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■ 驚異の“ゆるまない”ネジ 不可能を可能にした発明家

コンサルタントのつぶやき_アイキャッチ

今日の放送は、株式会社 NejiLaw代表取締役社長の道脇裕さん。NejiLawの業務内容は、「高機能・高性能型産業用締結部材および締結部材性能評価試験機・試験室の開発・製造・販売・試験受託・ライセンシング」(同社ホームページより)とありますが、緩まないネジを世の中に提供することを使命とする会社で、その画期的なネジ開発技術をもはや発明している中心人物が道脇さんです。

株式会社 NejiLaw

同日(2016/11/14)、日経ビジネスONLINEにて、
小学校“中退”の発明家、道脇裕の「人生をネジろう」」(齊藤 美保)の連載も始まりました。

20161114_道脇裕_プロフェッショナル

公式ホームページより)

天才と称される39歳の発明家。ほとんど握力の無い人でも容易にペットボトルのふたが開けられる器具、工事現場で用いられる500Kgの加重に耐えられる留め金。この天才の頭脳を頼って名だたる大企業の関係者がひっきりなしに訪れる。

 

■ あふれる発想が止まらない “学歴ナシ”の天才発明家

道脇にとって発明することは息をすることと同じ。自由に脳にやらせておくという感じなのだそうだ。何の役に立つかはわからないが(こだわらずに)自由な発想が湧きあがるままにしておく。こうした流儀で道脇が世界を驚かせたのが2年前。2000年を超えるネジの歴史の中で永遠の課題だった「緩み」を克服した。度重なる振動でネジが緩んで起きる事故は国内で約70件。その中には、2012年「笹子トンネル天井板崩落事故」(老朽化が原因でボルトが脱落)という大惨事も含まれる。こうした事故を防ぐために、膨大なコストをかけた定期点検が欠かせなかった。

20161114_道脇の発明した「ゆるまないネジ」_プロフェッショナル

道脇の発明した「ゆるまないネジ」|番組ホームページより)

道脇が発明した絶対に緩まないネジの構造とは? 右回しのネジ山と左回しのネジ山を一体化させて一本のボルトに収める。そして、右回しのナットと左回しのナットをきつく締め、上下に重なった2つのナットを固定化する。すると、どんな衝撃を受けても、同一方向・同一タイミングに働く力がどんなに大きくても、一体化したナットが緩むことは絶対にない。夢のネジが実現した。世界で最も厳しい振動実験にも耐えた。約3時間という長時間の試験に耐え、逆に試験器の方がダメージを得たという折り紙つき。人類史上稀に見るブレイクスルー。そのきっかけは、道脇のひとつの流儀による。

『不可能を、証明したか』

「緩まないネジを作ることは永遠のテーマであると、人類にとって。という話を聞いたわけですよね。もう不可能と言っているわけですね。緩まないネジを作るのは不可能であるというふうに言っているので、そんなもんかなと。不可能が証明されたのかと。不可能な証明がされていないものを不可能とは言えないだろう。じゃあ、緩まないネジを考えよう。」

 

■ 「不可能を証明したか?」“学歴ナシ”発明家の発想

NejiLawで開発中の新しいネジを加工する際に課題が発生した。ネジ山を斬るときにカッターが刃こぼれしてしまい、どうしても「バリ」という突起がネジに残ってしまうのだ。通常は、刃こぼれを防ぐためにはできるだけカッターの回転数を下げるのが定石。だが、道脇はあえてマシンの限界値まで回転数を上げることを指示した。
(放送では、150~180でやっていた回転数を、マシンの限界5000まで上げて試作続行)

『従来の常識の外側に答えがある』

「人類の活動、これまでに何百億人も何兆人も人が地球上を歩いたかもしれないけど、たかだか何百億人、何兆人なわけですよ。その人たちが積み上げてきているものって膨大だけど有限なんですよね。それが織り成しているものが現代の常識なわけです。専門家とかすごい技能ある人とかすごい研究の腕の立つ人とかが、さんざんやってきて見つからないんだったら、その中には答えがない可能性が高いですね。要は常識という枠の中には答えがない。であれば常識の外のものを持ってきたほうが早い。」

