ビジネスモデル入門(2)ビジネスモデルの教科書の読み方② 過去の成功事例の解釈か未来の成功を手にするための思考実験か。それが問題だ!

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■ 100人100色のビジネスモデル論争!

このシリーズは、筆者の経営コンサルタントの実体験と筆者の関連図書の読書遍歴から、「ビジネスモデル」というものをどう考えていけばいいのか、どう捉えればいいのか、どう生かしていけばいいのか、現在進行形で考え続ける筆者のビジネスモデル考の逍遥の様を記録するものです。その逍遥を皆さんと共有することで、新しく実用的なコンセプトが閃くことを期待して。

前回、筆者はビジネスモデルを扱う人々のアプローチを大胆に3類型に分けてみました。

① フレームワーク至上主義者
自身が主張するフレームワークに世の中のビジネスモデルとか経営戦略と呼ばれているものをばっさばっさと当てはめていくアプローチ

② モデリング至上主義者
実在する経営や企業活動を独自の着眼点から汎用的モデルに昇華・抽象化してモデリングして示すアプローチ

③ ビジネスケース至上主義者
ひたすら個別の事例を集めて、帰納法的にそれらをある特徴で分類していくアプローチ

⇒「ビジネスモデル入門(1)ビジネスモデルの教科書の読み方① フレームワークが先かビジネスケースが先か。それが問題だ!

偉大な先人たちを筆者の愚考でまとめて論じるのも大変失礼にあたるのですが、誰がどういう立場で書籍をまとめているのか、読者の立場から参考になればと思い、敢えて類型化しております。(^^;)

 

■ 著名なビジネスモデル著作の読み方(PART2)

(3)ビジネスモデルのグランドデザイン

本著において川上氏は、ビジネスモデル論について次のように整理されています。
・ベスト・プラクティスでも具体的な戦術でもない
・仕組みをゼロ段階からどのように構想したのかという全体的・体系的枠組みを学ぶもの
・「グランドデザイン」とは、ビジネスモデリング(ビジネスデザイン)時に必要不可欠な意思決定項目を体系化したもの

その体系化されたモデリングに必須な要素として、「顧客価値」「顧客の支払い意欲(WTP:Willingness to Pay)」を重要視されています。筆者の類型化からすれば、「② モデリング至上主義者」的なアプローチでビジネスモデルのグランドデザインに迫っています。

「顧客価値」については、筆者の過去投稿にて、世の中の捉え方に3種類存在することを説明しています。

経営管理会計トピック_「顧客価値」と「付加価値」の関係

⇒「日立、営業2万人増員 コンサル重視へ転換 AIなど駆使、課題解決(後編)- ハードウェアを持ったままでコンサルティングサービスが可能か?

本書においては、
「顧客価値1」顧客との取引によって創造された価値
「顧客価値2」顧客の取り分=顧客価値
として、定義されています。

それを、本書(P5)「図表1-1 ハイブリッドな価値創造」を改題したもので図解してみます。

ビジネスモデル(入門編)企業が創造した価値と顧客価値と獲得利益

まるで、ミクロ経済学の消費者余剰と生産者余剰の総和が総余剰、というやつと似ています。そして、会計構造においては、「価格(Price)」=「売上高」であり、「コスト」との差額が「企業利益」であることは計算されます。それゆえ、複式簿記の世界では、企業が創造する「総価値(総付加価値)」の片方だけしか把握できないことになります。この枠組みでは、「顧客価値」はマーケティング的手法で把握することになります。

したがって、本書では、徹底的に「WTP」を顧客から引き出すための「顧客価値提案(value proposition:バリュー・プロポジション)」に拘ってビジネスモデルを語っているのが特徴になります。

(4)プロフィット・ゾーン 経営戦略 真の利益中心型ビジネスへの革新

本書において、筆者のような会計畑の人間の理解を助けてくれる特徴として、ビジネスモデルとは高い「企業利益」(会計的利益)をもたらすものである、と断言してくれている所です。プロフィット・ゾーンとは、企業に高い利益をもたらす経済活動領域を意味し、プロダクト・ライフサイクル、技術サイクル、景気循環にも左右されない持続的な高利益を上げ続けることができるビジネス・デザインをリインベント(再構築)し、プロフィット・ゾーン内に踏みとどまり続ける策を提示しようと試みられています。

このビジネス・デザインのための重要な4つのポイントを「四つの戦略次元」として、本書(P17)でまとめられております。以下に一部加工・抜粋してチャート化してご紹介します。

ビジネスモデル(入門編)ビジネス・デザインの四つの戦略次元

当然、米国の一流大企業(GE、スウォッチ、コカ・コーラ、インテル、ディズニー等)の豊富な事例を引いて、各社の素晴らしいビジネス・デザインが具体的に説明されています。その点では、本書の建付けは一見すると「② モデリング至上主義者」的アプローチに見えるかもしれません。

