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人間がAIに管理される日? - HRテックによる最適配置と社員の幸福感を高める「Hitachi AI Technology」の事例から

経営管理会計トピック テクノロジー
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■ 人間が人間を相手にする人事管理は終焉を迎え、AIによる人事管理が主流となるのか?

経営管理会計トピック

AIは膨大なデータを瞬時に処理するだけでなく、自動的なアルゴリズムの改良を永遠に続けられるという意味で、生半可な知識と経験による生身の人間が人事管理を担うより、人間の本質を理解して、最適な職場環境を形成できるようになるのかもしれません。

2016/6/27付 |日本経済新聞|朝刊 ITで人事効率化 HRテックをVBが開拓 経歴・適性など一元管理 勤怠実績分析、離職防ぐ

「IT(情報技術)と人材サービスを融合させた新ビジネス「HRテック」をベンチャー企業(VB)がけん引している。従業員情報を一元管理したり、社会保険の手続きを自動化したりして、人材の適正配置や生産性向上につなげる。労働人口が減る中、巨大市場に成長する可能性がある。
 人材ビジネスVBのサイダス(東京・港、松田晋社長)はJ・フロントリテイリングに従業員情報を一元管理できるシステム「サイダスドットコム」を納入した。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

まずおさらいから。HRテックとは、
「人事労務の領域にクラウドや人工知能(AI)など新しい技術を融合した付加価値の高いサービス。採用や適材適所、リーダー育成、評価、給与、業務改善など分野は幅広い。米国では人事管理ソフトのゼネフィッツなど企業価値が10億ドル(約1000億円)を超えるユニコーン企業が登場している。」(上記記事より)

サイダスドットコムの概要は、下記イメージ図(同記事添付のものを転載)をまず参照してください。

20160627_サイダスドットコムの仕組み_日本経済新聞朝刊

J・フロントはグループ従業員約1万1000人のスキルや経歴、適性検査の結果などを一元管理し、サイダスドットコムを今春の人事異動から活用し始めました。傘下の大丸松坂屋百貨店の松田弘一取締役によりますと、「求められる人材の能力は変わってきた。適材適所の配置が経営課題」と説明。導入前は各社の担当者が自社の従業員情報を個別に管理し、異動は人事担当者と対象者間の話し合いで決めていました。

サイダスの「サイダスドットコム」は全日本空輸やマツダなど約300社が導入しているとのこと。どうしてここまで導入が広がってきたのでしょうか。

従来、日本企業は優秀な人材を採用して社内で競わせ、管理職を育ててきました。その競争が理由によって退職者を出しても採用数をさらに増やすことで補えてきたのですが、少子高齢化に伴う人口減少下では採用済みの従業員の能力を引き出して長く働いてもらうことが重要になってきたのです。

 

■ 人材は人財。退職者を出すと、補充コストもバカにならない。AIに頼れば、、、

記事によりますと、また別のHRテックベンチャーの人材紹介のネオキャリア(東京・新宿、西沢亮一社長)は採用から勤怠、労務などを一元管理するサービス「ジンジャー」の提供を1月から始めました。こちらの特徴は、勤怠実績のデータを解析することで勤務意欲が下がっている従業員を探し出し、離職を未然に防ぐことを目的にしています。約1000社が導入しているとのこと。

従業員1人当たりの採用コストは約80万円と言われています。退職して補充した場合、そのコストは前任者の有休消化や人材会社の紹介料など5倍以上にのぼります。退職者を出さないことが、社内ノウハウの囲い込みや、これまでの教育投資の回収以上に、もっと直接的に、採用コストの上昇で企業の人事担当者の頭を悩ませるようになりました。

3つの目のHRテック事例は、クフ(東京・港、宮田昇始社長)の「スマートHR」。未着手だった人事部門の労働改善に挑むベンチャーで、社会保険や労働保険の手続きをウェブで完結するサービスを提供。その内容は、従業員の入退社時に扶養家族など必要な情報を入力すると、必要な書類を自動作成し、ハローワークや年金事務所にウェブ申請してくれるというもの。健康保険証を受け取るまでの期間は1週間と社会保険労務士に委託する場合の3分の1に短縮でき、管理コストの低減に寄与することを目的としています。

