Pocket

■ 国際税務の話は難しい? 初心者向けの説明をします。だって筆者も初心者だから!

経営管理会計トピック

国際課税の新ルールが昨年秋にG20で設定され、早速、各国の足並みがそろわずに、企業の税務担当者がお困りのようです。この投稿では、できるだけ初心者にもそのカラクリと大勢の流れを、筆者の勉強がてら、一緒に確認していきたいと思います。

2016/1/22付 |日本経済新聞|朝刊 (真相深層)「結局は増税?」企業警戒 国際課税新ルール、強まる懸念 主要国、はや足並み乱れ

「日米欧に新興国を加えた44カ国がまとめた国際課税の新ルールに日本企業が揺れている。行き過ぎた節税策を防ぐ狙いだが、米欧中などの解釈の不一致を残したままの合意だ。折しも世界景気の減速で各国政府とも税収確保に躍起になりそうな時期。日本と関係国の税の二重取りが発生し事実上の「増税」になるとの懸念がくすぶる。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

まず、新聞記事で問題視しているのは、海外に「倉庫」を所持していた場合、その「倉庫」を使った事業であげた利益に、その進出国の税務当局が課税できることを認めた新ルール。その課税対象となる「倉庫」の定義があいまいで、二重課税になるのでは、という恐れがあるということです。新聞記事では、名指しで、「米アマゾン・ドット・コム」のような世界展開するネット通販業者に適正に課税できなかったと記述しています。あまりこういうさらし者的な記述は、どうかと思うのですが。

その前に、いきなり新聞記事中に「倉庫」と出ているので、一体、課税対象として、「海外現地法人」や「海外支店」とか、そういういかにも会社組織然としているエンティティに対する課税のお話を越えて、「倉庫」と来るのがいまいちピンと来ないかもしれませんね。

図解入門ビジネス最新国際税務の基本と仕組みがよ~くわかる本[第2版] (Shuwasystem Business Guide Book)

■ 現在の国際税務の置かれた状況を経済産業省の資料から学びましょう!

まず、どうして今、「国際税務の新ルール」なのか? それは、グローバル企業(一昔は多国籍企業と呼んでいましたが)が、節度を越えて、税負担を極端に小さくする節税をグループ内の国際間取引でやりすぎたので、税務当局が徴税権を振りかざして逆襲に出たというものです。

経済産業省のホームページより、「国際租税に係る最近の動き」と題した一文があるので、下記に転載します。

● 国際租税に係る最近の動き
http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/toshi/kokusaisozei/kokusaisozei.html

「近年、日本企業のビジネスのグローバル化が進展するに伴い、国際租税の重要性がますます高まっています。その顕著な例が「BEPS(Base Erosion and Profit Shifting、税源浸食と利益移転)プロジェクト」への対応です。BEPSプロジェクトとは、一部の欧米多国籍企業が行っていた過度な租税回避行為を防止すべく、国際課税ルールを見直し、各国税務当局が協調して対処することを目的とするものであり、OECD/G20の各国税務当局が議論を積み重ねております。日本企業はそもそもタックスプランニングに消極的とされている現状とは裏腹に、本プロジェクトによって講じられる対策が日本企業に対して過剰なコストとリスクを生じさせかねないことが懸念されております。」

(下図は、「税制調査会資料〔国際課税関係〕平成25 年10 月OECD 租税委員会議長 浅川雅嗣」より転載)<PDF形式>
http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2013/__icsFiles/afieldfile/2013/10/08/25zen3kai2_1.pdf

20160127_BEPSプロジェクト

利益移転はともかく、税源浸食とはただならぬ表現じゃありませんか。

図解&ケース 国際タックスプランニング入門

■ 国際税務の基本的なコンセプトとその変遷を財務省の資料から学びましょう!