しかし、筆者が秀逸だと感じるのは、「●●利益モデル」と数多くの類型化がなされていることです。その意味では「③ ビジネスケース至上主義者」的アプローチが採用されている、もしくは読者がそのように解釈することも可能だと思います。

繰返しになりますが、とかくビジネスモデルを論じた書籍は抽象的な記述が多く、読解や当てはめに苦労するものですが、本書とその類似書は、それぞれのケースがくっきりと説明されていること、最後は会計的利益の獲得の仕方に論述の先を常に持って行ってくれること、が読者の理解を進めさせてくれる長所だと思います。

同じ著作者の「ザ・ゴール」ばりの小説仕立ての類似書「ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか」も併せてご紹介します。

本書(P282-284)にて、いかに企業は儲けられるか。利益モデル一覧が掲載されているので、下記に23の利益モデルの名称だけを引用してご紹介します。

1) 顧客ソリューション利益モデル(Customer Solution Profit)
・顧客を知ることが利益の始まり
2) 製品ピラミッド利益モデル(Pyramid Profit)
・ファイアウォールで利益を守れ
3) マルチコンポーネント利益モデル(Multi-Component Profit)
・同じ製品で異なるビジネスを
4) スイッチボード利益モデル(Switchboard Profit)
・臨界点を目指せ
5) 時間利益モデル(Time Profit)
・粘り強さが生み出すスピード
6) ブロックバスター利益モデル(Blockbuster Profit)
・大ヒットを創造するマネジメント
7) 利益増殖モデル(Profit-Multiplier Profit)
・一つの資産から様々な製品を
8) 起業家利益モデル(Entrepreneurial Profit)
・利益追求に邁進する情熱
9) スペシャリスト利益モデル(Specialist Profit)
・すべてを知り尽くすことの強み
10) インストール・ベース利益モデル(Installed Base Profit)
・売り手が主導権を握る
11) デファクト・スタンダード利益モデル(De Facto Standard Profit)
・未来を計画できる立場をつかめ
12) ブランド利益モデル(Brand Profit)
・人間の心に潜む非合理性
13) 専門品利益モデル(Specialty Product Profit)
・ニッチな市場を深く掘れ
14) ローカル・リーダーシップ利益モデル(Local Leadership Profit)
・点から面への拡大
15) 取引規模利益モデル(Transaction Scale Profit)
・信頼関係がもたらす巨大なリターン
16) 価値連鎖ポジション利益モデル(Value Chain Position Profit)
・コントロール・ポイントを制する
17) 景気循環利益モデル(Cycle Profit)
・わずかな価格差をめぐるゲーム
18) 販売後利益モデル(After-Sale Profit)
・フォローアップの潜在力
19) 新製品利益モデル(New Product Profit)
・真っ先に波を乗り越えよ
20) 相対的市場シェア利益モデル(Relative Market Share Profit)
・ビジネスにおける重力の法則
21) 経験曲線利益モデル(Experience Curve Profit)
・学習の累積がもたらす知恵
22) 低コスト・ビジネスデザイン利益モデル(Low-Cost Business Design Profit)
・速く動くより、早く着手せよ
23) デジタル利益モデル(Digital Profit)
・10倍の生産性を生む源

 

■ ビジネスモデルの使い方についての考察(愚考かも。。。)

前章の23個の利益モデルは、書籍が書かれた時代背景に強く影響されます。その際たるものが、テクノロジーの進化です。昨今では、AI・IoT全盛で、クラウドやスマホアプリの活用がビジネスモデル構築の最重要課題と言っても過言ではありません。

「③ ビジネスケース至上主義者」的アプローチは、徹底的に今のビジネスを観察し、汎化させてモデル化しますが、観察対象の限界の域を超えることはできません。逆に、「① フレームワーク至上主義者」的アプローチは、ビジネス環境、テクノロジー進化に弱く、常に例外事項を作ってしまうきらいがあります。たとえ、「② モデリング至上主義者」的アプローチをとったとしても、抽象化思考は、その時点の自分の創造や経験の域を決して脱することはできません。

それゆえ、過去事例の徹底した分析からは、分析以上のものは得られず、将来に向けたビジネスモデル予測は当てずっぽうの一か八かの賭けになる、という印象を持つかもしれません。

過去の観察からどんなインサイトを得て、新たな仮説を立てて将来に向けた儲かり続ける仕組み(=ビジネスモデル)のデザインを行うか。できるだけ成功確率の高いモデルを見つけるテクニックを磨くか、トライ&エラーを素早く回転させる腕力を磨くか。あなたが相対するビジネスモデル対象と、あなた自身(あるいはあなたの思考特性)との対話、相対関係で、ビジネスモデルにどう対処するか、例えばどの至上主義者の立場を採るか、実利で各自が判断すればよいのだと達観しているつもりなのですが皆さまはどうお考えになられるでしょうか?(^^)

ビジネスモデル(入門編)ビジネスモデル入門(2)ビジネスモデルの教科書の読み方② 過去の成功事例の解釈か未来の成功を手にするための思考実験か。それが問題だ!

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