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■ アマダの「ROE経営」狂想曲を振り返る

経営管理会計トピック

伊藤レポートに端を発した「ROE経営」狂想曲の最前列で、センセーショナルな話題を提供したアマダが、ようやく落ち着きを取り戻し、株主還元と企業成長のリバランスに舵を切りました。真っ当な財務戦略に立ち返るということで、概ね歓迎されるべき方針転換だと思います。

2016/9/6付 |日本経済新聞|朝刊 アマダHD、 成長投資重視に転換 今期、100%還元→「50%以上」に 年間投資5割増やす

「金属加工機械大手のアマダホールディングスは2014年5月に打ち出した総還元性向100%との目標を撤回する。17年3月期から「50%以上」に引き下げ、利益は成長が見込める板金機械の生産強化にあてる。年間の投資額は従来比で約5割増やす。手元資金をため込む日本企業が株主還元を重視し始めた象徴として注目を集めた100%還元だが今後は積極投資と株主還元の両輪で長期的な成長を目指す。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

事の発端は、次の新聞記事からでした。

2014/5/15付 |日本経済新聞|朝刊 アマダ、利益をすべて株主に 配当と自社株買い

「金属加工機械大手のアマダは15日、稼いだ利益をすべて株主に配分すると発表した。半分を配当に、残る半分を自社株買いに回す。収益が順調に拡大し、財務の健全性を示す自己資本が十分に積み上がったと判断。これ以上の積み上がりを抑えることで、資本効率の向上につなげる狙いだ。」

これは、アマダの貸借対照表をご覧いただければ、内部留保が大きく積み上がっている様子から、そういう財務戦略を打ちたくなる気持ちになる事も理解できます、なにせ、当時、「投資者にとって投資魅力の高い会社」400社で構成される「JPX日経インデックス400」の選に漏れた経営者の焦りがありましたから。

アマダの貸借対照表の分析と、ROEをデュポンチャート方式で解析した過去投稿記事はこちら。
⇒「今年度の予想ROE改善幅、ブラザーやカシオ上位に 自社株買いで押し上げ

しかし、やがて、アマダも冷静さを取り戻し、徐々に軌道修正を始めようと試みます。

2015/11/25|日本経済新聞|朝刊 (会社研究)大還元の先へ(1) アマダホールディングス M&Aで稼ぐ力底上げへ

「1年間で稼いだ利益を配当や自社株買いで株主に全て配分する――。2014年5月に「100%還元」を発表し、大還元ブームの先駆けとなったアマダホールディングスが今、成長と還元のはざまで揺れる。成長投資に使うべきだったとの指摘を跳ね返そうと、収益力の底上げに懸命だ。」

この記事の解説投稿はこちら。
⇒「(会社研究)大還元の先へ(1) アマダホールディングス M&Aで稼ぐ力底上げへ

そして、今回の報道につながるわけです。

 

■ アマダHDの持ち出した「総還元性向」とは?

今回、アマダHDが総還元性向を100%→50%にします、というこの指標の意味から確認していきましょう。

(下記は、同記事添付の「アマダHDの総還元性向と連結業績」のグラフを転載)

20160906_アマダHDの総還元性向と連結業績_日本経済新聞朝刊

総還元性向 = (自社株買い + 現金配当)÷ 当期純利益 × 100

今年の儲けの内、株主にリターンとして戻される比率を意味します。「自社株買い」は、株式市場に出回るアマダHD株式数を少なくするので、まだ株式を保有している投資家にとって、原則として、株価の上昇というルートから、「キャピタルゲイン」(実際に売却していなければ未実現の利益なのですが)と、増配というルートから、「インカムゲイン」という2つのリターンを株主に与えることを意味します。

この比率を「100%」にするということは、今年の儲けを全て株主に払い戻すことを意味し、内部留保を通じて、さらなる企業成長への投資にお金には一切回さない、すなわち拡大再生産の成長投資をやめた、いわゆる成熟期に入っている企業(事業)という宣言に等しく、PPM理論に例えるなら、「Cash cow(金のなる木)」ということで、ひたすら設備投資などの追加的資金投入を抑制し、現金収入を最大化するステージの企業(事業)という扱いをするということを意味しています。