新聞記事にある「昨年秋に固まった国際課税の新ルール」の前に、国際課税の一番大きなフレームワークから一緒に勉強しましょう。この新ルールへの変更は、「国際課税原則」の大きな見直しに伴っています。それは、『「総合主義」から「帰属主義」への変更』といいます。

(下図は『平成26 年度改正関係参考資料(国際課税関係)』より転載)<PDF形式>
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/26kaiseikokusai.pdf

20160127_総合主義と帰属主義の違い

日本で活動する外国法人の所得に対し、事業の活動場所という意味で「源泉地国」としての日本が外国法人に対してどう課税するかについて、外国法人課税の導入当初から50年以上もの間、日本国内法では「総合主義」を採用してきました。総合主義とは、海外企業の日本に拠点:「恒久的施設(PE:Permanent Establishment)」を持っていようと持っていまいと、海外企業が日本の地で稼いだすべての国内源泉所得を課税対象とする、という考え方です。その一方で、「帰属主義」とは、日本国内に存在する「PE」が日本の地で稼いだ所得のみを課税対象にする、という考え方で、日本が租税条約を結んだ国相手で採用している考え方です。「租税条約」とは、「二重課税の排除と脱税の防止などを目的として主権国家の間で締結される成文による国家間の合意」のことで、平成27年12月1日現在、64条約、95か国・地域と締結しています。

● 参考:財務省ホームページ「我が国の租税条約ネットワーク」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/182.htm

日本はこれまでずっと、「総合主義」と「帰属主義」のダブルスタンダードで国際税務制度を運営してきましたが、上記BEPSの方針に従い、国内法を「帰属主義」に改正しました。

国際税務をマスターしたい!と思ったとき最初に読む本〈最新版〉

■ ようやく今回のG20の新課税ルールの内容説明にたどり着きました!

世の中がグローバル企業の行き過ぎた節税行為、「タックス・インバージョン」を取り締まる動きを見せ、PEと本国の取引について、これまで見逃していた(一部、移転価格税制の縛りがありましたが)ものを、あたかもPEは本国の法人とは別法人とみなして、PEは海外進出国、親法人は本国の課税当局による徴税権をそれぞれ明確に分割することにしたのです。法律上の「法人」ではなく、「PE」が課税対象と言明したわけです。

● 外国法人の国内支店(PE)に対する課税の新しい考え方(OECD承認アプローチ)
 (http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/26kaiseikokusai.pdf

20160127_外国法人の国内支店に対する課税の新しい考え方(OECD承認アプローチ)

この内部取引に関する文書の準備が企業の税務実務に対する負担を増すことになるうえ、「PE」の定義が形式的かつ標準的かつ具体的になされていないので、「支店」とか「倉庫」とか、「法人格」をもっていない施設というか事業主体として、課税権を及ぼせる「PE」とはどういうものか、について議論が起きているというわけです。当然、アマゾンなどのネット通販業者をピンポイントで攻めるG20の意向が分かっているので、「PE」をいきなり「倉庫」云々とやるわけです。

そして、G20を中心にこの取り決めに参加した44ヵ国以外の国にある「PE(もっと言えば倉庫)」の取り扱いがどうなるのか、内部取引説明資料の準備負担以上に問題になっているというわけです。各国は当然自国に有利なように課税権を主張してきますし、その国独自の税目を設けたりと、足並みも十分にそろっていません。

「英国は昨春、税逃れを封じる決め手として「迂回利益税」と呼ぶ税金を独自に導入した。企業の国外取引を英当局が検査し利益を不自然に外国に移していると判断すれば重税を課す。主要国で税逃れ対策を詰めているさなかに見切り発車で新税を導入したことで、英国は猛反発を受けた。」

