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■ キャッシュフローによる業績評価で再発防止

経営管理会計トピック

新生、東芝のこれからの信頼回復に、諸処の「不適切会計の再発防止策」が立案されています。どれも、きちんとした専門家が立案されたような立派な案だと思います。ただひとつ、「管理会計」視点からもの申させていただきたいと思います。
(決して、東芝再生に水を差す意図はございませんので、その辺はご容赦ください。純粋に管理会計屋として、職業上の立場からの意見表明です。)

2015/9/5|日本経済新聞|朝刊 東芝、業績連動報酬を刷新 不適切会計の再発防止

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「東芝は毎期の業績に応じて執行役らの報酬を決めている評価制度を大幅に見直す。年間利益の目標に対する達成度だけでなく、どれだけキャッシュフロー(現金)を稼いだかを中心的な項目に据える。ごまかしが利きにくい現金収支で管理するやり方に切り替え、不適切会計の再発防止につなげる。」

不適切会計を調べた第三者委員会によりますと、不適切会計の指示が生まれ、実施された要因が従来の業績評価制度が背景にあると指摘されています。

その論拠を記事から整理すると、

① 執行役の報酬は、「基本報酬」+「職務報酬」で、「職務報酬」の40~45%が、業績連動
② 「業績連動」の「業績」とは、「期間利益」である
③ 「期間利益」は、工事採算の見積りや、在庫評価などで操作が容易

よって、「期間損益」ではなく「キャッシュフロー」に連動する「職務報酬」に、業績指標を変更することによって、

① そもそも、不適切会計の指示を出しにくくする(キャッシュフローは人為的調整幅が少ないため、不正指示の動機を無くす = 事前予防)

② 期間損益に比べて、キャッシュフローは人為的調整幅が小さいので、不正の実行可能性が低い(=事後予防)

という結論が導かれます。筆者の意見は、このロジックに噛みつくものです。

 

■ キャッシュフロー経営の長所とは?

関連する新聞記事で、引き続き、キャッシュフロー経営に軸足を移すことのメリットが繰り返し解説されているので、多少寄り道になりますが、どのような説明がなされているのか、記事内容を追ってみます。

2015/9/8|日本経済新聞|朝刊 東芝会計不祥事 「ヘルスケアで1兆円」撤回 4~6月決算発表 社長「14日死守」

「米ウエスチングハウスなど過去の大型買収が東芝の財務基盤の重荷となり、目先の利益をかさ上げする会計操作の一因となった。この反省から、今後はどれだけ現金を稼いだかを重視するキャッシュフロー経営に軸足を移す。短期の利益を強いる場となった「社長月例」は廃止。今月からキャッシュフローを中心に業績改善を議論する方式に改める。」

この記事の本意は、過去の大型買収により発生した多額の「のれん」を毎期償却すると、当期利益を圧迫するため、それを緩和する目的で、毎期毎期、短期の期間損益の操作に手を染めたのが不適切会計の遠因といっています。

実学入門 経営がみえる会計―目指せ! キャッシュフロー経営

2015/9/8|日本経済新聞|朝刊 キャッシュフロー経営注目

「企業統治に詳しい大杉謙一・中央大学法科大学院教授 今回の注目点はキャッシュフロー(現金収支)経営を強く打ち出したことだ。社外取締役には業績数値に明るい公認会計士や企業経営経験者がいる。ごまかしのきかないキャッシュフローを経営評価の要に位置づけ、社外取締役が経営者を監督するシステムが円滑に回るよう工夫したのだろう。うまく機能するか注視したい。」

そして、過去の大型買収で一時的なキャッシュアウトがあっても、一般的には以降の会計期のキャッシュフローには、「のれん償却費」と違って影響しないので、キャッシュフロー経営を貫徹すれば、不適切会計の温床にはならない、という論説になっています。

キャッシュフロー経営って?―ドクターをお金の悩みから解放する

■ キャッシュフロー経営への過大な期待を打ち破る!