その効果のほどは?
「フリマアプリのメルカリ(東京・港、山田進太郎社長)は3月にスマートHRを導入した。急成長中の会社では毎月15~20人のペースで従業員が入社するが、労務部門の手代さやかさんは「入社手続きが簡単になり勤務時間が月20~30時間減った」と話す。スマートHRの導入企業数はサービス開始から7カ月で1200社を超えた。」

なかなかのコスト削減効果ぶり。

ここまでのHRテックベンチャーのサービスをまとめると、

①「タレントマネジメント・サービス」
従業員が持つタレント(英語で「能力・資質・才能を意味する)やスキル、経験値などの情報を人事管理の一部として一元管理することによって組織横断的に戦略的な人事配置や人材開発を行う

②「ワンストップ人事サービス・プラットフォーム」
採用管理、人事管理、勤怠管理、労務管理の各サービスを、人事情報ですべてデータ連携してしまい、作業効率を極限まで追求する

例えば、
「採用管理」
新卒/中途採用業務におけるプロセスデータを蓄積し、リアルタイムで管理・分析することで戦略的な採用業務を実現

「勤怠管理」
マルチデバイスで、どこからでも打刻・勤怠管理を実現します。 打刻方法のフレキシブルさ、出勤/シフト/申請管理のユーザビリティの高さから、勤怠関連のパフォーマンスを向上

「労務管理」
社会保険の各種手続きをオンライン化する。書類の作成/申請をWEB上でできるため、今までの不便さを解消することで、より戦略的な業務に時間を使い、人事部の生産性向上を可能に

ここまでは、ICTのこれまでの進化を考えれば、順当な芸当かと。従来、経営資源として、「ヒト・モノ・カネ」が重要だとされていましたが、まさにその「ヒト」関連情報を徹底してデジタル化することにより、ICTパワーによるデジタル処理の正確性とスピードのメリットを享受しようとするものです。

次は、これにAIテクノロジーを加えるとさらにどう進化するのか。そこを日立の「Hitachi AI Technology」から見ていきたいと思います。

日立のAIを取り上げた過去投稿をご参考まで
⇒「AI(人工知能)が人事部と経理部から人間を駆逐する日はいつか? - HRテックとフィンテックの影響は?
⇒「日立、研究費に年5000億円 16~18年度3割増、人工知能やロボ開発」 ←今回は特にこれ!
⇒「(新産業創世記)「土俵」が変わる(1)AI社長の下で働けますか 決断が人の役割 - 経営判断を下す日立のAI

 

■ Hitachi AI Technology/業務改革サービスとは

日立の当サービスのホームページから概要図を転載します。

● 従来の人が中心のビッグデータ分析の課題とは?

仮説検証を繰り返して施策を導出

● Hitachi AI Technology/業務改革サービスによる新提案とは?
・事業に関連した大量かつ多様なデータから大量の仮説を生成し検証することで、業績向上につながる可能性がある要素を抽出
・これまで検証されてこなかった観点でも分析することで、専門家の経験や知見だけでは導き出せなかった仮説も立案

事業に関連した大量かつ多様なデータを網羅的に解釈

2016/6/28付 |日本経済新聞|朝刊 日立、社員の幸福感アップをAIが助言 「Aさんと会話しましょう」「午前中にデスクワークを」社員向けに実験

「日立製作所は27日、社員の幸福感向上に有効なアドバイスを人工知能(AI)が個別に配信する実験を始めたと発表した。社内の営業人員600人を対象に名札型のウエアラブル端末で体の動きなどを測定し、幸福度を判定。蓄積したデータから「Aさんと会話しましょう」といった幸福感の向上につながる行動を自動で割り出す。組織を活性化させる支援策として年内の実用化を目指す。」

