ADワークス、個人株主を調査 「配当を重視」87% - 配当崇拝の誤りを正す! 配当は企業価値を毀損し、株主の利得を減らすだけ

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■ 「個人投資家が配当金を重視しているから」は、株価維持の弥縫策にすぎない!

経営管理会計トピック

たまたま目にした経済紙の小稿で、まだまだ個人投資家が「配当」額の多寡で株式投資を考えているという重大な過ちについて、過日の元本を取り崩して毎月配当を出す詐欺的な投資信託への注意喚起以来、2年越しの諫言(かんげん)を行いたいと思います。

(参考)
⇒「投信成績分かりやすく 通算損益を通知・報告書に簡易版

2016/12/28付 |日本経済新聞|朝刊 ADワークス、個人株主を調査 「配当を重視」87%

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「投資用不動産販売のエー・ディー・ワークスは今月、同社の全個人株主約1万3000人を対象に配当政策などに関する意識調査を実施した。アンケートでは「配当を重視する」と回答した株主が全体の87%に上った。アンケートは株主との対話の一環で、今後の企業価値向上に向けた取り組みに生かす。」

同記事では、アンケートの詳細について次のように続いています。

・配当を重視しないと答えた株主:14%
・配当政策として注目する点:
 -配当利回り:67%
 -配当性向:15%、
 -記念配など特別な配当:8%

個人株主が「配当」目当てで投資対象銘柄を選定するという事実は、その投資判断基準に経済合理性があるかどうかが重要なのではなく、多くの個人投資家がそう思っているという事実にこそ、企業の財務担当部署は着目すべきだとも言えます。個人投資家は、企業にとってサイレントマジョリティー。株主構成上、その比率を高めることは企業経営にプラスになることはあれ、マイナスになる要素は考えられませんから。

しかし、リターンを本当に高めたい投資家の立場からすれば、「配当金」を求めれば求めるほど、投資家としての経済合理性から遠くなってしまう事実もきちんと知るべきです。そして、目先の株式需給にとらわれることなく、企業の財務計画を健全にするためには、配当金による社外流出は最低限に極力抑え(できればゼロにすることが望ましい)、中長期の企業価値創出にその資金を振り向けるべきであることを、賢い投資家(株主)と企業財務担当者なら知っておくべきと主張します。

コーポレートガバナンス・コードで、株主との対話を進めるべきと主張するのなら、その対話の中身の質も上げていく努力をしてきたいものです。

 

■ 配当金の要求は経済合理性に適っていない! の意味とは?

最初にこの基本的な定理を理解するのに、2つのキーポイントを押さえておきたいと思います。

(1)社外流出と内部留保
「配当金」は、企業が稼いだキャッシュを社外に流出させることになります。企業へ資金を提供している「株主」に投資して頂いた見返りとして、借金をしたら利息を返すのと同じ理屈で、株主に投資額相当分の機会コストを正当に支払うという点では問題が無いようにも見受けられます。

しかし、配当として社外流出させずに、「内部留保」として社内に留めておき、その分を次の企業成長と収益性向上のための投資に回すこともできます。

(2)複利効果
内部留保は、株主が企業活動に投資した結果、得られた果実です。その果実(リターン)を使ってしまわずに、新規ビジネス案件や既存事業の拡大に再投資することを考えます。それは、金融商品の紹介によくある「複利(元本と利息が次の投資の原資となり、利息にも次の利息が雪だるま式に増えていくこと)」で資金を運用していることと同義となります。

つまり、ここで議論を整理すると、

「配当金は、複利効果を目指す企業活動への投資を途中で断念し、投資資金を引き出してしまうこと」

を意味するのです。

株主が配当金を要求して、結果として、経済合理性があるのは、投資対象企業が複利効果で、例えば10%の利益率を出している時に、よその企業(または金融商品としての購入機会がある場合)に投資した際の予想利回りが10%超である時だけです。そういうケースに直面した場合、配当金で払い戻してもらったお金だけでなく、そもそも10%の投資利回りしか出せない企業への投資そのもの(元本)自体も引き出して、よその10%超の予想利回りを出しそうな企業に乗り換えるのが、経済合理的な判断となるでしょう。

毎月分配型の投資信託を購入した個人投資家の、「毎月の生活費の支払いに充てられるので、毎月、分配金があるのは非常に助かる」というセリフ(考え方)は、そもそも株式投資にあまりそぐわない資金運用理由であると言わざるを得ません。

もしいつでも自由にお金を引き出したいなら、普通預金・貯蓄預金・MMFを選択すべきです。また、毎月定額の生活費の引き出しが必要で、普通預金より少しでも高い利回りを求めたいのなら、「期日指定定期預金」を選択することも視野に入れるべきです。

そもそも、相場制の高い株式(投資信託含む)を生活費支払に充てるべきではありません。余剰の貯蓄分で緊急または固定的な支出の必要がない自由資金で投資した方がよいでしょう。おっと、ファイナンシャルプランナー的な発言はこれくらいで。(^^;)

 

■ 現金配当は逆説的に株主利得を減らしている! の意味とは?

