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■ 「決算」の基本

会計(基礎編)
前回」まで、「財務諸表(F/S)」を色々な角度から見てきました。それら「財務諸表」はいつ作成されるのでしょうか。簡単に答えると、「決算(けっさん)した時に作成される」です。では、「決算」とはどういうものでしょうか?
「決算」とは、とりあえず説明の最初なので極端に簡単に言うと、
①ある一定の「会計期間」において、
②「収益(売上など)」と「費用」を集計して、「損益」を計算するとともに、
③「会計期間」の終わる瞬間の会社の「財産」の状況を記録しておくものです。
ここから、ひとつずつ解説していきます。

■ 会計期間

基本は、1年間です。会社法では1年を超えてはいけない、とだけされていますが、いろんな手続きが面倒なので、1年としている会社がほとんどです。後で説明しますが、決算月を変更する時には、「変則決算」といって、1年未満の会計期間が例外的に設定されることがあります。
そこで、「会計年度」という言葉が存在します。カレンダーでは、1年は1月に始まります。カレンダーで始まるのは「年」で、「Calendar Year」、略して「CY」。例えば、2014年は、「CY2014」「CY14」と記載します。日本の学校の新学年やお役所の予算期間は4月に始まります。それを日本語では「年度」と呼び、1月から始まる「年」と区別することがあり、会計の世界でも英語では、「Fiscal Year」、略して「FY」と表記します。2014年度は、「FY14」とか「FY2014」となります。

■ 損益の計算期間

「損益」は、ある「会計期間」の間に積み上がったものを集計していきます。会計期間が4月に始まって3月に終わる1年ならば、12ヵ月間の「収益」と「費用」を合算していきます。
ここで、「中間決算」とか「四半期決算」を説明します。「中間決算」は、1年である「本決算」の前半6か月、「四半期決算」は、会計年度の3か月毎に行われる決算です。中間決算では6か月分、四半期決算では3ヵ月分の「損益」情報を足し込みます。
その際、該当する6か月や3ヵ月の間だけの「単期」か、年度末のゴールに向かって経過月の「累計」の両方で業績管理を行います。
下表の第3四半期を例にとると、
単期:50
累計:120
として、業績を管理します。
会計(基礎編)_フロー情報
「制度会計」という会社外部のステークホルダーに情報開示(ディスクローズ)するのは、最短が四半期ということになっています。制度外で、決算の基礎データとして、または「管理会計」として、月次決算や場合によっては日次決算を行うこともあります。特に、商品のコストを計算して、売上原価と在庫金額を明らかにするための「原価計算」は月次で行われることが多く、月次決算制度が前提となっている場合が多くなっています。
ちなみに、「損益」は「フロー情報」といって、その会計期間における「お金」の出入りを「収益」と「費用」という定義でそれぞれ集計し、差し引き計算で算出されます。同じ考え方で、「キャッシュフロー」も「キャッシュ・イン・フロー(現金収入)」と「キャッシュ・アウト・フロー(現金支出)」の差額として計算されます。合計して意味のある情報を「フロー情報」として考えるのが簡単です。
ということで、財務諸表の仲間でいうと、「損益計算書」、「包括利益計算書」、「製造原価報告書(明細書)」や「キャッシュフロー計算書」が会計期間の合算値として作成されます。

■ 財産状況の把握

一方で、「決算」時点の会社の財産、「現金」、「土地」、「商品在庫」とか「建物」などが、いくら残っているかも把握しておく必要があります。また同時に、「資本金」とか「借入金」とか、その時点でいくらのお金を社外から調達しているかも管理しておく必要があります。
こういう情報は「ストック情報」といって、ある「会計期間」の終わりの時点、「期末」と呼ぶのですが、期末時点の残高情報として記録されているものになります。その時点の瞬間値なのですが、その瞬間瞬間でいくらの在高(ありだか)になっているか、把握することも大事ですが、その前回の「期末」からどれだけ増減したかもチェックしておく必要もあります。
そこで、「期末時点」の残高の他に、前回の「期末」からの変動分も「変動業績」として管理します。
下表を例にとると、年度末において、
期末業績:50
前四半期末からの変動業績:10
前年度末からの変動業績:20
として業績を管理します。
会計(基礎編)_ストック情報
このように、ある時点の瞬間値や、各時点間の変動分を計算して作成されるのが、財務諸表の仲間でいうと、「貸借対照表」や「株主資本等変動計算書」になります。

