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ブラックバイトの真逆!居酒屋「塚田農場」の異色経営

経営管理会計トピック 会計で経営を読む
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■ ブラックバイトの真逆ならホワイトバイトとで呼びましょうか。

経営管理会計トピック

DIAMOND Online で、気になる記事を目にしたので、皆さんにもご紹介します。居酒屋チェーンと言えば、いっとき、とあるチェーンがブラック企業との烙印を押され、大きなダメージを受けていたニュースがありましたが、今回ご紹介するチェーンは、そんなことは皆無なお店です。

ダイヤモンドオンライン
消費インサイド
ブラックバイトの真逆!居酒屋「塚田農場」の異色経営(大来 俊)
http://diamond.jp/articles/-/83801

この記事では、塚田農場の素晴らしい接客業(わざ)が紹介されています。

ある日、このお店を保育園のパパ友と訪れた際に、
「締めとしてちょっとしたデザートを無料で提供され、デザートが載る皿にチョコペンで「Thank youほいくえんのなかよしパパ友だち…」とメッセージが書かれていたことだ」
とのこと。食事を注文したりする短い接客時間で、どういった集まりなのかを機敏にキャッチし、お・も・て・な・し感が満載で、何か特別な存在として扱ってもらう、高い満足感が得られる接客。

実は、筆者も、神奈川県にあるチェーンを利用することがあり、そのたびに、ホールの接客アルバイトとの楽しいコミュニケーションに癒されています。筆者の時には、チョコペンではハートマークが描かれていました。

こうした高い接客力は、アルバイトへの教育とアルバイト自身の高いモチベーションが必要になります。その秘訣は、

1.アルバイトの採用倍率は約9倍。高い人気を誇る職場にすでになっており、優秀なバイトをあつめられるようになっている
2.人気の秘訣は、アルバイトのアイデアを積極的に採用したり、接客の裁量権を与えたりするなど、創意工夫の機会が多分にあり、楽しく仕事ができるから
3.シフトは強要しない
4.全国のアルバイトを集めた感謝祭も開催するなど、人材を大切にする文化も根付いている

ところにあるのだそうです。それゆえ、「塚田農場のアルバイトは楽しい」と口コミが広がり、働きたいという若者たちが後を絶たず、優秀なバイトが集まる正のスパイライルが回っているとのこと。

これ以上に若者(特に大学生のバイト希望者)を集める秘密がもうひとつあるのです。

■ 塚田農場キャリアラボ(通称ツカラボ)とは?

「塚田農場では他店には見られないアルバイト向けのサポートがある。それは就職活動を控えた大学生のアルバイトに対し、会社独自の就活支援プロジェクト「塚田農場キャリアラボ(通称ツカラボ)」を提供していることだ。」

ツカラボが提供する就活支援の対象は、塚田農場で働く大学3年、4年を中心としたアルバイト就活生です。毎年7月~翌年3月頃まで、毎月のセミナーや合同企業説明会を無料で開催します。セミナーでは塚田農場を運営するエー・ピーカンパニーの取締役副社長兼人材開発本部長、大久保伸隆氏(32)などが登壇して貴重な話を聞くことができます。

「就活の目的や意義、構造の理解に始まり、自己分析や価値観発見などの自己理解、業界、企業分析などの企業研究といったテーマについて、具体的なノウハウと実践の場を提供する。また、セミナーには著名な企業の人事担当者が特別ゲストとして招かれ、講演する。」

「大久保氏の講義は、採用市場の実態や裏話、内定獲得のための必須ポイントなどを具体的に教えるものだった。合わせて、陰陽五行論を用いた自己分析や価値観発見のためのワークショップなども提供され、質量ともに非常に内容が濃かった。」

「今回の特別ゲスト講演ではライフネット生命の人事責任者が出演し、就職や仕事の本質的な意味を熱心に説いていた。その日に参加した約100人の学生にとって、就活を進める上で有益な時間になったことは間違いない。」

これらだけでも、驚きの手厚いバイト就活支援なのですが、さらに、
「エー・ピーカンパニーが優良企業であると太鼓判を押す中小企業10社余りを集め、アルバイト学生とのマッチングを図る。企業側は飲食業や小売業、不動産業、広告代理業、介護福祉業など。塚田農場で働くコミュニケーション力に長けた学生アルバイトを採用したいと、幅広い業種の会社が意欲的に参加していた。」

なんと、求人企業とのマッチングまでサービス提供しているのです。これでは、他の居酒屋チェーンより優秀でやる気のあるバイト就活生が集まってくるのもなんら不思議なことではありません。しかも、このマッチングサービスの効果は、エー・ピーカンパニーの強力なコネクションとして、ますます協力会社との関係性を人的にも深めることに貢献します。まさに、エー・ピーカンパニーにとっては一石二鳥の施策に違いありません。

とどめは、
「プロのキャリアカウンセラーと契約し、個別にエントリーシートや履歴書の添削、面接の練習やマナーチェック、就職先相談なども行っている。ツカラボに参加すれば、大学のキャリア支援など不要なほど、まさに至れり尽くせりのサポートを受けられるのだ」

