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■ 2012年に租税回避が最初に問題視された英国が先行する国際取引の見える化

経営管理会計トピック

スターバックスの不買運動に、グーグルの自主的な追加納税と、英国を舞台にしたタックス・インバージョンや租税回避などの動きが活発になっていますが、英国の税務当局が、英連邦下に、タックスヘイブンとみなせる自治領などを多く抱えている中で、本国での課税所得の見える化に挑もうとしています。この辺も、シティ・オブ・ロンドンの利害調整から英国のEU離脱(ブリグジット)に微妙に絡んでいたりします。

2016/4/25付 |日本経済新聞|朝刊 (衝撃 パナマ文書)納税ガラス張り 英で先行 租税回避行為へ強まる批判

「大企業は納税の実態を説明せよ――。欧州を中心に、企業に納税情報の公開を求める動きが強まっている。英国は近く各社に納税方針のネットでの開示を義務付ける制度を施行する見通しだ。さらに「パナマ文書」発覚で租税回避行為への批判は加速、欧州連合(EU)の欧州委員会は納税額の報告義務化を提案した。日本企業も対応を迫られている。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

まずは、多国籍企業(税務の世界では、徴税権が国境で分離されているので、グローバル企業と呼ばず、一昔前のこの呼び名で表現することが通例)の租税回避行為についての解説記事をご紹介。

2016/4/25付 |日本経済新聞|朝刊 国ごとで異なる税制の隙を突く

「▼多国籍企業の租税回避行為
国境をまたいで事業展開する企業が、国によって異なる税制の隙を突いて行き過ぎた節税を行うこと。国内でしか活動できない企業や個人との公平さを損ねるほか、各国の税収を減らす要因になるため問題視される。
 例えば、アップルが編み出したとされ、「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」と呼ばれる仕組みが有名。米国やアイルランド、オランダの法規制や条約の特性をフル活用し、米国外の利益の大半を無税で留保できるようにしたという。
 スターバックスは1998年の英国進出以降、スイスやオランダの子会社を利用して法人税の大半を“節税”。フェイスブックはアイルランド法人を絡めた会計処理により、2014年の英国での法人税納付を4327ポンド(約70万円)に抑えた。いずれも世論や関係国からの厳しい批判にさらされ、自主的な追加納付や、節税策の見直しなどを余儀なくされている。」

ここで有名な「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」のスキームをちょこっと解説します。

・ダブルアイリッシュ…アイルランドに子会社を2つ持つ
・ダッチサンドイッチ…オランダを経由する

●出典:会計・税務 専門情報 ダブルアイリッシュ・ウィズ・ア・ダッチサンドイッチを考える①

20160504_ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ

まず、アイルランドに、タックスヘイブンが親会社のペーパーカンパニー(A社)を設立します。アイルランドの税制上、海外企業から支配されている会社には課税されないので、最終的な利益をこのA社に積上げるためです。つぎに、経済的実体のある法人(B社)を設立して、このB社で営業活動をします。これが、「ダブルアイリッシュ」。

このままでは、このB社で発生した利益(課税所得)が生まれて、A社に利益移転する前に源泉課税されてしまいます。そこで、オランダにC社を設立し、B社の利益を、B社→C社→A社という風に、間にC社を挟んだ迂回取引で移転を試みます。これが「ダッチサンドイッチ」。

アイルランドとオランダ間の租税条約により、アイルランドのB社から利益移転する際に、源泉課税をしない、という特典があることを最大限活用(税法の網の目をくぐる事)するのです。

まあ、今でもこの手法が通用するか、ご自身で調べてみて下さい。そして、このような当局からすれば行き過ぎた節税行為が社会的問題となり、今回の事態を引き起こしました。

(参考)Apple社の具体的な「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」のスキームを実際に詳細にレポートしたものをご覧になりたい方は、次のPDFをご参照ください。

Apple の節税戦略~ダブルアイリッシュ・ウイズ・ダッチサンドイッチ
(太陽ASG国際税務ニュースレター 2014年1月)

 

■ 英国で検討が進む納税情報公開に関する新制度について

「新制度は英国内で事業を展開し、年間売上高が英国で2億ポンド(約310億円)超か、全世界で7億5千万ユーロ(約920億円)超の企業が対象となる見込みで、該当する日本企業も少なくない。
 取締役会で承認した「税務戦略」のネットでの公開義務を定め、違反すれば罰金が命じられる。現在は関連法案の微修正の段階で今年7月にも施行される見通しだ。」