さらっと聞けば合理的な(ごもっともな)意見に聞こえるが、それを思いつく発想力のベースが圧倒的に異なることを実感するお言葉でした。「『常識』に捉われるな」という言説の『常識』をものの見事に説明しているセリフでした。

 

■ 「頭脳は社会のためにある」“学歴ナシ”発明家の哲学

道脇さんの発明のひとつに、騒音吸収素材があり、高速道路の高架下に設置されている。幅2cmで長さ4mのこのパーツ。連結部分には道脇さんの発明である供回り防止のナットが使われている。また、連結パーツが一定の幅を保って機材をつなぐようなストッパーも取り付けられており、飛躍的に作業効率が向上した。

20161114_作業効率を格段にアップする専用のパーツを発明_プロフェッショナル

作業効率を格段にアップする専用のパーツを発明|番組ホームページより)

作業を行う人たちへの思いやりが込められている。そこに道脇さんの哲学が。

『頭は、心の道具』

「愛情が大事。僕の場合は、何か物を考えたりとか発明したりとかっていうのは、もちろん頭でやる行為かもしれないですけど、頭を動かしている原動力っていうか指図しているのは何か。心である。心が頭を使っているっていう。頭というのは心の道具であるという僕の捉え方ですよね。」

新たな発想は暮らしをよくする社会への思いやりから。

 

■ 紙には、いくつの面がある? “学歴ナシ”発明家の視点

道脇さんの答え。

「紙1枚渡されて、これ何面ありますかって問われたら、2面って言うと思うんですよ。なぜなら裏と表で。だけど、それって正しいのかって見たときに、実は少なくとも、さらに4辺あれば6面になりますよね、薄いけど。でも、じゃあほんとに6面なのかっていうと、顕微鏡で見てったら、糸が絡まっていて、糸が持っている面ってのが出てきちゃいますね。糸何本使われているのかっていうことになって、桁外れな面を持っているということになります。でもそれって今の質問からすると、表面って勝手にとらえていますよね。面って聞いただけであって表面とは聞いていないわけです。てことは、燃えるという側面だったりとか、書けるっていう側面だったりとか、見る視点を増やす、これは非常に重要なことです。ブレイクスルーを何か生み出したかったら。見る視点の数が、出てくる効果として、結果物としての数から比べると、ものすごい効果は大きいわけですね。」

年功序列とか、亀の甲より年の功とか、経験重視で若手を軽視するわけではありませんが、物事を見る目というものをできるだけ多面的に持つ訓練の差が仕事の品質の差に直結していると思うわけです。訓練されていなければ、ただの年寄りも無用の長物ですが、現場の歴戦のつわものになればなるほど、その訓練の差が大きく物を言うと思います。若手ビジネスパーソンでそれができている人は、受験戦争を越えて、学生生活の中で、たった一つの正解を暗記しているのではなくて、本当に地頭で考え、多面的に物事を見る経験を積んでいるのだと思います。この年になって気付いたことを持ったまま若返ることはできないので、自分自身としては残念なのですが、若手を育成する機会が多い自分としては、できるだけそういう経験値を伝えるように心がけています。

 

■ 世界に革新をもたらす“学歴ナシ”の天才発明家

ここで道脇さんの半生。

群馬県桐生市生まれ。小さいころから実験やものづくりに没入する性格だったそうだ。発想力も抜群で、祖母の総入歯を外す様子を見て、目玉も出してみて!と言ったのが、2、3歳だったというから驚き! 小学校の成績も抜群だった。教科書が配られると、だいたい2~3週間で全部独学で終わらせてしまう。そうすると授業中ひまで、どうして学校に来ているんだろうという疑問が年単位で蓄積。やがて、教育システムそのものがおかしいと結論。「何をしたらいいのか、何で生きているのか」という人生の難問に小学5年生でぶち当たる。そして、個性が失われるのが嫌なので、この教育システムから降りると11歳そこそこで親に宣言。

