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■ 電子マネーやポイントと同列 銀行や証券会社では使えない

経営管理会計トピック

ビットコインに代表される仮想通貨が、「通貨」認定を閣議で受けて、「資金決済法」の改正により、取引手段として法的保護を受けられるようになる、という報道で盛り上がりました。筆者も、2日続けて、閣議決定までの一連の流れについて新聞記事を中心に追っていきましたが、なぜ「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(我々が貨幣法と認識しているもの)」の改正でなくて、「資金決済法」なのか、そして本当に法的に仮想通貨が通貨認定を受けるのかについてのもやもやが残っていました。

今回は、そのもやもやを晴らす専門家のコメントを紹介します。

その前に、一連の閣議決定までの流れは次の投稿でご確認ください。
⇒「ビットコインなど仮想通貨が「通貨」として閣議決定されるまで -日経新聞まとめ(前編)
⇒「ビットコインなど仮想通貨が「通貨」として閣議決定されるまで -日経新聞まとめ(後編)

2016/3/7付 |日本経済新聞|電子版 仮想通貨は本物の貨幣になるか 増島弁護士に聞く

「ビットコインなど仮想通貨への規制を盛り込んだ「資金決済法」の改正案を、政府は4日に閣議決定、今通常国会での成立を目指す。仮想通貨は「通貨には該当しない」としていた見解を転換し、「買い物に使える決済手段の一つ」として認める。仮想通貨は「貨幣」になり、生活を変える存在になるのだろうか。フィンテック業界の有志でつくる金融革新同友会「FINOVATORS(フィノベーターズ)」の代表を務める増島雅和弁護士に、法改正のポイントと狙いを分析してもらった。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

(下記は同記事添付の増島雅和(ますじま・まさかず)氏の写真を転載)

20160307_増島雅和_日本経済新聞朝刊

まず、何をおいても聞きたいのは、「仮想通貨って本当に通貨になるんですか?」

増島氏の回答は簡明。

● 改正資金決済法では、仮想通貨を『貨幣』と明記しているわけではなく、『財産的価値』としか示していない。これは、同じように財産的価値にあたるJR東日本の『Suica(スイカ)』などの電子マネーや(楽天スーパーポイントなど買い物をしたときにもらえる)ポイントと同列の扱い

つまり、仮想通貨は、「決済」には使えるが、法的に「貨幣」そのものになるわけではない、ということです。まあ、一般消費者として、使う分には大差ありませんが、企業側や税務当局側には、決定的にこの違いが効いてきます。それは次章で。

 

■ 法的に「貨幣」ではないため、銀行に預けて利子を得ることはできません!

日本政府のこれまでの見解は、「仮想通貨を銀行や証券会社が売買の仲介など本業で取り扱うことを禁止し、取引に伴う売買益は課税対象になる」。しかし、「資金決済法」の改正だけでは、銀行に預けて利子を受け取るようなことにはなりません。

(増島氏)
「「2014年に大久保勉参院議員が銀行の取り扱いについて質問し、政府は『銀行などは仮想通貨を扱えない』などと答えた。今年2月にも大久保議員が同様に質問をしたところ、答えは変わらなかった。銀行は、取り扱うことができる業務範囲が銀行法により定まっていて、それ以外の業務を行うことができない。仮想通貨は貨幣になるわけではないので、今後も引き続き、銀行は仮想通貨を取り扱いできない。つまり仮想通貨の売買の仲介や仮想通貨と本来の通貨との交換、仮想通貨を預る口座の開設などができない」

預金に対する利子は、消費税法的には、「非課税」扱い。誰ですか、利子に税金がかかっているじゃないかとおっしゃる方は。あれは「源泉分離課税」として、税率は一律20%(国税15%+地方税5%)、ただし、2013年1月から2037年12月末までの25年間は、東日本大震災からの復興のために、復興特別所得税が上乗せ(税率は、所得税率×2.1%。預金利子の所得税率は15%ですから、15%×2.1%=0.315%)されているのです。ですから、モノの転売で得た所得と違って、利子所得には消費税はかかりませんが、税金はしっかり天引きで引かれています。

さすれば、欧州のように、ビットコインは付加価値税(VAT)の適用除外とするなど非課税扱いが主流のため、日本だけが主要7カ国(G7)で課税しているこの状態は解消するのか?

