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■ 現物株の取引時間拡大が見送られました

経営管理会計トピック
東証における現物株の取引時間拡大が、2000年、2010年、そして今回と、3度にわたり、見送られることになりました。
「11月25日、午前11時。弁当を食べながら普段は淡々と議事が進む日本取引所グループの取締役会が、この日は紛糾した。事務方が諮った時間拡大の見送り案に、メンバーの過半を占める社外取締役が次々とかみついた。「国際競争をあきらめるのか」「リーダーシップの欠如だ」――。」

2014/12/3付 |日本経済新聞|朝刊
(真相深層)東証改革「失われた14年」 現物株の取引時間拡大またも見送り 日本足踏み世界は先へ

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

ちなみに、現在の東証の取引時間は、下記の通りです。

前場(午前の株取引)
AM 9:00~AM11:30(午前9時~午前11時30分)
後場(午後の株取引)
PM12:30~PM15:00(午後0時30分~午後3時)

その昔、大納会(株の年末の取引最終日)と、大発会(株の年始の取引開始日)の日は、午前11時の前場終了で当日の株取引は終了となり、後場(午後の株取引)のマーケットは休場となっていました。2009年の大納会以降は、東証でアローヘッドという新売買システムが稼働したのに伴い、通常日と同じ売買時間(終日取引)に変更されました。

■ 取引時間拡大の議論の経緯

海外の主要市場をみると、ニューヨーク市場が6.5時間、ロンドン市場が8.5時間、香港市場が5.5時間、シンガポール市場が8時間強など、いずれも東証よりも取引時間が長く設定されています。
主要各国の証券取引所の取引時間」はこちらで確認してみてください。
相対的に、東証の現物株の取引時間が短いことは分かるのですが、そもそも、なぜ取引時間を延ばしたい人と、それに反対したい人がいるのでしょうか?
これまでは、夜間取引を新たに実施して、日中働いていて、夜間しか取引できない個人投資家を市場に呼び込む→取引量が増える→取引所の売上が増える、という理屈で、夜間取引を開始したいとか、香港やシンガポールと取引時間が重なる夕方まで延長して、アジアからの東京市場への参加者を増やしたいという動機から、こうした時間延長が議論されてきたからです。
取引所と密接に利害が絡む証券会社にも、いろいろ考えるところがあります。新聞記事から引用させてもらうと、
「新たな個人を取り込みたい賛成派のネット証券と、追加のコストに見合う売買増が期待できないと反対する対面型証券の主張は平行線のまま。」
「野村は8月に夕方案から降りてしまった。検討の結果、投資信託の基準価格算出に与える影響など夕方案が抱える問題が浮上したからだった。」
夜間取引の開始も、夕方の時間延長も、それぞれの関係者の利害が衝突し、合意に至らなかったわけです。

■ 顧客のベネフィットを無視していませんか?

証券会社の従来の商習慣や、取引システムの改修など、取引時間の延長に対する障害を挙げたらキリがないでしょう。過去には、お昼休みを30分に短縮にする案が、廃案になりました。そりゃ、ランチ時間が取りにくくなりますからね。
地球は丸いので、東京市場が閉じている間にも、現物株ではありませんが、日経平均先物はシカゴ先物市場(CME)で24時間取引が可能ですし、私設取引システム(PTS:Proprietary Trading System)を使えば、今でも夜間取引が可能になっていますので、どこかで誰かが東証に上場している企業の企業価値を絶えずウォッチしている訳です。
コンビニエンスストアも、ATMも今や24時間取引可能な時代になっています。現物株も24時間取引を目指してはいかがでしょうか? 主要な反対意見として、「取引の極端に少ない時間帯には、多様な市場参加者が集まらず、適正な株価が形成されない」というものが強く残っているのですが、ユーザが仮に、取引の少ない夜間を避けて昼間に取引をするとしても、それはユーザの自由です。(日本の)夜間に関連ニュースが飛び込んで、いち早く現物株の売買をしたい場合は、すぐに売買注文を出したいユーザの売買権利を無視することになります。
ADR(米国預託証券: American Depositary Receipt)制度を使って、米国本土で資金調達をするか、24時間オープンの東証で、外国人投資家を直接東証に呼び込むか、株式発行側の企業にとっても、ターゲットとする資金の出し手に対する資金調達方法の選択肢がきっと増えます。市場参加の選択肢が増えることは、スムーズな取引の促進にとっていいことです。取引がスムーズということは、市場の効率性が高まり、価格調整メカニズムがもっとよく働きます。
「どの株式市場も24時間やっていない(前例がない)」
「コストが見合わない」
「システムや取引ルールの改変が大変」。。。
どこかの業績が悪化しているけど、変革を嫌う老舗の大企業の取締役会で取り交わされる会話みたいですね。
だから言っているんです。社外取締役が数だけ過半数いてもね。。。

