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■ リーダーの組織を読み切る力とは?

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ

軍隊には(好ましくない)6つの状態があります。
(1)潰走する
(2)たるむ
(3)落ち込む
(4)崩れる
(5)乱れる
(6)敗北する

これら6つの状態は、天が下した災厄のせいではなく、全て軍を率いる将軍自身の過失のせいです。

(1)潰走する
軍の態勢の強弱の度合いが互角なのに、十倍も兵力が多い敵を攻撃しては味方が四散してしまう軍隊です。

(2)たるむ
兵士たちの向こう気だけが強く、兵士たちを監督すべき官吏たちが弱腰なのは、規律がだらけている軍隊です。

(3)落ち込む
逆に、監督する官吏の方が強腰で、兵士が弱気なのは士気が落ち込む軍隊です。

(4)崩れる
軍吏の長官が将軍の処置に憤ってその統制に服従せず、敵に遭遇すれば将軍に対する恨みの感情から独断で戦闘し、将軍もまたその事態をどう処理したらよいか見当がつかないのは、組織が崩壊している軍隊です。

(5)乱れる
将軍が弱腰で威厳に欠け、軍隊を教導する方針も明確に伝達されず、軍吏にも兵式にも規律がなく、陣立てもバラバラなのは、統制が混乱している軍隊です。

(6)敗北する
将軍は敵情をはかり考えることもなく、寡兵で敵の大軍と戦を始めてしまったり、自軍が弱い態勢で強力な態勢の敵軍を攻撃してしまったり、自軍に先鋒となるべき精鋭がいないのは、必ず負ける軍隊です。

こういう軍隊(組織)の状態になってしまうと、必ず敗北してしまいます。こういう状態にならないように常に自軍の様子を隅々まで把握するのが将軍の最も重大な任務なのです。

(出典:浅野裕一著『孫子』講談社学術文庫)

—————–
この節では、将軍の統率や指揮に絡む敗北の要因が、6つの類型に区分されて説明されています。孫子はこのような事態に軍隊が陥るのは、天が人間を罰しようとして降した天災ではなく、ひたすら将軍自身が犯した過失(人災)に他ならない、と断言しています。

上記の(2)(3)(4)は、現代組織の運営でも思い当たる節があるというか、組織運営上のそれぞれの立場や人間関係(力関係?)を調整するうえで大きなヒントとなります。

(2)は、現場担当者の意気込みばかりが先行し、中間管理職がおどおどして、管理者の役目をはたしていない組織を意味しています。そういう組織では、現場担当者達は自分らの正当性ばかり主張して、我がまま放題に振る舞うので、組織はまるで無頼の徒の集まりと化してしまいます。孫子では、そういう問題児は処刑して、一罰百戒とすべしと主張していますが、現代組織では、そういう悩みのタネになる問題児は退職させるか閑職に回すかするべきでしょう。

(3)は、現場担当者の士気が最底辺にまで落ち込み、中間管理職がいくら、「やる気を起こせ、だらだらするな」と発破をかけたり、怒鳴ったりしても、無気力な現場には全く効き目がなく、いらだつ管理職が声を大きくすればするほど、空回りしてしまい、ますます現場指揮がスパイラル式に落ち込んでいく職場を指しています。

(4)は、社長からお目付け役が派遣され、事業部長や現場担当者のやることにいろいろと口を出して、前線組織のやる気をそいでしまうパターンです。お目付け役は、社長の意を受けて、君命を受けて現場を叱咤激励に来ているので、自尊心が強く、現場の管理職(事業部長など)の日々の組織運営への対応に不満を抱き、その統制に不服を唱え、その組織内の指揮命令系統に混乱をもたらします。

2000年の時を超えて、ヒトが組織を作って行動する原理は、そうそう変わらないものだと、改めて思うところがあります。

浅野氏が組織を率いるリーダー(将軍)に求める資質は、

「そもそも人に将たる者は、姿を現しただけでその場の雰囲気を制圧し、一言を発しただけで衆人の心を掌握できるような、動物的な強さを秘めていなければならない。いかに知性に溢れ教養豊かな秀才であろうとも、一方にこうした性格的迫力が伴わなければ、とても修羅場で軍を統率できるものではない。」

と説明されています。さらに指揮官の資質として、

「人間的な知性・理性と、動物的な生命力や闘争心とは、乗り物に譬えれば、運転装置と推進力の関係にある。前者が勝って後者が弱ければ、いかに器用な舵さばきを誇ってみても、いたずらに技巧が空回りするだけで、一向に前進できない。逆に後者が勝って前者がおろそかであれば、たしかに猛然と前進はするが、それは衝突必至の暴走となる。叡智と蛮勇とが一個の人間の中にうまく同居したとき、そこに優れた指揮官が誕生する」

とコメントされています。

私は、幼少のころから歴史書を読むのが好きで、いろいろなリーダーの言行を知ることが大好きでしたが、英雄と呼ばれる人は、一人で上記の資質を兼ね備えている人もいれば、自分に欠けているところは、側近や重臣に肩代わりさせている人もいました。