日立ハイテクノロジーズのウエアラブル端末を使った試みは、矢野和男氏の研究成果により、もうずいぶん前から有名となって、既に実現・実用の域に達しています。

(上記、日立当サービス紹介のホームページより転載)

業種:流通 発見:地点Aへの定員滞在×顧客単位 効果:顧客単価15%向上、業種:コールセンター 発見:休憩中の会話×業績 効果:受注率13%向上、業種:物流 発見:ある時間に特定の棚で発生した作業員の渋滞×集品の作業効率 効果:作業時間8%短縮

「ウエアラブル端末に搭載した加速度センサーが座る・立つ・話すなどの動きを計測するほか、赤外線センサーで会話の相手や頻度も記録でき、誰とどのくらい話したかもわかる。日立は動きのパターンによって、幸福度を判定するデータベースを構築しており、1カ月間の行動データと照らし合わせたうえで、どの行動で幸福感が上がるかをAIが分析・推定する。」

膨大な行動履歴まで把握し、これを監視・分析することにより、より合理的・適応性の高い働き方を社員に促す。行動履歴情報は、いわゆるビッグデータ。行動履歴情報を入手するところは、IoT。これらの用語はもはや単なるバズワードの域を超えて、実を備えるようになりました。

 

■ 日立の矢野氏のインタビュー記事のご紹介(1)Hの「跳躍学習」とは?

2016/6/30付 |日本経済新聞|電子版 「社員の幸福」テーマにAI 日立が描く理想の職場 日立製作所のAI開発トップに聞く

「「コールセンターに勤務するオペレーターの幸福感を高めると受注率は34%向上した」「店員の配置を変えたら顧客単価が15%高まった」――。日立製作所の「幸福感(ハピネス)」を高める人工知能(AI)「Hitachi AI Technology/H(以下H)」は、大量のデータを分析しビジネスを改善する具体策を導き出してくれる。日立グループ内でも営業部門約600人のハピネスを高める実証実験を6月に開始した。なぜAIとハピネスが結びつくのか。同社でAI研究を統括している矢野和男氏に聞いた。」

(下記は同記事添付の矢野氏の写真を転載)

20160630_日立製作所研究開発グループ技師長兼人工知能ラボラトリ長の矢野和男氏_日本経済新聞電子版

以下、Q&Aを筆者なりにサマライズしてお届けします。
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Q1:Hの強みは何ですか?

① 汎用性
これまでのAIは、問題ごとに個別のプログラムを人間がプログラムする必要があった。パラメーター(変数)は機械学習で決められるが、プログラムの手間もかかる。問題ごとにプログラミングをしなくても、Hが自動的に大量のデータを分析し、目的の達成に関連する指標がどれかを示すことができる。これが汎用性を持っているという意味

② 業績に直結する答えを出せる『アウトカム(目的)志向』
入力した膨大なデータを分析し、100万個以上にわたるさまざまな仮説を作成して、その中から業務を改善するための要素を見つけ出す。この技術を『跳躍学習』と呼ぶ。
そのほかに、
・目的を得るためのアクション(指示)をつくり出せる
・既存のシステムと組み合わせて利用できる
という特徴もある

Q2:大量のデータから自分で学習するのは深層学習と似ていますが、Hの跳躍学習は違うのでしょうか?

全く違う。
深層学習は『画像の中から猫などの形を見つけ出す』『音声から言葉を認識する』など、特定の種類のデータから特徴を見つけ出すのが得意な技術。しかし、いろんな異なる種類のデータを分析し、その中から問題解決の手段を探すという用途は苦手。
一方、Hの跳躍学習を使えば、例えば店舗の例なら、過去の販売情報、店員と客の位置情報や運動量、商品の配置などさまざまなデータの関連を分析し、売り上げを高める方法を自動的に導き出すことができる。

(下記は同記事添付の、Hの学習能力を示す実験の様子の写真を転載)

20160630_Hの学習能力を示すレゴのロボットを使った実験。振り幅を最大にすることを目標に据えると、膝を屈伸させる方法を学習し、約5分でブランコをこげるようになったという_日本経済新聞電子版

