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■ IoT三国志。日米独の三国鼎立は、合従連衡で均衡が破れてしまうのか?

経営管理会計トピック

工業先進国のトップランナーだった日米欧それぞれで、次世代のIoTを駆使したものづくりのニュースタイルの在り方について健全な競争が行われていると思っていましたが、ここにきて、日本の立ち位置がますます厳しくなってきたようです。

筆者が名づけた「IoT三国志」。
● ドイツ:インダストリー4.0(Industry 4.0)
● 米国:インダストリアル・インターネット(Industrial Internet)
● 日本:インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI:Industrial Valuechain Initiative)

それぞれの違いについては、次の過去投稿をご参考ください。
⇒「文系にも分かる! インダストリー4.0、インダストリアル・インターネット、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブの違い(1)
⇒「文系にも分かる! インダストリー4.0、インダストリアル・インターネット、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブの違い(2)

至極簡単に一言でまとめると、それぞれの違いは次のようになります。

ドイツ:Industry 4.0 → デジタル化されたものづくりの革新活動の総称
米国:Industrial Internet → GE製「Predix」を使った「IoT」サービスの概念
     IIC → 「Predix」を元にしたエコシステムに参加する企業群(コンソーシアム)
日本:IVI → 「Industry 4.0」を標榜した日本企業が参加するコンソーシム

ここで、米独連合の様子を見てみましょう。

2016/3/22付 |日本経済新聞|朝刊 (GLOBAL EYE)産業IoT、独米団体が連携 「囲い込み」より広がり重視

「ドイツの「インダストリー4.0(I4.0)」と米国の「インダストリアル・インターネット」。あらゆるモノがインターネットでつながる「IoT」をそれぞれこう呼ぶ2つの推進団体が手を組むことになった。互いに進める実証事業の情報を交換し、規格の標準化に向けて協力する。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

 

■ IoTにおける米独連合の内容とは? インダストリー4.0がICC参加企業と手を組む真意とは?

引き続き同記事より。

「「我々はIICに“お客様”として入ったつもりはない。橋渡ししてこそ意味がある」。独ボッシュのフォルクマル・デナー社長は9日、日本経済新聞の質問にこう答えたうえで付言した。「1年前は独米は競合ともみられたが、結びついた方がメリットが大きい」

(下記は、同記事添付の握手するプラットフォームI4.0のバンティーン事務局長(右)とIICのソレイ会長の様子を伝えた写真を転載)

20160322_握手するプラットフォームI4.0のバンティーン事務局長(右)とIICのソレイ会長(ベルリン)_日本経済新聞朝刊

「IICとは米国の推進団体「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム」の略。ゼネラル・エレクトリック(GE)など米5社で設立したが、今では欧州、日本、インドなどの企業・大学・団体なども加わり約250の企業などが参加する大組織になった。
 ボッシュは2015年にIICに加盟し、独SAPとともに今回の仲介役となった。ボッシュは自動車、家電などの小型センサーの最大手でIoTを商機とみる。加盟後まもなく米シスコシステムズなどとの実証実験に着手。自社の電動工具や作業員のユニホームにセンサーをつけ、工具の稼働状況、作業の進捗を世界で把握するシステムを構築しようとしている。」

これに対する日本企業の感想は、

「理念、誇りは置いて、できることから始める――。プラグマティックな米国流なのだろう。「とにかくスピード感が違う」。IICに加盟する富士通の幹部は舌を巻く。」

そもそも、ドイツの「インダストリー4.0」は、ものづくり中小企業の競争力強化の一手段として、ドイツの産業力強化を目標に掲げてスタートしました。

「興味深いのは、政府が全面支援してきたドイツ側の変化だ。11年に「革命」と銘打ったI4.0の設計図を打ち出し、中小企業も巻き込み製造業大国の威信をかける。だが、政治の関与が強すぎて意思決定が遅れる懸念もあった。
 今回、ドイツ側が国の威信より「仲間づくり」を優先した面がにじむ。プラットフォームI4.0のヘニング・バンティーン事務局長に聞くと、「IoTでは企業の活動は常に変化しており、柔軟性が必要だ。IICと補完でき、独政府も賛同している」という。」

