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■ 「決算」→「配当」の支払い

会計(基礎編)
前回」は、「決算」について、「会計期間」と「財務諸表」との関係を説明しました。
では、なぜ「決算」といって、会社業績を一定期間を置いて明らかにする必要があるのでしょうか。「財務諸表」をつくるため? いやいや、そうならば、なぜ「財務諸表」を作らねばならないのでしょうか?
このシリーズの最初の方(利益情報の意味)でも言及しましたが、

①経営者の頑張りを評価して経営者への報酬額を明らかにするため
(→ 業績評価利益の計算)

②株主に配当金をいくら支払っていいか明らかにするため
(→ 配当可能利益の計算)

では、「決算」タイミングと「配当金」の支払いについて、これまでの歴史的経緯を振り返ってみたいと思います。
旧商法(昔の会社に対する法律)では、1974年10月の改正前までは、年2回、決算することが決まっていて、株主は年2回、配当金をもらうことができました。しかし、配当金をいくらにするかは、株主総会といって、全株主が集まった会議の場で決める必要があります。
この74年時の法改正で、決算を1年間と定められた会社には、一定のルール(配当可能限度額の計算ルール)を守るなら、いちいち全株主が集まって議論しなくても、取締役会が代わりに、正式な1年ごとの決算(本決算という)の丁度真ん中の6か月たった時点(基準日という)で、「中間配当」を支払うことができるようにしました。
最近では、「会社法」が新たに制定(2006年)され、従来は最大年2回に配当金の支払いが制限されていたものを、配当可能限度額のルールを守るなら、取締役会の決議で、いつでも配当金の支払いをすることができるようになりました。
理屈の上では毎日、配当金を出すことができます。まあ、節度を守るなら、四半期決算ごとに配当金を支払う、というのが適切かもしれません。
ちなみに、この記事を書いている時点でのWiKi調べでは、四半期配当会社は次の通りです。

  • あおぞら銀行(8304)
  • イー・アクセス(9427)
  • スミダコーポレーション(6817)
  • GMOインターネット(9449)
  • 東京リスマチック(7861)
  • 日立工機(6581)
  • ホギメディカル(3593)
  • ホンダ(7267)
  • リンクアンドモチベーション(2170)

したがって、従来の「決算」に込められた株主の思いという点では、昔に比べて比重が軽くなった感があります。

■ 決算月の決め方

原則として、決算期間を1年とした場合、何月からその1年(事業年度という)を始めるのが普通なのでしょうか。
論より証拠で、筆者が個人的に半年前に調べた、日本市場で上場している会社(当時、決算月まで把握できた3,277社)の決算月の分布状況を下記に示します。
→参考にしたサイトはこちら(右サイドのリンク一覧からも参照可能)
会計(基礎編)_決算月の分布
まず、大きな特徴として、次のことが挙げられます。

① 3月決算の会社が、全体の7割を占める
② 石油・石炭業界、ゴム製品業界は、12月決算会社もそこそこある
③ 小売業は、2月決算会社が3割以上を占める
④ 銀行業は100%が3月決算会社である(その他の金融業界も3月に集中)


① 3月決算会社が大多数

日本は、政府や学校が4月始まりになっています。官公需が売上に大きく影響する業種は、政府の年度末の予算消化のために、大きな需要の伸びがある3月の売上をいち早く年度業績に反映するために、決算を3月にするのは道理に適っています。
また、学生が3月に学校を卒業して、4月から一斉に新人の入社を迎える、というのも人事上効率がよい、という理由もあります。ただし、最近は通年採用や、海外留学経験者のために10月入社等も増えてきているのが実態です。
② グローバル企業に12月決算が多い
現時点の日本の会計ルールでは、親会社と子会社の決算月が3ヵ月以内のズレなら、子会社の正式な決算データを使って、連結決算をしてよいことになっています。ただし、IFRSは、簡単に言うと、決算月は揃っていないといけない。また、様々な税制上の便宜的にも決算月はグループ各社出揃っていた方が良いこともあります。
そこで、外資が親会社の日本の会社、グローバル化が進んでいる業種では12月決算が多くなる傾向があります。
③ 流通業には2月決算が多い
決算業務には、棚卸(たなおろし)といって、在庫の数量と金額を実際にカウントする作業があります。日本の商習慣上、「にっぱち」といって、2月と8月は商品の動きが鈍くなることが経験則で分かっているので、決算手続を楽にするため、2月に決算をする会社が小売業を中心に少なからず存在するということです。
④ 銀行業は100%が3月決算会社である
銀行法(第17条)にて、4月1日から3月31日と法律で決まっているのです。