では、こうした税務当局とグローバル企業の最近の動向を、同様に新聞記事から追っていきたいと思います。

図解 国際税務「超」入門

■ 「徹底抗戦」か「面従腹背」か!? グーグルとジョンソン・コントロールズの対応

前章で触れたこの英国の動きは、日経新聞の翌日の記事で次のように取り上げられています。

2016/1/23付 |日本経済新聞|夕刊 グーグル、英で追加納税 220億円、当局と合意 課税逃れ批判に対応

「【ロンドン=黄田和宏】グーグルは22日、英国の税務当局である歳入関税庁(HMRC)と過去の税金の滞納分を追加で納税することで合意した。同社の広報担当者は2005年以降の追加分として1億3000万ポンド(約220億円)を納税することを明らかにした。今年以降も従来よりも高い税率で法人税を納める方針で、多国籍企業に対する課税逃れ批判に対応する。
 グーグルは法人税率が12.5%と欧州最低水準のアイルランドに欧州の本社機能を置き、複雑な税務対策によりこれまで納税額を節約してきた。13年は英国で約2000万ポンドしか納税していなかった。
 英国では、多国籍企業が公平な税金を負担していないとの批判が高まり、オズボーン英財務相は昨年、通称「グーグル税」を導入。意図的に税金を逃れた場合には高税率を適用するもので、租税回避の取り締まりを強化してきた。
 国際的にも課税強化の動きが強まっている。経済協力開発機構(OECD)や20カ国・地域(G20)が昨年秋にまとめた課税ルールでは、多国籍企業に対して実際に事業を営む国で納税することを求めており、グーグルはこれに応じた格好だ。
 欧州では、アップルがアイルランドで優遇的な税制の恩恵を受けてきたとの疑いから、欧州委員会の調査を受けるなど、税問題で規制当局から厳しい追及を受けている。グーグルの今回の対応は、他の多国籍企業に影響を与える可能性がある。」

独自色を出した英国政府に対し、グーグルは、従順策で打って出ました。こちらも、税制の命名からピンポイント攻撃なのですから、グーグルはここでいったん折れた、ということなのでしょう。独自色を出した英国政府に対し、グーグルは、従順策で打って出ました。こちらも、税制の命名からピンポイント攻撃なのですから、グーグルはここでいったん折れた、ということなのでしょう。しかし、グーグルが折れたからと言って、それで問題が全て解決、とはいかないようです。

2016/1/28付 |日本経済新聞|朝刊 〈FT特約〉不透明なグーグル納税合意 英当局、司法判断仰げ

「先週末のグーグルと英税務当局の合意に英国民は懐疑の目を向けている。もっともだ。歳入関税庁は同社からさらに法人税を搾り取ることになった。グーグルは従来、年2000万ポンドを渋々と納税していたが、その額が約3000万ポンドに増える。
 だが合意については疑念が生じてくる。まず全く不透明な中での合意だ。歳入関税庁はどのような基準でグーグルに課税したのか明らかにしていないし、新たに設けた税率の根拠も示していない。従来より公正であるかも分からない。」

問題視されているのは、英税務当局とグーグル間のやり取りが不透明で、課税基準が明白になっていないこと。適用基準や適用された場合の税率設定ルールが事前に分からないと、関連する事業を営む他企業が困ってしまう、ということ。

「グーグルの新たな納税額が大きな負担ではないことははっきりしている。グーグルは英国で10億ポンドの利益をあげているとみられ、合意した3000万ポンドはそのわずか3%だ。オズボーン財務相は、この不透明でわずかな課税増額を不見識にも「大成功」と言った。英国は法人税の扱いについてすぐに真剣に再検討しなければならない。
 グーグルは欧州の売り上げをアイルランドで計上、高率課税を免れてきた。企業の本社機能に関する欧州連合(EU)の規則がそうした裁定を極めて簡単にしている。
 インターネット企業は知的財産権と売り上げを世界のどこにでも移動させられる。企業を国家の枠組みを前提とした税制に取り込むことは難しい。だがデジタル経済の重みが増している中で、そうは言っていられない。大企業が規則を巧みに利用し、中小企業はそうでないという事態は不公平だ。結局のところ納税回避を増やしてしまう。」

グーグルの税負担が小さい所でグーグルとは手を打ったところで、他企業が英国当局の不透明な姿勢を嫌って、英国での事業から撤退、または巧妙に課税資産を国外に移しては、税制改正の効果も最大限に発揮できないということです。

「今回英国は現状できるだけの合意をしたのだろう。だが歳入関税庁は調印する前にグーグルの英国における納税義務の真の規模を確かめるべきである。同社が英国に「恒久的施設」を持つのかどうか、そのことが納税義務にどう影響するか司法の判断を仰ぐのであれば、国民の信頼も高まるだろう。」

