経営戦略概史(27)バーニーは「資源ベースの戦略論」で資源優位を説いた、が…. - VRIO分析の有効性とは?

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■ 激突、ポジションニング派とケイパビリティ派 ともにミクロ経済学的分析に立脚

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ

「経営戦略」の歴史を、三谷宏治著「経営戦略全史」(以下、本書)をベースに説明していきます。今回は、「経営資源」をキーワードに、ジェイ・バーニー、リチャード・ルメルトやマーガレット・ペタラフらの足跡を追っていきたいと思います。

彼らの理論はケイパビリティ派と呼ばれ、M.ポーターによるポジショニング派と双璧をなすというか、対立・相互批判をしてきた歴史を持っています。それは、ともに経営戦略の世界に、ミクロ経済学的分析手法を持ち込み、同業種の中にいるのに、どうして特定の企業だけが高い業績を残すことができるのか、統計的な有意差の原因を見つけることに躍起になっていたのです。現在の経営戦略の論文でもこうした統計的な解析結果を伴わない理論は見向きもされない傾向が高まったのは、このころの両学派の対立の頃からと言われています。

さて、ポジショニング派は、他社よりも好業績を収める会社は、そもそも儲かる位置取り、それが業種・業界自体の選択になるときもあり、同じ業種・業界内での相対的位置取りになるときもあり、という結論を出しています。一方で、ケイパビリティ派は、同業他社に比較して好業績を上げられる要因は社内の経営資源を上手に競争に打ち勝つように活用したからだ、という主張をしています。

1960~80年代前半に大テイラー主義者たちによって完成されたポジショニング派は、儲けられる市場で儲かる位置取りすることを重要視していました。しかし、70年代後半から無鉄砲な日本企業の進出により、IBM、GM、GE、ABBといった優良グローバル大企業と呼ばれた面々は一斉に業績悪化の道を辿ることになりました。

(参考)
⇒「経営戦略概史(17)キヤノンとホンダ 無鉄砲な日本企業たちの躍進 - この2社の躍進がケイパビリティ学派登場のきっかけとなった

それら優良グローバル大企業が打ち立てたはずの競争優位は、なぜすぐに消え去ってしまったのでしょうか。
(本書p219-221)

 

■ ケイパビリティ派、社内に眠る経営資源の有効利用度に目をつける

イェール大学でPhDを取得後、UCLAで教鞭をとっていたジェイ・バーニーが、リチャード・ルメルトとともに、RBV(Resource-Based View 資源ベースの戦略論)を世に打ち出したのは、持続的な競争優位につながり、かつ実行し得る経営戦略論は何か、ポジショニング派に変わる理論が無いか、求められている時代でした。

ここに、マーガレット・ペタラフが加わり、RBVが、個別企業の収益性の差(儲けうる組織か)を理解するために、ミクロ経済学的分析手法を用いて研究されていきました。彼らは、同じ業界に居ながら企業間に業績の差が生まれるのは、各企業が持つ経営資源の使い方の効率の差である、という見解を持つに至ったのです。

・資源 = 有形資産(立地など)+無形資産(ブランドなど)+ケイパビリティ(サプライチェーン能力や経営判断力など)

マーガレット・ペタラフは、経営資源が「持続的な競争優位性の源泉」となり得るかどうかについて、以下の4つの判断基準を儲けます。

① 異質性
② 不完全な移動可能性
③ 競争への事前的制限
④ 競争への事後的制限

しかし、一般的には、バーニーのVRIOフレームワークが有名になりました。

① 経済価値(Value)
② 希少性(Rarity)
③ 模倣困難性(Imitability)
④ 非代替性(Nonsubstitutability)

後に、「非代替性」が「組織(Organization)」に置き換わって、ここで晴れてVRIOフレームワーク誕生と相成りました。
(本書p221-222)

経営戦略(基礎編)VRIOフレームワーク

 

■ VRIOフレームワークで競争優位の状況を判断する

以下に、VRIOフレームワークを用いて、自社が置かれている市場競争状態を評価する分析手法があります。もちろん、それぞれの「〇:ある」「×:ない」の判断は主観的なものになる可能性は大なのですが、何もないより、セルフアセスメントでも一定の有効性はあるのではと考えています。