■ 決算月にまつわる小話

ちなみに、中国は、法定で12月決算と決まっています。そこで、中国に現地法人を持つ日本企業は、12月決算の数字を使って連結決算をするか、3月に、中国の現地法人だけ仮決算させることも行われています。
政府の会計期間に企業も強制的に合わせられているのですね。
ということで、今度は世界の政府(公共機関)の会計期間が気になりませんか?
会計(基礎編)_世界の公共機関の会計期間
最後に、強烈な会計期間の変更についてのお話をします。
税制改正により2012年4月1日以降に開始する事業年度から、法人税率が5%引き下げられたことはご存知ですか? キーエンスは3月20日を決算日としていた為に、新しい税率の適用を受けるのは2013年3月21日から始まる事業年度からになってしまいます。
(決算日は必ずしも月末日でなくてもいいのですよね。決算月が自由なら決算日の設定も日本では自由です)
そこで、キーエンスは、
第41期の事業年度を、2012年3月21日~6月20日の3ヵ月、と繰り上げ、
第42期の事業年度を、2012年6月21日~2013年3月20日の6ヵ月、で締切り、
第43期の事業年度を、2013年3月21日~2014年3月20日の1年間に再び戻す
ということで、第42期の法人税負担額を40億円ほど節約しました。
ここまで、「「決算」について(2)- 配当と決算月」の説明をしました。
会計(基礎編)_「決算」について(2)- 配当と決算月

