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今度は損益計算書の従兄弟が登場

会計(基礎編) 会計(基礎)
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■ 人気者の「損益計算書」には取り巻きが多いのです

会計(基礎編)
前回まで、登場順に「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」「株主資本等変動計算書」「包括利益計算書」までご紹介しました。今回は、「損益計算書」の従兄弟として「製造原価明細書」を説明します。弟とか、従兄弟とか、「損益計算書」は会計帳簿の中でも産業革命以降、近年まで主役だったので、関係者が多いのだとご理解ください。
「製造原価明細書」は、「製造原価報告書」とも呼ばれています。「製造」という名がついていることからお分かりの通り、「製造業(メーカー)」の製造原価の内訳が記載されている会計帳簿です。しかし、「流通業」や「サービス業」でも同じ形式の会計帳簿で「原価」を把握するのが普通になっていますので、以降は業種によらず、「原価」を求める帳簿として扱います。

 

■ 本丸を落とす前にまず「損益計算書」を分解します

「損益計算書」は、「収益」から「費用」を差し引くことで「利益」を計算するための会計帳簿でした。
会計(基礎編)_損益計算書_現金商売_決算
ここでは、詳しく「費用」をさらに分類していきます。
「費用」には、
① 「製品」「商品」と呼ばれる1個、1セット、一式、1kgなど、単位で数えて、例えば何個売れたから、その分が「費用」になる、と認識できるもの
② 「製品」「商品」が何個売れたかに無関係だが、「製品」「商品」を売るために何かの価値(お金)を使ってしまったものと認識できるもの
の2種類があります。
言葉が混在して分かりにくいのですが、通常は①の「費用」のことを「原価」、②の「費用」のことはそのまま「費用」と呼んでいます。
会計(基礎編)_原価と費用
よく、教科書的な説明文では、「広義の費用」「狭義の費用」という使い分けがなされたりしますが、「広い」とか「狭い」とか形容詞をわざわざつけるくらいなら、最初から別の言葉を使ってほしいのですが。ちなみに、英語で、「広義の費用」:expenditure、「原価」:cost、「狭義の費用」:expense、と無理やり区別している解説本もあるのですが、真偽・語感が正しいかどうかは不明です。
ちなみに、「原価」と「費用」を区分した「損益計算書」を下記に例示しておきます。
(玩具屋さんの現金商売のケース)
会計(基礎編)_損益計算書_粗利表示
特に、「売上」から「原価」だけを差し引いたものを「粗利(あらり)」と呼びます。
しかし、重要なのは、呼び名自体より、区別して呼ぶことにした理由です。

 

■ 「製造原価明細書」の必要性

「製造」という枕詞が付きますが、ここでは気にせず、玩具屋さんの例で話を進めます。
あなたは、おもちゃ:「10個」をひとつ当たり「10円」で問屋から購入したとします。
この時、原価は、10個 × @10円 = 100円 と計算できると思うかもしれません。
(「@」のマークは、単価(ひとつ当たりの価格)を表したいときに数字の前につけます)
でも、この時点では、問屋から買っただけで、本当にお客様に売れるかどうかわかりません。
お客様に売れて初めて、問屋から買ったおもちゃ(商品)の購入金額を「原価」とします。売れていない分は、もともと会社が持っていた現金とおもちゃ(商品)を等価交換しただけで、そのままでは「貸借対照表」の左側に「商品」という会社の「資産(財産)」として記録されることになります。
会計(基礎編)_貸借対照表_商品購入のみ
ここから、玩具屋さんのケースを使って新しい取引を考えます。
あなたには、問屋さんから、10個でなくて、15個買ってくれれば、ひとつ当たり10円ではなく、8円で売ってくれるという申し出がありました。事前予想では、10個しか売れないことが分かっています(当然理解のためのケースなので実際もそういうことにしておきますが)。しかし、ひとつ当たり、2円も安くおもちゃ(商品)を買うことができるので、この取引を承諾することにしました。そして、案の定、15個を問屋から買いましたが、10個しか売れず、5個が売れ残りの在庫となりました。

  • 問屋から商品を@8円 × 15個 = 120円 分だけ購入した
  • お客様には @8円 × 10個 = 80円 分だけ販売した
  • 売れ残りが @8円 × 5個 = 40円 分だけ在庫となった

これらの取引から、「(製造)原価明細書」では、購入分と、販売分と、在庫分を一目で分かるように記録されます。
会計(基礎編)_製造原価明細書
原価:「80円」は「損益計算書」にも記録され、在庫:「40円」は「貸借対照表」にも記録されます。「(製造)原価明細書」を眺めると、今回買った分の内、いくら「損益計算書」に回されて、利益計算のネタになったか、いくら「貸借対照表」に残って、会社財産の内訳として記録されたか、が分かる仕組みになっています。
ほら「(製造)原価明細書」があると、便利ではないでしょうか?
では、どうして「原価」と「(狭義の)費用」を分けるのかの理由を2つほど。

  1. このように、何個買って何個売ったか、という売買や製造販売の取引だけ集めた時の「利益」を特別に「粗利」と呼んで、商品1個当たりの、売価や原価の管理や採算分析をするため
  2. 1度に購入した商品や、製造した製品が売れ残って、在庫になる分を原価と峻別するため

(会計を既に学習している方には、製造業には「仕掛品」があって、、、というのは別の回で説明する予定であることを付け加えさせていただきます)

 

■ 会計ルールで公表の義務がなくなった理由が不明

このように、「損益計算書」と「貸借対照表」に、今回、問屋から購入した商品がどのように記録されるか、一目で分かる便利さがあるのですが、最近、日本の会計ルールが改正され、セグメント情報を代わりに一般公開している場合には、この便利な「(製造)原価明細書」の一般公開はしなくてもよくなりました。
細かいことをいうと、

  • 「連結」の「セグメント情報」を開示していると
  • 「単体」の「製造原価明細書」は開示義務が無い
  • ただし、売った分、買った分、在庫になった分の識別は、「損益計算書」の中で表現してもよい

ということになっています。
「損益計算書」の中に、組み込めるという意味でも一人前ではなく、従兄弟ぐらいの表現が適切かなと思い、そうネーミングしました。
「連結」「単体」「セグメント情報」が何かは、このシリーズの後の回で説明します。
ただ、簡単に言うと、「損益計算書」「貸借対照表」などの一部の情報を「会社」の中の細かい管理単位(セグメント)で作成・一般公開するための「セグメント情報」と交換条件で「製造原価明細書」を一般公開しなくていいというのは、右手を見せるから、左足を見せなくていい、というもので、筆者的には全く腑に落ちないのであります。
ここまで、「今度は損益計算書の従兄弟が登場」を説明しました。
会計(基礎編)_今度は損益計算書の従兄弟が登場

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