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「支配的リーダーシップ」から「サーバントリーダーシップ」へ

経営管理(基礎)
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■ ぐいぐいリードしているつもりで振り返ってみると、誰もついてきていない人へ

頑張ってリーダーシップを発揮しているつもりで、がんがん決断をして、あれやこれやと部下に指示出しをして、思うように動かない部下を目の前にして、叱責や「昔、俺ならなぁ~」と詮無き昔話を展開して、ますます人望を失っていく。そういう実感を持つ中間管理職は多いのではないでしょうか? まあ、私も漏れなくその部類に入るのですが、、、(^^;)

そういう自戒の念を込めて、「サーバントリーダーシップ」というコンセプトを簡単に整理していきたいと思います。AT&Tマネジメント研究センター長を務めたロバート・K・グリーンリーフ(Robert K.Greenleaf)が1970年に提唱したリーダーシップ哲学で、一言で言うと、「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後に相手を導くものである」となります。

このリーダーシップ理論は部下に対して明確なミッションやビジョンを示しつつ、同時にそれを遂行するメンバーに奉仕するリーダーシップです。上司は自分が有するミッションやビジョンを実現させるための道具として部下が存在すると勘違いしてはいけません。自分が掲げるミッションやビジョンを実現するためにメンバーが行動してくれるのだと考えます。そのため、メンバーがより活躍しやすい仕事環境を整え、メンバーのタスク遂行を裏から支えるのがリーダーの役割であると考えるのです。

リーダーシップ論ですが、「サーバント」というギャップを感じる言葉遣いに注目が集まり、「ただ部下のタスク遂行を支援していればそれで十分である」という誤解が生じやすく、任せるためには、まず厳正にかつ緻密に、己自身のミッションやビジョンを分かりやすく、そして納得性高く提示・説明するところが重要なのです。

■ いけいけどんどんの「支配型」リーダーじゃ、職場が疲弊するだけだよね!

リーダーは「こうしたい」という強い方向性を示す必要があります。そして、その方向性がリーダー自身の自分勝手なものであっては、真のサーバント・リーダーとはいえませんし、それでは初めからメンバーがついてくることは望むべくもありません。リーダーは、社会に貢献し、関係者に共通の利益を生み出すといった価値ある目標を提示し、そこから明確に定義されたタスクに取り組むメンバーを陰に日向に支えて、彼らに奉仕するのがサーバント・リーダーということです。

昔ながらの「支配型」リーダーは、価値観が多様化する現代ではあまり皆から受け入れられなくなってきています。似たような概念では、「コーチング」「メンタリング」というものがあり、共通するリーダー像は次の通り。

(1)リーダー自身のモチベーションのされ方
・メンバーに奉仕すること(⇔高い地位に就くこと:支配的リーダーシップ、以下同)

(2)リーダーが大事にするもの
・メンバーや関係者とWin-Win状態になること(⇔自身が競争に勝ち抜く)

(3)メンバーに対する影響力行使の源泉
・メンバーとの信頼関係(⇔自己が就いているポジションに起因する権力)

(4)コミュニケーションの取り方
・傾聴(⇔指示・命令)

(5)「成長」に対する考え方
・個人と組織の成長の「調和」こそ大事(⇔自分の地位が上がること、自分のスキルが増えることが大事)

(6)「失敗」に対する態度
・失敗から教訓を学ぶ。自分とメンバーの責任を明確にする(⇔メンバーの失敗を厳しく叱責することで再発防止を心掛ける)

(参考)「本当に強いリーダー」として求められるサーバント・リーダーシップ|テンプ ナレッジマガジン

■ NPO法人 日本サーバント・リーダーシップ協会が定義する10の特性

日本サーバント・リーダーシップ協会が、サーバントリーダーシップの10の特性を定義しています。

(下記は、サーバントリーダーシップの10の特性|NPO法人 日本サーバント・リーダーシップ協会より引用)

(1)傾聴
「相手が望んでいることを聞き出すために、まずは話をしっかり聞き、どうすれば役に立てるかを考える。また自分の内なる声に対しても耳を傾ける」

これは、コンサルタントや教育者に最も大事な資質のひとつです。まず相手の話を聞く。相手への理解を最優先にする。自己主張だけしても、相互作用に基づくビジネスでは、益のある果実は決して得られないでしょう。言葉の表面的な意味だけでなく、その裏に潜む真意をできるだけ汲み取ろうとすることが大事です。

「計画達成のために緊急会議をしよう!」→「私には解決策が思いつきません」
「あなたのその提案書は私には難しくて分かりません」→「その提案内容は間違っているよ!」

⇒「ビジネスパーソンに必要なのは、「伝える力」か「聞く力」か?

