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■ 現金商売から信用取引へ

会計(基礎編)
前回は、「貸借対照表」を使って、財産の増え分から利益を計算する方法、「損益計算書」を使って、財産の増減を表す取引を漏らさず集計して利益を計算する方法、そしてこの2つの方法で計算される「利益」は原則一致することを説明しました。
理解のコツは、「資産(財産)」の増加分が「利益」という理屈なんだと肌で感じることです。
さて、玩具屋さんの経営を通して、みなさんは「利益」の計算方法を習得されたかと思いますが、今回は、もう少し実際のビジネスに近い取引をベースにして、ケースの難易度を上げたいと思います。
ここを通過しないと、第3の会計帳簿である「キャッシュフロー計算書」まで辿り着けないので。。。
それは、「信用取引」によって商売を回すということになります。「会計の歴史」で触れましたが、産業革命以後の「損益法」「収益費用アプローチ」による「利益」計算は、2つのポイントがあり、そのひとつがこの「信用取引」をどうやって「損益計算書」に記録しているかにかかっています。
現金取引でなくても、会社の財産が増えたり減ったりする取引も「損益計算書」に記録していきましょう、これが「損益計算書」の進化というわけです。

■ お父さんに出資してもらうところからやり直し

前回までの「おさらい」を兼ねて、田舎のお父さんに会社設立の資金を出してもらうところから再スタートしましょう。
《1.会社設立》
あなたは、玩具屋を始めるにあたり、会社設立資金を用意しました。

  • 父親が株主になって100万円の出資をしてもらった。会社名義の預金口座に振り込んでもらった
  • 信用金庫から100万円の融資をしてもらった。同じく、会社名義の預金口座に振り込んでもらった

会計(基礎編)_貸借対照表_信用取引_会社設立
《2.開業準備》
あなたは、玩具屋を開くための店舗を、用意した開業資金を使って不動産屋から購入しました。くどいようですが、手元資金と店舗を等価交換しているので、この店舗購入取引から会社の資産は増えない、つまり、利益は発生しないので、「損益計算書」には何も記載されません。

  • 会社名義の預金口座から100万円を引き出して、不動産屋に支払って、代わりに店舗を手に入れた

会計(基礎編)_貸借対照表_信用取引_開業準備
《3.商品購入》
あなたは、前職の友人の紹介で問屋を紹介してもらい、売り物である玩具を購入することにしました。友人と問屋は数年来の付き合いだったので、あなたのことも信頼してもらい、現金ではなく、「つけ」で商品を購入させてもらえることになりました。
(⇒これが信用取引①)

  • 問屋にいつか現金を支払う約束をして、商品100万円を購入した。これは、手元の現金と等価交換していないので、100万円分だけ会社の財産が増えると考えることができる。

会計(基礎編)_損益計算書_信用取引_商品仕入

  • 「つけ払い」とは、将来に問屋に代金を支払うことを猶予してもらっていることになり、問屋にお金を借りているのと同じなので、「負債」に同額の100万円を記録した

会計(基礎編)_貸借対照表_信用取引_商品仕入
《4.商品販売》
あなたは、来店したお客様に商品を販売しました。レジでお客様がクレジットカードによる決済を選択されて、ボーナス時一括払いということになりました。クレジットカードで販売する場合は、販売金額を毎月、月末日や20日で締めて(集計して)、翌月15日に契約された銀行口座から販売額分がお客様の口座から入金されるということです。
(⇒これが信用取引②)

  • お店に陳列していた商品100万円が完売し、モノはお客様がすべて持ち帰ってしまった
  • 同時に、お客様から代金として現金を受け取る代わり、クレジットカードで200万円を将来に支払ってもらう権利を受け取った
会計(基礎編)_損益計算書_信用取引_商品販売
  • 商品が100万円分、会社の財産からなくなり、代わりにクレジットカードの請求権:200万円分だけ会社の財産が増えた。財産の増減は、「貸借対照表」に記録される。

会計(基礎編)_貸借対照表_信用取引_商品販売
《5.給与支払い》
サラリーマン社長として、自分の給料を会社から支払ってもらいます。

  • 会社の預金口座から30万円を自分の個人用の預金口座へ振り込んだ

会計(基礎編)_損益計算書_信用取引_給与支払

 

  • 会社の財産である預金が減ったので、その分を「貸借対照表」にも記録する

会計(基礎編)_貸借対照表_信用取引_給与支払
《6.利息の支払い》
融資をしてくれた信用金庫へ借入利息を支払う必要があります。利率は10%を約束していたので、
元金:100万円 × 利率:10% = 10万円
を信用金庫に支払います。

  • 会社の預金口座から信用金庫の口座へ10万円を振り込んだ

会計(基礎編)_損益計算書_信用取引_利息支払

  • 会社の財産である預金が減ったので、その分を「貸借対照表」にも記録する

会計(基礎編)_貸借対照表_信用取引_利息支払

■ 利益と会社の財産状況はどうなったか

《7.決算》
「信用取引」による商品の売買によって、会社はどれだけ儲けることができたのでしょうか。
「損益計算書」を眺めて、財産の増減明細から「利益」を計算してみましょう。
会計(基礎編)_損益計算書_信用取引_決算
「信用取引」によって、会社の財産と負債にあらたな項目が増えました。
「貸借対照表」を眺めて、財産がどういう項目として増えたか確認してみましょう。
会計(基礎編)_貸借対照表_信用取引_決算
「貸借対照表」の左側には、将来お金になることが確実な「クレジット請求権」、右側には、将来問屋にお金を支払うことが確実な「つけ」が記録されています。この分、現金取引だった場合より、「貸借対照表」の合計金額が100万円分だけ膨らんでいます。
さあ、次はお待ちかね?の「キャッシュフロー計算書」のしくみを見てみましょう。
ここまで、「損益計算書の進化」を説明しました。
会計(基礎編)_損益計算書の進化