小学5年生で休学した道脇さん、新聞配達、漁師の見習い、とび職などをやり、同学年の友人知人が受験勉強をやっているのを横目に、自分探しの旅は続いた。

『ばかを克服するか、死ぬか』

別に死にたいわけではないので、ばかを克服するために何をするべきか、紙に書き取り始めた。やがてまとまったTo-DOリストが完成する。そのリストを見て道脇さんは愕然とする。「なんじゃこりゃ、学校カリキュラムそのものだ」と。だから、社会は教育プログラムを作って、子供たちにその学習を強いて、将来のやりたいことができるチャンスを与えてあげるための基礎作りだったんだなと。

 

■ 人は何のために生きるのか“学歴ナシ”発明家の半生

転機は19歳の時。自動車を運転中に、タイヤホイールを連結する器具のボルトが折れる事故に見舞われる。他のボルトも含め、ナットは全て緩んでいた。幸運にも、自分も他人も傷つけることはなかったが車は一発廃車。この事故で、道脇さんは自分のやるべきことを見つけた。そして、31歳でベンチャー企業を立ち上げ。不可能と言われたあの緩まないネジを製品化するために。道脇さんの発明は世界を驚かせる。事故を防ぎ、点検コストを削減する。

「自分だけで生きているのではないから、いろんな人に支えられながら、存在できる。みんながいてくれる。いろんな生命体があってくれる。いろんなものがあってくれるから、とりあえず今日死なないでしょうし、今日を越えられると思うんですよ。自分の為だけだったら、存在する価値がないですよね。そうしたら別に自分の為に生きたいって全くない。」

『誰かのために、
 何かのために、
 生きる』

 

■ 「ゆるまず、動く」巨大ネジ“学歴ナシ”発明家の挑戦

依頼されたのは直径8cmの巨大ネジの開発。重さ8トンのハンマーで鉄鋼製工業部品を成形する機械に取り付けられている。これまでは、ハンマーが打ち下ろされる反動・衝撃で、ナットが緩み、頻繁にスパナで締め直す必要があった。ただ固定するだけなら、道脇がすでに発明した緩まないネジの技術をそのまま使用すればよい。しかし、この機会は、ハンマーとフレームをつなぎとめるためのネジ。この加工機械を使用するにつれ、ハンマーの外径部分がすり減り、微妙にフレームの位置をナットの締り具合で調整する必要があった。つまり、「緩まないでほしいけど、緩んでほしいネジ」

加工時間は絶対に緩まずに、調整時間にはナットを自由に動かしたいネジ。

その構造はこうだ。従来の緩まないネジを基本に使う。2つのネジの結合部には、ねじ切りでかみ合わせると共に、巨大な輪ゴムを間に挟み、使用中はその反発力でネジが緩まないようにする。調整が必要になったら、2つのネジを歯車の付いた工具で左右に噛みあわせていた部分を分離させ、ゴムを収縮させるとともに、左右2つのネジ(ボルト)が自由に動かせるというもの。
(すみません、完全文系人間が文字だけで構造を説明するのには難がありました)

試作品による調整が続く。緩衝材としてのゴム(途中からシリコン製に替わる)の反発力によるボルト固定性と、歯車を入れた時の収縮性を両立する素材探しに難航する。

ここでゴム素材の反発力に頼る固定法を諦める。2つのネジを供回りで外れない第3のネジで固定する方法で2つ目の試作品を作り調整を始める。しかし、組み合わせる部品が増えたことにより、各部品の外形の微妙な精度のズレで、各部位が動いたり動かなかったり。18時間考え続けても解決の糸口は見つからなかった。

「出てくるまで考え続けるから、答えは必ず出てくると信じていますけどね。もっといい答えってないのか、もっと最適なものはないのか、もっと最高の解はないのか、とさらに、さらに、さらに、突き詰めていくのが重要なんじゃないかと思うんです。自分の役割・存在価値と自分で認識していることを最大限尽くしたい。」

私も考えに考え尽くした先に、新しいアイデアが頭の中に閃くことがしばしばあります。でも、それって、有機生命体としての肉体を苛め抜いた先(徹夜は絶対しませんが、睡眠中以外の時間の98%をその解決課題を考えることに充て、数週間や数か月を過ごすことはざらです)に到達できる答えです。ちなみに、コンサルタントになって今まで徹夜は1度きり。それも、自分の課題解決の為ではありません。コンサルタントは常時、思考を続けないといけないので、寝ること、休息を取ることも仕事の内。常にベストコンディションで考え抜くマシーンとして自分の身体を捉えています。

