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■ 花王が25期連続増配記録更新へ

経営管理会計トピック
花王の連続増配記録がさらに伸びそうです。当然、高収益の結果としての増配だと思いますので、いろいろと財務数値的な裏をとって見てみたいと思います。

2014/12/27|日本経済新聞|朝刊
戦略を聞く 花王・沢田道隆社長 連続増配記録にこだわり

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「花王の株価は2014年、上場66年目にして「成長株」のような値動きになった。年間で50%弱上昇し、14年ぶりに上場来高値を塗り替えた。2014年12月期で国内上場企業最長となる25期連続増配を可能にする高い収益力が、改めて株式市場で評価された。」

■ まず財務政策に対する基本方針の確認から

新聞記事から、連続増配に向けて、どのように考えているのかを抜き出してみたいと思います。
「連続増配にはこだわる。厳しい時代でも1円でも増配を、とやってきた。先輩たちがつないだ思いは絶対に私の代で途切らせられない」
「そのためにも絶対に必要なのが利益成長だ。投資を減らして配分に回すことはない。今期の設備投資は前期比2%増の650億円だが来期はもっと増やす。設備投資、研究開発費を増やしながら利益成長し、配当もしっかり出す」
つまりですね、どこかの会社みたいに、内部留保を将来投資に一切回さずに「総還元性向100%」と宣言して、小手先で株価をつり上げる(おっと失礼!)のではなく、きちんと、やるべき先行投資をしっかり行い、果実としての利益を株主にも分配して報いる、という極めて真っ当な考えでやっている、ということだそうです。

■ ヒストリカルデータを分析してみました

花王のホームページにアクセスし、手に入る有価証券報告書からデータを引っ張ってきて、増配記録更新中の利益成長の軌跡を検証してみました。
FY2000から14期分しかデータが取れなかったので、24期にはあと10期足りませんでしたが。
下記の数表とグラフをご覧ください。利益成長(?)に比例して、株主還元(配当金支払+自己株式消却)がどれくらい伸長しているでしょうか?
※ 配当金支払総額については、当期の株主資本等変動計算書から抜き出しています。つまり、期末配当は翌期の支払い配当額に含まれるようになっています。
経営管理会計トピック_花王_連続増配_数表 
経営管理会計トピック_花王_連続増配_グラフ
まず、「配当金」ですが、FY00からFY13にかけて、2.4倍になっています。ただし、1株当たり配当金は2.9倍になっています。この差は、自己株式取得により、「配当金支払対象株式数」が減ったことによります。実際に、自己株式を消却していますし、保有自己株式には配当は支払われませんので(会社法453条)。そのことは、配当対象株式数がFY13に「84」と、FY00比で、16%減少したことに表れています。
では、上記の配当関係の伸びが、利益成長の当然の帰結なのか、次に確認してみたいと思います。
「当期純利益」は、FY00に比べて、FY13で「109」。FY04までは利益成長があったのですが、それ以降は目立って当期純利益の総額は増えていません。むしろ、リーマンショック以降は指数が「100」を切っています。
「利益剰余金(Net)」は、FY13に「137」となっており、FY00比で37%増加していますが、前年からは17ポイント減少しています。この「Net」というのは、「利益剰余金」から保有「自己株式」価額を差し引いたものを意味しています。この17ポイントは自己株式取得が影響しているとお考えください。
つまりですね、FY04ごろまでは、利益成長に伴った増配だったのですが、それ以降は演出されている可能性が高いということです。「当期純利益」や「利益剰余金(Net)」の伸び率とはどんどん開きが大きくなってきています。
貸借対照表の借方の固定資産増(につながる設備投資など)は、いくらやってもらってもいいのですが、究極的には、フローの当期純利益増か、ストックの長期的累積利益である利益剰余金増につながっていないと、実質的に企業価値が増大しているとは言えないと思いますが如何でしょうか?
逆に言えば、最高の「アナウンスメント効果」が発揮され、IR的には大成功している、のだと思います。
最後に、花王の経営陣に対するストックオプションがどれだけ実行されているかご存知ですか?
(そりゃ、見かけ上の株価はどんどん上昇していってもらわないと損ですよね!)
表面的な報道だけでなく、数字をちょっと検証してみれば、誰のどんな意図で作られた財務数字なのか、理解が進むのではと思います。
(ちょっと(?)オブラートに包んで書いているので、分かりにくかった人は、問い合わせフォームから質問してください。個別にコメントさせていただきます)

