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ビットコインなど仮想通貨が「通貨」として閣議決定されるまで -日経新聞まとめ(前編)

経営管理会計トピック テクノロジー
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■ 仮想通貨に対する議論が盛り上がり、閣議でようやく「通貨」認定!

経営管理会計トピック

毎朝、日経新聞に目を通し、ある一つのテーマをずっと時系列で追い掛ける「タテ読み」を実践している筆者ですが、今回もそのアンテナに引っかかった話題がありました。「仮想通貨」が閣議で「通貨」認定がなされるに至ったというお話。

まずこの流れを演出した初出の記事から順に追っかけていきましょう。
その前に、念のため仮想通貨の定義から。

2016/3/5付 |日本経済新聞|朝刊 仮想通貨とは

「▼仮想通貨 2009年にビットコインが登場し、今は600種類以上に通貨数が拡大した。専門の取引所で円、ドル、ユーロ、人民元といった現実の通貨と交換できる。中央銀行などの公的発行主体や管理者を持たないのが特徴で、取引や決済はインターネット上ですべて処理する。既存の金融機関を経由しないため、手数料が格安で済む利点などがある。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

■ マネーロンダリング防止から合法化するか、それとも賭博罪で裁くべきか?

全ての流れは、この記事から演出されて盛り上がっていきます。

2016/2/20付 |日本経済新聞|朝刊 (真相深層)FX式売買 対応後回し ビットコイン規制、法制化大詰め 賭博罪との関係曖昧

「ビットコインなど仮想通貨を規制する政府の法制化作業が大詰めを迎えている。通貨とビットコインを交換する取引所が登録制になり、不正利用を防ぐ法的枠組みが導入される。だが「通貨」に近い金融商品としてのビットコインの利用拡大に即した規制は見送られる見通しだ。現実に法規制が追いつかず、新たな火種になる可能性もある。」

(下記は、同記事添付のマウントゴックス取引停止に本社前で抗議する投資家ら(14年2月)=ロイター の写真を転載)

20160220_マウントゴックス取引停止に本社前で抗議する投資家ら(14年2月)=ロイター_日本経済新聞朝刊

事の発端は、マウントゴックスの破綻から仮想通貨の取引の安全性の担保と、マネーロンダリング(資金洗浄)の有効な防止策としての着想から始まりました。

「「順調なら3月上旬には法案を国会に提出できる」。金融庁の佐藤則夫・信用制度参事官は胸をなでおろす。2014年2月の大手取引所「マウントゴックス」破綻後も企業の自主規制に任せていた政府がルール作りに着手したのは昨夏。金融当局の国際組織がビットコインの資金洗浄(マネーロンダリング)対策を求めたのがきっかけだ。」

● 主な論点:資金決済法を改正する。しかし、デリバティブの扱いが、、、
1.政府は資金決済法を改正し取引所を登録制にする
2.犯罪収益移転防止法の特定事業者にも指定する
3.仮想通貨を使ったハイリスク・ハイリターンのデリバティブ商品の規制

マネーロンダリング対策など国際協調を急ぐあまり、高い収益性を追求するデリバティブ(金融派生商品)への対応をいったん棚上げにする様相です。

「口火を切ったのは大手取引所のビットバンク(東京・渋谷)が昨年7月に始めた「BTC・FX」。複数の通貨の売買で差益を得る外国為替証拠金取引(FX)の手法をまね、通貨とビットコインを売買する。ビットコインを「証拠金」として、その最大20倍まで運用できる。利用者は2千~3千人。月間取引額は40億円を超える収益の柱だ。大手ビットフライヤー(東京・港)も類似サービスを昨年暮れに開始。取引額では同社全体の3~4割を占める。」

ここで問題となるのが賭博罪との関係。

(下記は同記事添付の過去の賭博罪に問われた事例を転載)

20160220_裁判所が賭博と認めた金融派生商品_日本経済新聞朝刊

偶然の事情により財産を得たり失ったりすることを決める行為が賭博。
違法にならないためには、
① 法令で認める
②「正当な業務行為」とみなされる要件を備えること
  (1) 当事者が金融機関その他の資力・知識を持つ者かどうか
     (2) 証拠金を元手に運用できる倍率(レバレッジ)の高さ

過去には、FXも金融商品取引法(金商法)で規定される前は、消費者に訴えられ賭博と認定された歴史があります。資本市場や国民生活の発展に役立つとの判断や投資家保護の観点から政府は金商法で規制し「合法化」した経緯があります。

 

■ 賭博罪で裁かれないためには、レバレッジを低くすれば事足りるのか?

