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(大磯小磯)持ち合いの是非 -コーポレートガバナンスコードとスチュワードシップコード再び

経営管理会計トピック 会計で経営を読む
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■ 「株式持ち合い」による長期保有株主づくりと経営監視のバランスを考える!

経営管理会計トピック

著名なコラムにて、長期保有株主づくりの方策の一つとして「株式持ち合い」もありではないかとの言及がありました。

2016/1/26付 |日本経済新聞|朝刊 (大磯小磯)持ち合いの是非

「コーポレートガバナンスコード(企業統治指針)では、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が上場会社に期待されている。この期待に応えるには会社独自の工夫が不可欠である。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

このコラムの出だしは、次の調査結果を意識してのことだと思います。

2016/1/16付 |日本経済新聞|朝刊 企業統治指針「全項目を順守」1割強 適用から半年 報告書「表現横並び」課題

「東京証券取引所が上場企業に企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)を適用して半年が経過した。指針に基づき2015年末までに「企業統治報告書」を公表した1800社強を調べたところ、指針の全項目を順守するとした企業は1割強だった。主要企業に限ると3割になる。一方で投資家との対話などで横並びの表現も目立ち、報告書の課題も浮き彫りになっている。」

この新聞記事については、筆者も解説を下記投稿で試みています。
⇒「企業統治指針「全項目を順守」1割強 適用から半年 報告書「表現横並び」課題

「コードで規定されていることだけをすればよいというわけではない。それだけだと、経営の形式主義が強まるだけだ。一口で中長期的な経営といっても、簡単に実行できるものではない。中長期的に正しい経営が行われているかどうかを客観的に評価するような基準が存在しないから、自己査定は困難である。それゆえに、中長期的な視点が強調されると、短期的に非効率や無駄が増える。」

おっと、短期保有の株主・短期売買を好む物言う株主(アクティビスト)によるプレッシャーが会社経営に対して毒になっているのか薬になっているのか? 株式投資あるあるです。これについても過去投稿で触れております。

⇒「(経済教室)エコノミクストレンド 企業の短期主義、再び注目 株式非公開の増加も 「悪弊」とまでは言い切れず 鶴光太郎 慶大教授

この投稿での筆者の見解を再掲します。詳細は本文をご確認ください。

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1.世間で短期主義が悪い、と言われる場合は、そのほとんどがポジショントークである
2.短期所有株主(浮動株主)を相手にすると、資本コストが高つく
3.中長期的施策の資金需要があるなら、それに賛同する出資者だけを募ればよい
4.経営者報酬制度は、ベンチャー以外はストックオプション以外の方法を模索する
  ① 中長期的業績連動の報酬制度
  ② (信託式)株式付与制度
5.浮動株主に余計な口出しをさせない資金調達の工夫をする
  ① 種類株式の発行
  ② ハイブリット債の発行
6.企業の成長ステージ、属する業界によって資金調達の方法は変えてよい
7.自由主義経済は、長期的には均衡点に回帰することが多い
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短期所有株主(浮動株主)からのプレッシャーに負けて、資本コストが高つくようなら、潔く公開資本市場からご退出下さい。。。その方が経営者、投資家双方の身のためです。

■ 長期保有株主づくりは難しい!?

本コラム記事に話を戻します。

「このような状況で何よりも必要なのは、厳しい外部の目である。特定企業に長期的な投資を行い、経営についての判断力を持つ人材を擁し、企業との緊密な情報交換を通じて企業経営を見守り続ける長期株主が不可欠である。戦後すぐに財閥財産の没収が行われた日本で、そのような長期株主を見つけるのは難しい。」

「このような長期株主に代わるものとして考え出されたのが、株式の持ち合いである。お互いに長期株主になり合おうという日本の知恵である。機関投資家の行動原則であるスチュワードシップコードでは、機関投資家がこのような長期株主になることが期待されているが、それは楽観的にすぎないか。」

隠されたアベノミクスによる株価向上策の一環として、海外投資家を日本市場に呼び込むために、外国人株主が喜ぶ「スチュワードシップコード」を導入して、海外機関投資家(投資ファンド)による株価維持を目論んだことは公然の秘密にもなっていません。公然の事実です。

日本の株式市場が、英独に比べて外国人投資家(ここでは米国限定)比率が相対的に小さいことを示すグラフを作成してみました。下記の過去投稿のものを再掲します。

⇒「日本の個人投資家、議決権行使は米英超す3割 金融庁調べ

20160113_投資主体別構成比グラフ

「特定企業への長期投資は投資のリスクを高めるし、経営の監視をきちんとできるような人材をそれぞれの機関投資家が育成し保有しようとすると、大きな社会的コストが発生する。ほかの機関投資家に期待して、自分たちはただ乗りしようとする投資家が出てくるのは必至である。メーンバンク制に倣ってメーン投資家制度をつくる必要が出てくるかもしれない。」

興味深いたとえですね、「メーン投資家制度」。要は、バッフェトやさわかみ投信のような長期投資家を呼び込めばいいわけです。バークシャー=ハサウェイ社の株主還元率が同業の株式会社やリートの配当率より低く、さわかみ投信の手数料が他の投信のそれより高くついているでしょうか? まともな長期投資家のもとには、それ相応の資金がどれ相応の期待収益率で集まります。ただ乗り? 逆に、長期投資家の観点からすると、自分たちが育てた優良企業に次々と資金が集まることは歓迎すべきことです。その分株価が上がりますから。フリーライドを忌み嫌って、自ら長期投資対象の研究や議決権行使や経営者との対話によるそれなりのコスト・犠牲を払うことを回避しようと、長期投資家は絶対に考えません。それ(長期投資)が好きだから、それがより高いリターンをもたらすと期待しているから、長期投資を続けるのです。

「機関投資家の自己変革が期待できないのであれば、しばらくは持ち合いに期待するしかない。持ち合いは効用を持つが欠点もある。過剰になると、一般投資家による経営監視を形骸化する。日本のバブルはその結果起こったともいえるかもしれない。持ち合いを機能させるには、それをうまく運営してきた旧財閥系グループから学ぶ必要がある。社長同士の情報や意見の交換の場をつくったりする工夫も必要だろう。」

だから、持ち合い株式(政策投資目的の株式)を保有する場合は、コーポレートガバナンスコード(企業統治指針)でも記述されている通り、公に保有する合理的理由を説明しなければならないのですよね。機関投資家が自社株を持ってくれないから、持ち合い先に自社株を持ってもらう。それはね、対価として持ち合い先の株式を会社のお金で買っていることなので、所有者の違いこそあれ、「自社株買い」と同じ経済効果(株価に与える影響)なのですよ。簿記的には、その取引は、「総額主義」か「純額主義」で表示されているだけの違いなのですよ論理的には。そのうえ、持ち合い先の株価が、先方の失態で経済価値を毀損し、株価が下落することもあります。自社株買いならば、自社株のその後の低迷は自己責任と言えますが、、、

ちなみに、筆者は政策保有株(持ち合い株)は、一部の金融機関を除いて、商習慣的に必要であるし、資金(B/Sの貸方では内部留保になっていることを想定)をリザーブする弁法として、いたずらに株主還元などで社外流出させないほうがいい面もあるという考え方です。その本意は次の投稿でご確認を。

⇒「(日本株番付)政策保有株比率が高い企業 建設や倉庫が上位に

問題提起と結論がかみ合っていないコラム。これにまともにコメントしているこちらも議論が散漫になってきました。本日はもうこれでおしまい。(^^;)

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