これについて、磯部社長は次のように記者に説明をしています。

(下記は、同記事添付の磯部社長の写真を転載)

20160906_磯部社長_日本経済新聞朝刊

「磯部社長は100%還元を見直す理由を「投資家に『成長できないから資金を株主に還元している』と誤解されてしまった」と話す。「企業価値は還元だけでなく成長してこそ向上する」との考えに基づき、17年3月期から21年3月期までの5カ年計画では設備投資などを積極的に進める。
M&A(合併・買収)と設備投資を合わせた投資額は前の5年間の実績と比べ約5割増の1000億円程度に高め、生産設備の更新や拡張を進める。21年3月期の連結業績は売上高が前期比32%増の4000億円、経常利益が86%増の800億円を目指す。」

株主への還元政策(配当政策+自社株買い政策)は、企業成長に対する経営者の思いがそのまま表れたものと理解するのが通常です。経営者が、この企業の成長の未来はない、今手元にある儲けや内部留保を株主に大盤振る舞いでばら撒きます、と言えば、目先の還元の果実を得たい短期的な株主が集まり、一時的には株価も上昇することが多いですが、中長期的な企業成長を視野に入れた、長期保有株主は退場していってしまいます。どちらが、ゴーイングコンサーンとしての企業の株主政策としてよいのでしょうかね?

二者択一とは申しませんが、経営者も投資家も、その企業をキャッシュマシーンに見立てて、どれくらい有望な(または見限るべきなのか)投資機会とみているのか、その格好の試金石となるのが、株主還元政策であることだけは間違いありません。

 

■ 当期純利益の使い道は、株主還元と企業成長投資へ

本ブログにて、「財務分析(入門編)」:成長性分析で、「持続可能な成長率」というものを説明しました。

財務分析(入門編)_内部留保が企業成長をもたらす

⇒「成長性分析(9)持続可能な成長率

株式会社というのは、投資家(株主)と金融機関から資金の提供を受けて、それを事業に投下し、儲けの中から、必要経費(経営者報酬)を差し引いて、資金主にリターンとしてお返しする金融の仕組みで成り立っています。自動的に、現在の目先のリターンを厚くすれば、将来の成長投資に回せるお金が少なくなり、目先のリターンを求めずに、将来投資に回せば、いくらかのリスクは存在しますが、複利計算で雪だるま式に将来のリターンが大きくなる可能性も秘めています。

そのバランスの中で、内部留保の金額の増え方から、その企業の通常の巡航速度での売上高と利益の成長スピード、いわゆる増資や借入金増が無い、自己金融(セルフファンディング)、すなわち前年までの儲け(=内部留保)を使ってどれくらい自力で成長できるか、を示したものを「持続可能な成長率」(別名:オーガニックグロース)といいます。

下記に、簡単なケースで例証したいと思います。

<モデル企業>
1年目の期初に、純資産(それまでの内部留保)を100保有
毎年、10の当期純利益が得られる事業を営んでいる(この初期状態のROE:10%)

<ケース1>
・10の当期純利益を全額、将来投資に回す
・追加投資に回された金額は、既存事業の利益率10%をそのままもたらしてくれる

<ケース2>
・10の当期純利益を半分、株主に還元し、半分、将来投資に回す
・追加投資に回された金額は、既存事業の利益率10%をそのままもたらしてくれる

<ケース3>
・10の当期純利益を全額、株主還元(=現金配当)に回す
・既存の事業はそのまま利益率:10%を維持している

この3つのケースで10年後の純資産の成長性を比較してみましょう。ちなみに、PBR(株価純資産倍率)が1の場合、純資産(簿価ベース)と株式市場におけるこの企業の時価総額は同額となります。