この動きに対応して、PwC税理士法人(東京・千代田)は1月に税務ガバナンス支援チームを新設するなど企業側からの相談受付体制を拡充したとのこと。幸いにも、問い合わせは相次ぎ「英国に子会社を持つ日本企業で、既に公開に向けた税務戦略を策定した社もある」ということです。同法人パートナーの高島淳税理士によりますと、「一般的に日本企業は極端な節税策を取らない一方、情報開示にも消極的だった」「新制度をきっかけに税への意識が高まる可能性もある」ということで、これを機会に、日本企業の税務戦略が大きな経営課題のひとつになる変換点となるかもしれません。「After パナマ文書」と呼ばれるようになるかも。

(下記は、同記事添付の「税を巡る企業と国家のせめぎ合い」のイメージ図を転載)

20160425_税を巡る企業と国家のせめぎ合い_日本経済新聞朝刊

実際に、この4月にタックスヘイブン(租税回避地)の利用実態に関する大量の内部文書「パナマ文書」が発覚し、極端な節税策を講じた政治家や富裕層、企業などへの批判が高まりました。それを受けて、欧州委員会はEU域内で活動する多国籍企業に国別の利益や納税額などの報告・公開を義務付ける制度の新設を提案しました。EU加盟国間に温度差があり、提案がどう決着するかは未知数です。ただ英国の新制度以上の情報開示がEU全体で求められる展開もあり得るとのこと。

 

■ 英国歳入関税庁がどこまで本気を見せることができるのか? 大英帝国の歴史への挑戦

ちなみに、タックスヘイブンはそもそもどこの国起源の地域に偏在しているのでしょうかね。

2016/4/14付 |日本経済新聞|朝刊 租税回避地 どこ 旧植民地多く 秘密主義徹底

「タックスヘイブン(租税回避地)は世界中に散らばっている。経済協力開発機構(OECD)が2009年にまとめたリストによるとパナマや英領バージン諸島、ケイマン諸島、バハマなどカリブ海に多いほか、リヒテンシュタインやモナコなど欧州の小国を含む。明確な線引きはなく、香港やシンガポールといった税率の低い先進国・地域を指すこともある。英国の旧植民地が目立つのも特徴だ。」

(下記は、同記事添付のタックスヘイブンへ資金が還流する説明図を転載)

20160414_世界中の資産が欧州銀などを通じ、タックスヘイブンに移転された_日本経済新聞朝刊

 

さらに、英国税務当局がどこまで本気を見せられるのか、危うい歴史的事実も厳然として存在しています。

2016/4/14付 |日本経済新聞|朝刊 大英帝国の落とし子、「タックスヘイブン」透明化の試練 ロンドン 小滝麻理子

「パナマの法律事務所から流出したタックスヘイブン(租税回避地)関連文書を巡り、英国のキャメロン首相が苦しい立場に追い込まれている。亡父がタックスヘイブンに設立したファンドへの過去の投資を認めたことによる自身への批判だけではない。パナマ文書で明らかになったタックスヘイブンの大半を占めた海外の英領の“浄化”という難題がのしかかっている。」

「具体的には、バージン諸島やケイマン諸島を含む英国のほとんどの海外領土や王室属領が、今後は金融資産の実質的な所有者に関する情報を、英国の税務当局や国家犯罪対策庁に開示させることで合意したと説明した。このほか従業員が課税逃れ方法を顧客に指示することを企業が防止できない場合、犯罪行為とする法案を年内に提出することも表明。「(英領に対して)世界中のほかのタックスヘイブンよりもはるかに先を行く措置を求める」と強調。自身の亡父のファンドへの投資に違法性はなかったとの主張とともに、タックスヘイブンの透明性を高めると繰り返した。」

同記事によりますと、今回の「パナマ文書」で浮かび上がったのがタックスヘイブンと英国のつながりの深さ。パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」が21カ国・地域に設立した21万の会社のうち、半数以上の約11万3千社が英領バージン諸島にあり、このほかアンギラなど英領や王室属領の島がタックスヘイブンとしてずらりと名を並べています。情報の流出元だったパナマは会社設立手続きなどを手掛ける“経由地”にすぎず、最終的な資金の運用はこうした英領の島々から活発に行われていたことがうかがえます。