「振り幅を最大にすることを目標に据えると、膝を屈伸させる方法を学習し、約5分でブランコをこげるようになった」
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■ 日立の矢野氏のインタビュー記事のご紹介(2)ハピネスの測定がもたらしてくれるもの

矢野氏はビッグデータ研究に着手した10年前から、入浴以外の常時、自らの身体運動を記録するセンサーを左腕に取り付けてきました。センサーは1秒間に20回、動きの活発さを記録。自分以外の被験者を含め、100万日分を超えるデータを分析することで見えてきたのは、人間のハピネスが測定できるという成果でした。

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Q3:ハピネスを測定することに、どういう意味があるのでしょうか?

(下記は、同記事添付のウエアラブル端末による測定結果の写真を転載)

20160630_矢野氏は腕に装着しているセンサーで自らの身体運動を数年間にわたり計測している。こうした地道な研究がハピネスを計測する技術につながった_日本経済新聞電子版

人々のハピネスを高めることは、経済を大きく回すこと以上に社会的な価値がある。海外の学術論文によると、ハッピーな人は生産性が高く、昇進が早く、健康でもある。ハッピーになることは21世紀の社会全体の生産性を高める、もっとも近道

組織を活性化させる指標としてハピネス度を利用すれば、経営者は従業員を幸せにするための投資をすることができるようになる。そうすると結果にもつながる。我々の実験では、販売業務をするコールセンターで休憩時に会話を盛り上げるなどハピネス度を高めると、ハピネス度が低い日と比べて受注率は34%向上した

Q4:ハピネス度は具体的にどう測定するのですか?

(下記は、同記事添付のウエアラブル端末の写真を転載)

20160630_人間の動作を計測しAIで分析をするためのデータを取得するセンサー。首から下げて利用する_日本経済新聞電子版

人間の行動には、継続性の揺らぎがある。我々の実験で、行動の多様性と従業員からヒアリングしたハピネス度に強い相関関係があることが分かった。ハッピーだという人が多い組織は、短い動きと長い動きがミックスする。逆にアンハッピーな組織は10分前後の動きで固まっている

そうした測定結果を有効に活用する事例として、

特に、コールセンターのような人間相手の業務では、ハピネス度が重要な指標になる。どうしたらハッピーになるかをAIに判断させると、組織によって全く異なる結果が出る。上司がこまめに声がけしたほうがいいこともあれば、上司は口を出さずに早く帰った方がいい場合もある。あまり業務の成果を出していないように見える人が実は組織を活気づける重要な役割を果たしていることもある。結果が一律でないからこそ、AIを使う意味がある

Q5:AIが広がると「人間の仕事が奪われる」ことを懸念する声があるが?

グーグルの『アルファ碁』が人間のプロ棋士に勝ったことでAIが人間を超えたと恐れる人がいるようだが、本当に恐れるべきなのはAIではなく、それを使っている人たち。AIをツールとして活用し、まい進してくる人たちが脅威。AIが勝つのではなくて、AIを使った人が勝っていくということ

AIでどんな問題を解いたらいいのか、どういう設定でAIを活用すれば企業の収益や社会の幸せのために役立つのか。それらの課題を設計できる人が今後何百万人も必要になる。国内にシステムエンジニアやプログラマーと呼ばれる人たちは100万人ほどいる。それらの人々も、リナックスやマイクロソフトのサーバーが扱うスキルではなく、AIを扱うことが求められるようになる。AIを使う人が急激に増え、ものすごい産業に発展するだろう

(筆者注:それに加え、そもそもAIにどんな作業をさせようかと、効果的な発想をする仕事がもっと大事になるし、もっと稼げます。AIに知性や感情を持たせられても、人権はないので。もっとも、ブラック企業では生身の人間の人権も無視されていますが、、、(^^;))

Q6:今後は何を目指していきますか?