(増島氏)
「税金は税の問題なので資金決済法とは関係なく、改正案が通ることで税の問題が自動的に解決するわけではない。結局、消費税法などを改正しない限りはこれまでと同じ取り扱いなので、しばらく仮想通貨の取引には課税されるだろう」

うーん、残念!

 

■ では、今回の金融庁の法改正の狙いは? -テロ資金対策や資金洗浄の防止

ズバリ、金融庁の今回の法改正の動きの真意は?

1.マネロン対策
「一言で言えばテロ資金への供与やマネーロンダリング(資金洗浄)の防止だ。仮想通貨は銀行などの金融機関を通さずに使えるため、これまで資金洗浄の観点からリスクがあるとみられてきた。各国の対策を評価する国際組織『金融活動作業部会(FATF)』は15年6月、仮想通貨を介した金融犯罪を防ぐために、各国に法制化を促す勧告を出した」

2.消費者保護
「もう一つは消費者保護。日本では14年に世界最大のビットコイン取引所だった『マウントゴックス』が破綻して利用者が泣いたという過去がある。こういうことを二度と起こさないためにも消費者保護の観点上必要だった」

増島氏によると、シニカルな見解が付け加えられています。

「今回の法案提出はフィンテックを推進するために『仮想通貨はこれから大事だ』という話が後講釈的に付けられている。これは役所の論理ではなく、どちらかと言えば政治家の論理だろう。これで5月のG7首脳会議(伊勢志摩サミット)で『我が国はテロ対策もフィンテックもしっかりできている』といえるのだから」

ここでも出ました、「フィンテック」!

 

■ 登録制でビジネスは安定 消費者の利益になるかは議論の余地

仮想通貨の取引所が登録制になることにより、何かメリットが新たに生じることはないのか?そして、こうした法規制は本当に消費者のメリットになるのか、増島氏に聞いてみたところ、回答は、、、

1.ビットコインの交換業者や愛好家はメリットを感じられるか?
「いま仮想通貨をやっている人は居心地が悪いだろう。ルールがよくわからないから『何ならしてよくて何はしてはいけないのか』がはっきりしていないからだ。可能性としては全面禁止もありえたわけだが、今回規制が入ることで、ルールの範囲内ならやっていいというオーソライズがなされた。交換業を手掛ける人にとっては登録さえすればお墨付きがもらえることになり、より安定的にビジネスできるようになるだろう」

例えば、レバレッジを効かせたデリバティブ商品にしたら、どうなるのだろう??? 本当の着地点はまだ世の中には知らしめられてはいませんね。

2.本当に、フィンテックの後押しになるか?
「法規制はないよりあったほうが絶対によい。ないと事業者はやりたい放題になり、悪貨が良貨を駆逐するように品質の担保ができなくなる。その観点から法規制は必要。我々もルール作りを推進してきたので、それに応えたことを評価している」

フィンテックには一定のプラス効果があるとのこと。無いよりマシ、だそうです。

3.消費者の需要を満たす新サービスは生まれそうか?
デリバティブ取引と、ビットコイン建てのネット通販などを例に挙げられています。

「特に増えそうなのがビットコインを使ったデリバティブ取引だ。通貨の売買で差益を得る外国為替証拠金(FX)取引のように、通貨とビットコインを売買するもので、FX取引を手掛ける業者が二匹目のどじょうを狙おうと関心を示している。FXが登場した直後は法規制がなかったことで、想定以上の損失を抱える個人が相次ぐなどして社会問題化した。こうした苦い経験を一通りした業者が今度は『しっかりやろう』としたら、利用者の利便性にかなった取引サービスができるだろう」

まあ、賭博罪に問われないよう、FXと同様の法改正がさらに必要なようですが。

「例えばビットコイン建てで支払えるネット通販などが今後出てきそうだ。ただ、ビットコインが消費者にとって本当に利益をもたらすものなのかは議論の余地がある。確かに国際送金する場合は、銀行のように多額の手数料がかからないという利点があるが、日本国内で生活するには特に必要と感じる人は少ないだろう。今回の法規制を受け、仮想通貨でどんなサービスを提供できるのか、需要を喚起できるかが注目される」

残念ながら、国内で消費をする人にとっては、クレジットカードやナナコやポンタの類の各種ポイント制度による「疑似通貨的なポイント」と同格ぐらいのメリットしかないようです。

ちょっとは、仮想通貨の法的な位置づけに関するもやもやが晴れたでしょうか?
ご参考にしてください。(^^;)


