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パルコ、テナント発掘へネット通じ資金 地域金融・自治体と連携 ヒットの芽、地方から探る ークラウドファンディングは株式制度の進化形だ!

経営管理会計トピック 会計で経営を読む
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■ クラウドファンディングを使ってテナント発掘と売れる商材を発見。そしてその資金リスクも回避できる、一石二鳥な施策!

経営管理会計トピック

「クラウドファンディング」が新たな資金集めの手法として、昨今、注目を集めていますが、何かの企てのための資金調達を行う、という意味では、従来からの金融や、株式制度の基本的コンセプトの延長線にあるものです。ただ、ここまでの小口での資金集めが可能になった技術的な成功の秘訣は、ITの活用にベースがあるのは確かなのですが。

2016/3/26付 |日本経済新聞|朝刊 パルコ、テナント発掘へネット通じ資金 地域金融・自治体と連携 ヒットの芽、地方から探る

「パルコはインターネットを介し消費者から少額の事業資金を募る「クラウドファンディング」を拡大する。地域金融機関や自治体から起業を目指す人材を紹介してもらう取り組みを開始。事業化に向け助言をするとともに、有望な商品などは店舗で扱う。2016年度に資金の仲介件数を前年度の10倍にする計画で、新規テナントを発掘し、店舗の競争力を高める。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

このパルコの取り組みは、
1.とにかく売れるテナント・商材を発掘したい
2.面白い商材・アイデアと、それをビジネス化するためのお金を結び付けて事業化したい。そのお金は、できるだけ自己資本からは出したくないけど
3.できれば、それをパルコが提供するプラットフォーム上で実現して、てら銭を頂きたい

という狙いからです(少々辛口に言っていますが商売の本質だと思っています)。

新聞記事で解説されているパルコのビジネスモデルは次の通り。

「パルコのクラウドファンディングはファッションや芸術、街づくり・地域活性化に関する事業が主な対象。資金を集めたい人や企業から調達希望額などを盛り込んだ計画をもらい、審査する。事業化できそうだと判断すれば計画の公開を促す。資金が集まれば総額の20%を手数料として受け取る。資金の出し手には出資先の商品などが贈られるようにしている。」

(下記は、記事添付のパルコのクラウドファンディングの仕組み解説図を転載)

20160326_パルコのクラウドファンディングの仕組み_日本経済新聞朝刊

ここで、クラウドファンディングの基礎をおさらい。

「▼クラウドファンディング 何らかのプロジェクトを実行するために資金を集めたい人が、ネット上でアイデアを公開し、不特定多数の人から資金を募る手法。起業や芸術作品の創作、防災関連など様々な分野で活用されている。
 プロジェクトを実行する側は目標金額と募集期間を設定し、期間内に目標金額が集まれば事業化に進む。出資者がモノやサービスの対価を得る「購入型」、金銭を得られる「投資型」のほか、見返りがなにもない「寄付型」がある。」

パルコのケースは、このうち、「購入型」に分類されます。新規テナント入居や、新商品発売に際して、すでに固定客がいるということは、BtoC型の新規事業としては、リスク回避的な、事業企画者としては誰もが羨む理想的なスタート状況になります。

(参考)
⇒「あなたの1000円が世の中を変える!新しい“お金”の流れ READYFOR(レディーフォー)社長・米良はるか 2016年1月7日 TX カンブリア宮殿

 

■ パルコのクラウドファンディングのビジネスモデルをもう少し詳しく見ていきましょう!