こうした学者やマスコミの論調に毅然として「本当?」という批判的な目を向けてみたいと思います。

(1)本当にキャッシュフローはごまかしがきかないのか?
(2)キャッシュフローの期間業績評価指標としての限界
(3)任期のある役員の業績連動指標としてのキャッシュフローの逆作用性

(1)本当にキャッシュフローはごまかしがきかないのか?
新生東芝のキャッシュフロー業績指標が、「営業キャッシュフロー(OCF)」なのか、それとも「フリーキャッシュフロー(FCF)」なのかによって、ごまかせる範囲も違ってくるのですが、ここでは「OCF」と仮定します。

その場合、下記の4つのごまかし方が存在します。

① 財務CFをOCFへシフト
・銀行からの融資金額を、架空の企業への在庫売上の対価として計上
・回収期限前の売上債権の売却額をOCFとして計上
・債権譲渡益をOCFとして計上

② OCFでのキャッシュアウトを投資CFへシフト
・循環取引による前受金はOCFに計上し、相手への支払額は投資CFに計上
・通常の営業費用を資産計上し、その分のキャッシュアウトを投資CFへ

③ 事業の買収・売却を使ってOCFを水増し
・買収先のOCFを自社のものとして計上
・契約獲得したディーラーへの支払手数料を「契約取得への買収」として投資CFに計上
・将来提供するサービス契約を含んだ割高の事業売却代金の一部をOCFとして計上

④ 持続不可能な活動によるOCFの増大
・仕入先への支払いを遅らせる
・得意先からの回収を早める
・在庫の仕入れを業績評価期間終了直後まで引き延ばす
・特別利益をキャッシュフロー計算書上は、OCFとして計上

これらの例は、下記図書を参考にしました。ちなみに、この本の解説記事は現在、本ブログにて連載中です。
⇒「不適切会計の手段 -利益操作(1)東芝、来月に新経営陣 不適切会計、歴代3社長が辞任 外部人材で刷新委 より学習開始

会計不正はこう見抜け

(2)キャッシュフローの期間業績評価指標としての限界
そもそも、世の中の業績評価は、単式簿記によるキャッシュフローから、複式簿記による期間損益に移行してきた歴史があります。

① 近代工業が発展し、設備投資が巨額になり、長期にわたって収益獲得に対応して償却費計算する必要性が出てきたこと
② 金融市場での企業間取引の信用力の高度化により、現金取引から信用取引による商取引のボリュームが拡大したこと
③ 上記①②などの理由から、企業体が「Going Concern」として、企業活動を長期にわたって継続することが常識となったため、株主への配当金を決めるために「期間損益」を求めるようになったこと
④ 株主から経営を委託された経営者が、株主利益の最大化と、それを手助けする自分の業績評価を「期間損益」の最大化で結び付けることで、いわゆるエージェンシー問題の解決を図ったこと

という事情から、「期間損益」による業績評価が当たり前になっています。最近は、「アクルーアル」といって、期間利益のうち、現金の裏うちのある、質の良い利益がどれだけあるか、という議論や分析が流行っていますが、その手法には、いろいろと問題があることは、別の投稿記事で解説済みです。
⇒「(スクランブル)会計問題、身構える市場 「利益の質」で投資先選別

 

(3)任期のある役員の業績連動指標としてのキャッシュフローの逆作用性
とある事業部門の担当役員になった場合、その事業部門の業績は、担当役員の担当任期中のみ、その担当役員の業績評価に影響を及ぼします。つまり、A事業本部の担当役員を3年程度務めたら、4年目にはB事業本部の担当役員に担当替えになる、と社内人事の不文律である程度事前に分かっていたとしたらどうでしょう?

