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■ 管理会計で着目すべきもの

管理会計(基礎編)
前回、「相対的真実」の制約条件の中で、「比較」精神を発揮して、意思決定に役立つ比較データを作成(選択案の比較検証)する営みを管理会計と説明しました。では、管理会計的思考をめぐらして、何を比較検討して、何をジャッジするのでしょうか?
(イントロダクション)-『管理会計』またの名を『戦略会計』」にて、管理会計が目指すところを会社の「Going Concern」と「Profitability」の視点から「会社が儲かり続けるしくみづくりのお手伝い」をすることと表現しました。これは、言い換えると、「会社が継続していくための資金が十分に確保できていること」と「会社が十分に儲かる事業を営めるようにすること」を会計的数値ベースで考えていけるようにすることともいえます。
結局のところ、「儲かって」⇒「会社運営の資金を得ること」が大事ということになります。すべての始まりは「いくら儲かったか」「どうすれば儲かるか」という思考をめぐらすことになります。
ここで注意して頂きたいのは、「革新的な製品・サービスを市場に出して社会貢献したい」「地方の経済を活性化したい」という経営そのものの動機は筆者も立派だと思っていることを理解してもらいたいのです。そのうえで、そういう立派な動機(ミッション)を達成するために、活動資金が必要なだけで、その活動資金は会社の儲け(またはこれから儲かるという確信)から得られるということなのです。その儲けをいろいろ測定する技術を管理会計が持っているというわけです。

■ 会社の『儲け』を測るものさし

管理会計で会社がどれだけ儲かったか、その「儲かり度」をはかるものさしは大別して3種類あります。管理会計の世界では、T.P.O. に応じて、この3種類を使い分けます。

  1. 「会計原則」をベースとした「(会計的)利益」
  2. 「税法」をベースとした「所得」
  3. 「キャッシュフロー」をベースとした「キャッシュ」または「現金収支」

そして、「相対的真実」というのは、「会計原則」の中で、会計技法的に「在庫評価法」とか「固定資産の償却法」の選択的適用が可能な状態をいうだけでなく、たった一つの商取引だとしても、上記の3種類の方法で評価すると、どれくらい儲かったかの結論が異なってくることも意味しています。
では、具体的ケースを使って、この3種類の違いを体験してもらいましょう。

■ (ケーススタディ) パソコンレンタル業を始めました

あなたは、PCを企業にレンタルする会社(A社)を始めました。
<脱線>
よく「リース」と「レンタル」の違いは貸し出している期間が相対的に長いか短いかだけの違いとか、言われていますが、根拠となる法律も異なり、いろいろ違いがあります。一番分かりやすい相違点は、「リース」は借り手が最初から特定のリース物件が目的でリース契約を始めること、「レンタル」はレンタル会社が持っている在庫から貸してもらいたいものを選ぶこと、という違いになります。
管理会計(基礎編)_レンタル業のケース
このケースでのポイントは、税法(強制法規)では、法定耐用年数が5年となっていますが、あなたは、このレンタル用PCは、3年のレンタル期間が終了した後に廃棄することを既に決めているので、会計的には、耐用年数3年が適切と考え、税法とは異なる償却期間を選択したというところです。
この「会計的」という判断の裏には、「費用収益対応の原則」があり、レンタル売上が3年にわたって計上されるということは、それに対応する費用も3年で発生を考えるのが適切、というものです。

■ A社の3年間にわたる『儲け』を「会計原則」で測定する

早速、A社のB社に向けた業務用PCのレンタル期間である3年間の『儲け』―「(会計的)利益」の推移を下記のようなグラフにしました。
管理会計(基礎編)_レンタル業の儲け_会計原則
理解のポイントは、このケースでは「税効果会計」を採用しているため、毎年の「法人税」支払額の調整をどう整理できるかにかかっています。
会計的には、毎年の減価償却費は、50,000円としていますので、レンタル売上:100,000円との差し引きで、税前利益が50,000円となります。これに、法人税率:40%が適用されて、法人税を20,000円と計算したくなるところです。ただし、税法では、毎年の減価償却費は30,000円となっているので、レンタル売上:100,000円から、税法が指示する減価償却費30,000円を差し引いた70,000円に法人税率:40%がかかりますので、28,000円が納付すべき法人税額となります。
この、会計的視点からの法人税額:20,000円と、税法が指示する法人税額:28,000円は、3年目に、パソコンを廃棄することでチャラになることが分かっているので、1年目と2年目は税法が言う通りに法人税額:28,000円を納付しますが、会計的には、1年目と2年目は会計側で決めた減価償却費に基づいた利益を計算してあげます。この1年目と2年目の法人税額に対する見解の差異8,000円は費用としてみないが、法人税としては納付(お金はキャッシュアウトする)するので、費用の繰延として、P/L上の費用から除いて、B/Sに繰延資産として計上します。
3年目は、1年目と2年目の税金繰り延べ分を戻してあげます。それが3年目の税金等調整額:16,000円の正体です。さらに、3年目は、税法的にはPCの廃棄損が60,000円分(廃棄時点で残っている法定耐用年数分の未償却金額)が発生するので、60,000円×40%=24,000円だけ、法人税額が少なります。1年目・2年目の納税額:28,000円から24,000円を差し引いた4,000円だけが3年目の法人税額となります。
これが、「税効果会計」を適用した「会計原則」から見た毎年の会社の儲け(=利益)になります。
次回は、同じケースで、それぞれ「税法」と「キャッシュフロー」視点だと、どういう会社の儲けになるのか、説明したいと思います。
ここまで、「管理会計的に『儲け』を測る」を説明しました。
管理会計(基礎編)_管理会計的に『儲け』を測る