引き続き新聞記事から。

「クラウドファンディングを共同運営するミュージックセキュリティーズ(東京・千代田)を通じて、北洋銀行や静岡銀行、信用金庫などパルコが店を構える地域の金融機関や自治体、60以上の組織から情報を集める。
 計画は内容を審査するだけでなく、改善点も助言する。開発中の商品のサンプルを店頭で展示・紹介したり、新しいブランドを期間限定で店舗に導入したりもする。全国19の店舗の売り場を活用して消費者が実際に触れる機会を提供していく。」

ビジネス化のプラットフォームも提供するが、口も出してアドバイスできる専門家を用意しますということ。この辺のコンサルティングサービスと地域の金融機関や自治体との連携が、他のプラットフォームとの差別化要因ということになります。

「金融機関などには、パルコが培ってきたファッション関連品の販売ノウハウなどを生かせるうえ、売り場もあることを強調。地元の事業の育成、取引先の開拓につながることを訴え、協力を呼びかける。一連の取り組みを通じ、16年度は仲介件数を300件、調達額は3億円といずれも15年度の10倍に引き上げる。」

クラウドファンディングが世の中に浸透し、プロシューマー(消費者と生産者を兼ねる人たちのこと)が、自分たちが欲しいものを自分たちで作る。そのためのお金を、ITを使って、小口でかつ少額(一つの会社・事業を立ち上げるのと比べてね)な資金をノーリスクで集めることができる。ノーリスクというのは、事業化しない・できない場合は、返済義務を負わないということ。

「事業化できた際には自社の店舗に出店してもらう。他の商業施設にはないブランドや商品をそろえて、激しくなる販売競争を勝ち抜く構えだ。
 パルコは14年12月に国内の商業施設事業者として初めてクラウドファンディングを開始。約400万円を調達した米シアトル発の靴メーカー「ROOY(ルイ)」を渋谷パルコ(東京・渋谷)に導入した。」

(下記は、クラウドファンディングで資金調達した米靴メーカーが渋谷パルコに実店舗を開いた様子の写真を転載)

20160326_6日、クラウドファンディングで資金調達した米靴メーカーが渋谷パルコに実店舗を開いた(東京都渋谷区)_日本経済新聞朝刊

「クラウドファンディングはベンチャー企業やネット系企業が手がけることが多かったが、ソニーが参入するなど運営者の裾野が広がっている。資金調達するだけでなく、アイデア段階の新事業や新商品のニーズを探るマーケティングとして活用できるという側面もあり、利用者も増えてきた。
 調査会社の矢野経済研究所(東京・中野)によると、15年度の国内のクラウドファンディングの市場規模は約280億円と、前年度より4割強増える見通しだ。」

クラウドファンディングは、より事業と金融の距離が近づきます。それは、生産者と消費者の距離感も同じく縮めることになります。そもそも、近代株式会社制度が創設されたのは、産業革命以後、工業規格品の大量生産・大量販売のビジネスモデルを支えるための、大型資金需要が高まり、ちょっとしたお金持ちとその仲間内での口コミだけでは十分な出資者が集まらなかったため、「株式」という小口での出資形態を可能にする有価証券を、ひろく一般大衆に向けて販売することで、多額の設備投資資金、新規事業立ち上げ資金を調達したことが契機となっています。

クラウドファンディングは、本質的には株式制度による資金調達と同じですが、
1.より小口の資金調達をより多く人から集めることができる
2.企業・事業の立ち上げより、規模の小さい特定の商品・サービスの提供に焦点をあてられる
3.もしダメだった時に、容易に撤退可能である
というメリットがあります。

 

■ 実際のパルコのホームページをちょっと覗いてみましょう!

ここらで、実際のパルコのホームページがどうなっているか、興味湧きませんか?

1.公式ホームページ
BOOSTER(ブースター) – パルコ・クラウドファンディング

2.公式ブログ
クラウドファンディング・サービス「BOOSTER」 – Parco

ここは、上記1.BOOSTER(ブースター)を見ていきましょう。

「BOOSTERは、PARCOが運営するインキュベート・クラウドファンディングです。
クラウドファンディング“crowd funding”とは、群衆“crowd”と資金調達“funding”を組み合わせた造語。新たな挑戦を志す人や組織が、プロジェクトを始める前のタイミングで、必要な資金をインターネット経由で個人から調達する仕組みです。
「インキュベーション(=新しい才能の発見と応援)」をテーマに掲げてきたPARCOが、様々な資源を活用してプロジェクトの実現をサポートし、サポーターのみなさまと一緒にクリエイティヴな挑戦を世の中に送り出します。」

(下記は、同ホームページの「BOOSTER」の解説図を転載)