経営戦略(基礎編)VRIOフレームワークで競争優位の程度を洗い出す

(1)価値(Value)の評価
ここでの価値は、単なる経済的付加価値ではなく、社会的価値という概念も含みます。つまり、その会社が社会の中に存在する意味があるのかを問われているのと同義となります。それゆえ、どんなに多くの、または多種の経営資源を保有していようとも、社会に価値提供できないと企業存立の基盤が無いと見なされても仕方が無いので、いの一番にこの価値の有無を判定の材料にします。

(2)希少性(Rarity)の評価
希少性は、プロダクトそのものの機能やプロダクトの提供の仕方など、有形無形を問わず評価されます。希少性が高ければ高いほど顧客やユーザーの購買意欲を刺激することができるため、価格以外の部分で訴求することができます。これは、ポジショニング派の「差別化戦略」と共通点があるという見方もすることができます。

(3)模倣困難性(Imitability)の評価
英語をそのまま訳すると「模倣可能性」となりますが、要は他社から真似しにくい「何か」を持っていますか、という問いなので、ここでは模倣困難性という用語を使うことにします。模倣困難性は、製商品やサービスそのものに見ることもできますが、そういった商材の提供方法、サプライチェーンや業務プロセスの模倣困難性の方がより特徴が出ますし、模倣も困難なものになる傾向があります。

なぜなら、プロセスはそれを運営する人や組織の在り方・ルールに大きく影響を受けるため、商材より変革や模倣が難しいからです。人の心はなかなか変えるのに一苦労しますよね。(^^)
模倣困難性が高いことは、その市場の参入障壁を高くすることにも貢献します。そうなると、自社の競争優位の持続性が高まり、市場において長期にわたって唯一無二の存在となるチャンスが広がります。それはリピーター率の増加や新規顧客の獲得、市場シェアの拡大など多くの恩恵を受けやすくなることを意味します。

ジェイ・バーニーは、この模倣困難性を高める要素として、以下の4つを挙げています。

① 独自の歴史的条件(unique historical conditions)
② 因果関係不明性(causal ambiguity)
③ 社会的複雑性(social complexity)
④ 特許(patent)

(4)組織(Organization)の評価
組織は、上掲の価値や希少性、模倣可能性を持続的なものに仕立てる取り組みの実行力および可能性を評価するものです。自社が持つ経営資源をいかに価値、希少性、模倣困難性に変換していくか、組織力を有しているかが見られています。これは、経営資源を自社のコア・コンピタンスに活用しているかという観点からもぶんせきすることが可能です。

(参考)
⇒「経営戦略概史(22)ハメルとプラハードの未来に向けた成長戦略「コア・コンピタンス」 - ついでにコンピテンシーとケイパビリティの違いも考えてみる

 

■ VRIO分析に死角はないのか?

経営資源を経済価値や競争優位性の源泉と認識し、その強みを最大限に活用することによって組織に持続的な競争優位性をもたらせ、同時にコア・コンピタンスを形成する手助けとなるはずの「VRIO分析」ですが、根源的な問題を内在しています。

これもポジショニング派と同様に、ミクロ経済学的(計量経済学的ともいわれている)分析手法に頼るため、どうしても経済的価値や社会的価値を定量的に計量しないと議論が先に進まないのですが、この定量化に技術的困難性があると言われています。

また、市場や顧客のターゲットを誤ると推計や分析モデルが謝った結論を導くリスクもあります。例えば、「より安いものを手軽に手に入れたい」というニーズと「誰も持っていない希少なものを少し値が張ってでも手に入れたい」というニーズが、同一顧客や同一事業、同一市場に並立していた場合、どちらも相応に対応していくのか、それとも一方に肩入れして自社のVRIO分析をしていくのかで、分析結果が大きく異なることになります。

いずれにせよ、ポジショニング派もケイパビリティ派も、定量的評価や統計分析的アプローチで、自説の正しさを主張しあっていますが、未だにどちらか一方が正しいという評価が下ってはいない、というのが現状のようです。

やがて、そういう経済学的な分析モデルでは経営戦略は語ることがそもそもできないのだ、とする経営戦略論が登場することになるのです。

経営戦略(基礎編)経営戦略概史(27)バーニーは「資源ベースの戦略論」で資源優位を説いた、が…. - VRIO分析の有効性とは?

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