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http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/07/3c971502de75240f1831fd45c1169d291.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/07/3c971502de75240f1831fd45c1169d291-150x150.jpg小林 友昭会計(基礎編)■ 現金商売から信用取引へ 前回は、「貸借対照表」を使って、財産の増え分から利益を計算する方法、「損益計算書」を使って、財産の増減を表す取引を漏らさず集計して利益を計算する方法、そしてこの2つの方法で計算される「利益」は原則一致することを説明しました。 理解のコツは、「資産(財産)」の増加分が「利益」という理屈なんだと肌で感じることです。 さて、玩具屋さんの経営を通して、みなさんは「利益」の計算方法を習得されたかと思いますが、今回は、もう少し実際のビジネスに近い取引をベースにして、ケースの難易度を上げたいと思います。 ここを通過しないと、第3の会計帳簿である「キャッシュフロー計算書」まで辿り着けないので。。。 それは、「信用取引」によって商売を回すということになります。「会計の歴史」で触れましたが、産業革命以後の「損益法」「収益費用アプローチ」による「利益」計算は、2つのポイントがあり、そのひとつがこの「信用取引」をどうやって「損益計算書」に記録しているかにかかっています。 現金取引でなくても、会社の財産が増えたり減ったりする取引も「損益計算書」に記録していきましょう、これが「損益計算書」の進化というわけです。 ■ お父さんに出資してもらうところからやり直し 前回までの「おさらい」を兼ねて、田舎のお父さんに会社設立の資金を出してもらうところから再スタートしましょう。 《1.会社設立》 あなたは、玩具屋を始めるにあたり、会社設立資金を用意しました。 父親が株主になって100万円の出資をしてもらった。会社名義の預金口座に振り込んでもらった 信用金庫から100万円の融資をしてもらった。同じく、会社名義の預金口座に振り込んでもらった 《2.開業準備》 あなたは、玩具屋を開くための店舗を、用意した開業資金を使って不動産屋から購入しました。くどいようですが、手元資金と店舗を等価交換しているので、この店舗購入取引から会社の資産は増えない、つまり、利益は発生しないので、「損益計算書」には何も記載されません。 会社名義の預金口座から100万円を引き出して、不動産屋に支払って、代わりに店舗を手に入れた 《3.商品購入》 あなたは、前職の友人の紹介で問屋を紹介してもらい、売り物である玩具を購入することにしました。友人と問屋は数年来の付き合いだったので、あなたのことも信頼してもらい、現金ではなく、「つけ」で商品を購入させてもらえることになりました。 (⇒これが信用取引①) 問屋にいつか現金を支払う約束をして、商品100万円を購入した。これは、手元の現金と等価交換していないので、100万円分だけ会社の財産が増えると考えることができる。 「つけ払い」とは、将来に問屋に代金を支払うことを猶予してもらっていることになり、問屋にお金を借りているのと同じなので、「負債」に同額の100万円を記録した 《4.商品販売》 あなたは、来店したお客様に商品を販売しました。レジでお客様がクレジットカードによる決済を選択されて、ボーナス時一括払いということになりました。クレジットカードで販売する場合は、販売金額を毎月、月末日や20日で締めて(集計して)、翌月15日に契約された銀行口座から販売額分がお客様の口座から入金されるということです。 (⇒これが信用取引②) お店に陳列していた商品100万円が完売し、モノはお客様がすべて持ち帰ってしまった 同時に、お客様から代金として現金を受け取る代わり、クレジットカードで200万円を将来に支払ってもらう権利を受け取った 商品が100万円分、会社の財産からなくなり、代わりにクレジットカードの請求権:200万円分だけ会社の財産が増えた。財産の増減は、「貸借対照表」に記録される。 《5.給与支払い》 サラリーマン社長として、自分の給料を会社から支払ってもらいます。 会社の預金口座から30万円を自分の個人用の預金口座へ振り込んだ   会社の財産である預金が減ったので、その分を「貸借対照表」にも記録する 《6.利息の支払い》 融資をしてくれた信用金庫へ借入利息を支払う必要があります。利率は10%を約束していたので、 元金:100万円 × 利率:10% = 10万円 を信用金庫に支払います。 会社の預金口座から信用金庫の口座へ10万円を振り込んだ 会社の財産である預金が減ったので、その分を「貸借対照表」にも記録する ■ 利益と会社の財産状況はどうなったか 《7.決算》 「信用取引」による商品の売買によって、会社はどれだけ儲けることができたのでしょうか。 「損益計算書」を眺めて、財産の増減明細から「利益」を計算してみましょう。 「信用取引」によって、会社の財産と負債にあらたな項目が増えました。 「貸借対照表」を眺めて、財産がどういう項目として増えたか確認してみましょう。 「貸借対照表」の左側には、将来お金になることが確実な「クレジット請求権」、右側には、将来問屋にお金を支払うことが確実な「つけ」が記録されています。この分、現金取引だった場合より、「貸借対照表」の合計金額が100万円分だけ膨らんでいます。 さあ、次はお待ちかね?の「キャッシュフロー計算書」のしくみを見てみましょう。 ここまで、「損益計算書の進化」を説明しました。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します