「英金融街シティーのある法律事務所関係者は「英領は英国とも法体系が似通い、自由な資金の動きを認める風潮も強い。法的安定性が非常に高く、タックスヘイブンのなかでも人気は高い」と指摘する。実際に近年、ロシアや中東などの富裕層によるロンドンの高級不動産への投資は英領を通して行われている事例が多い。」

つまり、英国の歳入関税庁や国家犯罪対策庁は、こうした大英帝国時代からの遺産である既得権益へ戦いを挑まなくてはいけないのです。一筋縄でいく相手ではなく、戦う前から劣勢であることは否めません。

「英領の島々はもともと大英帝国時代からの海外領土で、帝国崩壊後も独立せず、英領土となることを選んだ。一方で独自の憲法や政府を持つ高度な自治を与えられ、英国とは異なる極めて低い税率などをかかげることでタックスヘイブンとして成長した。こうした島々と緩やかに連携することで、英国は国際的なカネの流れを押さえてきたともいえる。税逃れ問題に詳しいシティー大学ロンドンのリチャード・マーフィー教授は「英政府は英領の一部の不透明な部分にこれ以上目をつぶるべきではない」と指摘する。」

英領の島々と、ロンドン・オブ・シティの密かな紐帯と連携。なお一層の歴史の闇が潜んでおり、開けたら最後、大混乱の始まりとなりそうで恐怖感も感じざるを得ません。

 

■ 同床異夢にならないように。OECD、EU、米国の動向は!?

同記事から、
「国際税務に詳しい太田洋弁護士は「多国籍企業に納税情報の開示を求める流れは以前からあり、突然始まったことではない」と指摘する。欧州は多国籍企業の租税回避策に対する批判が根強く、行政によるチェックや法規制を世界に先駆けて進めてきた経緯がある。」

また、

2016/4/25付 |日本経済新聞|朝刊 OECDやG20も対策 EUとの整合性 課題に

「多国籍企業の極端な節税策を巡っては、経済協力開発機構(OECD)や20カ国・地域(G20)首脳会議などの国際的な枠組みでも対策が進む。
 リーマン・ショック後の2009年、OECDがタックスヘイブンのリストを公表。13年からはOECDとG20が連携して具体的な国際課税のルール作りに着手し、「BEPS(税源浸食と利益移転)行動計画」の最終報告書をまとめた。
 行動計画は国際間取引への課税ガイドラインなど15項目。多国籍企業が各国の税務当局に、国別の利益・納税額の報告文書を提出する仕組みも盛り込んだ。
 ただ「企業の機密情報が流出する危険がある」と反発も強い。米内国歳入庁(IRS)はむしろ、国際間の金融口座のチェック強化を優先させたいなど、各国には温度差もあり、報告内容は各国税務当局内で慎重に扱われることになった。」

とあるように、OECDやG20でも盛んに国際取引の把握に積極的に乗り出しています。一方で、米国はオフショア口座の把握を優先したいという事情があり、温度差が生じています。というのも、米国は、国内に、デラウェア、ワイオミング、ネバタというタックスヘイブンを抱えており、2010年に成立させた「外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)」による米国人の外国籍金融機関を使った課税逃れを防止するべく、米国人の口座情報を把握することに力を注いでいます。

2016/5/4付 |日本経済新聞|朝刊 (衝撃 パナマ文書)影薄い米国人 米「国内回避地」シフト 格差への不満 積もる一方

まあ、この記事へのコメントはまた別の機会に。

いずれにせよ、英国をはじめとするEU諸国と取引のある日本企業は、これから諸制度の変更(厳格化)により、繁忙期に入るものと推察します。これを機に、筆者もビジネスオポチュニティを広げるようマーケティング活動を進めましょうか。。。

⇒「(経済教室)タックスヘイブン何が問題か 課税情報、本国当局から遮断 枠組み複雑化に狙い 渡辺智之 一橋大学教授
⇒「(真相深層)「結局は増税?」企業警戒 国際課税新ルール、強まる懸念 主要国、はや足並み乱れ -国際税務の超入門
⇒「国際税務、秋の陣 G20で 日本政府による法人税減税策の効果やいかに
⇒「パナマ文書にもめげず米当局企業課税逃れに新規制、結果としてファイザー、アラガン買収断念 ー 日本経済新聞まとめ
⇒「国際課税新ルール、日本企業でも適用 海外子会社の情報収集 本国との二重課税リスクも

