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■ 「売上方程式」のなぜ?なに?

管理会計(基礎編)
前回」は、「値決め」の考え方の類型化と、それぞれに適合する管理会計的手法(ツール)のお話をしました。今回は、その手法のひとつである「売上方程式」の説明をします。
「売上方程式」とは、別名「レベニュードライバー」とも呼び、その会社がどういう風に収益を得ているか、販売戦略に沿って解析しようとするものです。「売上方程式」は、顧客から貴重な代金を頂戴するロジックを表しているものです。と同時に、その会社が顧客(マーケット)をどのように見ているかの写し鏡ともなっています。
売上を増やしたい場合、売上がどういう構成要素に分解され、それぞれの構成要素ごとに売上増加の施策が考えられます。その的確な施策の立案と実行ができる単位にまで方程式を因数分解していきます。

■ 「売上方程式」の基本形

以下に、売上方程式の基本式を示します。

売上 = 単価 × 数量

まず、売上を増やしたければ、販売単価を上げる(値上げ)をすればよい、というのが、右辺の第1項が示しています。次に、販売数量を増やせば売上が増えると考えるのが、右辺の第2項が示すところです。
実務では、両者のコンビネーションについて想像を巡らす場合が多いです。
例えば、「数量」を伸ばしたいので、「値引き」をするという販売施策があるとします。売上方程式の「単価」は減少するのですが、その減少を補って余る以上の増数効果がある場合は、トータルで売上が増えます。いわゆる価格弾力性が1以上であることが値引き施策が増収につながる条件となります。

■ 「売上方程式」の設定パターン

一応、筆者もコンサルタントなので、いわゆる類型化をして説明することがもはやコンサルの習性として身に染みています。実務での「売上方程式」の設定パターンを次に説明します。
① かけ算方式
販売施策ごとに、乗算していくと、全社の売上になるように仕組まれた式を作成します。
例えば、マーケット規模の自体拡大とそのマーケット内でのシェア拡大の2つが主な販売施策の会社ならば、

売上(円) = 市場規模(円) × 自社のシェア(%)
10,000円 = 200,000円 × 5%

という感じになります。
マーケット規模の拡大は、業界団体を上げての認知活動(○○展示会の実施等)に広告宣伝費をかけ、シェア拡大には、ターゲット顧客への特別割引キャンペーンを仕掛けるなどの販売施策が考えられます。
② 足し算方式
販売施策または提供商品(サービス)を足していくと、全社の売上になるように仕組まれた式を作成します。
販売施策の場合は、

売上 = チラシ広告による集客売上 + ネット注文による売上 + 一般店頭売上

提供商品(サービス)の場合は、

売上 = 米国市場でのセダンの売上 + 日本市場でのトラックの売上

という感じになります。
足し算なので、それぞれの構成要素別に予算(販売目標)を立てて、ガッツリとノルマ管理するのに適しています。
③ KPI方式
大事にしている販売施策上の管理指標単位の売上高を分析できるような式を作成します。
例として、1店舗当たりの1日の売上(日販(にっぱん))を重要管理項目としている場合、

X店の売上(日販) = X店の3ヵ月移動売上(月次) ÷ 営業日(月次)

という感じです。

2014/11/27付 |日本経済新聞|朝刊
ローソン変われるか(中)埋めたい「日販12万円の差」 対セブン商品力磨く

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

上記の新聞記事の内容を引用すると、
———————————–
「日販の差12万円」――。ローソンの大きな課題が、コンビニエンスストア最大手のセブン―イレブン・ジャパンとの売り上げの差だ。2013年度の1日1店当たりの平均売上高(日販)はセブンの66万4千円に対して、ローソンは54万2千円。商品力の差をどう埋めるのかが、本丸のコンビニ生き残りに向けたカギとなる。
————————————
とあり、店舗の魅力向上のため、商品力をどうにかしたい、その商品施策の出来不出来を日販で評価・管理するというコンビニ業界の実例になります。

■ 「売上方程式」の事例紹介

せっかくなので、筆者の手元にある例をご紹介したいと思います。常日頃から、新聞記事や各社の決算報告資料から、その会社や業界が大事にしている「売上方程式」情報が採取できるよう努力しています。筆者も、コンサルテーション実務の中や、新聞などのマスメディア、各社のIR情報からストックを増やしています。
① かけ算方式 で 消費財
管理会計(基礎編)_売上方程式_消費財
上記の表中の丸にばってんのマークはここで「かけ算」をすることを意味しています。
BtoCの典型例を図にしてみました。
② 足し算方式 で 生産財(産業財)
管理会計(基礎編)_売上方程式_生産財
既存顧客からの売上と新規顧客からの売上にまず分けます。それぞれの因数分解のされ方を見て頂けるとお分かりでしょうが、既存顧客と新規顧客の攻め方が違いますので、それぞれの攻め方が有効だったかどうかを確認するために、違う方程式を使いたいため、最初に分けるのです。ちなみに、図中の丸に十字は、ここで「足し算」をすることを意味しています。
BtoBの典型例を図にしてみました。
最後はちょっと視点が違って、業界ごとに代表的な「売上方程式」を抜粋したものを下記に示します。
管理会計(基礎編)_売上方程式_業界別
かけ算方式、足し算方式、KPI方式、といろいろバリエーションがあることを感じてもらえればと思います。
ただし、いろいろあるなぁ~、と眺めているだけでは能がありません。なぜ、この業界はこの売上方程式を使っているのか、それぞれ各社の背後にある販売施策について想像を巡らせていただければと思います。
ここまで、「売上方程式」の説明をしました。
管理会計(基礎編)_売上方程式

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