どうせつなげて競争力強化するなら、GE主導のIIC参加企業とも繋がろう。さすれば、もっと工場のスマート化は促進できる、と踏んだのでしょう。ものづくり工場のスマート化と、顧客にリリースした後の産業機器のスマート化で、独米は、IoTを生かす土俵を微妙に棲み分けてきたのですが、工場のラインにおけるスマート化は、IIC(特にGE)参加企業の産業機器も動員して推進力を強化する策に打って出ました。

「独米両団体が手を握る標準化は機器の量産などでIoT普及に追い風だが、標準化で「果実」を得るのは欧米の得意技。在欧の日本政府関係者から警戒感も出ている。
 もっともバンティーン氏は柔軟で「日本も加わってほしい」と秋波を送る。2月に訪日し、日本政府主導のロボット革命の構想について「とても興味深かった」と語る。
 日独同業同士の統合を決めたDMG森精機の森雅彦社長は「日本は独米双方に乗りますよ、というくらいの柔軟性があっていい」と語る。独企業を買収した日本企業からは「市場や技術を取り込むだけでなく、設計重視の思想、デジタル化などI4.0の背景も探りたい」という声も聞く。」

デファクトスタンダードを構築し、そのエコシステムの中で有利なビジネスを展開する。「IBM PC/AT互換機」登場以降の、マイクロソフト、インテルの「ウィンテル連合」が世界を制した以後のエレクトロニクス/IT業界の勝ちパターンのお約束のひとつです。

「IoTの場合は「系列」「囲い込み」より、顧客や協力企業など「生態系」の広がりや多様性が重要になる。その中で守るべき自社の資産は守るしたたかさも求められる。日本から独米への橋渡し役を買って出る企業が出てきたら面白い。」

と、このように新聞記事は締められていますが、日本の実態はどうなのでしょうか?

 

■ 独自路線を突き進む!? 日本のIVIの動向も見てみよう!

2016/3/12付 |日本経済新聞|夕刊 IoTで中小変革 政府「実証工場」10カ所に 技術開発を後押し

「政府は、インターネットで様々なモノをつなぐIoT(インターネット・オブ・シングス)技術の活用を地方の中小企業に広げる取り組みを加速する。自社の製品や機材を持ち込んでIoTの実証実験ができる「スマート工場」を2016年度中に全国で10カ所程度設置する。欧米ではIoTで様々な企業を結び、製造業全体の生産性や受注力の向上につなげる改革が進んでいる。地方の企業にも最先端技術を試す機会を提供し、日本のものづくりの変革を促す。」

日本政府は次のような、あくまでものづくり中小企業をバリューチェーンでひとつに結びつけて、米独の製造業に対抗しようとする産業政策を推進しています。

(下記は、同記事添付の中小企業をつないで強化するイメージ図を転載)

20160312_IoTの活用で技術力ある中小企業の連携が可能に_日本経済新聞夕刊

「6月にまとめる新成長戦略にIoT活用法の詳細を盛り込む。IoTは欧米で先行。特にドイツでは国家戦略として「インダストリー4.0」とする製造業改革を進めている。IoT導入が遅れれば日本の技術力が高くても国際競争から脱落しかねないと判断。地方も含めた導入支援を急ぐ。」

技術力が高くても、スマート化に立ち遅れるから競争に負ける。だからスマート化でも対抗するのだ。と思っていたら、ますますグローバル競争に立ち遅れてしまうような気がします。その話題にしている技術力というのは、何を想定していっているのでしょう? 新機能の素材を作り出すことか、精密な加工技術のことか、、、それぞれの企業の得意技をさらに伸ばして、他の領域への投資は控えて得意分野に金と時間と人材を集中させる。それをかのうにするための、スマート化。それぐらいだと、すでに、思想の段階で負けています。

「IoTを活用したスマート工場は、製品や機器に取り付けたセンサーでデータを収集。受注から設計、調達、製造、物流などあらゆる過程をデータ分析に基づいて一元管理する。無駄なく速く製品をつくることが可能となる。顧客の細かいニーズに即座に応える少量多品種生産も容易になる。」