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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(衝撃 パナマ文書)納税ガラス張り 英で先行 租税回避行為へ強まる批判 - 管理会計屋が見る国際税務戦略http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭経済動向を会計で読むグーグル,国際税務,タックスヘイブン,アップル,スターバックス,パナマ文書,ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ,租税回避行為,バージン諸島,ケイマン諸島,外国口座税務コンプライアンス法,FATCA■ 2012年に租税回避が最初に問題視された英国が先行する国際取引の見える化 スターバックスの不買運動に、グーグルの自主的な追加納税と、英国を舞台にしたタックス・インバージョンや租税回避などの動きが活発になっていますが、英国の税務当局が、英連邦下に、タックスヘイブンとみなせる自治領などを多く抱えている中で、本国での課税所得の見える化に挑もうとしています。この辺も、シティ・オブ・ロンドンの利害調整から英国のEU離脱(ブリグジット)に微妙に絡んでいたりします。 2016/4/25付 |日本経済新聞|朝刊 (衝撃 パナマ文書)納税ガラス張り 英で先行 租税回避行為へ強まる批判 「大企業は納税の実態を説明せよ――。欧州を中心に、企業に納税情報の公開を求める動きが強まっている。英国は近く各社に納税方針のネットでの開示を義務付ける制度を施行する見通しだ。さらに「パナマ文書」発覚で租税回避行為への批判は加速、欧州連合(EU)の欧州委員会は納税額の報告義務化を提案した。日本企業も対応を迫られている。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます まずは、多国籍企業(税務の世界では、徴税権が国境で分離されているので、グローバル企業と呼ばず、一昔前のこの呼び名で表現することが通例)の租税回避行為についての解説記事をご紹介。 2016/4/25付 |日本経済新聞|朝刊 国ごとで異なる税制の隙を突く 「▼多国籍企業の租税回避行為 国境をまたいで事業展開する企業が、国によって異なる税制の隙を突いて行き過ぎた節税を行うこと。国内でしか活動できない企業や個人との公平さを損ねるほか、各国の税収を減らす要因になるため問題視される。  例えば、アップルが編み出したとされ、「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」と呼ばれる仕組みが有名。米国やアイルランド、オランダの法規制や条約の特性をフル活用し、米国外の利益の大半を無税で留保できるようにしたという。  スターバックスは1998年の英国進出以降、スイスやオランダの子会社を利用して法人税の大半を“節税”。フェイスブックはアイルランド法人を絡めた会計処理により、2014年の英国での法人税納付を4327ポンド(約70万円)に抑えた。いずれも世論や関係国からの厳しい批判にさらされ、自主的な追加納付や、節税策の見直しなどを余儀なくされている。」 ここで有名な「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」のスキームをちょこっと解説します。 ・ダブルアイリッシュ…アイルランドに子会社を2つ持つ ・ダッチサンドイッチ…オランダを経由する ●出典:会計・税務 専門情報 ダブルアイリッシュ・ウィズ・ア・ダッチサンドイッチを考える① まず、アイルランドに、タックスヘイブンが親会社のペーパーカンパニー(A社)を設立します。アイルランドの税制上、海外企業から支配されている会社には課税されないので、最終的な利益をこのA社に積上げるためです。つぎに、経済的実体のある法人(B社)を設立して、このB社で営業活動をします。これが、「ダブルアイリッシュ」。 このままでは、このB社で発生した利益(課税所得)が生まれて、A社に利益移転する前に源泉課税されてしまいます。そこで、オランダにC社を設立し、B社の利益を、B社→C社→A社という風に、間にC社を挟んだ迂回取引で移転を試みます。これが「ダッチサンドイッチ」。 アイルランドとオランダ間の租税条約により、アイルランドのB社から利益移転する際に、源泉課税をしない、という特典があることを最大限活用(税法の網の目をくぐる事)するのです。 まあ、今でもこの手法が通用するか、ご自身で調べてみて下さい。