3度目の正直。道脇はこれまでの路線を全て根底から覆す。緩衝材もボルトも使わず、そもそも2つのナット固定を諦める。従来は2つのナットを離して可動させるための歯車を、逆転の発想で2つのナットを固定する役目に使う。そして必要とする部品点数を減らし、その形状もシンプルに。そうすると、コストパフォーマンスも改善する。

こうした発想の転換を柔軟にできるところが素直にスゴイ! なかなか、自分の従来のアイデアを自分自身で否定することは勇気が必要。それをあっさりやってのける所には、自分のチンケなプライドなど一切なし。人の役に立ちたい、という貢献心が小さなプライドなど脳内にかすめさせもしない。他者貢献という動機(目的)に向かってただひたすらに邁進する。

「そもそも、高い精度に頼らなければならない構造自体を捨てることにした」

あっさり、前の自分を超えられるところに脱帽!

さらに、調整作業をする人のことを考え、片手でも簡単に歯車を回せる工具を作り出していた。これが、誰かの為に生きる、自分の存在証明のために考え抜く姿勢の現れ。

また新しい発明品がこの日生まれた。道脇は誰かの為に、何かの為に今日も考え続ける。

プロフェッショナルとは、

己のプロフェッショナリティーに特化していて、かつ、達していること

可能性を広げるためには、まず、己を見つめること。そして、己を取り巻くさまざまに目を向けよ。徹底した内観と外観。その狭間にこそ、自らを最大限に生かす道がある。己を磨け、自他共に認められる域まで。その道は、他のプロフェッショナルをも生かす道に通ず。

