ピコ太郎 関連動画で潤う - 放送と通信の垣根がなくなった。コンテンツ産業と著作権のあり方とは?

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■ SNSとネット全盛時代のコンテンツ産業におけるマネタイズの新手法とは?

経営管理会計トピック

「『現代用語の基礎知識』選 2016ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10に、ピコ太郎の「PPAP」が選出されました。ピコ太郎が10万円でスタジオを借りて収録した動画を自身でYouTubeにアップし、ジャスティン・ビーバーが自身のTwitterにて”お気に入りの動画だ”とツイートしたことで世界的に爆発的な広がりを見せ、逆輸入の形で日本でも大流行に。その拡散形態にも従来とは異なるSNSとネット特有のP2P(ピアツーピア)の力を大いに認めたものでしたが、それ以上にコンテンツのマネタイズと著作権のあり方に大きな波紋を残しました。そういう点に今回は着目します。

2016/11/9付 |日本経済新聞|電子版 (日経産業新聞セレクション)ピコ太郎 関連動画で潤う

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「コンテンツ産業で新潮流が起きている。データ通信速度の高速化やデジタル編集技術の急激な進歩で、コンテンツの発信と受信が誰でも手軽にできるようになった。個人レベルを含めて新規参入者による新しいビジネスモデルが台頭する一方、既存のメディアは変革を迫られる。」

(下記は同記事添付の「ピコ太郎さんの動画は、公開から2カ月強でユーチューブでの再生回数が8000万回を超えた」を引用)

20161109_ピコ太郎さんの動画は、公開から2カ月強でユーチューブでの再生回数が8000万回を超えた_日本経済新聞電子版

ピコ太郎を名乗るヒョウ柄衣装にパンチパーマの男(古坂大魔王)が、「アーン、アッポーペン」とひたすら歌って踊る1分8秒の動画が投稿サイト「YouTube」で公開されたのは8月25日。わずか2カ月強で再生回数は8000万回を突破。ものすごい勢いで拡散しました。
ピコ太郎さんはエイベックス・グループ・ホールディングス傘下のレーベルに所属するタレントで、YouTube動画には広告が表示されるため、そのフィーがエイベックス経由でピコ太郎さんの懐に入ります。YouTubeの広告料は、オークション形式で、再生回数に比例して広告単価が再生1回につき0.025~1円と変動します。ここから推計すると、PPAPの本記事掲載時点での広告収入は、200万~8000万円だそうですが、実際はその数倍になっている可能性が高いとのこと。どうしてでしょうか?

 

■ YouTubeの「コンテンツID」のしくみとは?

インターネットの世界で問題になるのが、演者や所属事務所がまったく関知していない非公式投稿。オリジナルをデジタル編集で別物に改変した動画を、許可無く勝手に投稿した場合、著作権・著作隣接権者の対抗策は、YouTube等の投稿サイトへ削除を要請するか、泣き寝入りするか、従来はこの2択でした。

そもそも、YouTubeが2007年10月に導入した「コンテンツID」は、不正動画を効率的に見つけだし削除する仕組みとして当初は開発されました。しかし、オリジナル権利者が「対抗策で稼ぐ」機能も備えていました。それは、著作物侵害の作品に広告をつけて、その広告収入を正当な権利者が総取りする機能です。

同記事よりその具体的なしくみの説明を引用すると、

(1)正当な権利者の認識
「著作権者が動画や音楽といった著作物のデータをユーチューブのシステムに登録する。ユーチューブ側では、動画であれば1コマごとに指紋のようなものを自動作成する。ユーチューブに投稿された動画もすべて指紋をとって、システムに登録されたデータと照合する。一致した場合は、投稿した人が誰であろうとも、正当な権利者の著作物とみなす。」

(2)正当な権利者の権利行使
「①動画を公開させない「ブロック」
②公開するが記録する「トラック」
③広告の収入を著作権者に帰属させる「マネタイズ」
の3種類の手段を著作権者は選ぶことができる。マネタイズを選択すれば、再生の前に流れる広告の収入はものまね作品の投稿者ではなく、オリジナルの著作権者に入る。利益を第一に考えるなら、もはや非公式投稿は禁じるより推奨すべきものだ。」

(下記は同記事添付の「コンテンツIDのしくみ」を引用)

20161109_コンテンツIDのしくみ_日本経済新聞電子版

ピコ太郎のPPAPでは、エイベックスが上記③の「マネタイズ」を選択しています。それにより、7万件以上ある非公式とコラボレーションを認めたものを合わせた関連動画は、再生回数は公式の6倍以上の5億回に到達していることが分かっています。その全ての再生における広告フィーは、エイベックスとピコ太郎の収入となっているのです。

 

■ 「コンテンツID」は単なる著作権保護の手段だけではなくなった!