スマート化が最も力を発揮するのは、「マスカスタマイゼーション」的なものづくりの場合です。「マスカスタマイゼーション」とは、「マーケティング、製造業、コールセンター、経営戦略論における用語で、コンピュータを利用した柔軟な製造システムで特注品を製造することを指す。低コストの大量生産プロセスと柔軟なパーソナライゼーションを組み合わせたシステム」(WiKiより)によるものづくりを意味します。大量生産=「マスプロダクション」の生産性・低コストと、特注品対応=「カスタマイゼーション」の二兎を追う作戦のことを言います。

「政府は16年度中に中小企業向けに、最先端のセンサーやデータ解析設備を備えた実証実験設備を全国約10カ所に設置する。切削や研磨、塗装など特定の技術に優れた複数の中小企業をIoTでつなぐ事業などを想定。サプライチェーン全体で受注力の向上につなげる。
 たとえば、複数工程を持つ部品が必要な企業は、これまで新規発注や仕様の変更があるたびに各工程のメーカーに連絡する必要があった。IoTでつながる企業群なら一括で注文できる。各企業間の物流や素材調達、生産量の調整も一元で管理されるため、全体で納期や製造コストを改善することが可能となる。」

このように、中小企業の得意技を持ち寄って、最高品質のものを作る、在庫の無駄を省いて低コストを実現する、という耳に心地よいフレーズではありますが、どこで、「マスカスタマイゼーション」的な命を吹き込むのでしょうか。単なる中小企業の互助会を、ITを使って実現する、程度の考えでは、今回も米独連合にしてやられるでしょう。

 

■ 産業育成で救われる企業、ダメになる競争力

「スマート工場はコマツなど大企業を中心に実現への取り組みが進んでいるが、中小企業にはハードルが高いと受け止められている。地方の中小企業でもアイデアを試せる環境を提供し、IoTを前提とした製品や事業の開発が進むよう後押しする。
 地域ごとに産官学の枠組みも整備する。政府は昨年10月、企業や大学などを交えてIoT関連の新ビジネスを支援する「IoT推進ラボ」を設置した。この地方版を設置するよう自治体に促す。地域企業がIoT活用のヒントを得たり、ビジネスマッチングにつなげたりする効果を狙う。
 観光やヘルスケアなどサービス業での活用も支援する考え。サービス産業に特化したIoTの相談窓口が少ないため、全国の自治体に専門部署を設けるよう呼びかける。」

経済産業省が、国を挙げての産業育成プランをぶち上げて、護送船団方式宜しく、日本企業(一応、資本と雇用が日本人由来という意味)の競争力を高めていこう、というのは、キャッチアップ型の産業競争戦略としては有効でした。明治維新時の殖産興業しかり、戦後の高度経済成長しかり。現代は、デファクトスタンダードを作ったもん勝ちの競争環境です。

さらに、ものづくりの態様が、「マスカスタマイゼーション」に移っていきます。極端に言えば、「メイカーズ」よろしく、「プロシューマー(Prosumer):生産者(プロデューサー)と消費者(コンシューマー)を合成した造語)」が、自分が欲しいと思う物を自ら発案して商品化したり、メーカーに働きかけていく、進んだ賢い消費者主導のものづくりの世の中になります。そのための資金集めだって、「クラウドファンディング」を活用して、プロシューマーが自弁してしまい、もはや大規模資本による大工場が、生産の主役ではなくなる日も近いでしょう。そんなご時世に、中小企業の育成・保護的な視点による施策が有効であるとは到底思えません。

ドイツとアメリカは、スマート化による「デファクトスタンダード」で、新興国から今一度、製造業の覇権を奪い取ることを考えています。さらにその先には、

・生産スタイル:「マスカスタマイゼーション」
・需要創出:「プロシューマー」
・資金調達:「クラウドファンディング」

が主流になる世界が待っています。筆者もひとり、千里眼をうそぶいて、経済産業省をここでこき下ろしても仕方がないのですが、製造業に深くかかわるコンサルタントとして、読者の方々の製造業の行く末を考えるヒントをひとつでも提供できればと思い、本稿を書かせて頂きました。