「恒久的施設」すなわち「PE」の定義の問題。これはどこまでもつきまとうようです。

ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える

一方で、タックスインバージョン(租税回避)を実施する企業もまだまだ存在します。

2016/1/27付 |日本経済新聞|夕刊 (ウォール街 ラウンドアップ)「おまえもか」企業の米国離れ

「「おまえもか」と思った人は多かったはず。住宅設備などを手掛ける米ジョンソン・コントロールズ(JC)が25日に発表した火災報知機大手タイコとの経営統合は米国の納税者の神経を逆なでした。統合の理由が法人税率が低いアイルランドに登記上の本社を移して節税をする「タックス・インバージョン(租税地変換)」だったからだ。
 昨年末には製薬大手のファイザーがアイルランド籍の同業アラガン買収を発表したばかり。オバマ米政権の最終年を迎え産業政策が変わる前の駆け込み的な「変換ブーム」が起きているようだ。」

どちらも、アイルランドが絡んでいる、、、

しかし、その節税効果の大きさは無視し得るものではありませんよ!

「だが、今やそうした業界をもつなぎ留められないほど米国の法人税率は高どまりしている。連邦法人税率は最高35%で、JCの場合、過去3年間で平均29%を利益に課税されたとされる。アイルランド籍のタイコは12%だ。統合による節税効果は1億5000万ドル(約180億円)という。」

税率だけで単純比較すると、半分以下。これでは、企業業績に厳しい米国の機関投資家を中心とした株主の圧力に抗せざるを得ないでしょうね。だって、登記上だけ本社所在地を変えるだけで税金が半分ですよ!

今回は、国際税務の基本から、最近の企業と税務当局の動向まで幅広く解説しました。自分自身にとってもいい勉強になりました。(^^;)

(なぜ、勉強勉強と繰り返すかって? このブログの読者は、国際税務と企業統治の記事はあまり読んでくれないんですよね。勉強になった!とでも思わないと記事を書くモチベーションが持たないので。。。)