コンテンツID技術そのものも劇的に進化しており、米グーグル(現持ち株会社アルファベット)は、コンテンツIDに6000万ドル(約60億円)以上を投資して照合技術を高度化させました。

(1)著作権判別機能の高度化
「動画の場合、ゆがみや反転、周辺に枠がついているといった加工をしても判別が可能だ。音声の場合は、速度やキーが変わっていても、オリジナルとの関連を見破る。」

(2)利用者数の増大
「これにより、目視で判断し削除しか方法がなかった著作権の保護は「劇的に変化した」(グーグルの水野有平執行役員)。現在、コンテンツIDには世界中のテレビ局や映画会社、レコード会社など8000社以上が3500万以上の指紋を登録し、4億以上の動画をチェックしている。」

コンテンツIDを活用した、こうした取り組みは、著作権とその隣接権の保護機能として利用が始まりましたが、保護に留まらない使い方に力を入れる動きも活発になりました。本記事によりますと、

「著作権管理のネクストーン(東京・渋谷)は20社の1万5000曲を登録している。特に人気なのはアニメ系の楽曲で、好きな楽曲を編集したベスト盤的な作品や、自分の動画のBGMにして投稿していることが多いという。
 ネクストーンは契約先に対して、コンテンツIDの活用を勧めている。権利者は部分的にブロックを選ぶ作品もあるが、大半はマネタイズを選ぶことが多いという。スマホでの動画視聴が一般的になってきた今はネットからの排除ではなく、「作品をネット上で広めるかを考えつつ、稼げるようにするほうが健全な状況」(伊藤圭介執行役員)になってきている。」

 

■ 「コンテンツID」を活用して、マーケティングやコラボレーションに活かす道がある!

とある著作権作品によっては、関連動画がネット上で拡散することで、オリジナル権利者の利益になるような宣伝効果が得られる場合もあります。その場合、投稿者もオリジナル作品の収益に貢献したと言えなくもありません。ゲーム関連で多いのは、一般ユーザがプレーしている動画の投稿です。任天堂では、オリジナルの著作権者が利益を総取りするのは、行き過ぎなのではないか、投稿者とのWin-Winの関係を模索すべく、折衷案として、ゲームプレー動画は著作物としてコンテンツIDでは任天堂の収益となっていますが、2015年からプレー動画の投稿から得られる収入を投稿者と分け合う仕組みを取り入れました。

その詳細を同記事から引用。

「投稿者は事前に住んでいる地域や、支払先となるペイパルのIDを登録する。その上で動画をユーチューブに投稿すると、そこからの広告収入のうち6~7割を投稿者が得ることができる。日本ではスーパーマリオメーカーやゼルダの伝説、マリオカートなど多くの作品が対象となっている。」

YouTubeのコンテンツIDは、これまで全世界累計で20億ドル以上を著作権者に還元し、オリジナル権利者の収益面で大きな貢献をしてきました。ただ効果が出ているのは収益面だけではありません。コンテンツIDではどこの地域で見られているかなどを把握できる機能があります。同記事によりますと、「ピコ太郎のPPAPの場合、東アフリカのウガンダで動画再生回数が1位となっていることがわかった」そうで、そうなると、TVの視聴率調査と同様に、視聴者をターゲットとしたマーケティングにこうした情報は十分に利用することができます。TVより細かく、視聴時間帯、視聴回数、視聴場所、視聴媒体(画面サイズや機種まで)、ユーザ登録されていればユーザ属性までを把握することができます。

急速にアナログからデジタルの時代に変化している現在、ネットの世界がIoT技術の進展によりリアルを浸食している現在、物販流通やコンテンツ利用の面で、「オンラインビジネス」の急拡大に、あらゆる産業が対応を迫られている状況であると考えます。

 

■ (おまけ)「クリエイティブ・コモンズ」を活用して、コンテンツ利用をしやすくする!

ただ権利を守ることを中心としたコンテンツ産業の著作権対応。しかし、これからは、著作権を活用して、テクノロジーや思想、芸術の進化スピードを促進したり、ビジネスの拡大や収益性の向上に活かしたりする道を模索する必要があります。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは | クリエイティブ・コモンズ・ジャパン

「クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは

クリエイティブ・コモンズは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を提供している国際的非営利組織とそのプロジェクトの総称です。
CCライセンスとはインターネット時代のための新しい著作権ルールで、作品を公開する作者が「この条件を守れば私の作品を自由に使って構いません。」という意思表示をするためのツールです。
CCライセンスを利用することで、作者は著作権を保持したまま作品を自由に流通させることができ、受け手はライセンス条件の範囲内で再配布やリミックスなどをすることができます。」

以下、WiKiより

「クリエイティブ・コモンズ(Creative Commons、以下「CC」)とは、著作物の適正な再利用の促進を目的として、著作者がみずからの著作物の再利用を許可するという意思表示を手軽に行えるようにするための様々なレベルのライセンスを策定し普及を図る国際的プロジェクト及びその運営主体である国際的非営利団体の名称である。クリエイティブ・コモンズが策定した一連のライセンスはクリエイティブ・コモンズ・ライセンスと呼ばれる。」

「クリエイティブ・コモンズ・ライセンスでは、著作権者の表示・非営利目的の利用限定・改変の制限・派生物に対するライセンスの継承の4項目があり、作品の製作者はこれら条件の採否を選択し、その作品を利用する者はそれに従うかたちをとる。」

その4項目は以下の通り。

① 表示(Attribution, BY)
品を複製、頒布、展示、実演を行うにあたり、著作権者の表示を要求する

② 非営利(Noncommercial, NC)
作品を複製、頒布、展示、実演を行うにあたり、非営利目的での利用に限定する

③ 改変禁止(No Derivative Works, ND)
品を複製、頒布、展示、実演を行うにあたり、いかなる改変も禁止する

④ 継承(Share Alike, SA)
クリエイティブ・コモンズのライセンスが付与された作品を改変・変形・加工してできた作品についても、元になった作品のライセンスを継承させた上で頒布を認める

ネットが当たり前の現在、

「著作権の保護」→「著作権のマネタイズ化」→「著作権の再利用促進」

という進化の道を健全に進んでもらいたい。そうすれば、アニメ・ゲームを中心とするクールジャパンも日本をリードする産業たり得る。そう考えるアニメオタクのおじさんなのでした。(^^;)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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