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IoT三国志 インダストリー4.0とインダストリアル・インターネットの同盟締結で、日本のインダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブは栄光ある孤立!?http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭テクノロジーIOT,GE,インダストリー4.0,インダストリアル・インターネット,クラウドファンディング,インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ,ボッシュ,マスカスタマイゼーション,Industry 4.0,Industrial Internet,IIC,IVI,デファクトスタンダード,スマート工場,プロシューマー■ IoT三国志。日米独の三国鼎立は、合従連衡で均衡が破れてしまうのか? 工業先進国のトップランナーだった日米欧それぞれで、次世代のIoTを駆使したものづくりのニュースタイルの在り方について健全な競争が行われていると思っていましたが、ここにきて、日本の立ち位置がますます厳しくなってきたようです。 筆者が名づけた「IoT三国志」。 ● ドイツ:インダストリー4.0(Industry 4.0) ● 米国:インダストリアル・インターネット(Industrial Internet) ● 日本:インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI:Industrial Valuechain Initiative) それぞれの違いについては、次の過去投稿をご参考ください。 ⇒「文系にも分かる! インダストリー4.0、インダストリアル・インターネット、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブの違い(1)」 ⇒「文系にも分かる! インダストリー4.0、インダストリアル・インターネット、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブの違い(2)」 至極簡単に一言でまとめると、それぞれの違いは次のようになります。 ドイツ:Industry 4.0 → デジタル化されたものづくりの革新活動の総称 米国:Industrial Internet → GE製「Predix」を使った「IoT」サービスの概念      IIC → 「Predix」を元にしたエコシステムに参加する企業群(コンソーシアム) 日本:IVI → 「Industry 4.0」を標榜した日本企業が参加するコンソーシム ここで、米独連合の様子を見てみましょう。 2016/3/22付 |日本経済新聞|朝刊 (GLOBAL EYE)産業IoT、独米団体が連携 「囲い込み」より広がり重視 「ドイツの「インダストリー4.0(I4.0)」と米国の「インダストリアル・インターネット」。あらゆるモノがインターネットでつながる「IoT」をそれぞれこう呼ぶ2つの推進団体が手を組むことになった。互いに進める実証事業の情報を交換し、規格の標準化に向けて協力する。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます   ■ IoTにおける米独連合の内容とは? インダストリー4.0がICC参加企業と手を組む真意とは? 引き続き同記事より。 「「我々はIICに“お客様”として入ったつもりはない。橋渡ししてこそ意味がある」。独ボッシュのフォルクマル・デナー社長は9日、日本経済新聞の質問にこう答えたうえで付言した。「1年前は独米は競合ともみられたが、結びついた方がメリットが大きい」 (下記は、同記事添付の握手するプラットフォームI4.0のバンティーン事務局長(右)とIICのソレイ会長の様子を伝えた写真を転載) 「IICとは米国の推進団体「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム」の略。ゼネラル・エレクトリック(GE)など米5社で設立したが、今では欧州、日本、インドなどの企業・大学・団体なども加わり約250の企業などが参加する大組織になった。  ボッシュは2015年にIICに加盟し、独SAPとともに今回の仲介役となった。ボッシュは自動車、家電などの小型センサーの最大手でIoTを商機とみる。加盟後まもなく米シスコシステムズなどとの実証実験に着手。