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地元客が熱愛する!超ユニークコンビニの独自戦略 大津屋社長・小川明彦 2016年3月10日 TX カンブリア宮殿

TV番組レビュー
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■ 福井県民が大絶賛する 最強コンビニの秘密!

コンサルタントのつぶやき

福井県にある地域限定だけど大人気! ファン殺到のダイニング・コンビニ、オレボステーション。一見どこにでもあるコンビニのようにも見えるが、顧客からは絶大なる支持を受け、インタビューした中には月の利用が20回に上る人も。客層も多様で、どの客の買い物かごもいっぱい(客単価がすごい感じ)。市民熱愛の秘密とは?

レジのすぐ横に鉄板で回鍋肉が。そう、お客の購買意欲を掻き立てるおいしそうな音と香り、店内調理が目玉なのだ。並んでいる惣菜は40種類以上。特に人気なのがバイキング。値段は選んだものの重さで決まり、ランチタイムは、1g = 1円(税別)のバイキングとなっている。このバイキングにはルールがあって、ご飯・パスタを150g以上入れることになっている。あるお客さんのバイキングトレイには惣菜が盛り盛りで、税込388円という安さ。しかも味噌汁は無料サービス。お得感でいっぱいだ。店内には飲食できるイートインの席が45席もある。ソファー席もあり、ファミレス感覚で食事ができる。

(筆者注:こういうお店は、今話題の軽減税率の適用範囲の問題をもろに影響受けそうですね)

オレボは大手コンビニチェーンとは全く異なる戦略でお客の心を掴んでいた。大手との違いはまだまだ。

● 熱狂ファンを生む秘密1
・ワガママにもトコトン対応!
店頭に商品が並んでいるにもかかわらず、“出来立て”の注文もOK
年配客の頼みがあれば、薄味の調理もOK

● 熱狂ファンを生む秘密2
・常連客が得をする仕組み
会員になるともらえるポイントカード。レジで500円以上の精算をすると、スロットマシンが回り、値引きや若狭牛などの商品がもらえるちょっとした遊び心をくすぐる仕掛けが。
会員には、お弁当やお茶が割引価格で買える特典もある

● 熱狂ファンを生む秘密3
・地元客が喜ぶ品揃え
福井の地元でしか食べられていない(売られていない)ローカル商品が揃えられている
福井の地元の名産品を販売するコーナーも設置
これは、2014年度のコンビニチェーンの平均客単価ランキング(2015年7月22日付 日経MJ)

1位 セイコーマート             888円
2位 大津屋                           785円
3位 セブン-イレブン            621円
4位 サークルKサンクス       604円
5位 ローソン                        602円
6位 ファミリーマート          556円

堂々の2位にランクイン。

 

■ 熱狂的地元ファンを生む! 地方コンビニの驚き独自戦略

店内をしゃがんでキョロキョロしたり、立って眺めたり、、、ちょっと挙動不審な男の人が。その人こそ、
大津屋社長 小川明彦

20160310_小川明彦_カンブリア宮殿

番組公式ホームページより

「大人が取りやすい高さと、子供が見やすい高さは違うので、どこに合わせるのかは苦労する。」

大手とは徹底的に差別化し、人気チェーンを作った小川。その経営にはひとつの信念があるという。

「大手コンビニチェーンだと、いろいろあって効率優先になる。お客の立場で、本当にしてほしいサービスを提供できていない場合がある。自分がお客の立場でしてほしいことを提供するのが一番。」

お客の立場に立って経営するコンビニ。その言葉を裏付ける出来事があった。2004年7月、福井豪雨で4000戸以上が床上浸水する事態となった。小川のお店も浸水したが、なんと24時間営業を継続したのだ。お客がやって来るからという理由で、他のお店から商品(食べ物)を運んでなんとか営業を続けた。

とにかくお客が喜ぶことを。そうした小川の姿勢が地元の人々を惹きつける。コンビニスタートから37年。現在は、コンビニが6店舗、専門店が3店舗に拡大。しかし、小川はあくまで福井にこだわる。

「県外に出そうとか、東京に出そうとか、そんなことは思っていない。多店舗展開すると、マニュアル化して、誰がどこへ行っても同じことをするルールを作らないといけないが、そんな店になりたくない。」

 

■ スタジオに小川社長を迎えてのインタビュー開始

「コンビニの定義も難しいが、我々は食事もできるコンビニということで、勝手に“ダイニング・コンビニ”と呼んでもらいたいと思っている。」

続けて、1店舗当たりの平均日版のリストも。
(2015年7月22日付 日経MJ)

1位 東武商事                      90.0万円
2位 小田急商事                     66.6万円
3位 セブンイレブン              65.5万円
4位 大津屋                            61.4万円
5位 沖縄ファミリーマート   60.3万円
5位 JR西日本山陰開発         60.3万円

村上氏が問う。
「客単価とか日版とかの数字だけ見ても、大津屋の本当の強みが見えてこないように思えるのだが」

「数字は“結果論”。地元の人に愛されて「オレボの商品を買いたい」「また行きたい」と思われる仕組みを作る。「オレボを応援したい」と思われるにはどうすればいいかを、いつも考えている。」