そして、このような当局からすれば行き過ぎた節税行為が社会的問題となり、今回の事態を引き起こしました。 (参考)Apple社の具体的な「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」のスキームを実際に詳細にレポートしたものをご覧になりたい方は、次のPDFをご参照ください。 ● Apple の節税戦略~ダブルアイリッシュ・ウイズ・ダッチサンドイッチ (太陽ASG国際税務ニュースレター 2014年1月)   ■ 英国で検討が進む納税情報公開に関する新制度について 「新制度は英国内で事業を展開し、年間売上高が英国で2億ポンド(約310億円)超か、全世界で7億5千万ユーロ(約920億円)超の企業が対象となる見込みで、該当する日本企業も少なくない。  取締役会で承認した「税務戦略」のネットでの公開義務を定め、違反すれば罰金が命じられる。現在は関連法案の微修正の段階で今年7月にも施行される見通しだ。」 この動きに対応して、PwC税理士法人(東京・千代田)は1月に税務ガバナンス支援チームを新設するなど企業側からの相談受付体制を拡充したとのこと。幸いにも、問い合わせは相次ぎ「英国に子会社を持つ日本企業で、既に公開に向けた税務戦略を策定した社もある」ということです。同法人パートナーの高島淳税理士によりますと、「一般的に日本企業は極端な節税策を取らない一方、情報開示にも消極的だった」「新制度をきっかけに税への意識が高まる可能性もある」ということで、これを機会に、日本企業の税務戦略が大きな経営課題のひとつになる変換点となるかもしれません。「After パナマ文書」と呼ばれるようになるかも。 (下記は、同記事添付の「税を巡る企業と国家のせめぎ合い」のイメージ図を転載) 実際に、この4月にタックスヘイブン(租税回避地)の利用実態に関する大量の内部文書「パナマ文書」が発覚し、極端な節税策を講じた政治家や富裕層、企業などへの批判が高まりました。それを受けて、欧州委員会はEU域内で活動する多国籍企業に国別の利益や納税額などの報告・公開を義務付ける制度の新設を提案しました。EU加盟国間に温度差があり、提案がどう決着するかは未知数です。ただ英国の新制度以上の情報開示がEU全体で求められる展開もあり得るとのこと。   ■ 英国歳入関税庁がどこまで本気を見せることができるのか? 大英帝国の歴史への挑戦 ちなみに、タックスヘイブンはそもそもどこの国起源の地域に偏在しているのでしょうかね。 2016/4/14付 |日本経済新聞|朝刊 租税回避地 どこ 旧植民地多く 秘密主義徹底 「タックスヘイブン(租税回避地)は世界中に散らばっている。経済協力開発機構(OECD)が2009年にまとめたリストによるとパナマや英領バージン諸島、ケイマン諸島、バハマなどカリブ海に多いほか、リヒテンシュタインやモナコなど欧州の小国を含む。明確な線引きはなく、香港やシンガポールといった税率の低い先進国・地域を指すこともある。英国の旧植民地が目立つのも特徴だ。」 (下記は、同記事添付のタックスヘイブンへ資金が還流する説明図を転載)   さらに、英国税務当局がどこまで本気を見せられるのか、危うい歴史的事実も厳然として存在しています。 2016/4/14付 |日本経済新聞|朝刊 大英帝国の落とし子、「タックスヘイブン」透明化の試練 ロンドン 小滝麻理子 「パナマの法律事務所から流出したタックスヘイブン(租税回避地)関連文書を巡り、英国のキャメロン首相が苦しい立場に追い込まれている。亡父がタックスヘイブンに設立したファンドへの過去の投資を認めたことによる自身への批判だけではない。パナマ文書で明らかになったタックスヘイブンの大半を占めた海外の英領の“浄化”という難題がのしかかっている。」 「具体的には、バージン諸島やケイマン諸島を含む英国のほとんどの海外領土や王室属領が、今後は金融資産の実質的な所有者に関する情報を、英国の税務当局や国家犯罪対策庁に開示させることで合意したと説明した。このほか従業員が課税逃れ方法を顧客に指示することを企業が防止できない場合、犯罪行為とする法案を年内に提出することも表明。「(英領に対して)世界中のほかのタックスヘイブンよりもはるかに先を行く措置を求める」と強調。自身の亡父のファンドへの投資に違法性はなかったとの主張とともに、タックスヘイブンの透明性を高めると繰り返した。」 同記事によりますと、今回の「パナマ文書」で浮かび上がったのがタックスヘイブンと英国のつながりの深さ。パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」が21カ国・地域に設立した21万の会社のうち、半数以上の約11万3千社が英領バージン諸島にあり、このほかアンギラなど英領や王室属領の島がタックスヘイブンとしてずらりと名を並べています。