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■ ESOP:Employee Stock Ownership Plan(従業員による株式所有計画)の応用編ということで

経営管理会計トピック

株式会社のお勤めの方は、従業員持ち株会など、自身の業績と会社の業績をリンクさせて、モチベーション向上と、会社業績向上への社員一丸となったベクトル合わせのために、なんらかの報酬制度に自社株保有を組み合わせている事例が多々あると思います。今回はそういう事例から、難しいものと楽しくなるものの2つをご紹介します。

まずは楽しく!?なる事例から。

2016/3/29付 |日本経済新聞|朝刊 日清、株価連動の社食「カブテリア」 上昇で豪華メニュー/下落で昭和30年代風

「日清食品ホールディングスは28日、同社の株価動向によって提供メニューを入れ替える社員食堂を東京本社に30日オープンすると発表した。身近な社食を通じ、社員一人ひとりに企業価値の向上について意識付けする効果を狙う。
 社員食堂はカフェテリアと株をもじって「カブテリア」と名付け、株価連動型の特別メニューを毎月2日間用意する。
 月末の同社株終値が前月の平均株価を上回った場合は、翌月に「ご褒美デー」として豪華なメニューが登場。余興としてマグロの解体ショーなども披露する。
 一方、下回った場合は「お目玉デー」として昭和30年代の給食などを再現した質素な特別メニューを提供する。役員などが配膳を担当することもあるという。」

(下記は、同記事添付の日清HD東京本社の社員食堂「カブテリア」(イメージ)写真を転載)

20160329_日清HD東京本社の社員食堂「カブテリア」(イメージ)_日本経済新聞朝刊

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

そもそも、「ESOP(イソップ)」とは、企業拠出による従業員に対する退職時雇用者株式給付制度を意味しますが、ストックオプションや持株会、現株をボーナスで付与する賞与制度など、とにかく、従業員・役員に、株価を意識した仕事をさせる試み全般を指して、使われることもある用語になっています。

(参考)
⇒「役員も従業員も報酬制度次第でモチベーションが変わります! 日本経済新聞より
⇒「東芝、業績連動報酬を刷新 不適切会計の再発防止
⇒「役員報酬、成長戦略に連動 資生堂は業績を時間差で評価 アステラス製薬、信託方式で動機付け
⇒「「社長が薄給の国ニッポン アジアは高給で人材確保」-あなたの会社の社長は適正価格ですか?

 

■ 米銀は大層難しいことを考えているようです。さすが金融のプロ。時空を超えてモチベーション管理とモラルハザード防止に努めています

利己的に行動する悪知恵の働くずる賢い人たちの集まりですからね。
すみません、言い過ぎました。m(_ _)m

2016/3/30付 |日本経済新聞|朝刊 〈FT特約〉米銀、報酬支払いに条件 不正防止へ厳格化は妥当

「金融危機の後から、株主や規制当局は給与やボーナスに狙いを定めている。不適切な報酬体系が銀行経営者に不要なリスクをとることを促す要因になると考え、それを防ぐため将来の報酬の制限を強く求めている。
JPモルガン、シティグループ、バンク・オブ・アメリカに対する投資家は、上級職員のより多くのボーナスをさらに長い期間――10年もの間――思いがけない損失やまだ発覚していない不正に対する保険として留保することを提案している。」

つまり、単年度業績だけでは報酬を与えないぞ、というわけです。会社自身は、四半期決算に基づくショートターミズム(短期主義)により、株主還元やストックオプションの多寡を決めていたのですが、その悪弊を断ち切ろうというのです。

⇒「(経済教室)エコノミクストレンド 企業の短期主義、再び注目 株式非公開の増加も 「悪弊」とまでは言い切れず 鶴光太郎 慶大教授

この過去投稿の中で、筆者なりのできるだけ合理的と思われる報酬制度の基本形をお話ししています。ご参考まで。

「米国の銀行はすでにこうした規則をいくつか導入済みだ。例えば、シティは上級職員に対し、支払い済みのボーナスの返還を求める(クローバック)か、支給前のインセンティブ報酬の取り消し(マルス)を支給(決定)から3年か4年以内に実行することが可能だ。
銀行がさらなる厳格化に異議を唱えるのはいつものことだ。既存のルールでも投資家の提案と同じ目的を達成できると銀行側は主張する。報酬の凍結期間を延長し厳格にすれば、採用や従業員の維持に支障をきたす。」

ただし、上記のような縛りを厳しくすると、今度は有能な人材が集まらないという弊害が生じてくる恐れがあります。クローバックやマルスがあると、収入が不安定となるため、ベース給のアップの要求度も必然的に高まってしまいます。

ちなみに、筆者も外資系コンサルティングファームに在籍していた時、クローバックを受けた経験があります。ただし、その会社はその後、日本の労働規制当局から指摘され、従業員に対するクローバックを撤廃しましたが。。。でも誤解しないでくださいね、なにか法に抵触する悪さ(不正)をしたわけではありません。事前のお約束だった業績目標が年間で未達だったので、上半期の支給済ボーナスを下半期の支給額から差し引かれたということです。(^^;)

 