(2)共感
「相手の立場に立って相手の気持ちを理解する。人は不完全であることを前提に立ち相手をどんな時も受け入れる。」

メンバーがリーダーと同じ年齢で同じ環境で育ち、同じ経験を仕事で積んでいるはずがありません。感性や知識や思考の癖は違っていて当然。それを当たり前の前提として、コミュニケーションできない人はリーダー以前に、ヒトとして失格ですよね。徹底的に相手に寄り添う。そうすることで、相手の思考回路への理解度が増し、一緒に課題解決策を考えやすくなるし、心理的に仲間意識が芽生え、チームワークも自然とよくなります。

⇒「トーク力か共感力か?

(3)癒し
「相手の心を無傷の状態にして、本来の力を取り戻させる。」
「組織や集団においては、欠けている力を補い合えるようにする。」

笑いや雑談の絶えない職場づくり。真面目な議論や真剣にかつ慎重に仕事に取り組む必要があればある程、ハンドルの遊びは必要! 余裕やリラックスがある状態でないと、ヒトは100%の実力を出すことはできません。

(4)気づき
「鋭敏な知覚により、物事のありのままに見る。自分に対しても相手に対しても気づきを得ることが出来る。相手に気づきを与えることができる。」

難しいことは何もありません。自分が見る世界は、最初から自分の価値観で色付いている「色眼鏡」を通してしか、見ることはできないのだと達観するのです。その達観があってこそ、他の人にアドバイスできる材料が見えてくるのです。

⇒「アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉(33)
⇒「(サッカー人として)三浦知良 人間性を高めること 2017年4月14日 日本経済新聞朝刊より

(5)納得
「相手とコンセンサスを得ながら納得を促すことができる。」
「権限に依らず、服従を強要しない。」

面従腹背。
権力を笠に着て抑え込んだり、折伏(しゃくぶく、しゃくふく)して論破することで言うことをきかせたり、腕力に物を言わせて力づくで抑え込んでも、一時的で表面的な服従でしかありません。相手が心から心服するような言葉がけをしていれば、自然と相手から従順さを出してきます。それでも、相手を屈服させることを良しとするリーダーシップ論ではないので、むしろ、対等な議論や意見交換ができる関係性の構築を目指しているので、従順さはあくまで付録。

(6)概念化
「大きな夢やビジョナリーなコンセプトを持ち、それを相手に伝えることができる。」

これは、(5)納得と(7)先見力を参照してください。10も特性を上げれば、内容に重複があっても仕方がありません。せいぜい7つが限度だと思います。(^^;)

(参考)Magic number 7の法則
⇒「プロジェクトマネジメントの王道 WBSを作成する(3)上流プロジェクトのWBS作成にあたってのTIPS

(7)先見力
「現在の出来事を過去の出来事と照らし合わせ、そこから直感的に将来の出来事を予想できる。」

ビジョナリーの元には人が集まります。正しい方向を常に示してくれる人と仕事をすると、とても安心ですから。右脳で物事を考えるタイプが向いています。

⇒「あなたは左脳派ですか、それとも右脳派ですか?

(8)執事役
「自分が利益を得ることよりも、相手に利益を与えることに喜びを感じる。一歩引くことを心得ている。」

損して得取れ。
まず与えよ、さらば与えられん。
メンバーの利益(昇進、スキル習得、収入増など)を最優先にします。すると、後から人望は着いてきます。まあ、このタイプの人は最初から、自分が人望を集めることを最終目的にしてはいないので、あくまで人望は副次的な産物ですが、あって困るものではありませんしね。

(9)人々の成長への関与
「仲間の成長を促すことに深くコミットしている。一人ひとりが秘めている力や価値に気づいている。」

メンバーの成長が何よりのリーダーへの報酬である、と考えられる人です。メンバーの成長を我が事のように幸せに感じることができるだけでなく、各メンバーの成長にコミットし、教育の機会、成長のチャンスを自ら作り出すことに意欲を持ちます。自分が教育やトレーニングに興味を持ち、どうすればメンバーが成長できるか、どの分野で成長従っているのか、常に関心を持っています。この人の下で働くと、他の上司の下で同じ苦労をするより、2倍成長スピードが早く、他では得難い経験を積めるなら、少々大変な職場でも、メンバーは喜んで異動して来たがります。

(10)コミュニティづくり
「愛情と癒しで満ちていて、人々が大きく成長できるコミュニティを創り出す。」

チームビルディングが上手で、活気とやる気に漲るチームにすることができる人です。周囲の人々に、そういうチームの輪に入りたくなる気にさせ、どんどんコミュニティが成長してきます。すると、参加者の成長の機会を得るチャンスもどんどん増えて、それがそのチームへの傘下の魅力度がさらに高まるといった、良いスパイラルが生まれます。

あなたも、「支配型」リーダーシップを卒業して、「サーバントリーダーシップ」を志向してみてはいかがでしょうか?

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