——————
 プロフェッショナル 仕事の流儀2016年11月14日の番組ホームページはこちら

株式会社 NejiLawのホームページはこちら

→再放送11月21日(月)午後3時10分~午後3時59分 総合

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常識を超え、独創を極めよ 発明家・道脇裕 2016年11月14日 NHK プロフェッショナル 仕事の流儀http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/f2dde0c815f506d35f39301dbbb486e4.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/f2dde0c815f506d35f39301dbbb486e4-150x150.jpg小林 友昭TV番組レビューNejiLaw,ネジ,プロフェッショナル,道脇裕■ 驚異の“ゆるまない”ネジ 不可能を可能にした発明家 今日の放送は、株式会社 NejiLaw代表取締役社長の道脇裕さん。NejiLawの業務内容は、「高機能・高性能型産業用締結部材および締結部材性能評価試験機・試験室の開発・製造・販売・試験受託・ライセンシング」(同社ホームページより)とありますが、緩まないネジを世の中に提供することを使命とする会社で、その画期的なネジ開発技術をもはや発明している中心人物が道脇さんです。 ● 株式会社 NejiLaw 同日(2016/11/14)、日経ビジネスONLINEにて、 「小学校“中退”の発明家、道脇裕の「人生をネジろう」」(齊藤 美保)の連載も始まりました。 (公式ホームページより) 天才と称される39歳の発明家。ほとんど握力の無い人でも容易にペットボトルのふたが開けられる器具、工事現場で用いられる500Kgの加重に耐えられる留め金。この天才の頭脳を頼って名だたる大企業の関係者がひっきりなしに訪れる。   ■ あふれる発想が止まらない “学歴ナシ”の天才発明家 道脇にとって発明することは息をすることと同じ。自由に脳にやらせておくという感じなのだそうだ。何の役に立つかはわからないが(こだわらずに)自由な発想が湧きあがるままにしておく。こうした流儀で道脇が世界を驚かせたのが2年前。2000年を超えるネジの歴史の中で永遠の課題だった「緩み」を克服した。度重なる振動でネジが緩んで起きる事故は国内で約70件。その中には、2012年「笹子トンネル天井板崩落事故」(老朽化が原因でボルトが脱落)という大惨事も含まれる。こうした事故を防ぐために、膨大なコストをかけた定期点検が欠かせなかった。 (道脇の発明した「ゆるまないネジ」|番組ホームページより) 道脇が発明した絶対に緩まないネジの構造とは? 右回しのネジ山と左回しのネジ山を一体化させて一本のボルトに収める。そして、右回しのナットと左回しのナットをきつく締め、上下に重なった2つのナットを固定化する。すると、どんな衝撃を受けても、同一方向・同一タイミングに働く力がどんなに大きくても、一体化したナットが緩むことは絶対にない。夢のネジが実現した。世界で最も厳しい振動実験にも耐えた。約3時間という長時間の試験に耐え、逆に試験器の方がダメージを得たという折り紙つき。人類史上稀に見るブレイクスルー。そのきっかけは、道脇のひとつの流儀による。 『不可能を、証明したか』 「緩まないネジを作ることは永遠のテーマであると、人類にとって。という話を聞いたわけですよね。もう不可能と言っているわけですね。緩まないネジを作るのは不可能であるというふうに言っているので、そんなもんかなと。不可能が証明されたのかと。不可能な証明がされていないものを不可能とは言えないだろう。じゃあ、緩まないネジを考えよう。」   ■ 「不可能を証明したか?」“学歴ナシ”発明家の発想 NejiLawで開発中の新しいネジを加工する際に課題が発生した。ネジ山を斬るときにカッターが刃こぼれしてしまい、どうしても「バリ」という突起がネジに残ってしまうのだ。通常は、刃こぼれを防ぐためにはできるだけカッターの回転数を下げるのが定石。だが、道脇はあえてマシンの限界値まで回転数を上げることを指示した。 (放送では、150~180でやっていた回転数を、マシンの限界5000まで上げて試作続行) 『従来の常識の外側に答えがある』 「人類の活動、これまでに何百億人も何兆人も人が地球上を歩いたかもしれないけど、たかだか何百億人、何兆人なわけですよ。その人たちが積み上げてきているものって膨大だけど有限なんですよね。それが織り成しているものが現代の常識なわけです。専門家とかすごい技能ある人とかすごい研究の腕の立つ人とかが、さんざんやってきて見つからないんだったら、その中には答えがない可能性が高いですね。要は常識という枠の中には答えがない。であれば常識の外のものを持ってきたほうが早い。」 さらっと聞けば合理的な(ごもっともな)意見に聞こえるが、それを思いつく発想力のベースが圧倒的に異なることを実感するお言葉でした。