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コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(20)大秘密第五番 - コンサルタント業において一番大切な業務は、料金を適正に設定することだ

本レビュー
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■ 大秘密第五番

このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、著者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、私のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。

G.W.ワインバーグ氏の公式ホームページはこちら(英語)

前回登場したマービン医師は同時にコンサルタントでもあるので、州立病院のスタッフ医に定期的にアドバイスをしています。マービン氏の元には、州立病院のスタッフ医では手に負えない、彼らだけでは到底解決できない病症に直面することが通常状態となります。ということは、マービン医師(コンサルタント)から見れば、スタッフ医のやっていることは、何であろうと間違っている、ということになります。

この視点は、ビジネスを相手にする経営コンサルタントであっても同じことがいえます。通常の会社内のスタッフや担当者では手に負えないことを、外部から経営コンサルタントを招聘して解決してもらおうとします。つまり、スタッフや担当者の従来のやり方では行き詰っており、そこから抜け出せなくなっているので、そこから救い出してほしい、という切実な思い、藁にも縋る思いで外部の専門家(と思わせていることに成功している)であるコンサルタントに問い合わせるのです。

マービン医師に言わせれば、従来の手法をガラッと、コンサルタントの手で買えることの秘訣が次の通り。

料金を十分受け取って、彼らがあなたがいったことを確かに実行するように仕向けなさい。

これって、論理が逆転しているのですが、人を動かすという点では成功している方法です。事を改善して上手くいくような秘訣だから、貴重なアドバイスであり、高価なコンサルタント料を支払うに値する、と一般には思われているのですが、人を動かすという意味では全く逆。

高価なコンサルタントフィーを支払っているから、その結果得られたアドバイスを忠実に実行しないと損した気持ちになる、という人の心理を衝くインセンティブが働くのです。

これをワインバーグ氏は次のように言い換えています。

コンサルタント業において一番大切な業務は、料金を適正に設定することだ

 

■ それじゃ、筆者の値付け方法は???

ワインバーグ氏による本書では、コンサルタントの値付けは大変大切な論点なので、12章:自分に値段をつけるの法、にて、丁寧に論じています。そこには、前章のような一見暴論のように聞こえる話ではなくて、きちんと説明がなされています。

そして、筆者(私自身のこと)のコンサルタントフィーは暴利をむさぼったものではないことを、ここでは誤解が無いように、きちんと説明しておきます。まずは、プロジェクトメンバーの人件費を積み上げて、コンサルティングファームで一定に決められたリスクリザーブや値引き率を考慮して、コンサルタントフィーが半自動的に決まります。この辺は、個別原価計算、プロジェクト別採算管理、受注生産を営んでいる労働集約的な業界にほぼ共通した一般的なやり方です。

営業活動や見積もり作業を兼ねるプロジェクトマネージャーとしては、そうした機械的に決まる計算の前段階がプロフェッショナルとしての腕の見せ所となるのです。

プロジェクトが始まる前に、それなりのスキルと経験を持ったコンサルタントを採用・教育するコストがかかります。それが人件費にはねてきます。つまり、デリバリーサービス開始前に、コスト(特に単価の方)はほぼ決まっているのです。

その後、プロジェクトテーマに応じて、適材適所でプロジェクトメンバーのアサインとロールを決めていきます。クライアントが抱えている課題は、私個人にとっては、十分にヒアリングした後で営業提案をするので、プロジェクトが始まる前から実はほとんど分かっています。そうでないと、適材適所のメンバ配置が最初からできませんよね。(^^)

ここが、人件費の計算要素の片割れである時間の方にはねます。時間単価×作業時間で人件費が決まります。あとは、ファームが決めた計算式で半自動的に提案金額が出来上がるわけです。

解決テーマと解決策の選定と、適材適所のメンバの配置。これが、腕っこきのプロジェクトマネージャーであるかどうかを見極めるポイントになります。当然、プロジェクト開始後に、顕在化する課題の突然の発生にも対応できる適応能力も必要になります。それも、見通し力(私はそれを想像力と呼んでいますが)を必要とします。

それゆえ、ファクトベースコンサルタントではなく、自らをグレイヘアコンサルタントと自称しているゆえんとなります。とにかく情報のインプットがあって、何らかのアルゴリズムで問題を解いて、アウトプットを出す。そのスキルだけを提供するファクトベースコンサルタントは遅かれ早かれ、必ずAI(人工知能)に置き換えられます。

3つのカン(感、勘、観)を兼ね備えた、経験者であるグレイヘアコンサルタント。人間でしかアウトプットできない直観に基づいた提案の数々。何を解かなければならないか、問題提起そのものを生み出してクライアントに提供するのです。それを、アサインされたコンサルタントの人件費の枠の中でいかにリーズナブルにクライアントに提案するか。高くても安くても、それは間違いだと断言します。問題解決に適切な適正価格は、直観と経験だけからしか見積もることのできないものなのだと、声を大にして言いたいのであります。(^^;)

⇒「コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(16)大秘密第一番 - こわれてねえのなら、なおすなよ。
⇒「コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(17)大秘密第二番 - 自分で自分を治せるシステムを繰り返し治療していると、ついには自分を治せないシステムができる。
⇒「コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(18)大秘密第三番 - どんな処方にも2つの部分がある。その一つは薬、もう一つはそれが正しく使われることを保証するための方法だ。
⇒「コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(19)大秘密第四番 - これまでしてきたことが問題を解決しなかったら、何か違うことを勧めるのがよい

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