賢い役員なら、A事業本部での、大がかりな事業買収や新技術・新製品への開発投資を、任期中には行うことをきっとためらうでしょう。仮にそうした投資を実行した場合、多大なキャッシュアウトが自分が担当するA事業本部で発生することになりますが、そうしたチャレンジの成果は数年後に、A事業本部にもたらされるのかもしれません。しかし、自分の任期中は、キャッシュアウトだけが自分の成績にカウントされる。A事業本部の業績が花開く頃には、自分はすでにB事業本部の担当になっているはず。。。

長期的に見て、この役員がA事業本部を担当している間、投資を怠ることは、全社最適では決してない可能性が大です。こうした「任期のジレンマ」は、「期間損益」を評価指標にしている場合は、投資額に見合った「償却費」として、年あたりでは負担額が薄くなるのですが、「キャッシュフロー」で考えると、投資した会計期に全額が乗ってくるので、まだ「期間損益」で業績を見ていた方が、このジレンマ問題が突出した課題にはならないかもしれません。

結論から言うと、担当役員の業績連動の考え方を変えない限り、その基準値を「期間損益」から「キャッシュフロー」に衣替えしただけで、万事、問題解決とはならないということです。

 

■ 従来から東芝はキャッシュフローも重視していました!

記事によれば、東芝は、キャッシュフローを全く考慮せず、期間損益だけに意識を集中させすぎて、経営のかじ取りを誤ったかのように、誤解を与える記事になっています。しかし、筆者も詳細なことをこの場では言えないのですが、東芝は、これまでも十分にキャッシュフローにも配慮した経営管理を行ってきています。

⇒「東芝、世界で資金効率化 4地域別にCFO 投資から回収を素早く

フリーキャッシュフローを重視し、「キャッシュ・コンバージョン・サイクル:CCC」を用いた財務管理を事業別や地域別に行ってきました。

確かに、不適切会計は、あってはならないことですが、東芝がこれまで先進的に取り組んできたことまで、まるで無かったことのように断じるのは早計だと思います。筆者は、冷静に東芝のこれからの行く末を見続けていきたいと思います。

P.S.
最近、マスコミが、「不適切会計」から「会計不祥事」に表現を変えてきました。「特設注意市場」への指定や、「課徴金」の絵姿が徐々に明らかになってきたことを受けてだと思われます。読者の皆様には、修飾語でいろいろイメージを左右されることなく、ファクトベースで物事を正しく捉えて頂きたいと思います。