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小林 友昭経済動向を会計で読む■ 現物株の取引時間拡大が見送られました 東証における現物株の取引時間拡大が、2000年、2010年、そして今回と、3度にわたり、見送られることになりました。 「11月25日、午前11時。弁当を食べながら普段は淡々と議事が進む日本取引所グループの取締役会が、この日は紛糾した。事務方が諮った時間拡大の見送り案に、メンバーの過半を占める社外取締役が次々とかみついた。「国際競争をあきらめるのか」「リーダーシップの欠如だ」――。」 2014/12/3付 |日本経済新聞|朝刊 (真相深層)東証改革「失われた14年」 現物株の取引時間拡大またも見送り 日本足踏み世界は先へ(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます ちなみに、現在の東証の取引時間は、下記の通りです。 前場(午前の株取引) AM 9:00~AM11:30(午前9時~午前11時30分) 後場(午後の株取引) PM12:30~PM15:00(午後0時30分~午後3時) その昔、大納会(株の年末の取引最終日)と、大発会(株の年始の取引開始日)の日は、午前11時の前場終了で当日の株取引は終了となり、後場(午後の株取引)のマーケットは休場となっていました。2009年の大納会以降は、東証でアローヘッドという新売買システムが稼働したのに伴い、通常日と同じ売買時間(終日取引)に変更されました。 ■ 取引時間拡大の議論の経緯海外の主要市場をみると、ニューヨーク市場が6.5時間、ロンドン市場が8.5時間、香港市場が5.5時間、シンガポール市場が8時間強など、いずれも東証よりも取引時間が長く設定されています。 「主要各国の証券取引所の取引時間」はこちらで確認してみてください。 相対的に、東証の現物株の取引時間が短いことは分かるのですが、そもそも、なぜ取引時間を延ばしたい人と、それに反対したい人がいるのでしょうか? これまでは、夜間取引を新たに実施して、日中働いていて、夜間しか取引できない個人投資家を市場に呼び込む→取引量が増える→取引所の売上が増える、という理屈で、夜間取引を開始したいとか、香港やシンガポールと取引時間が重なる夕方まで延長して、アジアからの東京市場への参加者を増やしたいという動機から、こうした時間延長が議論されてきたからです。 取引所と密接に利害が絡む証券会社にも、いろいろ考えるところがあります。新聞記事から引用させてもらうと、 「新たな個人を取り込みたい賛成派のネット証券と、追加のコストに見合う売買増が期待できないと反対する対面型証券の主張は平行線のまま。」 「野村は8月に夕方案から降りてしまった。検討の結果、投資信託の基準価格算出に与える影響など夕方案が抱える問題が浮上したからだった。」 夜間取引の開始も、夕方の時間延長も、それぞれの関係者の利害が衝突し、合意に至らなかったわけです。 ■ 顧客のベネフィットを無視していませんか?証券会社の従来の商習慣や、取引システムの改修など、取引時間の延長に対する障害を挙げたらキリがないでしょう。過去には、お昼休みを30分に短縮にする案が、廃案になりました。そりゃ、ランチ時間が取りにくくなりますからね。 地球は丸いので、東京市場が閉じている間にも、現物株ではありませんが、日経平均先物はシカゴ先物市場(CME)で24時間取引が可能ですし、私設取引システム(PTS:Proprietary Trading System)を使えば、今でも夜間取引が可能になっていますので、どこかで誰かが東証に上場している企業の企業価値を絶えずウォッチしている訳です。 コンビニエンスストアも、ATMも今や24時間取引可能な時代になっています。現物株も24時間取引を目指してはいかがでしょうか? 主要な反対意見として、「取引の極端に少ない時間帯には、多様な市場参加者が集まらず、適正な株価が形成されない」というものが強く残っているのですが、ユーザが仮に、取引の少ない夜間を避けて昼間に取引をするとしても、それはユーザの自由です。(日本の)夜間に関連ニュースが飛び込んで、いち早く現物株の売買をしたい場合は、すぐに売買注文を出したいユーザの売買権利を無視することになります。 ADR(米国預託証券: American Depositary Receipt)制度を使って、米国本土で資金調達をするか、24時間オープンの東証で、外国人投資家を直接東証に呼び込むか、株式発行側の企業にとっても、ターゲットとする資金の出し手に対する資金調達方法の選択肢がきっと増えます。市場参加の選択肢が増えることは、スムーズな取引の促進にとっていいことです。取引がスムーズということは、市場の効率性が高まり、価格調整メカニズムがもっとよく働きます。 「どの株式市場も24時間やっていない(前例がない)」 「コストが見合わない」 「システムや取引ルールの改変が大変」。。。 どこかの業績が悪化しているけど、変革を嫌う老舗の大企業の取締役会で取り交わされる会話みたいですね。 だから言っているんです。社外取締役が数だけ過半数いてもね。。。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します