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仮想通貨は本物の貨幣になるか 増島弁護士に聞くhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭テクノロジーフィンテック,ビットコイン,仮想通貨,閣議決定,マネーロンダリング,マウントゴックス,資金決済法,非課税,不課税,FINOVATORS,フィノベーターズ,電子マネー■ 電子マネーやポイントと同列 銀行や証券会社では使えない ビットコインに代表される仮想通貨が、「通貨」認定を閣議で受けて、「資金決済法」の改正により、取引手段として法的保護を受けられるようになる、という報道で盛り上がりました。筆者も、2日続けて、閣議決定までの一連の流れについて新聞記事を中心に追っていきましたが、なぜ「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(我々が貨幣法と認識しているもの)」の改正でなくて、「資金決済法」なのか、そして本当に法的に仮想通貨が通貨認定を受けるのかについてのもやもやが残っていました。 今回は、そのもやもやを晴らす専門家のコメントを紹介します。 その前に、一連の閣議決定までの流れは次の投稿でご確認ください。 ⇒「ビットコインなど仮想通貨が「通貨」として閣議決定されるまで -日経新聞まとめ(前編)」 ⇒「ビットコインなど仮想通貨が「通貨」として閣議決定されるまで -日経新聞まとめ(後編)」 2016/3/7付 |日本経済新聞|電子版 仮想通貨は本物の貨幣になるか 増島弁護士に聞く 「ビットコインなど仮想通貨への規制を盛り込んだ「資金決済法」の改正案を、政府は4日に閣議決定、今通常国会での成立を目指す。仮想通貨は「通貨には該当しない」としていた見解を転換し、「買い物に使える決済手段の一つ」として認める。仮想通貨は「貨幣」になり、生活を変える存在になるのだろうか。フィンテック業界の有志でつくる金融革新同友会「FINOVATORS(フィノベーターズ)」の代表を務める増島雅和弁護士に、法改正のポイントと狙いを分析してもらった。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます (下記は同記事添付の増島雅和(ますじま・まさかず)氏の写真を転載) まず、何をおいても聞きたいのは、「仮想通貨って本当に通貨になるんですか?」 増島氏の回答は簡明。 ● 改正資金決済法では、仮想通貨を『貨幣』と明記しているわけではなく、『財産的価値』としか示していない。これは、同じように財産的価値にあたるJR東日本の『Suica(スイカ)』などの電子マネーや(楽天スーパーポイントなど買い物をしたときにもらえる)ポイントと同列の扱い つまり、仮想通貨は、「決済」には使えるが、法的に「貨幣」そのものになるわけではない、ということです。まあ、一般消費者として、使う分には大差ありませんが、企業側や税務当局側には、決定的にこの違いが効いてきます。それは次章で。   ■ 法的に「貨幣」ではないため、銀行に預けて利子を得ることはできません! 日本政府のこれまでの見解は、「仮想通貨を銀行や証券会社が売買の仲介など本業で取り扱うことを禁止し、取引に伴う売買益は課税対象になる」。しかし、「資金決済法」の改正だけでは、銀行に預けて利子を受け取るようなことにはなりません。 (増島氏) 「「2014年に大久保勉参院議員が銀行の取り扱いについて質問し、政府は『銀行などは仮想通貨を扱えない』などと答えた。今年2月にも大久保議員が同様に質問をしたところ、答えは変わらなかった。銀行は、取り扱うことができる業務範囲が銀行法により定まっていて、それ以外の業務を行うことができない。仮想通貨は貨幣になるわけではないので、今後も引き続き、銀行は仮想通貨を取り扱いできない。つまり仮想通貨の売買の仲介や仮想通貨と本来の通貨との交換、仮想通貨を預る口座の開設などができない」 預金に対する利子は、消費税法的には、「非課税」扱い。誰ですか、利子に税金がかかっているじゃないかとおっしゃる方は。あれは「源泉分離課税」として、税率は一律20%(国税15%+地方税5%)、ただし、2013年1月から2037年12月末までの25年間は、東日本大震災からの復興のために、復興特別所得税が上乗せ(税率は、所得税率×2.1%。預金利子の所得税率は15%ですから、15%×2.1%=0.315%)されているのです。ですから、モノの転売で得た所得と違って、利子所得には消費税はかかりませんが、税金はしっかり天引きで引かれています。 