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東芝、業績連動報酬を刷新 不適切会計の再発防止http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭会計で経営を読むCCC,東芝,不適切会計,アクルーアル,キャッシュフロー,業績評価,キャッシュコンバージョンサイクル■ キャッシュフローによる業績評価で再発防止 新生、東芝のこれからの信頼回復に、諸処の「不適切会計の再発防止策」が立案されています。どれも、きちんとした専門家が立案されたような立派な案だと思います。ただひとつ、「管理会計」視点からもの申させていただきたいと思います。 (決して、東芝再生に水を差す意図はございませんので、その辺はご容赦ください。純粋に管理会計屋として、職業上の立場からの意見表明です。) 2015/9/5|日本経済新聞|朝刊 東芝、業績連動報酬を刷新 不適切会計の再発防止 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 「東芝は毎期の業績に応じて執行役らの報酬を決めている評価制度を大幅に見直す。年間利益の目標に対する達成度だけでなく、どれだけキャッシュフロー(現金)を稼いだかを中心的な項目に据える。ごまかしが利きにくい現金収支で管理するやり方に切り替え、不適切会計の再発防止につなげる。」 不適切会計を調べた第三者委員会によりますと、不適切会計の指示が生まれ、実施された要因が従来の業績評価制度が背景にあると指摘されています。 その論拠を記事から整理すると、 ① 執行役の報酬は、「基本報酬」+「職務報酬」で、「職務報酬」の40~45%が、業績連動 ② 「業績連動」の「業績」とは、「期間利益」である ③ 「期間利益」は、工事採算の見積りや、在庫評価などで操作が容易 よって、「期間損益」ではなく「キャッシュフロー」に連動する「職務報酬」に、業績指標を変更することによって、 ① そもそも、不適切会計の指示を出しにくくする(キャッシュフローは人為的調整幅が少ないため、不正指示の動機を無くす = 事前予防) ② 期間損益に比べて、キャッシュフローは人為的調整幅が小さいので、不正の実行可能性が低い(=事後予防) という結論が導かれます。筆者の意見は、このロジックに噛みつくものです。   ■ キャッシュフロー経営の長所とは? 関連する新聞記事で、引き続き、キャッシュフロー経営に軸足を移すことのメリットが繰り返し解説されているので、多少寄り道になりますが、どのような説明がなされているのか、記事内容を追ってみます。 2015/9/8|日本経済新聞|朝刊 東芝会計不祥事 「ヘルスケアで1兆円」撤回 4~6月決算発表 社長「14日死守」 「米ウエスチングハウスなど過去の大型買収が東芝の財務基盤の重荷となり、目先の利益をかさ上げする会計操作の一因となった。この反省から、今後はどれだけ現金を稼いだかを重視するキャッシュフロー経営に軸足を移す。短期の利益を強いる場となった「社長月例」は廃止。今月からキャッシュフローを中心に業績改善を議論する方式に改める。」 この記事の本意は、過去の大型買収により発生した多額の「のれん」を毎期償却すると、当期利益を圧迫するため、それを緩和する目的で、毎期毎期、短期の期間損益の操作に手を染めたのが不適切会計の遠因といっています。 実学入門 経営がみえる会計―目指せ! キャッシュフロー経営 2015/9/8|日本経済新聞|朝刊 キャッシュフロー経営注目 「企業統治に詳しい大杉謙一・中央大学法科大学院教授 今回の注目点はキャッシュフロー(現金収支)経営を強く打ち出したことだ。社外取締役には業績数値に明るい公認会計士や企業経営経験者がいる。ごまかしのきかないキャッシュフローを経営評価の要に位置づけ、社外取締役が経営者を監督するシステムが円滑に回るよう工夫したのだろう。うまく機能するか注視したい。」 そして、過去の大型買収で一時的なキャッシュアウトがあっても、一般的には以降の会計期のキャッシュフローには、「のれん償却費」と違って影響しないので、キャッシュフロー経営を貫徹すれば、不適切会計の温床にはならない、という論説になっています。 キャッシュフロー経営って?―ドクターをお金の悩みから解放する ■ キャッシュフロー経営への過大な期待を打ち破る! こうした学者やマスコミの論調に毅然として「本当?」という批判的な目を向けてみたいと思います。 (1)本当にキャッシュフローはごまかしがきかないのか? (2)キャッシュフローの期間業績評価指標としての限界 (3)任期のある役員の業績連動指標としてのキャッシュフローの逆作用性 (1)本当にキャッシュフローはごまかしがきかないのか? 新生東芝のキャッシュフロー業績指標が、「営業キャッシュフロー(OCF)」なのか、それとも「フリーキャッシュフロー(FCF)」なのかによって、ごまかせる範囲も違ってくるのですが、ここでは「OCF」と仮定します。 その場合、下記の4つのごまかし方が存在します。 ① 財務CFをOCFへシフト ・銀行からの融資金額を、架空の企業への在庫売上の対価として計上 ・回収期限前の売上債権の売却額をOCFとして計上 ・債権譲渡益をOCFとして計上 ② OCFでのキャッシュアウトを投資CFへシフト ・循環取引による前受金はOCFに計上し、相手への支払額は投資CFに計上 ・通常の営業費用を資産計上し、その分のキャッシュアウトを投資CFへ ③ 事業の買収・売却を使ってOCFを水増し ・買収先のOCFを自社のものとして計上 ・契約獲得したディーラーへの支払手数料を「契約取得への買収」として投資CFに計上 ・将来提供するサービス契約を含んだ割高の事業売却代金の一部をOCFとして計上 ④ 持続不可能な活動によるOCFの増大 ・仕入先への支払いを遅らせる ・得意先からの回収を早める ・在庫の仕入れを業績評価期間終了直後まで引き延ばす ・特別利益をキャッシュフロー計算書上は、OCFとして計上 これらの例は、下記図書を参考にしました。ちなみに、この本の解説記事は現在、本ブログにて連載中です。 ⇒「不適切会計の手段 -利益操作(1)東芝、来月に新経営陣 不適切会計、歴代3社長が辞任 外部人材で刷新委 より学習開始」 会計不正はこう見抜け (2)キャッシュフローの期間業績評価指標としての限界 そもそも、世の中の業績評価は、単式簿記によるキャッシュフローから、複式簿記による期間損益に移行してきた歴史があります。 ① 近代工業が発展し、設備投資が巨額になり、長期にわたって収益獲得に対応して償却費計算する必要性が出てきたこと ② 金融市場での企業間取引の信用力の高度化により、現金取引から信用取引による商取引のボリュームが拡大したこと ③ 上記①②などの理由から、企業体が「Going Concern」として、企業活動を長期にわたって継続することが常識となったため、株主への配当金を決めるために「期間損益」を求めるようになったこと ④ 株主から経営を委託された経営者が、株主利益の最大化と、それを手助けする自分の業績評価を「期間損益」の最大化で結び付けることで、いわゆるエージェンシー問題の解決を図ったこと という事情から、「期間損益」による業績評価が当たり前になっています。最近は、「アクルーアル」といって、期間利益のうち、現金の裏うちのある、質の良い利益がどれだけあるか、という議論や分析が流行っていますが、その手法には、いろいろと問題があることは、別の投稿記事で解説済みです。 ⇒「(スクランブル)会計問題、身構える市場 「利益の質」で投資先選別」   (3)任期のある役員の業績連動指標としてのキャッシュフローの逆作用性 とある事業部門の担当役員になった場合、その事業部門の業績は、担当役員の担当任期中のみ、その担当役員の業績評価に影響を及ぼします。つまり、A事業本部の担当役員を3年程度務めたら、4年目にはB事業本部の担当役員に担当替えになる、と社内人事の不文律である程度事前に分かっていたとしたらどうでしょう? 賢い役員なら、A事業本部での、大がかりな事業買収や新技術・新製品への開発投資を、任期中には行うことをきっとためらうでしょう。仮にそうした投資を実行した場合、多大なキャッシュアウトが自分が担当するA事業本部で発生することになりますが、そうしたチャレンジの成果は数年後に、A事業本部にもたらされるのかもしれません。しかし、自分の任期中は、キャッシュアウトだけが自分の成績にカウントされる。A事業本部の業績が花開く頃には、自分はすでにB事業本部の担当になっているはず。。。 長期的に見て、この役員がA事業本部を担当している間、投資を怠ることは、全社最適では決してない可能性が大です。こうした「任期のジレンマ」は、「期間損益」を評価指標にしている場合は、投資額に見合った「償却費」として、年あたりでは負担額が薄くなるのですが、「キャッシュフロー」で考えると、投資した会計期に全額が乗ってくるので、まだ「期間損益」で業績を見ていた方が、このジレンマ問題が突出した課題にはならないかもしれません。 結論から言うと、担当役員の業績連動の考え方を変えない限り、その基準値を「期間損益」から「キャッシュフロー」に衣替えしただけで、万事、問題解決とはならないということです。   ■ 従来から東芝はキャッシュフローも重視していました! 記事によれば、東芝は、キャッシュフローを全く考慮せず、期間損益だけに意識を集中させすぎて、経営のかじ取りを誤ったかのように、誤解を与える記事になっています。しかし、筆者も詳細なことをこの場では言えないのですが、東芝は、これまでも十分にキャッシュフローにも配慮した経営管理を行ってきています。 ⇒「東芝、世界で資金効率化 4地域別にCFO 投資から回収を素早く」 フリーキャッシュフローを重視し、「キャッシュ・コンバージョン・サイクル:CCC」を用いた財務管理を事業別や地域別に行ってきました。 確かに、不適切会計は、あってはならないことですが、東芝がこれまで先進的に取り組んできたことまで、まるで無かったことのように断じるのは早計だと思います。筆者は、冷静に東芝のこれからの行く末を見続けていきたいと思います。 P.S. 最近、マスコミが、「不適切会計」から「会計不祥事」に表現を変えてきました。「特設注意市場」への指定や、「課徴金」の絵姿が徐々に明らかになってきたことを受けてだと思われます。読者の皆様には、修飾語でいろいろイメージを左右されることなく、ファクトベースで物事を正しく捉えて頂きたいと思います。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します