■ 大秘密第五番
このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、著者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、私のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。
これまでご紹介してきたマービン医師の金言に基づく大秘密第二番から四番を第五番とくっつけるとこうなります。
処置をあまり早くやめるな。だが、処置にあまり長いことかじりつくな。
これは、依頼主(クライアント)の利得と、コンサルタントが手にするコンサルタントフィーの総和を最大にする秘訣だと思います。クライアントにとって、現場で起きる様々な課題を解決するために、外部からコンサルタントを招聘します。それは、内部の知恵では解決できないか、できるとしても長い時間がかかってしまうと見積もったからです。
そこで、外部から招聘されたコンサルタントが一瞬のうちに対象となる課題を一気に解決してしまうとどんなことが起こるでしょうか? 早く問題解決するからみんなハッピーになるでしょうか?
まず、あまりに見事にコンサルタントが問題を解きすぎると、コンサルタント自身の首を絞めることになります。クライアントは次はもっと安く、もっと早くを要求または期待してしまうからです。
それがリーズナブルな理由で早く・安く終わったのなら、そしてその異常性というかラッキーさをクライアントにきちんと説明できるのなら、次回からも、適正価格でコンサルタントフィーを頂戴することができるでしょう。
しかし、その異常さ、偶然のラッキーさを説明できなければ、次は破格の赤字覚悟の契約が待っているだけです。
そこで、ワインバーグ氏によれば、この金言は次のようにも言い換えることができるそうです。
やりかたを知っていても、しおどきを知っているほどにはもうからない。
コンサルタントが潤い、そして同時にクライアントが満足するポイントでコンサルタントフィーを決める能力があるコンサルタントは、単に仕事ができるコンサルタントより儲けることができる、ということです。
これは、常にコンサルタントがクライアントからお金をむしり取るために、あの手この手で理屈をつけて、コンサルタントフィーを釣り上げている、ということを意味しているのではありません。
それなりの時間とそれなりのお金をかけないと、せっかく社外のコンサルタントを招聘して課題解決に取り組ませたとしても、その解決施策の提案内容の説得力に欠けてしまう恐れがあるのです。
それは、大秘密第五番で明らかにした真実です。人は、大金をかけて得た提案のほうが、より少額の金額で得た提案より、課題解決能力が上であると認めたがる性質があるからです。
その絶妙のバランスのとり方を、ワインバーグ氏は次のように表現しています(一部、現在では不適切なワードが使用されていますが、原文をそのまま引用します)。
「気違いじみた」行動とは有効な範囲を逸脱してなされた「正常」な行動に他ならないのだ。コンサルタントにとってみれば、「創意のある」行動とは有効な瞬間になされた「気違いじみた」行動のことなのである
コンサルタントにとって、良いコンサルティングを実行できたかどうかは、その提案やアドバイスを適時にできたかどうか、タイミングが全てなのです。遅くても、クライアントがイライラしてしまうし、早すぎても、説得力に欠ける提案になってお蔵入りになる確率を増してしまうのです。
このことを、ワインバーグ氏は、次のように表現しています。
よい冗談とは、よいタイミングでなされた気違いじみた行動である
本当に、コンサルタントの働き方は、尋常でない程、正気では続けることのできない異常な働き方です。長時間になりがちということだけでなく、自由奔放さと、結果に強くコミットすることも含めて。(^^;)
⇒「コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(16)大秘密第一番 - こわれてねえのなら、なおすなよ。」
⇒「コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(17)大秘密第二番 - 自分で自分を治せるシステムを繰り返し治療していると、ついには自分を治せないシステムができる。」
⇒「コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(18)大秘密第三番 - どんな処方にも2つの部分がある。その一つは薬、もう一つはそれが正しく使われることを保証するための方法だ。」
⇒「コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(19)大秘密第四番 - これまでしてきたことが問題を解決しなかったら、何か違うことを勧めるのがよい」
⇒「コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(20)大秘密第五番 - コンサルタント業において一番大切な業務は、料金を適正に設定することだ」
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