20160911_持続可能な企業成長

比較考量しやすいのは、ケース1とケース3でしょう。

ケース1は、当期利益を全額将来投資に回し、純資産を複利計算で増殖させています。
それゆえ、1年目に100だった純資産を236にまで増やすことに成功しています。

ケース3は、当期利益を全額、株主に払い出し、純資産額は一定のままです。
それゆえ、10年後も純資産は100のままです。

もし、この10年という評価期間において、この企業への投資価値はどのように見ればよいでしょうか。

ケース1は、1年目に100を投資して、10年後に236に増殖した株式を、市場で売り払えば、その差額の136をキャピタルゲインとして手にすることができます。一方、ケース3は、毎年10のインカムゲインを得ることができるので、10年合計で100の配当を手にすることができます。単純なコーポレートファイナンス理論や株式での利殖おすすめ本は、この差額36を企業活動への投資の複利効果として、なるべく長期投資をベースとした投信ファンド商品の購入をお勧めする理屈にして、一番説得力が大きいものとして利用しています。

 

■ フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)に忠実になると・・・

まあ、筆者も、株式投資初心者~中級者には前章のそういう説明でもよいのではないかと思います。ここからは、もっと深堀りしたい人だけに向けたメッセージとなりますが、ケース3で手元に戻ってきた現金配当:10/年を、他のもっと有利な投資機会に振り向けることができたなら、具体的には、年利10%超の投資機会を見つけることができたなら、毎年の現金配当をもらいつつ、そちらに投資した方が、その投資家の手元に残る財産はもっと大きくなるに違いありません。

それゆえ、どんな企業に投資するか、どんな金融商品を購入するか、一番儲けるためにはどう考えればよいか、それは資金の出し手の側に立って考えるべきで、簡単なコーポレートファイナンス理論や、複利計算構造を持ち出して、長期投資をひたすら勧める、というのも、本来的には、その投資家のためにはならないというのが筆者の持論です。これぞ、真の「フィデューシャリー・デューティー(fiduciary duty)」に忠実な物言いだと考えています。