つらつらと文字だけで説明されても、具体性が無いと理解できない方に、実際に数字を置いて説明させて頂きたいと思います。

ここでは、株主還元を積極的行い、株主に報いることを是としているA社(配当性向:100%)、企業成長のために内部留保を使って再投資することが究極の株主に報いる策と考えているB社(配当性向:0%)の2つの会社を想定します。両社とも、配当性向以外の数値については、等しいものとします。
(物事を比較する場合、それ以外の条件は同じにしないと比較要件が明確になりませんから)

20161231_配当金と企業価値

説明を簡潔にするため、株主からの出資額と簿価評価額を同額と仮定します。両社とも、1年目は、株主から得た100でビジネスをスタートさせます。利益率:10%なので、税前利益は10。そこから実効税率:40%として、税引後利益を計算します。A社とB社の違いはここから。A社は、1年目の税引後利益を全て、2年目の最初にビジネスへ再投資します。一方、B社は、100%株主還元として、全てを配当金で株主に払い出します。それゆえ、B社の2年目の最初に、ビジネスに投資される資金は1年目と同額の100だけになります。

それでは、株主の利得はそれぞれいくらになるでしょうか。

A社は、1年目と2年目にもらった配当金と、2年目の期末における株式の時価評価額。PBR=1と仮定した場合、1年目の最初に出資した金額と同額の100で不変となります。
それゆえ、

A社株主の2年間の利得
= 1年目の現金配当受取額+2年目の現金配当受取額+2年目末の株式評価額
= 6 + 6 + 100
= 112

B社株主の2年間の利得
= 2年目末の株式評価額
= 112.4

上記の簡単なケースでも、現金配当を一切しないB社の方が「0.4」だけ、株主利得が増加しています。この場合の、株式評価額は、売却した際のキャピタルゲイン相当額と考えられます。

つまり、上記のケースで言うところの株主利得とは、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の合計なのです。

厳密に両社の差異を計算すると、2年目の再投資額が「6」だけ異なるので、

6 ×10%(利益率)×(1‐40%(税率))=0.36

から、「0.36」だけ、B社の2年目期末の株式評価額が増えるのです。

 

■ 配当金は企業価値を破壊している! の意味とは?

株主が企業に出資して、1年1年の儲け(税引後利益)を全て株主に現金配当や自己株取得で還元してしまったら、短期の相場変動以外の要素で、当初の出資額以上の株式評価額を手にすることはできません。出資先の企業が投資利益率:10%のビジネスができているのなら、株主自身の金融資産ポートフォリオの利回りが10%超でない限り、そのまま現金配当も要求せずに、出資したままにしておいて、複利効果で、内部留保にまた10%の利益を乗せて、株式保有したまま運用した方が経済合理性に適っています。

これを、企業側から見ると、儲けを社外流出させて、ビジネスの元手を商売を始めた最初の額に固定したまま、増額させることなく、一定額の投資を続けるだけでは、企業成長は望めません。もし仮に、株主還元を増やすことが企業価値増大と呼んでいるなら、その呼称は完全に間違っています。内部留保を蓄積させ続けながら、次のビジネス機会へ再投資して、複利効果で次の内部留保を増やしていく。これこそが企業価値を高めていることになります。

もし、既存株主が急にキャッシュが必要になったら、持株を売却して「キャピタルゲイン」として投資の果実を得るべきでしょう。そのための株式上場なのですから。

かの投資の神様、オマハの賢人、ウォーレン・バフェットは、バークシャー=ハサウェイの経営権を握って以来無配当を貫いているため、同社から配当金は一切貰っていません。損金算入できる役員報酬だけで質素な生活をしています。彼は、「税金を政府に支払ってまで、配当を要求するのは経済合理性に欠ける要求だ」とも言っています。
(実際はもっと辛辣な表現を使っていますが。。。)(^^;)

前章の簡単な数式であっさり証明された企業価値(=株主利得)の正体。
それでもあなた(個人投資家)は現金配当を求めますか?

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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