情報の流出元だったパナマは会社設立手続きなどを手掛ける“経由地”にすぎず、最終的な資金の運用はこうした英領の島々から活発に行われていたことがうかがえます。 「英金融街シティーのある法律事務所関係者は「英領は英国とも法体系が似通い、自由な資金の動きを認める風潮も強い。法的安定性が非常に高く、タックスヘイブンのなかでも人気は高い」と指摘する。実際に近年、ロシアや中東などの富裕層によるロンドンの高級不動産への投資は英領を通して行われている事例が多い。」 つまり、英国の歳入関税庁や国家犯罪対策庁は、こうした大英帝国時代からの遺産である既得権益へ戦いを挑まなくてはいけないのです。一筋縄でいく相手ではなく、戦う前から劣勢であることは否めません。 「英領の島々はもともと大英帝国時代からの海外領土で、帝国崩壊後も独立せず、英領土となることを選んだ。一方で独自の憲法や政府を持つ高度な自治を与えられ、英国とは異なる極めて低い税率などをかかげることでタックスヘイブンとして成長した。こうした島々と緩やかに連携することで、英国は国際的なカネの流れを押さえてきたともいえる。税逃れ問題に詳しいシティー大学ロンドンのリチャード・マーフィー教授は「英政府は英領の一部の不透明な部分にこれ以上目をつぶるべきではない」と指摘する。」 英領の島々と、ロンドン・オブ・シティの密かな紐帯と連携。なお一層の歴史の闇が潜んでおり、開けたら最後、大混乱の始まりとなりそうで恐怖感も感じざるを得ません。   ■ 同床異夢にならないように。OECD、EU、米国の動向は!? 同記事から、 「国際税務に詳しい太田洋弁護士は「多国籍企業に納税情報の開示を求める流れは以前からあり、突然始まったことではない」と指摘する。欧州は多国籍企業の租税回避策に対する批判が根強く、行政によるチェックや法規制を世界に先駆けて進めてきた経緯がある。」 また、 2016/4/25付 |日本経済新聞|朝刊 OECDやG20も対策 EUとの整合性 課題に 「多国籍企業の極端な節税策を巡っては、経済協力開発機構(OECD)や20カ国・地域(G20)首脳会議などの国際的な枠組みでも対策が進む。  リーマン・ショック後の2009年、OECDがタックスヘイブンのリストを公表。13年からはOECDとG20が連携して具体的な国際課税のルール作りに着手し、「BEPS(税源浸食と利益移転)行動計画」の最終報告書をまとめた。  行動計画は国際間取引への課税ガイドラインなど15項目。多国籍企業が各国の税務当局に、国別の利益・納税額の報告文書を提出する仕組みも盛り込んだ。  ただ「企業の機密情報が流出する危険がある」と反発も強い。米内国歳入庁(IRS)はむしろ、国際間の金融口座のチェック強化を優先させたいなど、各国には温度差もあり、報告内容は各国税務当局内で慎重に扱われることになった。」 とあるように、OECDやG20でも盛んに国際取引の把握に積極的に乗り出しています。一方で、米国はオフショア口座の把握を優先したいという事情があり、温度差が生じています。というのも、米国は、国内に、デラウェア、ワイオミング、ネバタというタックスヘイブンを抱えており、2010年に成立させた「外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)」による米国人の外国籍金融機関を使った課税逃れを防止するべく、米国人の口座情報を把握することに力を注いでいます。 2016/5/4付 |日本経済新聞|朝刊 (衝撃 パナマ文書)影薄い米国人 米「国内回避地」シフト 格差への不満 積もる一方 まあ、この記事へのコメントはまた別の機会に。 いずれにせよ、英国をはじめとするEU諸国と取引のある日本企業は、これから諸制度の変更(厳格化)により、繁忙期に入るものと推察します。これを機に、筆者もビジネスオポチュニティを広げるようマーケティング活動を進めましょうか。。。 ⇒「(経済教室)タックスヘイブン何が問題か 課税情報、本国当局から遮断 枠組み複雑化に狙い 渡辺智之 一橋大学教授 」 ⇒「(真相深層)「結局は増税?」企業警戒 国際課税新ルール、強まる懸念 主要国、はや足並み乱れ -国際税務の超入門」 ⇒「国際税務、秋の陣 G20で 日本政府による法人税減税策の効果やいかに」 ⇒「パナマ文書にもめげず米当局企業課税逃れに新規制、結果としてファイザー、アラガン買収断念 ー 日本経済新聞まとめ」 ⇒「国際課税新ルール、日本企業でも適用 海外子会社の情報収集 本国との二重課税リスクも」 (注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します