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許容原価 - 原価企画まで持ち出さなくても、通常の利益計画でも使います!

管理会計(基礎)
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■ 許容原価が取り沙汰されるシーンとは

許容原価とは、予定している販売価格から目標利益を差し引いて算出される原価のことをいいます。

許容原価 = 予定販売価格 - 目標利益 ・・・(1)

つまり、外部圧力により、販売価格(販売単価)が市場での競争状況から与えられる所与のもとします。その中で、これだけの利益を出したいという内部目標を目標利益として掲げます。所与として与えられる販売価格と、内部目標から括りだした目標利益の差分として、全くの受け身としてまずは算出される原価となります。

商品企画、原価企画というステージだけではなく、短期利益計画、すなわち、俗にいわれる単年度予算編成の中で、プロフィットセンターの役割を持つ組織長とそのスタッフが頭を捻るために、最初のよすがとする原価です。

予算編成における利益計画立案のシーンに限ると、企業外部への販売単価および販売物量は、市場競争でおおよそ決まります。営業部門の販売努力も、業界によって大小はありますが、その影響力はあまり発揮されないと考えた方が良いでしょう。結局、ボリュームディスカウント等、プライス・テイカーとして、ミクロ経済理論に基づき、需要と供給バランス、そして価格決定メカニムズムは所与として、利益計画を立てるしかありません。

一方で、特に外資系企業ではその傾向が強いのですが、トップダウンで事業部利益目標額を提示されて、これが必達だ、と申し渡されたりします。それゆえ、3つの変数から成る(1)式の右辺があらかじめ決まってしまえば、左辺の許容原価は自ずと決まってしまいます。

予測したい変数のことを、「目的変数」とか「従属変数」と呼び、目的変数の値を左右する変数のことを、「説明変数」とか「独立変数」と呼びます。この場合、左辺の許容原価が、「目的変数」「従属変数」に該当します。

だとすれば、販売価格と目標利益が裁量外の事象から決まってしまえば、もはや原価に対して意思を込めてその増減をコントロールすることはできないと考えがちですが、それは本当でしょうか?

 

■ 内部コントロールできるのは、売価より原価であるという通説

こう言い切ってしまえば、身も蓋もないのですが、許容原価というのは、その範囲内でなら、発生が許されるコストという意味です。つまり、ゼロベースで原価発生の原因をひとつひとつ吟味し、コストを原価要素別に積み上げていって、許容原価の枠に入るように、資材の調達方法、資材の購入価格の交渉、新しい生産技術の導入、より効率的な加工方法の選択、といった原価施策を順に当たっていきます。

所与として「与えられた原価」ではなく、自らの意思で「その枠にはめに行く原価」という意識で、許容原価をターゲットとして活用していく姿勢が、原価管理から利益を創る、利益創造経営というマインドへとつながっていくでしょう。

それを、VE(バリューエンジアリング)などの手法を使って、原価を作り込む作業、これがいわゆる原価企画もしくはその手前の商品企画というステージでの原価情報への取り組み姿勢です。

繰り返しにはなるのですが、「売価は市場が決めるが、原価は現場が決める」。こういう合言葉で原価を作り込んでいくのが、トヨタ等の強い現場の姿勢にも共通している要素です。

 

■ 許容原価と成行原価との違い

類似用語で、「成行原価」(なりゆきげんか)というものもあります。

成行原価とは、それを構成する原価要素からひとつひとつの原価を積み上げて、ひとつに集計することで算出されるものです。そこには、集計するという所作はあるものの、ひとつひとつの原価要素をミニマムにするための、意思込めは存在しません。「こういうの出ましたけど?」というセリフがよく似合う原価概念です。

それゆえ、世の中に一般的に出ているテキスト等では、

目標原価 = 成行原価 -(VEによる)原価削減額   ・・・(2)

許容原価 - 成行原価 = 原価削減目標額       ・・・(3)

という計算式も紹介されていたりします。

(1)式と(3)式の関係から、次のような原価の作り込みの手順が想起されます。

① 外部環境と内部目標から、許容原価がターゲットとして与えられます
② 対象となる製商品の現行管理状況から、原価要素を積み上げて成行原価を計算します
③ 許容原価から成行原価がはみ出した分が、目標とすべき原価削減額となります
④ 目標とすべき原価削減額を実現するためにVE手法を適用します
⑤ そうやって原価削減を実現すると到達できる原価が目標原価となります

この時、最終到達ゴールとして設定する「目標原価」を、実際の原価計算制度で用いる「予定原価」や「標準原価」に使うことは、筆者はあまりお勧めしません。というより原価概念を履き違えています。

あくまで、「予定原価」「標準原価」は、そもそも真の原価を当てに行くための原価なので、当方の希望や理想を交えてた「目標原価」を用いるのは、使い方を間違っていると考えるからです。

最高の能率と操業度を達成しても到達できない「目標原価」を用いて計算された「原価差異」情報は、現場における原価改善活動にとって、益のある情報を提供しません。やたらめったら、打ちのめされて、担当者のやる気を失わせるか、あるべき生産技術の選択を誤らせるか、そもそもの当該製商品の生産・販売を中止・変更させてしまうかもしれません。

背伸びをした原価目標設定は、百害あって一利なし、なのです。(^^;)

管理会計(基礎編)_許容原価 - 原価企画まで持ち出さなくても、通常の利益計画でも扱う原価概念

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