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コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(48)三の法則 - 思考の手綱をゆるめてみる(その2)

経営コンサルタントのつぶやき_アイキャッチ本レビュー
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批判的精神を養うための5つの知恵

このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、著者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、私のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。

外部リンク G.W.ワインバーグ氏の公式ホームページ(英語)

人はなかなか自説を曲げるのは難しくもあり、自説が本当に確かなのかを日々検証をすることも億劫おっくうになりがちです。ワインバーグ氏は、「思考の手綱をゆるめる」という表現でこの難題について、いくつかの方法論を示してくれています。

さて、思考の手綱をゆるめるために、我々は「三の法則」を用いて、自説が成り立たない条件や弱点を3つ挙げることで、批判的に自説を見る目を養おうとしていました。その批判的精神を涵養かんようするために、次の5つの手段がありました。

  1. 類似性を探す
  2. 極限値に変えてみる
  3. 境界線の外に目を向ける
  4. 説明の顔をしたアリバイに注意する
  5. 情緒的不調和の原因を探る

前回、「三の法則」とともに、「1. 類似性を探す」は説明済みなので、今回は、「2. 極限値に変えてみる」から見ていくことにしましょう。

極限値に変えてみる

この手法は、ソフトウェアのテスト工程でもよく使われます。

例えば、

年商100億円程度の会社の会計システムなのに、一日の売上高として10億円のデータを入力してみる

通常はプラスの値となる売上高の項目に、マイナス値を入力してみる

通常ではありえないデータ入力をすることによって、システムのふるまいを観察し、システムが持つ特定の機能の限界や不具合を浮かび上がらせる手法で、機能の中身が何であるかを問わずに行うテストの総称であるブラックボックステストのひとつとして用いられる手法です。

(ちなみに、数学でいうところの「極限」は、とある数例がとある値に収束するその値を言います。本文では、「極端に外れた値」という意味で使用しています)

これをワインバーグ氏が本書の中で紹介している実際的な例を用いて置き換えると、

・とある変数や前提数が2倍になったらどうなるか?
・とある部品をタダで手に入るとしたら?
・無重力状態で製造できるとしたら?
・石油が明日無くなったら?
・法規制による制限が無くなったら?
・競合他社が画期的な新製品を出したら?

企画者として、こういう一部の前提を外した時の検証対象物のふるまいがどのようになるかを想像豊かに発想することは、それまでの「それらしさ」「当たり前」に隠れていた物事の本質が俄に目の前に突如として立ち現れる可能性があります。

ワインバーグ氏の例によると、労働意欲と中途退職者の関係について検討していた時に、逆転の発想で、「もし、中途退社者が全く発生しなかったら、一体何が起こるのか?」という問いかけをしてみるのです。すると、中途退社者の穴を埋めるために新規に募集をかけた人財がもたらす新しいアイデアが会社の業績を良くするのにとても貢献していた、という盲点が明かになったそうです。

それからは、中途退社者を減らす方策が打たれるときには、新しいアイデアが組織に流れ込むのを阻害しないような措置を合わせて採られるようになったのです。

境界線の外に目を向けてみる

ソフトウェアのテスト工程において、閾値や境界値および、その付近でのテストはテスト品質向上のために、欠かせないものとなっています。

(同値分割・境界値分析、inポイント(内部点)、outポイント(外部点)という言葉でググってみてください)

例えば、利息計算の処理ロジックをテストする場合には、通常想定される1~20%程度の利率だけでなく、0.001%、0%、-0.001%、-1%という値でもテストを実施してみるのです。よくあるのが、ゼロだと値が返ってこないとか、%を足しているだけだったので、マイナス%を入れたおかげで、初歩的な平均%の計算の間違いを発見することができるなど、冷や汗ものの連続になること請け合いです。^^)

あるいは、AシステムからBシステムへインターフェースが構築される場合、Aシステム内、Bシステム内の処理に関するテストの次に、AシステムとBシステムの間のインターフェースがうまく機能するか、念入りにチェックします。

我々は、モノの間、割れ目、つなぎ目、境界線こそ、世の中の道理の例外事項であることを知っています。そして、例外事項には、それこそ例外的で、例外的であるからこそ予測不可能な事態が起こりやすいことも知っています。ですので、境界値チェック、インターフェーステストは念入りに実施される必要があるのです。

また、通常運転時には起こり得ないような、点検中にしか動作しないプログラムを、通常運転時から点検動作へ切り替える際の手続きやシステムのふるまいを徹底的に確認します。ソフトウェアというのは、そのものは大変効率の良い、生産性の高いパフォーマンスを出せるようにアルゴリズムが組まれるのが通常で、エンジニアも、もっと多くの処理を、もっと早い処理を、もっと少ないステップで、もっと小さいコーディングで、を追求しがちです。

その効率性や生産性は、アルゴリズムがきちんと処理パフォーマンスを発揮するための正常稼働状態でしか、期待通りに動かないことを我々は知っています。正常な状態から異常な状態(全然機能しない領域)への遷移がどこで起き、遷移する瞬間に何が起きるのかを知ることはとても重要です。