村上氏が切り込む。
「大手の“全国均一のサービス”には限界を示しているんじゃないか?」

「大手は店舗数が多いので、全店に同じ商品を同じ価格で提供してバランスを取らなければいけない。そうすると大量生産できるものしか売り場に並ばない、その裏側にニーズがある。大量に商品を供給できない業者など、大手チェーンの苦手な商品を見つけて、それを地元のお客にも喜んでもらうビジネスの形をつくっていく。」

小池さんの質問。
「量り売りバイキングの狙いは?」

「500円ぐらいの弁当を普通のコンビニは提供しているが、同じやり方ではダメだと思って、量り売りで「1g = 1円」が分かりやすい。もちろん赤字になる商品もある。エビチリは「100g = 358円」だが、バイキングでは「108円」になるので、(バイキングを)始める前には社内の責任者やスタッフから非難轟々だった。私たちが丹精込めて作って358円で売れるものを108円で売って損をする。「なぜ、そんなバカなことをするのか」と叱られた。」

「エビチリだけ盛ってレジに来る人が最初はいた。バイキングのルールとしては、“ご飯は150g以上”と書いてあるが、ご飯の上にカレーをかけたり、エビチリを乗せて持ってくると量れない。社員を説得する時に、お客が“やんちゃ”をする場合もあるが、「本当は悪いな」と思っている部分もあるので、笑顔で、攻撃的でなく、「今度からお願いします」と言いながら、惣菜ビジネスを通じて、“道徳の授業をやっている気持ち”でやろうと言った。そうしないと社員が収まらなかった。でもそれは福井という田舎の地方都市だからできた仕組みかもしれない。基本的には真面目で実直な人が多く、しかも何度も来る“常連客”。1回ぐらい反則をしたとしても、「この前は悪かったな」という気持ちを持っている。「今度からはお願いします」と言われると、他のお客も真面目にやるようになる。」

「自分のしたいことだけをやって、同じ考えの人がいれば喜んでくれるという発想。これは今でもずっと続いている。」

 

■ 絶品を求めて全国行脚 地元客を喜ばせるマル秘戦略!

全国の名品を販売するコーナーがある。そのいずれの品も、小川が直接現地に行って、自分の足で探し当てて、福井の地元の人にも食べて喜んでほしいと思った商品ばかり。

「47都道府県、ほとんどを回ったが、行ったことないのが、山口県と山形県。」

そう言った小川さんは山口・下関市の唐戸市場にいた。バイキングで出したい、いい加工食品が揃っていると聞きつけてやって来たのだ。そして、地元だけに出回る格安の小さなシロサバフグを発見。早速買い付けることにした。

そして地元福井の隠れた名品を掘り出すことも忘れない。冷たい土の中で糖度を増す“雪の下のニンジン”。すごく甘い。これを使って作る絶品食品が小川のターゲット。蒸したもち米とすりおろしたニンジンを合わせてこねて、油で揚げて作る「越前ほたるかきもち」。材料も大量仕入れできず、手作りのために一度に大量生産できず、大手コンビニの棚には絶対並ばない商品だ。こうしたものこそ扱う価値があると小川は考えているのだ。

「数に限りがあって欠品するのはむしろ当然。それを良しとして、大津屋では取引をしている。」

 

■ 大津屋のダイニング・コンビニ誕生の経緯とは!?

大津屋はもともと、430年以上続く酒屋だった(創業1573年)。1979年、慶應義塾大学を卒業した小川は29代目として、福井に戻って家業を継いだ。しかし、昔ながらの御用聞きをしても注文は取れず、商売にならなかった。2年後、小川は一大決心。歴史ある酒屋を取り壊す。その代わりに建てたのが、まだ当時の福井にはなかったコンビニ「オレンジBOX」を開業(1981年)。

「福井初のコンビニということで、地元の人は“コンビニ”が何か分からなかった。でも、若者を中心に「夜お酒を買えるのはオレンジBOX」という認識が広がって、売り上げが伸びていった。」

しかし、1980年代後半、大手コンビニチェーンが続々と福井に進出。競争激化で、小川の店も過当競争にさらされた。そこで小川は大手の差別化で生き残りを図る。店内調理で熱々の料理を出したり、イートイン・スペースを作ったりしたのだ。さらに、オレボにしかないオリジナル商品にも力を入れた。例えば恵方巻き。普通の恵方巻きは一本どこまで食べても同じ味。しかし、オレボの恵方巻きは、いろんな具材を横に並べて入れていて、味に飽きがこないようにしてある。4つの味が楽しめるから「四宝巻」。柔軟な発想で、他にはないものを生み出すのだ。

 

