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コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(16)大秘密第一番 - こわれてねえのなら、なおすなよ。

本レビュー
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■ マービンの医学的秘密

このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、著者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、私のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。

G.W.ワインバーグ氏の公式ホームページはこちら(英語)

どんな職業にも秘密にすべきことがあるそうです。そして、私たちは、自分の他の職業の秘密を聞くのが大好きな存在です。ワインバーグ氏のシニカルな義兄、マービン医師によれば、医学の大秘密にこういうものがあるそうです。

すべての病気の90パーセントまでは自然になおる―――医師による手当てなどまったくなしに。

病院に通って、意思に診察を希望する患者にとって、自分の病気を治すために、選ばれた少数者限定で、医学上の大変貴重な知識を用いて、何かありがたい処置をしてもらっている、という納得感を得ないと、多くの医師がハローワークに駆け込まなくてはならないかもしれません。

どっさり薬を処方されて安心する向きもあるかもしれませんね。薬を出さないと藪医者だというレッテル貼もまだまだあるかもしれません。私の実体験では、原因不明の頭痛に悩まされ、どんどん大規模な病院にかかり、ついには、MRIとかCTとかの検査日程を組まれました。当時の上司に検査入院のために有給取得のお伺いに赴き、理由(症状)を説明したところ、耳鼻科へ行くことを勧められ、結果として副鼻腔炎(ふくびくうえん)だったことが判明。抗生物質飲んだらスッキリ。。。

あるいは、近所の歯医者に行って奥歯が痛いと訴えたら、「原因が分からないので、とりあえず詰め物を削って中を見てみます」といわれ、家族おすすめの別の歯科医に見てもらい、レントゲンを撮ってもらって事なきを得たり。。。

病気の90パーセントが自然に治るのは「人体の英知」に他なりません。「英知」と呼ぶと何か神秘的な響きに聞こえるかもしれませんが、これは何千世代にもわたって、何億何十億という個体の破壊検査の最終結果を詩的な表現で言い表したに過ぎないのです。

 

■ 秘密第一番

上記のような医学上の秘密を、経営コンサルタントの分野に当てはめてみるとどうなるでしょうか。それは、コンサルタントが「治療」しようとしている対象(業務の仕組みだった李情報システムだったり)の性質如何によります。

その対象が長期にわたって自らを修復してきたのなら、コンサルタントは「ともかく害を及ぼさないように専念する」ことが肝要です。

多くの人々にとって、経営の何らかの仕組みがうまくいかなくなったら、病気のように誰か直すことができるかと、外からコンサルタントを呼びに行くかもしれません。しかし、困りごとの大半は極めて穏やかな処置によって「癒される」ことが少なくありません。その処置とは、「単に忍耐強く待つ」ということかもしれないのです。

 

■ 工学の第一法則

ワインバーグ氏によって、マービンの大秘密第一番は、コンサルタントにとって次のように改題されます。

みずから治療できるはずのシステムは、穏やかに扱おう。

マービンやワインバーグ氏が言及する秘密第一番は、「工学の第一法則」としても有名です。

こわれてねえのなら、なおすなよ。

どんな経営管理の仕組みでも、情報システムでも、病気でないなら、自らを癒す能力を持っているのです。これは、AIによる自動修復プログラム云々という最近のお話をしているわけではありませんよ。バグを検知し、バグだと認識し、それを正しく修復する。プログラミングの世界において、理屈上はAIにできて人間にできないことは原理的にはありません。物量だったり、スピードだったりの制限はあるにせよ。

工学というのもの、医学というものも含めて、人間が行う所作という意味で、自然科学も極めて人間的に対処する必要があるということです。

下手の考え休むに似たり。

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