現場ストーリーから学ぶ 国際税務戦略の考え方・取り組み方

国際タックスプランニングの実務

(Visited 264 times, 1 visits today)
Pocket

(真相深層)「結局は増税?」企業警戒 国際課税新ルール、強まる懸念 主要国、はや足並み乱れhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭経済動向を会計で読むBEPS,PE,アイルランド,アラガン,グーグル,ジョンソン・コントロールズ,タイコ,タックス・インバージョン,ファイザー,二重課税,国際税務,帰属主義,恒久的施設,租税条約,総合主義,迂回利益税■ 国際税務の話は難しい? 初心者向けの説明をします。だって筆者も初心者だから! 国際課税の新ルールが昨年秋にG20で設定され、早速、各国の足並みがそろわずに、企業の税務担当者がお困りのようです。この投稿では、できるだけ初心者にもそのカラクリと大勢の流れを、筆者の勉強がてら、一緒に確認していきたいと思います。 2016/1/22付 |日本経済新聞|朝刊 (真相深層)「結局は増税?」企業警戒 国際課税新ルール、強まる懸念 主要国、はや足並み乱れ 「日米欧に新興国を加えた44カ国がまとめた国際課税の新ルールに日本企業が揺れている。行き過ぎた節税策を防ぐ狙いだが、米欧中などの解釈の不一致を残したままの合意だ。折しも世界景気の減速で各国政府とも税収確保に躍起になりそうな時期。日本と関係国の税の二重取りが発生し事実上の「増税」になるとの懸念がくすぶる。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます まず、新聞記事で問題視しているのは、海外に「倉庫」を所持していた場合、その「倉庫」を使った事業であげた利益に、その進出国の税務当局が課税できることを認めた新ルール。その課税対象となる「倉庫」の定義があいまいで、二重課税になるのでは、という恐れがあるということです。新聞記事では、名指しで、「米アマゾン・ドット・コム」のような世界展開するネット通販業者に適正に課税できなかったと記述しています。あまりこういうさらし者的な記述は、どうかと思うのですが。 その前に、いきなり新聞記事中に「倉庫」と出ているので、一体、課税対象として、「海外現地法人」や「海外支店」とか、そういういかにも会社組織然としているエンティティに対する課税のお話を越えて、「倉庫」と来るのがいまいちピンと来ないかもしれませんね。 図解入門ビジネス最新国際税務の基本と仕組みがよ~くわかる本 (Shuwasystem Business Guide Book) ■ 現在の国際税務の置かれた状況を経済産業省の資料から学びましょう! まず、どうして今、「国際税務の新ルール」なのか? それは、グローバル企業(一昔は多国籍企業と呼んでいましたが)が、節度を越えて、税負担を極端に小さくする節税をグループ内の国際間取引でやりすぎたので、税務当局が徴税権を振りかざして逆襲に出たというものです。 経済産業省のホームページより、「国際租税に係る最近の動き」と題した一文があるので、下記に転載します。 ● 国際租税に係る最近の動き (http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/toshi/kokusaisozei/kokusaisozei.html) 「近年、日本企業のビジネスのグローバル化が進展するに伴い、国際租税の重要性がますます高まっています。その顕著な例が「BEPS(Base Erosion and Profit Shifting、税源浸食と利益移転)プロジェクト」への対応です。BEPSプロジェクトとは、一部の欧米多国籍企業が行っていた過度な租税回避行為を防止すべく、国際課税ルールを見直し、各国税務当局が協調して対処することを目的とするものであり、OECD/G20の各国税務当局が議論を積み重ねております。日本企業はそもそもタックスプランニングに消極的とされている現状とは裏腹に、本プロジェクトによって講じられる対策が日本企業に対して過剰なコストとリスクを生じさせかねないことが懸念されております。」 (下図は、「税制調査会資料〔国際課税関係〕平成25 年10 月OECD 租税委員会議長 浅川雅嗣」より転載)<PDF形式> (http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2013/__icsFiles/afieldfile/2013/10/08/25zen3kai2_1.pdf) 利益移転はともかく、税源浸食とはただならぬ表現じゃありませんか。 図解&ケース 国際タックスプランニング入門 ■ 国際税務の基本的なコンセプトとその変遷を財務省の資料から学びましょう! 新聞記事にある「昨年秋に固まった国際課税の新ルール」の前に、国際課税の一番大きなフレームワークから一緒に勉強しましょう。この新ルールへの変更は、「国際課税原則」の大きな見直しに伴っています。それは、『「総合主義」から「帰属主義」への変更』といいます。 (下図は『平成26 年度改正関係参考資料(国際課税関係)』より転載)<PDF形式> (http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/26kaiseikokusai.pdf) 日本で活動する外国法人の所得に対し、事業の活動場所という意味で「源泉地国」としての日本が外国法人に対してどう課税するかについて、外国法人課税の導入当初から50年以上もの間、日本国内法では「総合主義」を採用してきました。総合主義とは、海外企業の日本に拠点:「恒久的施設(PE:Permanent Establishment)」を持っていようと持っていまいと、海外企業が日本の地で稼いだすべての国内源泉所得を課税対象とする、という考え方です。その一方で、「帰属主義」とは、日本国内に存在する「PE」が日本の地で稼いだ所得のみを課税対象にする、という考え方で、日本が租税条約を結んだ国相手で採用している考え方です。「租税条約」とは、「二重課税の排除と脱税の防止などを目的として主権国家の間で締結される成文による国家間の合意」のことで、平成27年12月1日現在、64条約、95か国・地域と締結しています。 ● 参考:財務省ホームページ「我が国の租税条約ネットワーク」 (https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/182.htm) 日本はこれまでずっと、「総合主義」と「帰属主義」のダブルスタンダードで国際税務制度を運営してきましたが、上記BEPSの方針に従い、国内法を「帰属主義」に改正しました。 国際税務をマスターしたい!と思ったとき最初に読む本〈最新版〉 ■ ようやく今回のG20の新課税ルールの内容説明にたどり着きました! 世の中がグローバル企業の行き過ぎた節税行為、「タックス・インバージョン」を取り締まる動きを見せ、PEと本国の取引について、これまで見逃していた(一部、移転価格税制の縛りがありましたが)ものを、あたかもPEは本国の法人とは別法人とみなして、PEは海外進出国、親法人は本国の課税当局による徴税権をそれぞれ明確に分割することにしたのです。法律上の「法人」ではなく、「PE」が課税対象と言明したわけです。 ● 外国法人の国内支店(PE)に対する課税の新しい考え方(OECD承認アプローチ)  (http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/26kaiseikokusai.pdf) この内部取引に関する文書の準備が企業の税務実務に対する負担を増すことになるうえ、「PE」の定義が形式的かつ標準的かつ具体的になされていないので、「支店」とか「倉庫」とか、「法人格」をもっていない施設というか事業主体として、課税権を及ぼせる「PE」とはどういうものか、について議論が起きているというわけです。当然、アマゾンなどのネット通販業者をピンポイントで攻めるG20の意向が分かっているので、「PE」をいきなり「倉庫」云々とやるわけです。 そして、G20を中心にこの取り決めに参加した44ヵ国以外の国にある「PE(もっと言えば倉庫)」の取り扱いがどうなるのか、内部取引説明資料の準備負担以上に問題になっているというわけです。各国は当然自国に有利なように課税権を主張してきますし、その国独自の税目を設けたりと、足並みも十分にそろっていません。 「英国は昨春、税逃れを封じる決め手として「迂回利益税」と呼ぶ税金を独自に導入した。企業の国外取引を英当局が検査し利益を不自然に外国に移していると判断すれば重税を課す。主要国で税逃れ対策を詰めているさなかに見切り発車で新税を導入したことで、英国は猛反発を受けた。」 では、こうした税務当局とグローバル企業の最近の動向を、同様に新聞記事から追っていきたいと思います。 図解 国際税務「超」入門 ■ 「徹底抗戦」か「面従腹背」か!? グーグルとジョンソン・コントロールズの対応 前章で触れたこの英国の動きは、日経新聞の翌日の記事で次のように取り上げられています。 2016/1/23付 |日本経済新聞|夕刊 グーグル、英で追加納税 220億円、当局と合意 課税逃れ批判に対応 「【ロンドン=黄田和宏】グーグルは22日、英国の税務当局である歳入関税庁(HMRC)と過去の税金の滞納分を追加で納税することで合意した。同社の広報担当者は2005年以降の追加分として1億3000万ポンド(約220億円)を納税することを明らかにした。今年以降も従来よりも高い税率で法人税を納める方針で、多国籍企業に対する課税逃れ批判に対応する。  グーグルは法人税率が12.5%と欧州最低水準のアイルランドに欧州の本社機能を置き、複雑な税務対策によりこれまで納税額を節約してきた。13年は英国で約2000万ポンドしか納税していなかった。  英国では、多国籍企業が公平な税金を負担していないとの批判が高まり、オズボーン英財務相は昨年、通称「グーグル税」を導入。意図的に税金を逃れた場合には高税率を適用するもので、租税回避の取り締まりを強化してきた。  国際的にも課税強化の動きが強まっている。経済協力開発機構(OECD)や20カ国・地域(G20)が昨年秋にまとめた課税ルールでは、多国籍企業に対して実際に事業を営む国で納税することを求めており、グーグルはこれに応じた格好だ。  欧州では、アップルがアイルランドで優遇的な税制の恩恵を受けてきたとの疑いから、欧州委員会の調査を受けるなど、税問題で規制当局から厳しい追及を受けている。