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■ はじめに

経営戦略(基礎編)
よく、「経営戦略」の基本的な考え方を整理するために、古典の部類に入る「兵法書」「軍事学」から、現代ビジネスに活用できる一節だけを引用し、歴史上の古戦や現代におけるビジネスケースに当てはめて解説している本が多く流布しています。手っ取り早く、「孫子」「クラウゼヴィッツ」「リデルハート」などのエッセンスだけつまみ食いしていますが、体系的に理解しようとすると、全編の解説を足早やでもいいので、ざっと見ていく必要があります。
本シリーズは、「孫子」の「ほんとうにいいたかったこと」が現代のビジネスパーソンの「戦略脳」を鍛えることの一助になればとの思いから、全編の解説を試みるものです。
出所は、浅野裕一著「孫子」(講談社学術文庫)になります。「訓詁学(くんこがく)」:古代の書の意味を研究するにおいて、出土した一番古い文献に基づくことが基本となっており、本書はその習いで、当時(今もですが)で最古と考えられる竹簡を元にしているため、一般に流布している「武経七書本」「宋本十一家注本」のいずれとも系統が異なること、専門家の方にはあらかじめ断っておきます。

孫子 (講談社学術文庫)


では全体の構成・数が分からないと、最後までお付き合い頂けないかもしれませんね。
「孫子」は、「13章」「70節」から成ります。1ブログ記事で1節を基本にしたいと思っていますので、胸を張って「孫子」の解説を目にした、というためには、これから約70記事を読んで頂く必要があります。
最後までお付き合い頂ければ幸いです。

■ 国の命運をかける重大事に際しての心構え

軍事とは、国家の命運を決する重大事であるため、国家存亡をかけた一大決戦をする際の進路の選択は、慎重を期してもしすぎることはありません。そこで、孫子は、一大決戦に向けた戦略策定において、彼我の優越を具体的に評価するための5つの基本事項を示しました。
① 道(ビジョンとミッションの共有)
民衆の意思を統治者に同化させる。平時からこれを実現しておかないと、いざ戦時になった時に民衆と指導者とが死生を共にしようとは思わなくなる。
② 天(マクロ経営環境)
四季の推移の定めや、天候への順応度、客観的に自分たちが置かれている立場がどうなっているのかの把握、外部環境からもたらされる変化にどう立ち向かうべきかに対する認識をきちんと持つ。
③ 地(事業ドメイン)
戦場の地形・地勢は、軍が敗れるか生存するか、いずれの姿を見せているか。勝利の確率が高い戦場としてどこに戦いの場を設定するか。経営資源はどれくらい必要として、今現在どれくらい蓄えがあるのか(無ければ調達する術が分かっているか)。
④ 将(経営者・管理職のスキルと適性)
洞察力、部下からの信頼、部下を思いやる仁慈の心、困難に挫けない勇気、軍律を維持する厳格さといった能力を経営者や管理職が有しているか。
⑤ 法(指揮命令系統と業績評価体系)
部署ごとのミッション、管理職の命令権限、君主(経営者)が将軍(管理職)と交わした期初の握り(コミットメント)が明確に定義されているか。
以上のことは、頭で分かっている(観念的知識)だけは不十分です。具体的に、比較・計量する基準を自社と競合の双方に適用し、採用したい施策評価に活用することで、実際に競争優位があるかを検証するのです。
こうした比較・計量を事前に行うことによって、開戦前から既に勝敗の帰趨を察知することができるのです。
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戦争は、数多くの要素が絡み合い、偶然に左右されることも多々あります。しかし、大局的に観れば、総合戦力で優勢なものが結局は最後の勝利を勝ち取るものです。そういう意味では、勝利と敗北は、戦う前から必然のものであるともいえます。
とするならば、彼我の総合戦力の優劣を比較・計量して見える化することで、事前に戦局の推移と勝敗を予測することができるようになります。そうして、確実な勝算が得られた場合に限って戦いを行い、あらかじめ策定しておいた経営戦略に従って、既に約束された勝利を抜かりなく実現するのです。
逆に、勝算が立たないと思った戦いは断固として始めない。自国(自社)に有利な条件が整うまで、戦争を回避し続けるのです。これこそが、国家と民衆の命運を託され、国(会社)を指導する者の重い責務なのです。
孫子の兵法(入門編)_第1章 計篇 兵とは国の大事なり