境界線の外を見る(実例1)

今だからこそ告白できますが、筆者がとある企業買収後の体制整備に従事していた時、正社員の大量採用を任されたことがあります。何度もプロセスを確認し、スタッフと連絡を密にしていたのですが、後からくる応募者の面接をこなしていっている間、先に面接時間を設定していた候補者を約束の時間から1時間以上も放置したまま待たせてしまうという失態をしでかしたことがあります。

いくら入念に準備していても、漏れるものはありますし、忘れる事や、想定外のことまで起こるのが世の常です。ですので、できるだけ、思いつくもの手あたり次第、テストケースを出すことを試みて、時間の許す限り確認した方がよいです。その際には、「洗濯物リスト」を活用するのが賢い選択というものです。そのリストは完璧ではないかもしれません。しかし、ある程度は品質を担保してくれるはずです。何もしないよりか100歩はましです。

ちなみに、その1時間待ちをさせて候補者ですが、そういう人こそ優秀だったというマーフィーの法則的な目に見えない力が働いたのでしょう。その後、バリバリの一線級の人財になってくれました。^^;)

境界線の外を見る(実例2)

よくありがちな、
「以上」「以下」「より上」「より下」「未満」「~を越えて(超えて)」
の不等式の違いの意味を理解しておくなど、日頃から、ものごとの境界線を意識した思考のクセをつけておくことがいいかもしれません。

そして、この「境界線を意識して」は、マネジメントにも有効です。何かを区分・種類分けして、優先順位をつけるのがマネジメントだと言っても過言ではないですから。PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)も、事業セグメントの開示も、まず、事業、ビジネス、サービスライン、顧客、組織体、製商品を何らかの評価軸で分類することから始まるからです。

よく若手コンサルタントに出す例として、「生物」があります。魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類の違いや、植物と動物の違いは小学校で学習します。改めて、5類の違いや動植物の違いを問われて、正しく回答することはできますか?

その領域の専門家の方から見れば、幼稚な言説であることは承知していますが、領域は幅を持っているので、分類は怪しいものだらけです。一般的に(小学校レベルという意味)、哺乳類の特徴は、①恒温動物である、②胎生たいせいである、③乳で子を育てる、④皮膚は毛で覆われている、と言われています。一方で、鳥類の特徴は、①恒温動物である(一緒)、②卵生である(違う)、③乳で子を育てない(違う)、④皮膚は羽毛で覆われている(違う)、と言われています。①は双方に共通しているので、②③④が違うところです。

ですが、カモノハシは、鳥のようなくちばしを持ち、卵を産みます。乳で子を育て、体毛があるので、哺乳類という分類に入っています。

また、光合成をするかしないかという観点で動植物を分けた場合、ミドリムシは、光合成をするし、鞭毛べんもうで活発に移動もしますので、一般的な動植物の区分でいったら、グレーゾーンです。キノコ類は光合成をしませんので、光合成だけで動植物をざっくり二分法することはできないことは明白です。

このように、あるものごとを区分するということは、大変複雑な工程を要し、仮定や例外抜きで説明することは難しい作業です。しかしその一方で、区分しようとする行為そのものが、その対象物の理解を深めてくれます。

MECE:ミッシーはどこまで有効なのか?

よく、コンサルタントが、「MECEミッシー」・「MEECEミース」(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)でものを考えるのだと、ロジカルシンキングを振りかざすのを耳にします。私は、決して自分の現場では「MECE」という言葉を持ち出したりしません。なぜかと申しますと、例えば、男女という性別で顧客をいわゆる「ミッシー」に区分することはできず、「LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)」、場合によっては、「LGBTQIA(LGBT+エスチョニング・インターセックス・アセクシュアル)」を考慮する必要があるからです。

これは重箱の隅をつつくことが本望であるのではなくて、次の考えに基づくものだからです。

  1. 全てロジカルシンキングで物事を分かろうとすること自体、本質を分かっていない
  2. 物事を分けるためには、TPOがある

1.は、ロジックだけに依存せずに、きちんと学問を修めることが重要であるという認識から出た考えです。頭でっかちな机上の空論だけの人ほど、「ミッシー」という言葉を振りかざすように見受けられます。そういう人には、「現実を見なさい」「もっと勉強してください」と言いたくなります。

2.は、「MECEミッシー」も時と場合とで変化する相対的なもので、世の中に絶対的な区分はないとわきまえる謙虚さが必要である、という意味が込められています。例えば、住民票や戸籍の形式的な問題で、男女以外に、「LGBT」とか、「LGBTQIA」とか、細かい議論と定義は必要でしょうか。「男・女・その他(どちらともいえない)」で十分な時は、思い切って「その他」を活用しましょう、TPOを考えて。。。

残念ながら、そろそろこの辺で字数制限のようです。なかなか「⑤ 情緒的不調和の原因を探る」に辿り着きませんね~。^^;)

みなさんからご意見があれば是非伺いたいです。右サイドバーのお問い合わせ欄からメール頂けると幸いです。メールが面倒な方は、記事下のコメント欄(匿名可)からご意見頂けると嬉しいです。^^)

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