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http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/07/3c971502de75240f1831fd45c1169d291.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/07/3c971502de75240f1831fd45c1169d291-150x150.jpg小林 友昭会計(基礎編)■ 「決算」→「配当」の支払い 「前回」は、「決算」について、「会計期間」と「財務諸表」との関係を説明しました。 では、なぜ「決算」といって、会社業績を一定期間を置いて明らかにする必要があるのでしょうか。「財務諸表」をつくるため? いやいや、そうならば、なぜ「財務諸表」を作らねばならないのでしょうか? このシリーズの最初の方(利益情報の意味)でも言及しましたが、 ①経営者の頑張りを評価して経営者への報酬額を明らかにするため (→ 業績評価利益の計算) ②株主に配当金をいくら支払っていいか明らかにするため (→ 配当可能利益の計算) では、「決算」タイミングと「配当金」の支払いについて、これまでの歴史的経緯を振り返ってみたいと思います。 旧商法(昔の会社に対する法律)では、1974年10月の改正前までは、年2回、決算することが決まっていて、株主は年2回、配当金をもらうことができました。しかし、配当金をいくらにするかは、株主総会といって、全株主が集まった会議の場で決める必要があります。 この74年時の法改正で、決算を1年間と定められた会社には、一定のルール(配当可能限度額の計算ルール)を守るなら、いちいち全株主が集まって議論しなくても、取締役会が代わりに、正式な1年ごとの決算(本決算という)の丁度真ん中の6か月たった時点(基準日という)で、「中間配当」を支払うことができるようにしました。 最近では、「会社法」が新たに制定(2006年)され、従来は最大年2回に配当金の支払いが制限されていたものを、配当可能限度額のルールを守るなら、取締役会の決議で、いつでも配当金の支払いをすることができるようになりました。 理屈の上では毎日、配当金を出すことができます。まあ、節度を守るなら、四半期決算ごとに配当金を支払う、というのが適切かもしれません。 ちなみに、この記事を書いている時点でのWiKi調べでは、四半期配当会社は次の通りです。 あおぞら銀行(8304) イー・アクセス(9427) スミダコーポレーション(6817) GMOインターネット(9449) 東京リスマチック(7861) 日立工機(6581) ホギメディカル(3593) ホンダ(7267) リンクアンドモチベーション(2170) したがって、従来の「決算」に込められた株主の思いという点では、昔に比べて比重が軽くなった感があります。 ■ 決算月の決め方 原則として、決算期間を1年とした場合、何月からその1年(事業年度という)を始めるのが普通なのでしょうか。 論より証拠で、筆者が個人的に半年前に調べた、日本市場で上場している会社(当時、決算月まで把握できた3,277社)の決算月の分布状況を下記に示します。 →参考にしたサイトはこちら(右サイドのリンク一覧からも参照可能) まず、大きな特徴として、次のことが挙げられます。 ① 3月決算の会社が、全体の7割を占める ② 石油・石炭業界、ゴム製品業界は、12月決算会社もそこそこある ③ 小売業は、2月決算会社が3割以上を占める ④ 銀行業は100%が3月決算会社である(その他の金融業界も3月に集中) ① 3月決算会社が大多数 日本は、政府や学校が4月始まりになっています。官公需が売上に大きく影響する業種は、政府の年度末の予算消化のために、大きな需要の伸びがある3月の売上をいち早く年度業績に反映するために、決算を3月にするのは道理に適っています。 また、学生が3月に学校を卒業して、4月から一斉に新人の入社を迎える、というのも人事上効率がよい、という理由もあります。ただし、最近は通年採用や、海外留学経験者のために10月入社等も増えてきているのが実態です。 ② グローバル企業に12月決算が多い 現時点の日本の会計ルールでは、親会社と子会社の決算月が3ヵ月以内のズレなら、子会社の正式な決算データを使って、連結決算をしてよいことになっています。ただし、IFRSは、簡単に言うと、決算月は揃っていないといけない。また、様々な税制上の便宜的にも決算月はグループ各社出揃っていた方が良いこともあります。 そこで、外資が親会社の日本の会社、グローバル化が進んでいる業種では12月決算が多くなる傾向があります。 ③ 流通業には2月決算が多い 決算業務には、棚卸(たなおろし)といって、在庫の数量と金額を実際にカウントする作業があります。日本の商習慣上、「にっぱち」といって、2月と8月は商品の動きが鈍くなることが経験則で分かっているので、決算手続を楽にするため、2月に決算をする会社が小売業を中心に少なからず存在するということです。 ④ 銀行業は100%が3月決算会社である 銀行法(第17条)にて、4月1日から3月31日と法律で決まっているのです。 ■ 決算月にまつわる小話 ちなみに、中国は、法定で12月決算と決まっています。そこで、中国に現地法人を持つ日本企業は、12月決算の数字を使って連結決算をするか、3月に、中国の現地法人だけ仮決算させることも行われています。 政府の会計期間に企業も強制的に合わせられているのですね。 ということで、今度は世界の政府(公共機関)の会計期間が気になりませんか? 最後に、強烈な会計期間の変更についてのお話をします。 税制改正により2012年4月1日以降に開始する事業年度から、法人税率が5%引き下げられたことはご存知ですか? キーエンスは3月20日を決算日としていた為に、新しい税率の適用を受けるのは2013年3月21日から始まる事業年度からになってしまいます。 (決算日は必ずしも月末日でなくてもいいのですよね。決算月が自由なら決算日の設定も日本では自由です) そこで、キーエンスは、 第41期の事業年度を、2012年3月21日~6月20日の3ヵ月、と繰り上げ、 第42期の事業年度を、2012年6月21日~2013年3月20日の6ヵ月、で締切り、 第43期の事業年度を、2013年3月21日~2014年3月20日の1年間に再び戻す ということで、第42期の法人税負担額を40億円ほど節約しました。 ここまで、「「決算」について(2)- 配当と決算月」の説明をしました。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します