■ 常識破りの感動コンビニ 大手に負けない本当の理由

「福井は蕎麦が名産だが、28蕎麦といって、そば粉を8割入れるのが当たり前だが、出回っている商品がそば粉の割合が少なく、小麦粉の割合が多い商品が多かったので、じゃあ本物の28蕎麦を作ろうと、『越前田舎おろしそば』といって、裏の表示で「そば粉」が先に書いてある商品はなかなかない。これは蕎麦の例だが、「地域の名産」と言いながら、本物かというと、そうではないものを観光客が買ってしまうので、そこを何とかしたいと思い作った。」

小川さんが経営を継いだときの状況に話が飛ぶ。

「酒のメーカーはやめて、小売店だけでいこうと決まっていた。しかも、業務用の販売や御用聞きで一般家庭に出向いたり、いわゆる酒屋のお兄ちゃん、サザエさんの三河屋のサブちゃんのような、「村上さん、御用はないですか?」みたいな感じ。一生懸命1年くらいはやったが、やればやるほど、ダメだと感じて。」

「大手コンビニチェーンのフランチャイズになる気は全くなかった。叔父がコンビニチェーンの資料請求を一度してみようと言って、やってみたら、「5~6年は北陸への出店予定はない」ということで、ラッキーだと思った。その間に、5店舗体制くらいをつくれば、なんとか勝負できると感じた。」

村上氏からの質問。
「“店内調理”導入の動機は?」

「お客の動きを見ていると、当時は仕入れの弁当などがあったが、お客は弁当や総菜をまずカゴに入れて、その後に“飲み物”や“お菓子”“雑誌”を買っている状況だったので、お客が来店する一番の動機は、“弁当や総菜”だとレジをしながら見ていて、だったら特徴を出せばいいと思って、店内調理ができないかと考えた。」

● 「店内調理」導入までの流れ
1988年 大手コンビニが福井県に進出
1989年 ホットプレートで焼きそばの実演販売
1994年 ショッピングセンター内に弁当店を開店
1995年 オレボ(1店舗)に厨房を設置
1997年 全店で店内調理を開始

「“焼きそば”と言っても、具の無いようなものをパックに入れて、300円程度で店に並べたら、お客が売り場から弁当を持ってきた時に、「これは何だ」「焼きそばを買うから弁当は戻しておいて」と、簡単に売れていった。」

なぜ、全店での店内調理までに数年かかったのか?

「こんなに簡単に売れるのは良くないと思った。店には何もノウハウも経験もない。焼きそばと言えるか分からないものをやっている。それではすぐにダメになるだろう、しっかり足場を固めてやるべきだと思った。」

小池さんが尋ねる。
「最近、大手でもイートインが充実してきましたよね」

「全国1万店レベルで展開するのはできないと思う。大手コンビニチェーンも、惣菜の部署を持っているが、組み合わせるのは無理なんだと思う。そこが、ビジネスチャンスだと思っている。」

 

■ 実は東京でも食べられる 熱烈ファンを生む人気惣菜

大津屋の惣菜パック、ひじき煮、大学いもなど、12種類(賞味期限60日)が、福井でなくても手に入るようになった。簡単社食サービスとして。置き薬ならぬ置き惣菜として、社員食堂がない会社、約250社、1万4000人が利用している。東京のベンチャーと大津屋が提携して始めたサービスだ。

おいしさそのままで保存が効く。その秘密は作り方にある。

「「セミレトルト」という、ちょっと手前で止める。」

レトルトの手前、「セミレトルト製法」だ。普通のレトルト製法は、120℃の高温で4分以上の加熱殺菌で賞味期限は1年以上。

「(レトルト製法は)菌が死んで安全なんですが、食べる時に素材が崩れたり繊維が壊れておいしくない。」

そこで、大津屋は、レトルトより低い温度で短い時間での殺菌で作る「セミレトルト製法」を採用。作り方は、素材に、保存料などの添加物入れずに調味料だけを加えて、これを真空パックしてから高温殺菌する。ポイントはこの際の時間と温度。

「90度前後で加熱して、100度前後で加熱するなど、試行錯誤をした。企業秘密ですが。」

大津屋は料理によって微妙に温度や加熱時間を変更するセミレトルト製法。構想から7年以上かかった大津屋の最適の数値。このノウハウがあるから、賞味期限60日もの長期保存ができて、しかもできたての風味や食感を保つ食材を作ることができたのだ。

『健康長寿福井 大津屋のお惣菜 母さんの優しさそのまま 安心安全てづくり総菜専門店の味』

「(コピーは)社員が考えた。専門家に、キャッチコピーは任せない。絶対に社内でどういう表現がいいのかを考える。このデザインも印刷物も全て社内で内製化している。これまでも、いろいろなことを手作りでやってきた。他のノウハウを持ってくるのではなく、ノウハウのないところから自分たちで作り上げた方が最後には強いものができる。社内にノウハウを残したい。買ってくるのではなく、自分たちで作る。その思想は、そこから始まっている。」

村上氏の質問。
「他県でも大津屋モデルは有効か?」

「同じ理屈は、どこにでも当てはまる。地方でもいいものを残して、それをビジネスとして組み立てれば、しっかりとした生き方ができるし、企業も生き残れる。また、そこで暮らす人たちも幸せになれるかたちを作りたい。」

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