私流に言わせてもらうと、船(組織)が正しい方向(勝利)に進むためには、

①羅針盤
②エンジン

の2つが必要、と考えています。

今から思うと、孫子は2000年前に既にその答えを示してくれていたことになります。その慧眼については、改めてすごいと驚嘆せざるを得ません。(^^)/

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孫子 第10章 地形篇 48 天の災いには非ずして、将の過ちなりhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/ab47f6b60b2243be5165d08fde098dfb-e1428423948658.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/ab47f6b60b2243be5165d08fde098dfb-150x150.jpg小林 友昭孫子の兵法(入門編)兵法,孫子,戦略,掌握,組織■ リーダーの組織を読み切る力とは? 軍隊には(好ましくない)6つの状態があります。 (1)潰走する (2)たるむ (3)落ち込む (4)崩れる (5)乱れる (6)敗北する これら6つの状態は、天が下した災厄のせいではなく、全て軍を率いる将軍自身の過失のせいです。 (1)潰走する 軍の態勢の強弱の度合いが互角なのに、十倍も兵力が多い敵を攻撃しては味方が四散してしまう軍隊です。 (2)たるむ 兵士たちの向こう気だけが強く、兵士たちを監督すべき官吏たちが弱腰なのは、規律がだらけている軍隊です。 (3)落ち込む 逆に、監督する官吏の方が強腰で、兵士が弱気なのは士気が落ち込む軍隊です。 (4)崩れる 軍吏の長官が将軍の処置に憤ってその統制に服従せず、敵に遭遇すれば将軍に対する恨みの感情から独断で戦闘し、将軍もまたその事態をどう処理したらよいか見当がつかないのは、組織が崩壊している軍隊です。 (5)乱れる 将軍が弱腰で威厳に欠け、軍隊を教導する方針も明確に伝達されず、軍吏にも兵式にも規律がなく、陣立てもバラバラなのは、統制が混乱している軍隊です。 (6)敗北する 将軍は敵情をはかり考えることもなく、寡兵で敵の大軍と戦を始めてしまったり、自軍が弱い態勢で強力な態勢の敵軍を攻撃してしまったり、自軍に先鋒となるべき精鋭がいないのは、必ず負ける軍隊です。 こういう軍隊(組織)の状態になってしまうと、必ず敗北してしまいます。こういう状態にならないように常に自軍の様子を隅々まで把握するのが将軍の最も重大な任務なのです。 (出典:浅野裕一著『孫子』講談社学術文庫) ----------------- この節では、将軍の統率や指揮に絡む敗北の要因が、6つの類型に区分されて説明されています。孫子はこのような事態に軍隊が陥るのは、天が人間を罰しようとして降した天災ではなく、ひたすら将軍自身が犯した過失(人災)に他ならない、と断言しています。 上記の(2)(3)(4)は、現代組織の運営でも思い当たる節があるというか、組織運営上のそれぞれの立場や人間関係(力関係?)を調整するうえで大きなヒントとなります。 (2)は、現場担当者の意気込みばかりが先行し、中間管理職がおどおどして、管理者の役目をはたしていない組織を意味しています。そういう組織では、現場担当者達は自分らの正当性ばかり主張して、我がまま放題に振る舞うので、組織はまるで無頼の徒の集まりと化してしまいます。孫子では、そういう問題児は処刑して、一罰百戒とすべしと主張していますが、現代組織では、そういう悩みのタネになる問題児は退職させるか閑職に回すかするべきでしょう。 (3)は、現場担当者の士気が最底辺にまで落ち込み、中間管理職がいくら、「やる気を起こせ、だらだらするな」と発破をかけたり、怒鳴ったりしても、無気力な現場には全く効き目がなく、いらだつ管理職が声を大きくすればするほど、空回りしてしまい、ますます現場指揮がスパイラル式に落ち込んでいく職場を指しています。 (4)は、社長からお目付け役が派遣され、事業部長や現場担当者のやることにいろいろと口を出して、前線組織のやる気をそいでしまうパターンです。お目付け役は、社長の意を受けて、君命を受けて現場を叱咤激励に来ているので、自尊心が強く、現場の管理職(事業部長など)の日々の組織運営への対応に不満を抱き、その統制に不服を唱え、その組織内の指揮命令系統に混乱をもたらします。 2000年の時を超えて、ヒトが組織を作って行動する原理は、そうそう変わらないものだと、改めて思うところがあります。 浅野氏が組織を率いるリーダー(将軍)に求める資質は、 「そもそも人に将たる者は、姿を現しただけでその場の雰囲気を制圧し、一言を発しただけで衆人の心を掌握できるような、動物的な強さを秘めていなければならない。いかに知性に溢れ教養豊かな秀才であろうとも、一方にこうした性格的迫力が伴わなければ、とても修羅場で軍を統率できるものではない。」 と説明されています。さらに指揮官の資質として、 「人間的な知性・理性と、動物的な生命力や闘争心とは、乗り物に譬えれば、運転装置と推進力の関係にある。前者が勝って後者が弱ければ、いかに器用な舵さばきを誇ってみても、いたずらに技巧が空回りするだけで、一向に前進できない。逆に後者が勝って前者がおろそかであれば、たしかに猛然と前進はするが、それは衝突必至の暴走となる。叡智と蛮勇とが一個の人間の中にうまく同居したとき、そこに優れた指揮官が誕生する」 とコメントされています。 私は、幼少のころから歴史書を読むのが好きで、いろいろなリーダーの言行を知ることが大好きでしたが、英雄と呼ばれる人は、一人で上記の資質を兼ね備えている人もいれば、自分に欠けているところは、側近や重臣に肩代わりさせている人もいました。 私流に言わせてもらうと、船(組織)が正しい方向(勝利)に進むためには、 ①羅針盤 ②エンジン の2つが必要、と考えています。 今から思うと、孫子は2000年前に既にその答えを示してくれていたことになります。その慧眼については、改めてすごいと驚嘆せざるを得ません。(^^)/現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します