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孫子 第8章 九変篇 38 将に五危有り

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ 孫子の兵法(入門)
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■ 複雑にして調和のとれた精神を宿した者のみが生き残るのだ!

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将軍(組織の統率者)には、5つの危険がつきまとうものです。

(1)思慮に欠け決死の勇気だけの者は殺されます
(2)勇気に欠け生き延びることしか頭にない者は捕虜にされてしまいます
(3)怒りっぽく短気な者は侮蔑されて計略に引っかかります
(4)名誉を重んじ清廉潔白な者は侮辱されて罠に陥ります
(5)人情深く兵士(部下)をいたわる者は、兵士(部下)の世話に苦労が絶えなくなります

この5つは将軍の過失であり、軍隊(組織)を運用するうえで災害をもたらす要因になります。軍隊(組織)を滅亡させ、将軍(組織の統率者)を敗死させる原因は、必ずこれら5つの危険のうちのどれかです。十分に注意する必要があります。

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世俗で優秀な人材と言われている人は、数多くの相い矛盾した性質を、一個の人格に同時に兼ね備えているものです。ある仕事をやらせてみると、手早くさばいて、かつ品質も高い。ある判断を任せると、慎重に熟慮した後に、大胆不敵な提案ができるなどなど、、、

性格が一つの方向に大きく片寄ってバランス感覚に欠けるというのは、よくありがちなことで、その分だけリーダーの資質としては劣っていると言わざるを得ないのです。

決死の勇気は、確かにそれ自体は将軍に必須の資質ですが、将来を見通す息の長い思考力が伴わない場合は、むやみに突進を繰り返す、猪突猛進な猪武者にすぎず、むざむざ死に急ぐのと何ら変わりはありません。

あくまで生還を期そうとする粘り強い忍耐力自体は、リーダーとしてぜひとも必要な資質かもしれません。しかし、とある意思決定を迫られたとき、自分の身を守ることのみに執心する場合、単なる臆病者の優柔不断な状態に陥り、ぐずぐず思案しているうちに先手を打たれ、敵に囲まれて捕虜になってしまうでしょう。

闘争心が旺盛で、即断即決であること自体は、リーダーにとって大切な資質であることは間違いありません。しかし、一方で沈着冷静な洞察力が伴っていないと、単なる怒りっぽい短期屋に過ぎません。そうしたリーダーは、怖くて進めなのかなどと敵に侮辱・挑発されると、頭にかっと血が昇り、前後の見境もなく突撃して、まんまと敵の謀略にはまり込むのが落ちです。

人格が高潔で、私利私欲が無いこと自体は、リーダーにとって必要な資質であることは確かです。しかし、自身の名誉を守ろうとする心の動きが強く働き、泥をかぶっても平然としている肝の太い所が無ければ、やたらにプライドだけが高い道徳家に過ぎません。卑怯者とでも罵られれば、そのわずかな侮辱に我慢ならず、多勢に無勢でも反撃に打って出て、討死してしまうでしょう。

部下を大切に扱おうとする慈悲心それ自体は、大勢の命を預かるリーダーとしては、欠くべからざる資質の一つであることは間違いありません。しかしながら、それのみにこだわって、一方に非情な命令をも下すことも厭わない意思の強さも持ち合わせていなければ、単なる人情家で終わってしまうことでしょう。そうしたリーダーは部下を守ろうとするばかり、あれこれ部下の面倒を見て、次から次と身に降りかかる厄介事の処理に明け暮れることになり、心身ともに疲労困憊し、衰弱してしまうでしょう。

これについては、三国志の中で有名な諸葛亮孔明の逸話が有名です。鞭打ち20回以上の刑罰の全てを自分で取り仕切って、現代風に言うと、過労死してしまいます。

歴史上のどんな名将と雖も、矛盾する性格を幾重にも兼ね備える、複雑にして重厚かつ調和のとれた精神が無いと、成功しないのですね。

いやあ、私は、プライドは高いし、自分大好き人間だし、怒りっぽい性格だし、仕事を部下に任せられません。まるで絵に描いたような愚将の典型例です。(^^;)

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