■ さすが、お金のプロは考えるレベルが違います。でも策士策に溺れる。業界全体でそのコストを払っているようにしか見えません

「不適切な管理の結果が発覚し調査が及ぶまでには何年もかかる。HSBCのスイスのプライベートバンキング部門による脱税指南スキャンダルが完全に暴かれるまでには8年を要した。英国の銀行による支払補償保険の不正販売は明らかになるまで20年以上かかった。
こうした事例に比べれば、クローバック期間を10年に延ばすのは妥当に思える。例えば、英規制当局は、上級管理職に対する調査が元のボーナス支給から7年以内に開始された場合はクローバック期間を3年延ばし、10年にすると定めている。」

規制当局は、不正防止の強化の観点から、クローバック適用の年限を伸ばすことを考えています。不正発覚場合は、どこまで遡及して責任を追及できるのか。アングロサクソン流はよく分かりませんね。クローバックが当たり前だったり、ショートターミズムで報酬を決めていたり。まるで、制度・ルール変更自体をゲームか何かのように考えられる素地が文化の中に根付いているんでしょうね。

「米規制当局はすでに米国の銀行の報酬支払い制限について、通常3年であるクローバックと取り消しのさらなる期間延長を検討している。実現すれば、ボーナスの50%を繰り延べることもできるようになる。英中央銀行のイングランド銀行は、銀行役員の転職の際に新たな雇用主が転職で取り消された報酬を穴埋めする「ボーナス・バイアウト」を防ぐため、規則を厳格化したい考えだ。」

「ボーナス・バイアウト」。これが、業界全体で負担せざるを得ない、人件費にかかる余計なコスト負担となります。自分たちで自分たちの首を絞めているとしか思えません。悪い方向へのスパイラルです。目の前にニンジンをぶら下げた、業績比例の報酬制度。そういう安易な動機付けの上に成り立つ企業業績。そして、見かけ上の業績を良くするための不正に手を染めてしまう誘惑度も同時に高めることになります。強欲資本主義で成り立つウォール街。そんな会社より、仲間とお客とサプライヤーなどの取引先、みんなが協力して幸せになれる、そういう労使関係や取引関係の中で仕事した方が、健全で且つ、最終的な金銭的報酬も心理的満足度・達成感も高まると思うのですがね。カブテリアのアイデアなど、比較して見ると、まだまだ牧歌的な雰囲気を醸し出していますね!
夢見がちなおじさんの繰言でした。(^^;)

