが。 ■ 「資本」と「純資産」の違い 最後に、おまけなのですが、最近の日本の「貸借対照表」は、「資本」の所を「純資産」と表現してあるのが普通になっています。なぜ、「資本」という名前を避けているのかというと、「負債」とも「資本」とも明確に区別することが難しいものが出現したのですが、とりあえず入れる箱が無いので、「資本」に入れることにした、しかし、厳密な意味では「資本」とは言い切れないので「純資産」と呼ぶことにした、ということです。 会計初学者的には、呼び名の違いだけなのですが、厳密にいうと、下記計算式のように計算構造の思想が少々異なります。 従来は、 「負債」 + 「資本」 = 「総資本」 = 「資産」 でしたが、 最近は、積極的に「資本」が何者なのか、曖昧になってきたので、 「資産」 - 「負債」 = 「純資産」 という風に消極的に「純資産(資本)」を理解するようになっています。 この計算式の違いと中身を解説し始めると、このシリーズの枠をはみ出すので、別シリーズにてきちんと説明をしたいと思います。 ここまで、「グループ名は『財務諸表』」を説明しました。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します