(下記は同記事添付の日立グループでのハピネス高める取り組み事例の写真を転載)

20160630_日立グループではHを試験導入し、従業員のハピネスを高める取り組みをしている。スマートフォンの画面に「○○さんと会話をしましょう」などとアドバイスを表示する_日本経済新聞電子版

まずは、ビッグデータ、AIの分野での日立の強みのアピールから。

さまざまなリアルの業務データを持っている日立の優位性と、汎用性を持つHの強みを生かして、世界に打って出たい。日立がカバーしている多様な事業分野のデータは、米国勢にはそう簡単に手が届かない。グーグルにとって鉄道のデータを扱う意味はないかもしれませんが、こっちは大ありなわけ。バーチャルなネット上のデータは米国が強いですが、リアルなデータの分野では日立が強い。すべての分野で日本のAI研究が遅れていると論じるのは間違っている

本来目指すべき目的について。

その先にある究極の目的として、人間のハピネス度を高められる社会を目指す。人間のハピネスは主観的なものであり、ちょっとしたことでがらっと変わる。だからこそ、効果的な投資になり得る。会社に来るのが楽しみな社員ばかりになったら、競合他社にとって恐ろしい存在になる。経営者に従業員のハピネスを高めるための投資をさせることが我々の使命だと考えている
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■ インタビュー記事の感想戦

最後の問いに対する回答について、筆者の感想もちょっとだけ披露します。日立の強みの一つがリアルデータだというのですが、このリアルデータも結局はデジタルデータに置き換えて、AIが持つアルゴリズムに喰わせなければデータ処理ができないので、結局デジタル=バーチャルorネットということにならざるを得ません。むしろ、そのリアルデータを集められる各種産業の現場でのプレゼンスが高いということが日立の強みなのではないでしょうか。それは同じく産業機器の雄、GEと比較されるべき性質もので、リアルデータを集める部分は、いわゆるIoT関連のテクノロジー競争になるということです。GEのインダストリアル・インターネットとの競争です。

さらに、リアルデータ、産業の現場重視、IoTときて、その上で、矢野氏の研究は、ウエアラブル端末による人間の感情センシングと、感情分析アルゴリズムに強みがあると言えます。

記事の最後に、日本経済新聞社記者のコメントが付されており、そこにはこう記述されています。

「日本は先進国の中で労働生産性が低いといわれる。日本生産性本部によると、経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国中で日本の労働生産性は21位(2015年版)だ。一方で、日本人の仕事満足度は海外に比べて低いというという統計も多い。日本の場合、満足度の低さが労働生産性の低さにつながっている面もありそうだ。」

日本の労働生産性の低さは、長時間労働にも原因があります。一概に日本人の時間当たりアウトプットが諸外国の人たちに比べて能力が劣って低いのだとは断言はできません。長時間労働は、「ワークライフバランス」の美名の下、ダメなこと、と現代日本では断じられますが、筆者も含め、ワーカホリック的な人たちにとって、また、日本人の古代からの宗教観から、労働は神にささげる尊い行為で、働くこと自体に幸福感を感じる世界にも珍しい国民性を持った人たち。それが、高度経済成長時代の、国民所得の上昇に寄与したのではないでしょうか。トヨタのカイゼン、QCサークル、小集団活動は、全て、残業代も支払われず、労働者の自発的な、啓発的な活動として、メードインジャパンの品質と信頼性向上に貢献してきました。

「ひたすら収益や効率を高めるか、それとも従業員のハピネスを優先するか。日本企業はともするとこうした二者択一の考えに陥りがちだが、日立のAIは両立できることを示している。日本の成長戦略のヒントも案外、こんなところに隠れているかもしれない。」

働くことが好き。働いて世の中に貢献したい。誰かの役に立ちたい。

そういう種類の労働者のハピネスも測定できるようになれば、それこそ日本産業の強みを生かすAIということになるでしょう。日本初のAIテクノロジー、日本初のHRテックで、もう一度、日本の産業が自信を取り戻すことに、筆者も残りの職業人人生をささげていきたいと思いました。

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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