20160403_BOOSTERは、PARCOが運営するインキュベート・クラウドファンディング

パルコは、このプロジェクトで、モノを世に出したい人と、そのモノを手に入れるためにお金を出してもいいなと思う人のそれぞれの思いをつなぐ手助けをすることで、ビジネスにしています。ある意味、「三方よし」ですね。

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[ プロジェクトを実現させたい方へ ]
売れるモノの追求に疲れていませんか?新しい・楽しいことの追求に切り替えよう

[ プロジェクトをサポートしたい方へ ]
新しい挑戦やクリエイティヴに“参加”し、刺激と楽しさを味わってみませんか?

[ PARCOの想い ]
想いや才能を持った個人がチャレンジしつづける社会が実現し、 イノベーションが次々に起こる世の中を多くの人々と一緒に創りたい
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最後に、パルコが「BOOSTER」を推す訴求ポイントをご紹介して本稿を終わりにしたいと思います。

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BOOSTERを選ぶ4つの理由

1. クリエイティヴのプロによるサポート
「新しい才能のインキュベーション」をDNAとして体現しつづけているPARCOが、社内外のあらゆるネットワークを活用して、プロジェクトの成功をサポートします。

2. PARCOリソースを活用した宣伝やメディアPR
PARCOが持っているリソースを最大限に活用し、プロジェクトの宣伝やメディアPRをサポートします。また、PARCOにとどまらず、多くの外部パートナーとも連携し、世の中にあなたのプロジェクトを一緒に広めます。

3. 店舗やライヴハウスといった「リアルな場」の活用
BOOSTERは「お金を集めて終わり」ではありません。リアルとの融合こそ、BOOSTERの醍醐味です。全国のPARCOに加え、ギャラリー、ライヴハウス、シアターなどのエンタテインメント機能、外部パートナー主催のイベントなど、参加したプロジェクトのリアルな場づくりを必要に応じて設計します。

4. 「信用」というバックグラウンド
BOOSTERはPARCOと、クラウドファンディング最大手の「ミュージックセキュリティーズ」が共同事業としてサービス運営をサポートしています
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こうして、製造業や小売業がこぞって資金調達も巻き込んだビジネスモデルを展開する。当然金融行政における規制緩和も必要ですが、それを助けるフィンテック他のITの力を最大限利用できる企業が、こうしたニュービジネスモデルを構築・進化して、市場生き残りを果たしていくのでしょう。

完成車メーカーは自動車販売金融事業が大きくなり、トヨタは有価証券報告書では、金融セグメントの財務諸表を開示していますし、米GEは、下記のように、あまりに金融ビジネスに深入りしすぎて、その縮退戦略実行中です。

(参考)

2016/4/2付 |日本経済新聞|朝刊 (ダイジェスト)GE、米金融規制除外を申請

「【ニューヨーク=稲井創一】米ゼネラル・エレクトリック(GE)は3月31日、金融機関に対する規制「(金融)システム上重要な金融機関(SIFI)」の適用対象外にするよう米金融安定監視評議会(FSOC)に申請したと発表した。厳しい資本規制の対象外になることで、資本の使い方の自由度が高まり、成長分野に位置づける産業分野の強化を加速する。GEは2015年4月に金融事業からの実質的な撤退を発表。以来、金融資産の売却作業を本格的に進め、5490億ドルあった金融関連資産は2650億ドルまで減少したという。GEキャピタルのキース・シェリン最高経営責任者(CEO)は31日に「リスク資産の圧縮は順調に進んでいる。」

こうした、調整はありますが、もはや、製造業や小売業がそのビジネスモデルの進化にあたり、資金調達や資金決済を無視できる時代ではなくなりました。会計的に言えば、これまで、事業経営者は、P/Lと、可能ならばB/Sの左側(借方、資産)だけ見ていればよかったものが、B/Sの右側(貸方、負債や資本といった資金調達)まで見ながら事業運転、事業企画をしなければならない時代に突入ということです。

最後は、管理会計屋の牽強付会というやつですかね。(^^;)

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