グーグルの今回の対応は、他の多国籍企業に影響を与える可能性がある。」 独自色を出した英国政府に対し、グーグルは、従順策で打って出ました。こちらも、税制の命名からピンポイント攻撃なのですから、グーグルはここでいったん折れた、ということなのでしょう。独自色を出した英国政府に対し、グーグルは、従順策で打って出ました。こちらも、税制の命名からピンポイント攻撃なのですから、グーグルはここでいったん折れた、ということなのでしょう。しかし、グーグルが折れたからと言って、それで問題が全て解決、とはいかないようです。 2016/1/28付 |日本経済新聞|朝刊 〈FT特約〉不透明なグーグル納税合意 英当局、司法判断仰げ 「先週末のグーグルと英税務当局の合意に英国民は懐疑の目を向けている。もっともだ。歳入関税庁は同社からさらに法人税を搾り取ることになった。グーグルは従来、年2000万ポンドを渋々と納税していたが、その額が約3000万ポンドに増える。  だが合意については疑念が生じてくる。まず全く不透明な中での合意だ。歳入関税庁はどのような基準でグーグルに課税したのか明らかにしていないし、新たに設けた税率の根拠も示していない。従来より公正であるかも分からない。」 問題視されているのは、英税務当局とグーグル間のやり取りが不透明で、課税基準が明白になっていないこと。適用基準や適用された場合の税率設定ルールが事前に分からないと、関連する事業を営む他企業が困ってしまう、ということ。 「グーグルの新たな納税額が大きな負担ではないことははっきりしている。グーグルは英国で10億ポンドの利益をあげているとみられ、合意した3000万ポンドはそのわずか3%だ。オズボーン財務相は、この不透明でわずかな課税増額を不見識にも「大成功」と言った。英国は法人税の扱いについてすぐに真剣に再検討しなければならない。  グーグルは欧州の売り上げをアイルランドで計上、高率課税を免れてきた。企業の本社機能に関する欧州連合(EU)の規則がそうした裁定を極めて簡単にしている。  インターネット企業は知的財産権と売り上げを世界のどこにでも移動させられる。企業を国家の枠組みを前提とした税制に取り込むことは難しい。だがデジタル経済の重みが増している中で、そうは言っていられない。大企業が規則を巧みに利用し、中小企業はそうでないという事態は不公平だ。結局のところ納税回避を増やしてしまう。」 グーグルの税負担が小さい所でグーグルとは手を打ったところで、他企業が英国当局の不透明な姿勢を嫌って、英国での事業から撤退、または巧妙に課税資産を国外に移しては、税制改正の効果も最大限に発揮できないということです。 「今回英国は現状できるだけの合意をしたのだろう。だが歳入関税庁は調印する前にグーグルの英国における納税義務の真の規模を確かめるべきである。同社が英国に「恒久的施設」を持つのかどうか、そのことが納税義務にどう影響するか司法の判断を仰ぐのであれば、国民の信頼も高まるだろう。」 「恒久的施設」すなわち「PE」の定義の問題。これはどこまでもつきまとうようです。 ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える 一方で、タックスインバージョン(租税回避)を実施する企業もまだまだ存在します。 2016/1/27付 |日本経済新聞|夕刊 (ウォール街 ラウンドアップ)「おまえもか」企業の米国離れ 「「おまえもか」と思った人は多かったはず。住宅設備などを手掛ける米ジョンソン・コントロールズ(JC)が25日に発表した火災報知機大手タイコとの経営統合は米国の納税者の神経を逆なでした。統合の理由が法人税率が低いアイルランドに登記上の本社を移して節税をする「タックス・インバージョン(租税地変換)」だったからだ。  昨年末には製薬大手のファイザーがアイルランド籍の同業アラガン買収を発表したばかり。オバマ米政権の最終年を迎え産業政策が変わる前の駆け込み的な「変換ブーム」が起きているようだ。」 どちらも、アイルランドが絡んでいる、、、 しかし、その節税効果の大きさは無視し得るものではありませんよ! 「だが、今やそうした業界をもつなぎ留められないほど米国の法人税率は高どまりしている。連邦法人税率は最高35%で、JCの場合、過去3年間で平均29%を利益に課税されたとされる。アイルランド籍のタイコは12%だ。統合による節税効果は1億5000万ドル(約180億円)という。」 税率だけで単純比較すると、半分以下。これでは、企業業績に厳しい米国の機関投資家を中心とした株主の圧力に抗せざるを得ないでしょうね。だって、登記上だけ本社所在地を変えるだけで税金が半分ですよ! 今回は、国際税務の基本から、最近の企業と税務当局の動向まで幅広く解説しました。自分自身にとってもいい勉強になりました。(^^;) (なぜ、勉強勉強と繰り返すかって? このブログの読者は、国際税務と企業統治の記事はあまり読んでくれないんですよね。勉強になった!とでも思わないと記事を書くモチベーションが持たないので。。。) 現場ストーリーから学ぶ 国際税務戦略の考え方・取り組み方 国際タックスプランニングの実務現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します