自社の電動工具や作業員のユニホームにセンサーをつけ、工具の稼働状況、作業の進捗を世界で把握するシステムを構築しようとしている。」 これに対する日本企業の感想は、 「理念、誇りは置いて、できることから始める――。プラグマティックな米国流なのだろう。「とにかくスピード感が違う」。IICに加盟する富士通の幹部は舌を巻く。」 そもそも、ドイツの「インダストリー4.0」は、ものづくり中小企業の競争力強化の一手段として、ドイツの産業力強化を目標に掲げてスタートしました。 「興味深いのは、政府が全面支援してきたドイツ側の変化だ。11年に「革命」と銘打ったI4.0の設計図を打ち出し、中小企業も巻き込み製造業大国の威信をかける。だが、政治の関与が強すぎて意思決定が遅れる懸念もあった。  今回、ドイツ側が国の威信より「仲間づくり」を優先した面がにじむ。プラットフォームI4.0のヘニング・バンティーン事務局長に聞くと、「IoTでは企業の活動は常に変化しており、柔軟性が必要だ。IICと補完でき、独政府も賛同している」という。」 どうせつなげて競争力強化するなら、GE主導のIIC参加企業とも繋がろう。さすれば、もっと工場のスマート化は促進できる、と踏んだのでしょう。ものづくり工場のスマート化と、顧客にリリースした後の産業機器のスマート化で、独米は、IoTを生かす土俵を微妙に棲み分けてきたのですが、工場のラインにおけるスマート化は、IIC(特にGE)参加企業の産業機器も動員して推進力を強化する策に打って出ました。 「独米両団体が手を握る標準化は機器の量産などでIoT普及に追い風だが、標準化で「果実」を得るのは欧米の得意技。在欧の日本政府関係者から警戒感も出ている。  もっともバンティーン氏は柔軟で「日本も加わってほしい」と秋波を送る。2月に訪日し、日本政府主導のロボット革命の構想について「とても興味深かった」と語る。  日独同業同士の統合を決めたDMG森精機の森雅彦社長は「日本は独米双方に乗りますよ、というくらいの柔軟性があっていい」と語る。独企業を買収した日本企業からは「市場や技術を取り込むだけでなく、設計重視の思想、デジタル化などI4.0の背景も探りたい」という声も聞く。」 デファクトスタンダードを構築し、そのエコシステムの中で有利なビジネスを展開する。「IBM PC/AT互換機」登場以降の、マイクロソフト、インテルの「ウィンテル連合」が世界を制した以後のエレクトロニクス/IT業界の勝ちパターンのお約束のひとつです。 「IoTの場合は「系列」「囲い込み」より、顧客や協力企業など「生態系」の広がりや多様性が重要になる。その中で守るべき自社の資産は守るしたたかさも求められる。日本から独米への橋渡し役を買って出る企業が出てきたら面白い。」 と、このように新聞記事は締められていますが、日本の実態はどうなのでしょうか?   ■ 独自路線を突き進む!? 日本のIVIの動向も見てみよう! 2016/3/12付 |日本経済新聞|夕刊 IoTで中小変革 政府「実証工場」10カ所に 技術開発を後押し 「政府は、インターネットで様々なモノをつなぐIoT(インターネット・オブ・シングス)技術の活用を地方の中小企業に広げる取り組みを加速する。自社の製品や機材を持ち込んでIoTの実証実験ができる「スマート工場」を2016年度中に全国で10カ所程度設置する。欧米ではIoTで様々な企業を結び、製造業全体の生産性や受注力の向上につなげる改革が進んでいる。地方の企業にも最先端技術を試す機会を提供し、日本のものづくりの変革を促す。」 日本政府は次のような、あくまでものづくり中小企業をバリューチェーンでひとつに結びつけて、米独の製造業に対抗しようとする産業政策を推進しています。 (下記は、同記事添付の中小企業をつないで強化するイメージ図を転載) 「6月にまとめる新成長戦略にIoT活用法の詳細を盛り込む。IoTは欧米で先行。特にドイツでは国家戦略として「インダストリー4.0」とする製造業改革を進めている。IoT導入が遅れれば日本の技術力が高くても国際競争から脱落しかねないと判断。地方も含めた導入支援を急ぐ。」 技術力が高くても、スマート化に立ち遅れるから競争に負ける。だからスマート化でも対抗するのだ。と思っていたら、ますますグローバル競争に立ち遅れてしまうような気がします。その話題にしている技術力というのは、何を想定していっているのでしょう? 新機能の素材を作り出すことか、精密な加工技術のことか、、、それぞれの企業の得意技をさらに伸ばして、他の領域への投資は控えて得意分野に金と時間と人材を集中させる。それをかのうにするための、スマート化。