「『常識』に捉われるな」という言説の『常識』をものの見事に説明しているセリフでした。   ■ 「頭脳は社会のためにある」“学歴ナシ”発明家の哲学 道脇さんの発明のひとつに、騒音吸収素材があり、高速道路の高架下に設置されている。幅2cmで長さ4mのこのパーツ。連結部分には道脇さんの発明である供回り防止のナットが使われている。また、連結パーツが一定の幅を保って機材をつなぐようなストッパーも取り付けられており、飛躍的に作業効率が向上した。 (作業効率を格段にアップする専用のパーツを発明|番組ホームページより) 作業を行う人たちへの思いやりが込められている。そこに道脇さんの哲学が。 『頭は、心の道具』 「愛情が大事。僕の場合は、何か物を考えたりとか発明したりとかっていうのは、もちろん頭でやる行為かもしれないですけど、頭を動かしている原動力っていうか指図しているのは何か。心である。心が頭を使っているっていう。頭というのは心の道具であるという僕の捉え方ですよね。」 新たな発想は暮らしをよくする社会への思いやりから。   ■ 紙には、いくつの面がある? “学歴ナシ”発明家の視点 道脇さんの答え。 「紙1枚渡されて、これ何面ありますかって問われたら、2面って言うと思うんですよ。なぜなら裏と表で。だけど、それって正しいのかって見たときに、実は少なくとも、さらに4辺あれば6面になりますよね、薄いけど。でも、じゃあほんとに6面なのかっていうと、顕微鏡で見てったら、糸が絡まっていて、糸が持っている面ってのが出てきちゃいますね。糸何本使われているのかっていうことになって、桁外れな面を持っているということになります。でもそれって今の質問からすると、表面って勝手にとらえていますよね。面って聞いただけであって表面とは聞いていないわけです。てことは、燃えるという側面だったりとか、書けるっていう側面だったりとか、見る視点を増やす、これは非常に重要なことです。ブレイクスルーを何か生み出したかったら。見る視点の数が、出てくる効果として、結果物としての数から比べると、ものすごい効果は大きいわけですね。」 年功序列とか、亀の甲より年の功とか、経験重視で若手を軽視するわけではありませんが、物事を見る目というものをできるだけ多面的に持つ訓練の差が仕事の品質の差に直結していると思うわけです。訓練されていなければ、ただの年寄りも無用の長物ですが、現場の歴戦のつわものになればなるほど、その訓練の差が大きく物を言うと思います。若手ビジネスパーソンでそれができている人は、受験戦争を越えて、学生生活の中で、たった一つの正解を暗記しているのではなくて、本当に地頭で考え、多面的に物事を見る経験を積んでいるのだと思います。この年になって気付いたことを持ったまま若返ることはできないので、自分自身としては残念なのですが、若手を育成する機会が多い自分としては、できるだけそういう経験値を伝えるように心がけています。   ■ 世界に革新をもたらす“学歴ナシ”の天才発明家 ここで道脇さんの半生。 群馬県桐生市生まれ。小さいころから実験やものづくりに没入する性格だったそうだ。発想力も抜群で、祖母の総入歯を外す様子を見て、目玉も出してみて!と言ったのが、2、3歳だったというから驚き! 小学校の成績も抜群だった。教科書が配られると、だいたい2~3週間で全部独学で終わらせてしまう。そうすると授業中ひまで、どうして学校に来ているんだろうという疑問が年単位で蓄積。やがて、教育システムそのものがおかしいと結論。「何をしたらいいのか、何で生きているのか」という人生の難問に小学5年生でぶち当たる。そして、個性が失われるのが嫌なので、この教育システムから降りると11歳そこそこで親に宣言。 小学5年生で休学した道脇さん、新聞配達、漁師の見習い、とび職などをやり、同学年の友人知人が受験勉強をやっているのを横目に、自分探しの旅は続いた。 『ばかを克服するか、死ぬか』 別に死にたいわけではないので、ばかを克服するために何をするべきか、紙に書き取り始めた。やがてまとまったTo-DOリストが完成する。そのリストを見て道脇さんは愕然とする。「なんじゃこりゃ、学校カリキュラムそのものだ」と。だから、社会は教育プログラムを作って、子供たちにその学習を強いて、将来のやりたいことができるチャンスを与えてあげるための基礎作りだったんだなと。   ■ 人は何のために生きるのか“学歴ナシ”発明家の半生 転機は19歳の時。自動車を運転中に、タイヤホイールを連結する器具のボルトが折れる事故に見舞われる。他のボルトも含め、ナットは全て緩んでいた。幸運にも、自分も他人も傷つけることはなかったが車は一発廃車。この事故で、道脇さんは自分のやるべきことを見つけた。そして、31歳でベンチャー企業を立ち上げ。不可能と言われたあの緩まないネジを製品化するために。道脇さんの発明は世界を驚かせる。事故を防ぎ、点検コストを削減する。 「自分だけで生きているのではないから、いろんな人に支えられながら、存在できる。みんながいてくれる。