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小林 友昭会計で経営を読む■ 花王が25期連続増配記録更新へ 花王の連続増配記録がさらに伸びそうです。当然、高収益の結果としての増配だと思いますので、いろいろと財務数値的な裏をとって見てみたいと思います。 2014/12/27|日本経済新聞|朝刊 戦略を聞く 花王・沢田道隆社長 連続増配記録にこだわり(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 「花王の株価は2014年、上場66年目にして「成長株」のような値動きになった。年間で50%弱上昇し、14年ぶりに上場来高値を塗り替えた。2014年12月期で国内上場企業最長となる25期連続増配を可能にする高い収益力が、改めて株式市場で評価された。」 ■ まず財務政策に対する基本方針の確認から新聞記事から、連続増配に向けて、どのように考えているのかを抜き出してみたいと思います。 「連続増配にはこだわる。厳しい時代でも1円でも増配を、とやってきた。先輩たちがつないだ思いは絶対に私の代で途切らせられない」 「そのためにも絶対に必要なのが利益成長だ。投資を減らして配分に回すことはない。今期の設備投資は前期比2%増の650億円だが来期はもっと増やす。設備投資、研究開発費を増やしながら利益成長し、配当もしっかり出す」 つまりですね、どこかの会社みたいに、内部留保を将来投資に一切回さずに「総還元性向100%」と宣言して、小手先で株価をつり上げる(おっと失礼!)のではなく、きちんと、やるべき先行投資をしっかり行い、果実としての利益を株主にも分配して報いる、という極めて真っ当な考えでやっている、ということだそうです。 ■ ヒストリカルデータを分析してみました花王のホームページにアクセスし、手に入る有価証券報告書からデータを引っ張ってきて、増配記録更新中の利益成長の軌跡を検証してみました。 FY2000から14期分しかデータが取れなかったので、24期にはあと10期足りませんでしたが。 下記の数表とグラフをご覧ください。利益成長(?)に比例して、株主還元(配当金支払+自己株式消却)がどれくらい伸長しているでしょうか? ※ 配当金支払総額については、当期の株主資本等変動計算書から抜き出しています。つまり、期末配当は翌期の支払い配当額に含まれるようになっています。   まず、「配当金」ですが、FY00からFY13にかけて、2.4倍になっています。ただし、1株当たり配当金は2.9倍になっています。この差は、自己株式取得により、「配当金支払対象株式数」が減ったことによります。実際に、自己株式を消却していますし、保有自己株式には配当は支払われませんので(会社法453条)。そのことは、配当対象株式数がFY13に「84」と、FY00比で、16%減少したことに表れています。 では、上記の配当関係の伸びが、利益成長の当然の帰結なのか、次に確認してみたいと思います。 「当期純利益」は、FY00に比べて、FY13で「109」。FY04までは利益成長があったのですが、それ以降は目立って当期純利益の総額は増えていません。むしろ、リーマンショック以降は指数が「100」を切っています。 「利益剰余金(Net)」は、FY13に「137」となっており、FY00比で37%増加していますが、前年からは17ポイント減少しています。この「Net」というのは、「利益剰余金」から保有「自己株式」価額を差し引いたものを意味しています。この17ポイントは自己株式取得が影響しているとお考えください。 つまりですね、FY04ごろまでは、利益成長に伴った増配だったのですが、それ以降は演出されている可能性が高いということです。「当期純利益」や「利益剰余金(Net)」の伸び率とはどんどん開きが大きくなってきています。 貸借対照表の借方の固定資産増(につながる設備投資など)は、いくらやってもらってもいいのですが、究極的には、フローの当期純利益増か、ストックの長期的累積利益である利益剰余金増につながっていないと、実質的に企業価値が増大しているとは言えないと思いますが如何でしょうか? 逆に言えば、最高の「アナウンスメント効果」が発揮され、IR的には大成功している、のだと思います。 最後に、花王の経営陣に対するストックオプションがどれだけ実行されているかご存知ですか? (そりゃ、見かけ上の株価はどんどん上昇していってもらわないと損ですよね!) 表面的な報道だけでなく、数字をちょっと検証してみれば、誰のどんな意図で作られた財務数字なのか、理解が進むのではと思います。 (ちょっと(?)オブラートに包んで書いているので、分かりにくかった人は、問い合わせフォームから質問してください。個別にコメントさせていただきます)現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します