ちなみに、上記のグラフや表のExcelシートが欲しい方は、本ブログ右のコンタクトフォームから依頼してください。メール添付でお送りします。
(要望が多ければ、本ブログの専用ダウンロードページに追加していきます)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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アマダHD、 成長投資重視に転換 今期、100%還元→「50%以上」に 年間投資5割増やす - ROE経営への過剰反応を軌道修正中http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭とことんROEJPX日経インデックス400,PBR,ROE経営,アマダ,デュポンチャート,フィデューシャリー・デューティー,伊藤レポート,内部留保,持続可能な成長率,総還元性向■ アマダの「ROE経営」狂想曲を振り返る 伊藤レポートに端を発した「ROE経営」狂想曲の最前列で、センセーショナルな話題を提供したアマダが、ようやく落ち着きを取り戻し、株主還元と企業成長のリバランスに舵を切りました。真っ当な財務戦略に立ち返るということで、概ね歓迎されるべき方針転換だと思います。 2016/9/6付 |日本経済新聞|朝刊 アマダHD、 成長投資重視に転換 今期、100%還元→「50%以上」に 年間投資5割増やす 「金属加工機械大手のアマダホールディングスは2014年5月に打ち出した総還元性向100%との目標を撤回する。17年3月期から「50%以上」に引き下げ、利益は成長が見込める板金機械の生産強化にあてる。年間の投資額は従来比で約5割増やす。手元資金をため込む日本企業が株主還元を重視し始めた象徴として注目を集めた100%還元だが今後は積極投資と株主還元の両輪で長期的な成長を目指す。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 事の発端は、次の新聞記事からでした。 2014/5/15付 |日本経済新聞|朝刊 アマダ、利益をすべて株主に 配当と自社株買い 「金属加工機械大手のアマダは15日、稼いだ利益をすべて株主に配分すると発表した。半分を配当に、残る半分を自社株買いに回す。収益が順調に拡大し、財務の健全性を示す自己資本が十分に積み上がったと判断。これ以上の積み上がりを抑えることで、資本効率の向上につなげる狙いだ。」 これは、アマダの貸借対照表をご覧いただければ、内部留保が大きく積み上がっている様子から、そういう財務戦略を打ちたくなる気持ちになる事も理解できます、なにせ、当時、「投資者にとって投資魅力の高い会社」400社で構成される「JPX日経インデックス400」の選に漏れた経営者の焦りがありましたから。 アマダの貸借対照表の分析と、ROEをデュポンチャート方式で解析した過去投稿記事はこちら。 ⇒「今年度の予想ROE改善幅、ブラザーやカシオ上位に 自社株買いで押し上げ」 しかし、やがて、アマダも冷静さを取り戻し、徐々に軌道修正を始めようと試みます。 2015/11/25|日本経済新聞|朝刊 (会社研究)大還元の先へ(1) アマダホールディングス M&Aで稼ぐ力底上げへ 「1年間で稼いだ利益を配当や自社株買いで株主に全て配分する――。2014年5月に「100%還元」を発表し、大還元ブームの先駆けとなったアマダホールディングスが今、成長と還元のはざまで揺れる。成長投資に使うべきだったとの指摘を跳ね返そうと、収益力の底上げに懸命だ。」 この記事の解説投稿はこちら。 ⇒「(会社研究)大還元の先へ(1) アマダホールディングス M&Aで稼ぐ力底上げへ」 そして、今回の報道につながるわけです。   ■ アマダHDの持ち出した「総還元性向」とは? 今回、アマダHDが総還元性向を100%→50%にします、というこの指標の意味から確認していきましょう。 (下記は、同記事添付の「アマダHDの総還元性向と連結業績」のグラフを転載) 総還元性向 = (自社株買い + 現金配当)÷ 当期純利益 × 100 今年の儲けの内、株主にリターンとして戻される比率を意味します。「自社株買い」は、株式市場に出回るアマダHD株式数を少なくするので、まだ株式を保有している投資家にとって、原則として、株価の上昇というルートから、「キャピタルゲイン」(実際に売却していなければ未実現の利益なのですが)と、増配というルートから、「インカムゲイン」という2つのリターンを株主に与えることを意味します。 この比率を「100%」にするということは、今年の儲けを全て株主に払い戻すことを意味し、内部留保を通じて、さらなる企業成長への投資にお金には一切回さない、すなわち拡大再生産の成長投資をやめた、いわゆる成熟期に入っている企業(事業)という宣言に等しく、PPM理論に例えるなら、「Cash cow(金のなる木)」ということで、ひたすら設備投資などの追加的資金投入を抑制し、現金収入を最大化するステージの企業(事業)という扱いをするということを意味しています。 これについて、磯部社長は次のように記者に説明をしています。 (下記は、同記事添付の磯部社長の写真を転載) 「磯部社長は100%還元を見直す理由を「投資家に『成長できないから資金を株主に還元している』と誤解されてしまった」と話す。「企業価値は還元だけでなく成長してこそ向上する」との考えに基づき、17年3月期から21年3月期までの5カ年計画では設備投資などを積極的に進める。 M&A(合併・買収)と設備投資を合わせた投資額は前の5年間の実績と比べ約5割増の1000億円程度に高め、生産設備の更新や拡張を進める。