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http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/03/9313ed6460f7d58b8e62d9b27fdfc19d-e1428166718340.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/03/9313ed6460f7d58b8e62d9b27fdfc19d-150x150.jpg小林 友昭管理会計(基礎編)■ 管理会計で着目すべきもの 前回、「相対的真実」の制約条件の中で、「比較」精神を発揮して、意思決定に役立つ比較データを作成(選択案の比較検証)する営みを管理会計と説明しました。では、管理会計的思考をめぐらして、何を比較検討して、何をジャッジするのでしょうか? 「(イントロダクション)-『管理会計』またの名を『戦略会計』」にて、管理会計が目指すところを会社の「Going Concern」と「Profitability」の視点から「会社が儲かり続けるしくみづくりのお手伝い」をすることと表現しました。これは、言い換えると、「会社が継続していくための資金が十分に確保できていること」と「会社が十分に儲かる事業を営めるようにすること」を会計的数値ベースで考えていけるようにすることともいえます。 結局のところ、「儲かって」⇒「会社運営の資金を得ること」が大事ということになります。すべての始まりは「いくら儲かったか」「どうすれば儲かるか」という思考をめぐらすことになります。 ここで注意して頂きたいのは、「革新的な製品・サービスを市場に出して社会貢献したい」「地方の経済を活性化したい」という経営そのものの動機は筆者も立派だと思っていることを理解してもらいたいのです。そのうえで、そういう立派な動機(ミッション)を達成するために、活動資金が必要なだけで、その活動資金は会社の儲け(またはこれから儲かるという確信)から得られるということなのです。その儲けをいろいろ測定する技術を管理会計が持っているというわけです。 ■ 会社の『儲け』を測るものさし 管理会計で会社がどれだけ儲かったか、その「儲かり度」をはかるものさしは大別して3種類あります。管理会計の世界では、T.P.O. に応じて、この3種類を使い分けます。 「会計原則」をベースとした「(会計的)利益」 「税法」をベースとした「所得」 「キャッシュフロー」をベースとした「キャッシュ」または「現金収支」 そして、「相対的真実」というのは、「会計原則」の中で、会計技法的に「在庫評価法」とか「固定資産の償却法」の選択的適用が可能な状態をいうだけでなく、たった一つの商取引だとしても、上記の3種類の方法で評価すると、どれくらい儲かったかの結論が異なってくることも意味しています。 では、具体的ケースを使って、この3種類の違いを体験してもらいましょう。 ■ (ケーススタディ) パソコンレンタル業を始めました あなたは、PCを企業にレンタルする会社(A社)を始めました。 <脱線> よく「リース」と「レンタル」の違いは貸し出している期間が相対的に長いか短いかだけの違いとか、言われていますが、根拠となる法律も異なり、いろいろ違いがあります。一番分かりやすい相違点は、「リース」は借り手が最初から特定のリース物件が目的でリース契約を始めること、「レンタル」はレンタル会社が持っている在庫から貸してもらいたいものを選ぶこと、という違いになります。 このケースでのポイントは、税法(強制法規)では、法定耐用年数が5年となっていますが、あなたは、このレンタル用PCは、3年のレンタル期間が終了した後に廃棄することを既に決めているので、会計的には、耐用年数3年が適切と考え、税法とは異なる償却期間を選択したというところです。 この「会計的」という判断の裏には、「費用収益対応の原則」があり、レンタル売上が3年にわたって計上されるということは、それに対応する費用も3年で発生を考えるのが適切、というものです。 ■ A社の3年間にわたる『儲け』を「会計原則」で測定する 早速、A社のB社に向けた業務用PCのレンタル期間である3年間の『儲け』―「(会計的)利益」の推移を下記のようなグラフにしました。 理解のポイントは、このケースでは「税効果会計」を採用しているため、毎年の「法人税」支払額の調整をどう整理できるかにかかっています。 会計的には、毎年の減価償却費は、50,000円としていますので、レンタル売上:100,000円との差し引きで、税前利益が50,000円となります。これに、法人税率:40%が適用されて、法人税を20,000円と計算したくなるところです。ただし、税法では、毎年の減価償却費は30,000円となっているので、レンタル売上:100,000円から、税法が指示する減価償却費30,000円を差し引いた70,000円に法人税率:40%がかかりますので、28,000円が納付すべき法人税額となります。 この、会計的視点からの法人税額:20,000円と、税法が指示する法人税額:28,000円は、3年目に、パソコンを廃棄することでチャラになることが分かっているので、1年目と2年目は税法が言う通りに法人税額:28,000円を納付しますが、会計的には、1年目と2年目は会計側で決めた減価償却費に基づいた利益を計算してあげます。この1年目と2年目の法人税額に対する見解の差異8,000円は費用としてみないが、法人税としては納付(お金はキャッシュアウトする)するので、費用の繰延として、P/L上の費用から除いて、B/Sに繰延資産として計上します。 3年目は、1年目と2年目の税金繰り延べ分を戻してあげます。それが3年目の税金等調整額:16,000円の正体です。さらに、3年目は、税法的にはPCの廃棄損が60,000円分(廃棄時点で残っている法定耐用年数分の未償却金額)が発生するので、60,000円×40%=24,000円だけ、法人税額が少なります。1年目・2年目の納税額:28,000円から24,000円を差し引いた4,000円だけが3年目の法人税額となります。 これが、「税効果会計」を適用した「会計原則」から見た毎年の会社の儲け(=利益)になります。 次回は、同じケースで、それぞれ「税法」と「キャッシュフロー」視点だと、どういう会社の儲けになるのか、説明したいと思います。 ここまで、「管理会計的に『儲け』を測る」を説明しました。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します