さすれば、欧州のように、ビットコインは付加価値税(VAT)の適用除外とするなど非課税扱いが主流のため、日本だけが主要7カ国(G7)で課税しているこの状態は解消するのか? (増島氏) 「税金は税の問題なので資金決済法とは関係なく、改正案が通ることで税の問題が自動的に解決するわけではない。結局、消費税法などを改正しない限りはこれまでと同じ取り扱いなので、しばらく仮想通貨の取引には課税されるだろう」 うーん、残念!   ■ では、今回の金融庁の法改正の狙いは? -テロ資金対策や資金洗浄の防止 ズバリ、金融庁の今回の法改正の動きの真意は? 1.マネロン対策 「一言で言えばテロ資金への供与やマネーロンダリング(資金洗浄)の防止だ。仮想通貨は銀行などの金融機関を通さずに使えるため、これまで資金洗浄の観点からリスクがあるとみられてきた。各国の対策を評価する国際組織『金融活動作業部会(FATF)』は15年6月、仮想通貨を介した金融犯罪を防ぐために、各国に法制化を促す勧告を出した」 2.消費者保護 「もう一つは消費者保護。日本では14年に世界最大のビットコイン取引所だった『マウントゴックス』が破綻して利用者が泣いたという過去がある。こういうことを二度と起こさないためにも消費者保護の観点上必要だった」 増島氏によると、シニカルな見解が付け加えられています。 「今回の法案提出はフィンテックを推進するために『仮想通貨はこれから大事だ』という話が後講釈的に付けられている。これは役所の論理ではなく、どちらかと言えば政治家の論理だろう。これで5月のG7首脳会議(伊勢志摩サミット)で『我が国はテロ対策もフィンテックもしっかりできている』といえるのだから」 ここでも出ました、「フィンテック」!   ■ 登録制でビジネスは安定 消費者の利益になるかは議論の余地 仮想通貨の取引所が登録制になることにより、何かメリットが新たに生じることはないのか?そして、こうした法規制は本当に消費者のメリットになるのか、増島氏に聞いてみたところ、回答は、、、 1.ビットコインの交換業者や愛好家はメリットを感じられるか? 「いま仮想通貨をやっている人は居心地が悪いだろう。ルールがよくわからないから『何ならしてよくて何はしてはいけないのか』がはっきりしていないからだ。可能性としては全面禁止もありえたわけだが、今回規制が入ることで、ルールの範囲内ならやっていいというオーソライズがなされた。交換業を手掛ける人にとっては登録さえすればお墨付きがもらえることになり、より安定的にビジネスできるようになるだろう」 例えば、レバレッジを効かせたデリバティブ商品にしたら、どうなるのだろう??? 本当の着地点はまだ世の中には知らしめられてはいませんね。 2.本当に、フィンテックの後押しになるか? 「法規制はないよりあったほうが絶対によい。ないと事業者はやりたい放題になり、悪貨が良貨を駆逐するように品質の担保ができなくなる。その観点から法規制は必要。我々もルール作りを推進してきたので、それに応えたことを評価している」 フィンテックには一定のプラス効果があるとのこと。無いよりマシ、だそうです。 3.消費者の需要を満たす新サービスは生まれそうか? デリバティブ取引と、ビットコイン建てのネット通販などを例に挙げられています。 「特に増えそうなのがビットコインを使ったデリバティブ取引だ。通貨の売買で差益を得る外国為替証拠金(FX)取引のように、通貨とビットコインを売買するもので、FX取引を手掛ける業者が二匹目のどじょうを狙おうと関心を示している。FXが登場した直後は法規制がなかったことで、想定以上の損失を抱える個人が相次ぐなどして社会問題化した。こうした苦い経験を一通りした業者が今度は『しっかりやろう』としたら、利用者の利便性にかなった取引サービスができるだろう」 まあ、賭博罪に問われないよう、FXと同様の法改正がさらに必要なようですが。 「例えばビットコイン建てで支払えるネット通販などが今後出てきそうだ。ただ、ビットコインが消費者にとって本当に利益をもたらすものなのかは議論の余地がある。確かに国際送金する場合は、銀行のように多額の手数料がかからないという利点があるが、日本国内で生活するには特に必要と感じる人は少ないだろう。今回の法規制を受け、仮想通貨でどんなサービスを提供できるのか、需要を喚起できるかが注目される」 残念ながら、国内で消費をする人にとっては、クレジットカードやナナコやポンタの類の各種ポイント制度による「疑似通貨的なポイント」と同格ぐらいのメリットしかないようです。 ちょっとは、仮想通貨の法的な位置づけに関するもやもやが晴れたでしょうか? ご参考にしてください。(^^;)現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します