21年3月期の連結業績は売上高が前期比32%増の4000億円、経常利益が86%増の800億円を目指す。」 株主への還元政策(配当政策+自社株買い政策)は、企業成長に対する経営者の思いがそのまま表れたものと理解するのが通常です。経営者が、この企業の成長の未来はない、今手元にある儲けや内部留保を株主に大盤振る舞いでばら撒きます、と言えば、目先の還元の果実を得たい短期的な株主が集まり、一時的には株価も上昇することが多いですが、中長期的な企業成長を視野に入れた、長期保有株主は退場していってしまいます。どちらが、ゴーイングコンサーンとしての企業の株主政策としてよいのでしょうかね? 二者択一とは申しませんが、経営者も投資家も、その企業をキャッシュマシーンに見立てて、どれくらい有望な(または見限るべきなのか)投資機会とみているのか、その格好の試金石となるのが、株主還元政策であることだけは間違いありません。   ■ 当期純利益の使い道は、株主還元と企業成長投資へ 本ブログにて、「財務分析(入門編)」:成長性分析で、「持続可能な成長率」というものを説明しました。 ⇒「成長性分析(9)持続可能な成長率」 株式会社というのは、投資家(株主)と金融機関から資金の提供を受けて、それを事業に投下し、儲けの中から、必要経費(経営者報酬)を差し引いて、資金主にリターンとしてお返しする金融の仕組みで成り立っています。自動的に、現在の目先のリターンを厚くすれば、将来の成長投資に回せるお金が少なくなり、目先のリターンを求めずに、将来投資に回せば、いくらかのリスクは存在しますが、複利計算で雪だるま式に将来のリターンが大きくなる可能性も秘めています。 そのバランスの中で、内部留保の金額の増え方から、その企業の通常の巡航速度での売上高と利益の成長スピード、いわゆる増資や借入金増が無い、自己金融(セルフファンディング)、すなわち前年までの儲け(=内部留保)を使ってどれくらい自力で成長できるか、を示したものを「持続可能な成長率」(別名:オーガニックグロース)といいます。 下記に、簡単なケースで例証したいと思います。 <モデル企業> 1年目の期初に、純資産(それまでの内部留保)を100保有 毎年、10の当期純利益が得られる事業を営んでいる(この初期状態のROE:10%) <ケース1> ・10の当期純利益を全額、将来投資に回す ・追加投資に回された金額は、既存事業の利益率10%をそのままもたらしてくれる <ケース2> ・10の当期純利益を半分、株主に還元し、半分、将来投資に回す ・追加投資に回された金額は、既存事業の利益率10%をそのままもたらしてくれる <ケース3> ・10の当期純利益を全額、株主還元(=現金配当)に回す ・既存の事業はそのまま利益率:10%を維持している この3つのケースで10年後の純資産の成長性を比較してみましょう。ちなみに、PBR(株価純資産倍率)が1の場合、純資産(簿価ベース)と株式市場におけるこの企業の時価総額は同額となります。 比較考量しやすいのは、ケース1とケース3でしょう。 ケース1は、当期利益を全額将来投資に回し、純資産を複利計算で増殖させています。 それゆえ、1年目に100だった純資産を236にまで増やすことに成功しています。 ケース3は、当期利益を全額、株主に払い出し、純資産額は一定のままです。 それゆえ、10年後も純資産は100のままです。 もし、この10年という評価期間において、この企業への投資価値はどのように見ればよいでしょうか。 ケース1は、1年目に100を投資して、10年後に236に増殖した株式を、市場で売り払えば、その差額の136をキャピタルゲインとして手にすることができます。一方、ケース3は、毎年10のインカムゲインを得ることができるので、10年合計で100の配当を手にすることができます。単純なコーポレートファイナンス理論や株式での利殖おすすめ本は、この差額36を企業活動への投資の複利効果として、なるべく長期投資をベースとした投信ファンド商品の購入をお勧めする理屈にして、一番説得力が大きいものとして利用しています。   ■ フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)に忠実になると・・・ まあ、筆者も、株式投資初心者~中級者には前章のそういう説明でもよいのではないかと思います。ここからは、もっと深堀りしたい人だけに向けたメッセージとなりますが、ケース3で手元に戻ってきた現金配当:10/年を、他のもっと有利な投資機会に振り向けることができたなら、具体的には、年利10%超の投資機会を見つけることができたなら、毎年の現金配当をもらいつつ、そちらに投資した方が、その投資家の手元に残る財産はもっと大きくなるに違いありません。 それゆえ、どんな企業に投資するか、どんな金融商品を購入するか、一番儲けるためにはどう考えればよいか、それは資金の出し手の側に立って考えるべきで、簡単なコーポレートファイナンス理論や、複利計算構造を持ち出して、長期投資をひたすら勧める、というのも、本来的には、その投資家のためにはならないというのが筆者の持論です。これぞ、真の「フィデューシャリー・デューティー(fiduciary duty)」に忠実な物言いだと考えています。 ちなみに、上記のグラフや表のExcelシートが欲しい方は、本ブログ右のコンタクトフォームから依頼してください。メール添付でお送りします。 (要望が多ければ、本ブログの専用ダウンロードページに追加していきます) (注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します