■ (おさらい)「フロー情報」と「ストック情報」の関係

グループ名は『財務諸表』」の回で説明した通り、「ストック情報」である「貸借対照表」に記載されている金額の前期末からの変動分を表したのが「フロー情報」となります。「株主資本等変動計算書」だけは残高の変動分そのものを記録したものなので、厳密には「フロー情報」ではありませんが。
綺麗に「貸借対照表」の増減を「フロー情報」が漏れなくダブりなく、全て説明しきれる関係にあることを、「クリーンサープラス関係」と専門家は呼ぶのですが、残念ながら、現在の制度会計が提供している財務諸表の表示形式では、そのことを確かめることはできないケースがほとんどです。
皆さんに実際にどの会社の連結財務諸表でもいいので、確認してもらいたいと思います。損益計算書が明らかにしている「当期純利益」、包括利益計算書が明らかにしている「包括利益」、キャッシュフロー計算書が明らかにしている「現金(等価物)」などは、貸借対照表には記載がないのです。また、「リサイクリング」といって、包括利益が当期純利益に生まれ変わるケース(基礎編では少々難しいので別シリーズで説明します)まであります。
逆に、貸借対照表に記載のある製品在庫については、現会計ルールの下では「連結」製造原価報告書の開示義務が無いため、「連結」ベースでは、在庫増減を「フロー情報」を絡めて、外部の第三者が開示情報によって把握することはできません。おそらく、社内用でも「連結」製造原価報告書を作成している会社は少ないに違いありませんが。
教科書でいっている高邁な会計理論は、会計実務において確認ができない(反映されていない)ことが多いのは残念なことです。
今回は、「「決算」について(1)」にて、会計期間の設定の基本と、決算で明らかにされる会計情報について説明しました。次回は、引き続き、「「決算」について(2)」として、「決算月」「配当」などについて説明したいと思います。
会計(基礎編)_「決算」について(1)- 会計期間と財務諸表との関係