それぐらいだと、すでに、思想の段階で負けています。 「IoTを活用したスマート工場は、製品や機器に取り付けたセンサーでデータを収集。受注から設計、調達、製造、物流などあらゆる過程をデータ分析に基づいて一元管理する。無駄なく速く製品をつくることが可能となる。顧客の細かいニーズに即座に応える少量多品種生産も容易になる。」 スマート化が最も力を発揮するのは、「マスカスタマイゼーション」的なものづくりの場合です。「マスカスタマイゼーション」とは、「マーケティング、製造業、コールセンター、経営戦略論における用語で、コンピュータを利用した柔軟な製造システムで特注品を製造することを指す。低コストの大量生産プロセスと柔軟なパーソナライゼーションを組み合わせたシステム」(WiKiより)によるものづくりを意味します。大量生産=「マスプロダクション」の生産性・低コストと、特注品対応=「カスタマイゼーション」の二兎を追う作戦のことを言います。 「政府は16年度中に中小企業向けに、最先端のセンサーやデータ解析設備を備えた実証実験設備を全国約10カ所に設置する。切削や研磨、塗装など特定の技術に優れた複数の中小企業をIoTでつなぐ事業などを想定。サプライチェーン全体で受注力の向上につなげる。  たとえば、複数工程を持つ部品が必要な企業は、これまで新規発注や仕様の変更があるたびに各工程のメーカーに連絡する必要があった。IoTでつながる企業群なら一括で注文できる。各企業間の物流や素材調達、生産量の調整も一元で管理されるため、全体で納期や製造コストを改善することが可能となる。」 このように、中小企業の得意技を持ち寄って、最高品質のものを作る、在庫の無駄を省いて低コストを実現する、という耳に心地よいフレーズではありますが、どこで、「マスカスタマイゼーション」的な命を吹き込むのでしょうか。単なる中小企業の互助会を、ITを使って実現する、程度の考えでは、今回も米独連合にしてやられるでしょう。   ■ 産業育成で救われる企業、ダメになる競争力 「スマート工場はコマツなど大企業を中心に実現への取り組みが進んでいるが、中小企業にはハードルが高いと受け止められている。地方の中小企業でもアイデアを試せる環境を提供し、IoTを前提とした製品や事業の開発が進むよう後押しする。  地域ごとに産官学の枠組みも整備する。政府は昨年10月、企業や大学などを交えてIoT関連の新ビジネスを支援する「IoT推進ラボ」を設置した。この地方版を設置するよう自治体に促す。地域企業がIoT活用のヒントを得たり、ビジネスマッチングにつなげたりする効果を狙う。  観光やヘルスケアなどサービス業での活用も支援する考え。サービス産業に特化したIoTの相談窓口が少ないため、全国の自治体に専門部署を設けるよう呼びかける。」 経済産業省が、国を挙げての産業育成プランをぶち上げて、護送船団方式宜しく、日本企業(一応、資本と雇用が日本人由来という意味)の競争力を高めていこう、というのは、キャッチアップ型の産業競争戦略としては有効でした。明治維新時の殖産興業しかり、戦後の高度経済成長しかり。現代は、デファクトスタンダードを作ったもん勝ちの競争環境です。 さらに、ものづくりの態様が、「マスカスタマイゼーション」に移っていきます。極端に言えば、「メイカーズ」よろしく、「プロシューマー(Prosumer):生産者(プロデューサー)と消費者(コンシューマー)を合成した造語)」が、自分が欲しいと思う物を自ら発案して商品化したり、メーカーに働きかけていく、進んだ賢い消費者主導のものづくりの世の中になります。そのための資金集めだって、「クラウドファンディング」を活用して、プロシューマーが自弁してしまい、もはや大規模資本による大工場が、生産の主役ではなくなる日も近いでしょう。そんなご時世に、中小企業の育成・保護的な視点による施策が有効であるとは到底思えません。 ドイツとアメリカは、スマート化による「デファクトスタンダード」で、新興国から今一度、製造業の覇権を奪い取ることを考えています。さらにその先には、 ・生産スタイル:「マスカスタマイゼーション」 ・需要創出:「プロシューマー」 ・資金調達:「クラウドファンディング」 が主流になる世界が待っています。筆者もひとり、千里眼をうそぶいて、経済産業省をここでこき下ろしても仕方がないのですが、製造業に深くかかわるコンサルタントとして、読者の方々の製造業の行く末を考えるヒントをひとつでも提供できればと思い、本稿を書かせて頂きました。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します