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コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(29)金槌の法則 レパートリーが狭すぎると危険です!

本レビュー
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■ どんな専門家にも共通して役立つ道具とは?

このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、著者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、私のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。

G.W.ワインバーグ氏の公式ホームページはこちら(英語)

ワインバーグ氏は優れたコンサルタントであることは既に彼の実績が証明済みです。その彼からでも次のように言われると、その道の専門家との自負があるコンサルタントの面々はご立腹されるでしょうか?

さまざまな専門を持ったコンサルタントに共通に役に立つ一般的な道具がある

ワインバーグ氏は、その道具があれば他に何もいらない、という意味ではなく、レパートリーが狭すぎると危険ですよ、と警告してくれているのです。

金槌の法則

クリスマスプレゼントに金槌をもらった子どもは、何でも叩きたがる。

ただ一つの道具、金槌(かなづち)しか持たない専門家は、ねじ釘の頭まで、その右手に持っている金槌で叩きかねないのです。だって、その人はそれしか道具を持っていないから。

経営コンサルタントをやっていると、クライアントから〇〇の専門家、というレッテルを貼られがちであり、その道の専門家だからこそ、クライアントがわざわざ高額?(もっとも私の手取り以上の金額で)で雇ってくれるようです。問題が発生したとき、その問題を解くことに一番近い所にいる専門家に、その道の専門的なスキルで課題解決をしてもらおうと考えるのが普通なので。

 

■ 専門家には専門家としての期待値があるものだ

私も、経営管理・管理会計という業務領域の専門家であるという周囲の目があります。そして、その領域における問題解決の有効な手段として、BIシステムの導入を提案することを期待されてもいます。

専門家を依頼したクライアントの方が、専門家が持つ専門領域に固執することも多々あります。私に依頼がある場合、大抵は、課題整理、業務分析を経て、課題解決のために新しい経営管理の仕組みを導入することを期待されます。その仕組みは、プロセス変更や新しい業務を始めることもありますが、情報システムの刷新でもあるのです。

そういう期待がある中で、それは人事制度の問題ですね、とか、情報システムをいじる前に、業務整理をきちんとやられては如何でしょうか、等とこちらがいうと、相手が拍子抜けになる顔を見せることも少なくはありません。

私の場合は、課題解決能力の方も、コスト的な負担能力の方も、クライアントが置かれている経営環境を概観してから、最適な方法論を提示することを旨としているので、実は、クライアントが初期状態で私に期待していることとはかけ離れた提案をすることがよくあることを、相手の表情から察することがあります。そして、大抵は受け入れてもらえます。

私自身の専門領域で無ければ、専門家を連れてくるお手伝いをするまでですし、どこまでいっても、顧客目線で課題解決アプローチの選択に誠心誠意、助言することに努めます。けっして、自分が専門家としてできることしか言わないコンサルタントではないと自負しています。(^^)

 

■ よく見えるようにするための道具を発明した話

ワインバーグ氏もIT会社のコンサルタントとして名を馳せました。そこで、彼にコンサルタントを依頼するクライアントは、新しいプログラムを開発することで課題解決することを最初から望まれての仕事の依頼が舞い込むことになります。

ワインバーグ氏の経験したとある依頼のお話。

ソフトウェア会社からの依頼で、製品の品質がダメなので改善してほしいというオーダーが入りました。その会社のマネージャーは「たくさん苦情が来ている」という以外には、定性的にも定量的にもどんな品質問題があるのか特定できていませんでした。ワインバーグ氏は、苦情の手紙(当時はまだ電子メールは普及していないので当然“紙”の手紙です)の山を見て、クレーム整理表を作って、どの製品のどの機能がイケていないか可視化しましょう、と提案します。

すると、クライアントは喜んで、クレーム整理表を作成するプログラムを開発しようと意気込むのです。ワインバーグ氏がその必要はないというと、すでに、クレーム整理表を作成するプログラムをお持ちなのですね、と喜び始める始末。いやいや、そんなことしなくてもと、ワインバーグ氏は、北アメリカ州の地図と、いろんな色のピン、そしてソフトウェア製品一覧表を用意してもらうように依頼します。後はお分かりですね。山のように積まれた手紙を一通ずつ中身を確認し、ソフトウェア製品ごとに色分けされたピンを掲示板に貼られた地図に差していくのです。

これだけで、どんな製品がどこの顧客から品質劣化(低下)に対するクレームを受けているのか、可視化されたのでした。そこでようやく、念願の製品の品質問題に向き合うことができ、特定された一番クレームが多かった製品がどうやって作られたかを調べるという次のステップに入ることができたのでした。

経営コンサルタントでも、それ以外のビジネスパーソンでも、特定の道具を使いすぎると、その場で新しい道具を発明する能力が削がれていく可能性があります。

ワインバーグ氏は、この事例の後、ピンと地図という道具を手に入れたのです。

我々も、ねじ釘を金槌で打つような愚を犯さないように、常に課題解決方法のレパートリーを増やす努力を怠らないようにしたいものです。

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