2016/2/20の記事の続きから。

「ビットコイン・デリバティブに業法の規定はないが、有用性がリスクに勝れば違法と決めつけることはできない。「設計次第で正当な業務行為と認められる余地は十分ある」(芝章浩弁護士)。「当社は合法という認識で行っているが、法律で線引きを明確にしてほしい」とビットバンクの広末紀之社長は話す。」

「消費者団体、フォスター・フォーラムの永沢裕美子事務局長は「消費者被害を防ぐためにレバレッジ上限を共通化するなど業界一丸で取り組むべきではないか」と話す。現在は法的裏付けが不十分なまま、事業者が個別の判断で上限を決定。各社のレバレッジは5倍から25倍まで開きがある。」

「サービスは広がり続ける。大手のレジュプレス(東京・渋谷)は4月にも先物取引を導入。「投機・投資目的の利用者を取り込みたい」と和田晃一良社長。国内の大手取引所でデリバティブを扱わないのはBTCボックス(東京・中央)など一部になり、ビットコインは金融商品としての性格をより強めそうだ。」

「「デリバティブ取引が広がれば法的枠組みを検討する可能性はあるが、今は時期尚早」と金融庁は様子見の構え。日本の現行法上、仮想通貨は通貨、有価証券、金融商品といった既存の取引対象物に該当せず、私法上の位置づけは不明確。金商法のらち外になり、「商品」でもないため商品先物取引法のデリバティブ規制も及ばない。米国では「商品」として米商品先物取引委員会が規制しているのと対照的だ。」

BTCN|ビットコインニュース より
 ・米国先物商品取引委員会(CFTC)は、ビットコインや他の暗号通貨が商品取引法によって規制される原油やトウモロコシなどと同様のコモディティであると認定
・米内国歳入庁(IRS)は2014年3月、ビットコインなどの仮想通貨を「財産(Property)」と見做す指針であることを公表
・米証券取引等監視委員会(SEC)は有価証券に近いものとして規制する動き
・欧州裁(ECJ)はビットコインが支払手段、お金であるとし、加盟国に対しVAT免除を呼びかけた

米国も欧州も、当局によって動静が異なるようです。そこで我が国日本の動きは?

 

■ 金融庁が動く。「仮想通貨」は「モノ」ではない、「貨幣」だと。

2016/2/24付 |日本経済新聞|朝刊 仮想通貨を「貨幣」認定 モノ扱いから決済手段に 金融庁、法改正へ

「金融庁が国内で初めて導入する仮想通貨の法規制案が23日わかった。今までは仮想通貨を単なる「モノ」と見なしたが、法改正で「貨幣の機能」を持つと認定することで、決済手段や法定通貨との交換に使えると正式に位置づける。仮想通貨の取引所は登録制とし、金融庁が監督官庁になって、仮想通貨の取引や技術の発展に目を光らせる。」

(下記は同記事添付のビットコインのイメージ写真を転載)

20160224_ビットコイン_日本経済新聞朝刊

「今通常国会に資金決済法の改正案を提出し、成立を目指す。日本では約2年前に世界最大だったビットコイン=写真はロイター=の取引所「マウントゴックス」が経営破綻した。顧客の預かり資産が消滅し利用者保護などの課題が浮上。政府内に監督官庁が存在せずにモノとして取り扱ったが法規制を機に仮想通貨が健全に広がる体制を整える。」

「仮想通貨の定義として2点明記した。1つは物品購入などに使用できる「交換の媒介」の機能。もう1つが不特定を相手にした購入や売買を通じ法定通貨と交換できること。いずれも貨幣の機能の一部で、金融庁は仮想通貨がIT(情報技術)と金融を融合した「フィンテック」の発展につながる可能性を見すえる。」

「世界では仮想通貨が約600種類あり、代表的なビットコインは昨年11月時点で時価総額が7000億円を超えた。投資だけでなく、安価な決済手段として期待される一方で、各国の金融当局が資金洗浄対策などから法規制に乗りだしている。」

ここで、「資金決済法」なるものが何者か、気になるところ。なぜ、「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」の改正ではないのか。「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」(これがいわゆる我々が無意識にイメージしている現在の「貨幣法」)には、