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孫子 第1章 計篇 1 兵とは国の大事なりhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/ab47f6b60b2243be5165d08fde098dfb-e1428423948658.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/ab47f6b60b2243be5165d08fde098dfb-150x150.jpg小林 友昭孫子の兵法(入門編)孫子,兵法,戦略■ はじめに よく、「経営戦略」の基本的な考え方を整理するために、古典の部類に入る「兵法書」「軍事学」から、現代ビジネスに活用できる一節だけを引用し、歴史上の古戦や現代におけるビジネスケースに当てはめて解説している本が多く流布しています。手っ取り早く、「孫子」「クラウゼヴィッツ」「リデルハート」などのエッセンスだけつまみ食いしていますが、体系的に理解しようとすると、全編の解説を足早やでもいいので、ざっと見ていく必要があります。 本シリーズは、「孫子」の「ほんとうにいいたかったこと」が現代のビジネスパーソンの「戦略脳」を鍛えることの一助になればとの思いから、全編の解説を試みるものです。 出所は、浅野裕一著「孫子」(講談社学術文庫)になります。「訓詁学(くんこがく)」:古代の書の意味を研究するにおいて、出土した一番古い文献に基づくことが基本となっており、本書はその習いで、当時(今もですが)で最古と考えられる竹簡を元にしているため、一般に流布している「武経七書本」「宋本十一家注本」のいずれとも系統が異なること、専門家の方にはあらかじめ断っておきます。 孫子 (講談社学術文庫) では全体の構成・数が分からないと、最後までお付き合い頂けないかもしれませんね。 「孫子」は、「13章」「70節」から成ります。1ブログ記事で1節を基本にしたいと思っていますので、胸を張って「孫子」の解説を目にした、というためには、これから約70記事を読んで頂く必要があります。 最後までお付き合い頂ければ幸いです。 ■ 国の命運をかける重大事に際しての心構え 軍事とは、国家の命運を決する重大事であるため、国家存亡をかけた一大決戦をする際の進路の選択は、慎重を期してもしすぎることはありません。そこで、孫子は、一大決戦に向けた戦略策定において、彼我の優越を具体的に評価するための5つの基本事項を示しました。 ① 道(ビジョンとミッションの共有) 民衆の意思を統治者に同化させる。平時からこれを実現しておかないと、いざ戦時になった時に民衆と指導者とが死生を共にしようとは思わなくなる。 ② 天(マクロ経営環境) 四季の推移の定めや、天候への順応度、客観的に自分たちが置かれている立場がどうなっているのかの把握、外部環境からもたらされる変化にどう立ち向かうべきかに対する認識をきちんと持つ。 ③ 地(事業ドメイン) 戦場の地形・地勢は、軍が敗れるか生存するか、いずれの姿を見せているか。勝利の確率が高い戦場としてどこに戦いの場を設定するか。経営資源はどれくらい必要として、今現在どれくらい蓄えがあるのか(無ければ調達する術が分かっているか)。 ④ 将(経営者・管理職のスキルと適性) 洞察力、部下からの信頼、部下を思いやる仁慈の心、困難に挫けない勇気、軍律を維持する厳格さといった能力を経営者や管理職が有しているか。 ⑤ 法(指揮命令系統と業績評価体系) 部署ごとのミッション、管理職の命令権限、君主(経営者)が将軍(管理職)と交わした期初の握り(コミットメント)が明確に定義されているか。 以上のことは、頭で分かっている(観念的知識)だけは不十分です。具体的に、比較・計量する基準を自社と競合の双方に適用し、採用したい施策評価に活用することで、実際に競争優位があるかを検証するのです。 こうした比較・計量を事前に行うことによって、開戦前から既に勝敗の帰趨を察知することができるのです。 ----------------- 戦争は、数多くの要素が絡み合い、偶然に左右されることも多々あります。しかし、大局的に観れば、総合戦力で優勢なものが結局は最後の勝利を勝ち取るものです。そういう意味では、勝利と敗北は、戦う前から必然のものであるともいえます。 とするならば、彼我の総合戦力の優劣を比較・計量して見える化することで、事前に戦局の推移と勝敗を予測することができるようになります。そうして、確実な勝算が得られた場合に限って戦いを行い、あらかじめ策定しておいた経営戦略に従って、既に約束された勝利を抜かりなく実現するのです。 逆に、勝算が立たないと思った戦いは断固として始めない。自国(自社)に有利な条件が整うまで、戦争を回避し続けるのです。これこそが、国家と民衆の命運を託され、国(会社)を指導する者の重い責務なのです。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します