居酒屋としては、この人手不足の時期に、優秀なバイト就活生をゲットできる。協力会社との連帯感を強めることができる。そして、塚田農場を卒業したバイト達は、今度は優良顧客として、塚田農場へと戻ってくるわけです。いい意味で、深慮遠謀とはこのことです。

「就活時期でもアルバイトのシフト率が落ちないことは店にとって大きなメリットだ。加えて、目に見える数字としての成果も現れている。15年7月1日時点で、一般的な大学4年・大学院2年の就職内定率約50%に対し、ツカラボ参加学生は約80%とかなり高くなった(選考解禁は8月だが、その前に多くが内定を得ているのが実態)。10月には、ほぼ毎年100%になるという。アルバイトを続けながら就活の内定率も高くなることは評判となり、塚田農場のアルバイト希望者は今後、より増えていくのではないか。」

就活時期でも無理ないシフトが組める。それがまた、接客力の向上にもつながっている。パート/アルバイトを有効活用せざるを得ないサービス業に対するひとつの極めて効果的な施策でかつ、模倣困難性はそれほど高くもありません。やろう! と思えば、どのサービス業でも明日からでやれることでしょう。

■ 今度は「塚田農場体験ラボ」のお話をしましょう!

「15年からは、大学1年、2年のアルバイトを対象に、養鶏や漁業、酒蔵、野菜農家など一次産業の現場でフィールドワークを行う「塚田農場体験ラボ」と、一流企業からサービス産業の接客やコミュニケーション方法を学ぶ公開ゼミ「おもてなしラボ」もスタートさせた。この取り組みによって、学生生活の早い段階から、働くことの意味や生き方を見つめ直したり、就活や仕事に必要なコミュニケーション力を磨いたりすることができる。」

ここまでくれば、単なる優秀な大学生バイトを集める施策に限定されることなく、なにか、塚田農場(運営は、エー・ピーカンパニー)のビジネスモデルや経営方針というものとがっちりスクラムを組んだ取り組みに違いありません。

そこで、今度は、運営会社の紹介サイトを確認してみましょう。

エー・ピーカンパニーのサイトはこちら
 (http://www.apcompany.jp/

ここに、同社のビジネスモデルなるものが掲載されています。
(下図は同社ホームページより転載)

20151225_apcompany_生販直結

飲食店がお客に提供する食材は、
「従来の管理形態(例:農協・漁協)、多層的な卸売市場、有形無形の規制が絡む複雑な流通構造により、農業・漁業などの第一次産業事業者と、小売・外食等の第三次産業事業者は分断されてきた」
ため、

「卸売市場、商社、問屋等の第二次産業が肥大化する一方で、生産者の販売価格は低く抑えられ、逆に消費者には高価格でしか届かない状況が続いている」

この状況を打破するため、エー・ピーカンパニーでは、『生販直結』、食品の生産(一次産業)から流通(二次産業)、販売(三次産業)に至るまでの全てを一貫して手がける、今はやりの農業(一次産業)の「六次産業化ビジネスモデル」を展開することを企図しているのです。

■ 塚田農場の六次産業化ビジネスモデルは現在儲かっているか?

いきなり無粋な見出しで恐縮ですが、「ビジネスモデル」と謳っている以上、儲かっていないと、どんな取り組みも持続可能性を担保出来ず、これが無いと本物のビジネスとは言えないでしょう。

エー・ピーカンパニー(東証一部上場:3175)の2015年11月26日公表の中間決算報告書から、該当のビジネスモデルの収益性を見てみましょう。

同社中間決算報告資料はこちら
http://contents.xj-storage.jp/xcontents/31750/e9987334/77f3/47a5/998a/7fce203f0c15/20151127081726471s.pdf

<16.3期2Q_営業利益の前期比増減構成:P6>

20151225_apcompany_16.3期2Q_営業利益の前期比増減構成

国内飲食業で、▲153百万円の営業減益、そして生産流通事業では、▲42百万円の営業減益要因となっています。前者は、新規事業立ち上げなどの本社経費(▲263百万円)を除くと、+110百万円の営業増益要因となっており、この米櫃(びつ)がキャッシュ・カウの間に、宅配弁当事業や海外事業の育成への投資が回りきるかを見定める必要があります。

塚田農場で築き上げたバイト就活生からの高い評価ポイントを、新規事業でもオペレーションに関する無形文化財として援用できないと、エー・ピーカンパニーでこうした新規事業をやることは、ビジネス視点からは、厳しく言うと意味が無いでしょう。ただし、「六次産業化」の方は、提供する食材の高い品質維持のためには、他社にない競争優位のタネになりそうです。こちらの方を積極的に伸ばしていってもらいたい、そういう風に外野から見えていますが、皆さんの目にはどう映ったでしょうか?

塚田農場のサイトはこちら
 (http://www.tsukadanojo.jp/



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