  第四条  貨幣の製造及び発行の権能は、政府に属する。

  第五条  貨幣の種類は、五百円、百円、五十円、十円、五円及び一円の六種類とする。

とだけ定義されています。

すなわち、硬貨(コイン)のみが、本法律で言う所の貨幣。千円札より高額の紙幣は、日本銀行券。日銀法の1998年改正で、日銀券の発行総量は日本銀行の裁量に委ねられることとなりました。ここでそんなウンチクはいりませんか。(^^;)

つまり、「貨幣とは何か?」を法律的に、経済学的に議論しても実務的でないということです。お金は、決済に使われるので、その決済方法を決めたものが「資金決済法」。実務的にその流通の法的根拠を押さえようという意図。

一般社団法人日本資金決済業協会|資金決済法について
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資金決済法とは
資金決済に関する法律(資金決済法)は、近年の情報通信技術の発達や利用者ニーズの多様化等の資金決済システムをめぐる環境の変化に対応して、
  (1) 前払式支払手段、
  (2) 資金移動業、
  (3) 資金清算業(銀行間の資金決済の強化・免許制)

を内容として、2010年4月1日に施行されました。

前払式支払手段では、前払式証票の規制等に関する法律の適用対象となっていた紙型、磁気型、IC型の前払式支払手段に加え、サーバ型の前払式支払手段が法の規制対象に加わりました。これに伴い同法は廃止されました。

資金移動業では、銀行等の免許を受けずとも、資金決済法による登録をした者は、資金移動業者として為替取引(1回あたり100万円以下)を行うことができることとなりました。履行保証金の供託のほか、いわゆる金融ADRへの対応が必要となりました。
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■ 金融庁が動く。着々と「仮想通貨」を法制度のタガに収めようと。

2016/2/25付 |日本経済新聞|朝刊 仮想通貨 利用者保護急ぐ 「貨幣」認定、金融庁が法改正へ 登録制や外部監査を導入

「金融庁は24日、自民党の財務金融部会と金融調査会にインターネット上の決済取引などで急速に市場が広がる仮想通貨の規制案を示した。取引所を登録制にし、外部監査の導入を義務付ける。仮想通貨を「貨幣の機能」を持つと初めて認定することで利用者保護の強化を急ぐ狙いだ。

「初めて法規制の網がかかることで市場拡大と金融とIT(情報技術)が融合する「フィンテック」の技術開発に弾みがつきそうだが、悪質業者の監視などに課題も残す。
同党合同部会で規制案を了承した。金融庁は今国会にプリペイドカードなどを対象とする資金決済法の改正案を提出し成立を目指す。日本は仮想通貨を単なる「モノ」とみなしてきたが、政府が金融決済や法定通貨との交換に利用可能だと認める形だ。」

こういう動きは欧米とは一線を画しています。モノではなく決済手段。

(下記は、同記事添付のビットコインの相場を転載)

20160225_ビットコイン価格_日本経済新聞朝刊

● 法規定の主な内容
 1.取引所に顧客の資産と自己資産をわける「分別管理」を導入する
 2.取引所には、最低資本金の導入に加え、監査法人や公認会計士の定期監査も義務づけ
 3.利用者に対し仮想通貨の取引内容や手数料の情報開示も徹底するよう指導する
 4.取引所は預金保険法が適用される銀行と異なり、法律上は一般企業と同じ位置づけに
 5.取引所が破綻した場合、民事再生や破産手続きなどが適用され、顧客は資産を失う可能性がある
 6.取引所に対する監督指針では、問題がある取引所の営業所に当局者が立ち入り検査を実施し、帳簿書類を検査する。悪質な取引所は行政処分を下し、業務改善命令を出したり登録を取り消す

「法規制を急ぐ背景には仮想通貨の9割弱を占めるビットコイン取引の急速な拡大がある。現在、世界で約1000万人が利用し、この1年間でほぼ倍増。日本でもビットコイン利用者が数万人に上り、主に7つの国内取引所を経由して取引することが多い。
利用者は携帯電話番号や本人確認書類などをもとにビットコインの「財布」を作り、スマートフォンやパソコン経由で数十円単位から売買できる。最近の価格も1ビットコインあたり420ドル(約4万7千円)と上昇基調だ。今は世界のレストランなど7000店以上で実際に決済できる。」

(下記は、同記事添付のビットコインが都内の回転ずし店でも使える様子の写真を転載)

20160225_ビットコインは都内の回転ずし店でも使える(東京都中央区)_日本経済新聞朝刊

ああ、ここで紙面の限界が来ました。続きはWebで。すみません、ふざけてしまいました。続きは後編で。m(_ _)m


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