いろんな生命体があってくれる。いろんなものがあってくれるから、とりあえず今日死なないでしょうし、今日を越えられると思うんですよ。自分の為だけだったら、存在する価値がないですよね。そうしたら別に自分の為に生きたいって全くない。」 『誰かのために、  何かのために、  生きる』   ■ 「ゆるまず、動く」巨大ネジ“学歴ナシ”発明家の挑戦 依頼されたのは直径8cmの巨大ネジの開発。重さ8トンのハンマーで鉄鋼製工業部品を成形する機械に取り付けられている。これまでは、ハンマーが打ち下ろされる反動・衝撃で、ナットが緩み、頻繁にスパナで締め直す必要があった。ただ固定するだけなら、道脇がすでに発明した緩まないネジの技術をそのまま使用すればよい。しかし、この機会は、ハンマーとフレームをつなぎとめるためのネジ。この加工機械を使用するにつれ、ハンマーの外径部分がすり減り、微妙にフレームの位置をナットの締り具合で調整する必要があった。つまり、「緩まないでほしいけど、緩んでほしいネジ」 加工時間は絶対に緩まずに、調整時間にはナットを自由に動かしたいネジ。 その構造はこうだ。従来の緩まないネジを基本に使う。2つのネジの結合部には、ねじ切りでかみ合わせると共に、巨大な輪ゴムを間に挟み、使用中はその反発力でネジが緩まないようにする。調整が必要になったら、2つのネジを歯車の付いた工具で左右に噛みあわせていた部分を分離させ、ゴムを収縮させるとともに、左右2つのネジ(ボルト)が自由に動かせるというもの。 (すみません、完全文系人間が文字だけで構造を説明するのには難がありました) 試作品による調整が続く。緩衝材としてのゴム(途中からシリコン製に替わる)の反発力によるボルト固定性と、歯車を入れた時の収縮性を両立する素材探しに難航する。 ここでゴム素材の反発力に頼る固定法を諦める。2つのネジを供回りで外れない第3のネジで固定する方法で2つ目の試作品を作り調整を始める。しかし、組み合わせる部品が増えたことにより、各部品の外形の微妙な精度のズレで、各部位が動いたり動かなかったり。18時間考え続けても解決の糸口は見つからなかった。 「出てくるまで考え続けるから、答えは必ず出てくると信じていますけどね。もっといい答えってないのか、もっと最適なものはないのか、もっと最高の解はないのか、とさらに、さらに、さらに、突き詰めていくのが重要なんじゃないかと思うんです。自分の役割・存在価値と自分で認識していることを最大限尽くしたい。」 私も考えに考え尽くした先に、新しいアイデアが頭の中に閃くことがしばしばあります。でも、それって、有機生命体としての肉体を苛め抜いた先(徹夜は絶対しませんが、睡眠中以外の時間の98%をその解決課題を考えることに充て、数週間や数か月を過ごすことはざらです)に到達できる答えです。ちなみに、コンサルタントになって今まで徹夜は1度きり。それも、自分の課題解決の為ではありません。コンサルタントは常時、思考を続けないといけないので、寝ること、休息を取ることも仕事の内。常にベストコンディションで考え抜くマシーンとして自分の身体を捉えています。 3度目の正直。道脇はこれまでの路線を全て根底から覆す。緩衝材もボルトも使わず、そもそも2つのナット固定を諦める。従来は2つのナットを離して可動させるための歯車を、逆転の発想で2つのナットを固定する役目に使う。そして必要とする部品点数を減らし、その形状もシンプルに。そうすると、コストパフォーマンスも改善する。 こうした発想の転換を柔軟にできるところが素直にスゴイ! なかなか、自分の従来のアイデアを自分自身で否定することは勇気が必要。それをあっさりやってのける所には、自分のチンケなプライドなど一切なし。人の役に立ちたい、という貢献心が小さなプライドなど脳内にかすめさせもしない。他者貢献という動機(目的)に向かってただひたすらに邁進する。 「そもそも、高い精度に頼らなければならない構造自体を捨てることにした」 あっさり、前の自分を超えられるところに脱帽! さらに、調整作業をする人のことを考え、片手でも簡単に歯車を回せる工具を作り出していた。これが、誰かの為に生きる、自分の存在証明のために考え抜く姿勢の現れ。 また新しい発明品がこの日生まれた。道脇は誰かの為に、何かの為に今日も考え続ける。 プロフェッショナルとは、 己のプロフェッショナリティーに特化していて、かつ、達していること 可能性を広げるためには、まず、己を見つめること。そして、己を取り巻くさまざまに目を向けよ。徹底した内観と外観。その狭間にこそ、自らを最大限に生かす道がある。己を磨け、自他共に認められる域まで。その道は、他のプロフェッショナルをも生かす道に通ず。 ——————  プロフェッショナル 仕事の流儀2016年11月14日の番組ホームページはこちら 株式会社 NejiLawのホームページはこちら →再放送11月21日(月)午後3時10分~午後3時59分 総合現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します