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http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/07/3c971502de75240f1831fd45c1169d291.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/07/3c971502de75240f1831fd45c1169d291-150x150.jpg小林 友昭会計(基礎編)■ 「決算」の基本 「前回」まで、「財務諸表(F/S)」を色々な角度から見てきました。それら「財務諸表」はいつ作成されるのでしょうか。簡単に答えると、「決算(けっさん)した時に作成される」です。では、「決算」とはどういうものでしょうか? 「決算」とは、とりあえず説明の最初なので極端に簡単に言うと、 ①ある一定の「会計期間」において、 ②「収益(売上など)」と「費用」を集計して、「損益」を計算するとともに、 ③「会計期間」の終わる瞬間の会社の「財産」の状況を記録しておくものです。 ここから、ひとつずつ解説していきます。 ■ 会計期間 基本は、1年間です。会社法では1年を超えてはいけない、とだけされていますが、いろんな手続きが面倒なので、1年としている会社がほとんどです。後で説明しますが、決算月を変更する時には、「変則決算」といって、1年未満の会計期間が例外的に設定されることがあります。 そこで、「会計年度」という言葉が存在します。カレンダーでは、1年は1月に始まります。カレンダーで始まるのは「年」で、「Calendar Year」、略して「CY」。例えば、2014年は、「CY2014」「CY14」と記載します。日本の学校の新学年やお役所の予算期間は4月に始まります。それを日本語では「年度」と呼び、1月から始まる「年」と区別することがあり、会計の世界でも英語では、「Fiscal Year」、略して「FY」と表記します。2014年度は、「FY14」とか「FY2014」となります。 ■ 損益の計算期間 「損益」は、ある「会計期間」の間に積み上がったものを集計していきます。会計期間が4月に始まって3月に終わる1年ならば、12ヵ月間の「収益」と「費用」を合算していきます。 ここで、「中間決算」とか「四半期決算」を説明します。「中間決算」は、1年である「本決算」の前半6か月、「四半期決算」は、会計年度の3か月毎に行われる決算です。中間決算では6か月分、四半期決算では3ヵ月分の「損益」情報を足し込みます。 その際、該当する6か月や3ヵ月の間だけの「単期」か、年度末のゴールに向かって経過月の「累計」の両方で業績管理を行います。 下表の第3四半期を例にとると、 単期:50 累計:120 として、業績を管理します。 「制度会計」という会社外部のステークホルダーに情報開示(ディスクローズ)するのは、最短が四半期ということになっています。制度外で、決算の基礎データとして、または「管理会計」として、月次決算や場合によっては日次決算を行うこともあります。特に、商品のコストを計算して、売上原価と在庫金額を明らかにするための「原価計算」は月次で行われることが多く、月次決算制度が前提となっている場合が多くなっています。 ちなみに、「損益」は「フロー情報」といって、その会計期間における「お金」の出入りを「収益」と「費用」という定義でそれぞれ集計し、差し引き計算で算出されます。同じ考え方で、「キャッシュフロー」も「キャッシュ・イン・フロー(現金収入)」と「キャッシュ・アウト・フロー(現金支出)」の差額として計算されます。合計して意味のある情報を「フロー情報」として考えるのが簡単です。 ということで、財務諸表の仲間でいうと、「損益計算書」、「包括利益計算書」、「製造原価報告書(明細書)」や「キャッシュフロー計算書」が会計期間の合算値として作成されます。 ■ 財産状況の把握 一方で、「決算」時点の会社の財産、「現金」、「土地」、「商品在庫」とか「建物」などが、いくら残っているかも把握しておく必要があります。また同時に、「資本金」とか「借入金」とか、その時点でいくらのお金を社外から調達しているかも管理しておく必要があります。 こういう情報は「ストック情報」といって、ある「会計期間」の終わりの時点、「期末」と呼ぶのですが、期末時点の残高情報として記録されているものになります。その時点の瞬間値なのですが、その瞬間瞬間でいくらの在高(ありだか)になっているか、把握することも大事ですが、その前回の「期末」からどれだけ増減したかもチェックしておく必要もあります。 そこで、「期末時点」の残高の他に、前回の「期末」からの変動分も「変動業績」として管理します。 下表を例にとると、年度末において、 期末業績:50 前四半期末からの変動業績:10 前年度末からの変動業績:20 として業績を管理します。 このように、ある時点の瞬間値や、各時点間の変動分を計算して作成されるのが、財務諸表の仲間でいうと、「貸借対照表」や「株主資本等変動計算書」になります。 ■ (おさらい)「フロー情報」と「ストック情報」の関係 「グループ名は『財務諸表』」の回で説明した通り、「ストック情報」である「貸借対照表」に記載されている金額の前期末からの変動分を表したのが「フロー情報」となります。「株主資本等変動計算書」だけは残高の変動分そのものを記録したものなので、厳密には「フロー情報」ではありませんが。 綺麗に「貸借対照表」の増減を「フロー情報」が漏れなくダブりなく、全て説明しきれる関係にあることを、「クリーンサープラス関係」と専門家は呼ぶのですが、残念ながら、現在の制度会計が提供している財務諸表の表示形式では、そのことを確かめることはできないケースがほとんどです。 皆さんに実際にどの会社の連結財務諸表でもいいので、確認してもらいたいと思います。損益計算書が明らかにしている「当期純利益」、包括利益計算書が明らかにしている「包括利益」、キャッシュフロー計算書が明らかにしている「現金(等価物)」などは、貸借対照表には記載がないのです。また、「リサイクリング」といって、包括利益が当期純利益に生まれ変わるケース(基礎編では少々難しいので別シリーズで説明します)まであります。 逆に、貸借対照表に記載のある製品在庫については、現会計ルールの下では「連結」製造原価報告書の開示義務が無いため、「連結」ベースでは、在庫増減を「フロー情報」を絡めて、外部の第三者が開示情報によって把握することはできません。おそらく、社内用でも「連結」製造原価報告書を作成している会社は少ないに違いありませんが。 教科書でいっている高邁な会計理論は、会計実務において確認ができない(反映されていない)ことが多いのは残念なことです。 今回は、「「決算」について(1)」にて、会計期間の設定の基本と、決算で明らかにされる会計情報について説明しました。次回は、引き続き、「「決算」について(2)」として、「決算月」「配当」などについて説明したいと思います。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します