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厳密にはESOPでは無いけれど、株式所有や株価連動で従業員(役員含む)のモチベーション向上の具体策を見てみよう!http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭会計で経営を読むストックオプション,ショートターミズム,短期主義,ESOP,従業員による株式所有計画,カブテリア,日清食品ホールディングス,持株会,クローバック,マルス,ボーナス・バイアウト■ ESOP:Employee Stock Ownership Plan(従業員による株式所有計画)の応用編ということで 株式会社のお勤めの方は、従業員持ち株会など、自身の業績と会社の業績をリンクさせて、モチベーション向上と、会社業績向上への社員一丸となったベクトル合わせのために、なんらかの報酬制度に自社株保有を組み合わせている事例が多々あると思います。今回はそういう事例から、難しいものと楽しくなるものの2つをご紹介します。 まずは楽しく!?なる事例から。 2016/3/29付 |日本経済新聞|朝刊 日清、株価連動の社食「カブテリア」 上昇で豪華メニュー/下落で昭和30年代風 「日清食品ホールディングスは28日、同社の株価動向によって提供メニューを入れ替える社員食堂を東京本社に30日オープンすると発表した。身近な社食を通じ、社員一人ひとりに企業価値の向上について意識付けする効果を狙う。  社員食堂はカフェテリアと株をもじって「カブテリア」と名付け、株価連動型の特別メニューを毎月2日間用意する。  月末の同社株終値が前月の平均株価を上回った場合は、翌月に「ご褒美デー」として豪華なメニューが登場。余興としてマグロの解体ショーなども披露する。  一方、下回った場合は「お目玉デー」として昭和30年代の給食などを再現した質素な特別メニューを提供する。役員などが配膳を担当することもあるという。」 (下記は、同記事添付の日清HD東京本社の社員食堂「カブテリア」(イメージ)写真を転載) (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます そもそも、「ESOP(イソップ)」とは、企業拠出による従業員に対する退職時雇用者株式給付制度を意味しますが、ストックオプションや持株会、現株をボーナスで付与する賞与制度など、とにかく、従業員・役員に、株価を意識した仕事をさせる試み全般を指して、使われることもある用語になっています。 (参考) ⇒「役員も従業員も報酬制度次第でモチベーションが変わります! 日本経済新聞より」 ⇒「東芝、業績連動報酬を刷新 不適切会計の再発防止」 ⇒「役員報酬、成長戦略に連動 資生堂は業績を時間差で評価 アステラス製薬、信託方式で動機付け」 ⇒「「社長が薄給の国ニッポン アジアは高給で人材確保」-あなたの会社の社長は適正価格ですか?」   ■ 米銀は大層難しいことを考えているようです。さすが金融のプロ。時空を超えてモチベーション管理とモラルハザード防止に努めています 利己的に行動する悪知恵の働くずる賢い人たちの集まりですからね。 すみません、言い過ぎました。m(_ _)m 2016/3/30付 |日本経済新聞|朝刊 〈FT特約〉米銀、報酬支払いに条件 不正防止へ厳格化は妥当 「金融危機の後から、株主や規制当局は給与やボーナスに狙いを定めている。不適切な報酬体系が銀行経営者に不要なリスクをとることを促す要因になると考え、それを防ぐため将来の報酬の制限を強く求めている。 JPモルガン、シティグループ、バンク・オブ・アメリカに対する投資家は、上級職員のより多くのボーナスをさらに長い期間――10年もの間――思いがけない損失やまだ発覚していない不正に対する保険として留保することを提案している。」 つまり、単年度業績だけでは報酬を与えないぞ、というわけです。会社自身は、四半期決算に基づくショートターミズム(短期主義)により、株主還元やストックオプションの多寡を決めていたのですが、その悪弊を断ち切ろうというのです。 ⇒「(経済教室)エコノミクストレンド 企業の短期主義、再び注目 株式非公開の増加も 「悪弊」とまでは言い切れず 鶴光太郎 慶大教授」 この過去投稿の中で、筆者なりのできるだけ合理的と思われる報酬制度の基本形をお話ししています。ご参考まで。 「米国の銀行はすでにこうした規則をいくつか導入済みだ。例えば、シティは上級職員に対し、支払い済みのボーナスの返還を求める(クローバック)か、支給前のインセンティブ報酬の取り消し(マルス)を支給(決定)から3年か4年以内に実行することが可能だ。 銀行がさらなる厳格化に異議を唱えるのはいつものことだ。既存のルールでも投資家の提案と同じ目的を達成できると銀行側は主張する。報酬の凍結期間を延長し厳格にすれば、採用や従業員の維持に支障をきたす。」 ただし、上記のような縛りを厳しくすると、今度は有能な人材が集まらないという弊害が生じてくる恐れがあります。クローバックやマルスがあると、収入が不安定となるため、ベース給のアップの要求度も必然的に高まってしまいます。 ちなみに、筆者も外資系コンサルティングファームに在籍していた時、クローバックを受けた経験があります。ただし、その会社はその後、日本の労働規制当局から指摘され、従業員に対するクローバックを撤廃しましたが。。。でも誤解しないでくださいね、なにか法に抵触する悪さ(不正)をしたわけではありません。事前のお約束だった業績目標が年間で未達だったので、上半期の支給済ボーナスを下半期の支給額から差し引かれたということです。(^^;)   ■ さすが、お金のプロは考えるレベルが違います。でも策士策に溺れる。業界全体でそのコストを払っているようにしか見えません 「不適切な管理の結果が発覚し調査が及ぶまでには何年もかかる。HSBCのスイスのプライベートバンキング部門による脱税指南スキャンダルが完全に暴かれるまでには8年を要した。英国の銀行による支払補償保険の不正販売は明らかになるまで20年以上かかった。 こうした事例に比べれば、クローバック期間を10年に延ばすのは妥当に思える。例えば、英規制当局は、上級管理職に対する調査が元のボーナス支給から7年以内に開始された場合はクローバック期間を3年延ばし、10年にすると定めている。」 規制当局は、不正防止の強化の観点から、クローバック適用の年限を伸ばすことを考えています。不正発覚場合は、どこまで遡及して責任を追及できるのか。アングロサクソン流はよく分かりませんね。クローバックが当たり前だったり、ショートターミズムで報酬を決めていたり。まるで、制度・ルール変更自体をゲームか何かのように考えられる素地が文化の中に根付いているんでしょうね。 「米規制当局はすでに米国の銀行の報酬支払い制限について、通常3年であるクローバックと取り消しのさらなる期間延長を検討している。実現すれば、ボーナスの50%を繰り延べることもできるようになる。英中央銀行のイングランド銀行は、銀行役員の転職の際に新たな雇用主が転職で取り消された報酬を穴埋めする「ボーナス・バイアウト」を防ぐため、規則を厳格化したい考えだ。」 「ボーナス・バイアウト」。これが、業界全体で負担せざるを得ない、人件費にかかる余計なコスト負担となります。自分たちで自分たちの首を絞めているとしか思えません。悪い方向へのスパイラルです。目の前にニンジンをぶら下げた、業績比例の報酬制度。そういう安易な動機付けの上に成り立つ企業業績。そして、見かけ上の業績を良くするための不正に手を染めてしまう誘惑度も同時に高めることになります。強欲資本主義で成り立つウォール街。そんな会社より、仲間とお客とサプライヤーなどの取引先、みんなが協力して幸せになれる、そういう労使関係や取引関係の中で仕事した方が、健全で且つ、最終的な金銭的報酬も心理的満足度・達成感も高まると思うのですがね。カブテリアのアイデアなど、比較して見ると、まだまだ牧歌的な雰囲気を醸し出していますね! 夢見がちなおじさんの繰言でした。(^^;)現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します