ビジネスモデル入門(1)ビジネスモデルの教科書の読み方① フレームワークが先かビジネスケースが先か。それが問題だ!

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■ ビジネスモデルを語ることは難しい

このシリーズは、筆者の経営コンサルタントの実体験と筆者の関連図書の読書遍歴から、「ビジネスモデル」というものをどう考えていけばいいのか、どう捉えればいいのか、どう生かしていけばいいのか、現在進行形で考え続ける筆者のビジネスモデル考の逍遥の様を記録するものです。その逍遥を皆さんと共有することで、新しく実用的なコンセプトが閃くことを期待して。

「ビジネスモデル」というものを題材にするとき、これまで多くの先達・論者が語ってきたさまざまな言葉があります。100人の論者がいれば、100通りの「ビジネスモデル」の定義が存在します。筆者は101人目になるつもりは毛頭ありません。己の定義の正しさを主張して、別の論者の定義を批判して、どうなるもないと思っています。絵に描いたアウフヘーベンはこの領域ではほぼ起きないのだと考えた方が無難でしょう。なぜなら、人によって、「ビジネスモデル」という語に言霊を吹き込む意図がそれぞれに異なるからです。

ある人は、自分がデザインした汎用的な「ビジネスモデル」フレームワークの普遍性・一般性を証明するために、多くの企業が実際に行う経営活動を自分のモデルに如何に当てはなるかを説明することに精力を傾けます。

別の人は、経営や事業を捉える視点というのがいくつかあって、それを正しく使ってモデリングすれば、継続的に儲かる仕組みづくりを実現できるという、自分の着眼点のすばらしさと、それを素材にモデリングするメソッドの確からしさを主張することに精力を傾けます。

さらに別の人は、フレームワークは時代と市場の変遷によって常に陳腐化する運命にある。したがって、常に試行錯誤的・探索的にビジネスモデルを構築したと思ったら、次の日には脱構築(デリダに代表されるポストモダニムズム的な意味で)しているのが通常なのだ。だから、その時々に天才的な経営者が努力を重ねたうえで偶然発見した、今、最適化されている儲かる仕組みが結果としてビジネスモデルとなるのだ、ということを主張することに精力を傾けます。

筆者は、これらの論者を順に、
① フレームワーク至上主義者
② モデリング至上主義者
③ ビジネスケース至上主義者

と心の中で呼ぶことにしています。

 

■ 著名なビジネスモデル著作の読み方

とはいえ、偉大な先達が名著として示してくれた叡智を活用しないわけにはいきません。要は、「儲け続けられるビジネスモデルとは何か」という真理の到達することを登山に例えれば、どのルートから山頂を目指しても、より労苦が少なくして到達すれば、いいだけのお話であって、どのルートが最短か(どのアプローチが正しか)を競うことには意味が無いのです。

以下にて、筆者がとても大切にしている名著のご紹介と行きましょう。

(1)Business Model Generation(ビジネスモデル・ジェネレーション)

本著では、ビジネスモデルを9つの構築ブロックに分けて考えます。それをひとつにまとめたのが「ビジネスモデルキャンバス」です。このキャンバスを模造紙に描いても、プロジェクター投影でもして、要素を書き込んだり、ポストイットを貼り付けていったりして、対象とする企業・事業に対する理解、議論、想像、分析を進めるツールとして利用します。

ビジネスモデル(入門編)ビジネスモデルキャンバス

本著では、ビジネスモデルを思考する上での強力なフレームワークを提示し、その後、第2章:パターンで、アンバンドルビジネスモデル、ロングテール等、代表的な具体例を提示し、第3章以降では、このビジネスモデルキャンバス(戦略キャンバス)を使って、どのようにモデリングを進めていけばいいのかの手ほどきを解説してくれています。

「① フレームワーク」を素直に受け入れることができれば、その後の「② モデリング」「③ ビジネスケース」の解説の納得性が高いはずです。例えば、ブルーオーシャン戦略もこの戦略キャンバスで説明されており、我田引水的だとの印象を受けないのであれば、あなたも既にこの「ビジネスモデルキャンバス」の虜になっているはず。

(2)ビジネスモデルの教科書/ビジネスモデルの教科書 上級編

『ビジネスモデルの教科書』は、前述の『Business Model Generation(ビジネスモデル・ジェネレーション)』をベースに、豊富な実際のビジネスケースを整理したものになっています。9つの構築ブロックのそれぞれに着目した31例ものビジネスケースを取り上げて、

事業レベル
① 顧客セグメント・顧客関係のビジネスモデル
② 提供価値のビジネスモデル
③ 価格/収入構造のビジネスモデル
④ ビジネスシステムのビジネスモデル

にまとめています。そのうえで、M.ポーター氏の「5フォース分析」のフレームワークを用いて、コーポレートレベルのビジネスモデルを8つ紹介しています。

ビジネスモデル(入門編)事業レベルとコーポレートレベルのビジネスモデル

今枝氏が他者のフレームワークを借りて、丁寧に多くのサンプルからビジネスモデルケースを収集・整理しているので、具体的な事例による説得力が高い反面、自分の思った整理と区分方法が異なる、と感じると、拒絶感が高まるかもしれません。

このようなビジネスモデルの層別化は、コングロマリット経営体を対象として、事業ポートフォリオマネジメントがなされていることが前提の分類となっているからです。そして、実務的には、事業ポートフォリオマネジメントと、各事業ごとの儲かるための仕組みづくりは分けて考えることが難しいと考えられます。というのは、各事業間のグループ内取引、コーポレート・サービス機能のシェアードサービス提供など、ポートフォリオ管理と、各事業体の運営方法が混然一体となっているのが通常だからです。

『ビジネスモデルの教科書 上級編』の方は、前著が「ビジネスモデルキャンバス」に依ってカタログ的にビジネスモデルの紹介をしていたところから、個々のビジネスモデル自体の解説に力点を置き、10のジャンルで20の代表的なビジネスモデルを説明しています。そして、前著でやや紋切り型だった「コーポレートレベル」と「事業レベル」をつなぐ連結環として、アライアンス、製販切り離しの事業買収などを取り上げて、具体的に事業を有機的に結合させてグループ経営モデルに持っていくやり方を解説しています。

本著(P264・265)にて、今枝氏が自前のビジネスモデル・フレームワークと、ビジネスモデルキャンバスとの関係性を説明しています。最初は借景していたものの、自説との相違点を明確にしています。しかし、読者にとっては「黒い猫でも、白い猫でも、鼠を捕るのが良い猫だ。( 鄧小平)」精神を貫いてください。どっちのフレームワークが優れているのか。あまり、そういう議論には立ち入らない方が。。。実務的に、自身のビジネスモデルを見る目を養うための機会、ツールと割り切って、数多くいらっしゃる大家の方々のビジネスモデル・フレームワークを味わうのがよいかと。

 

■ (おまけ)それじゃ、お前のビジネスモデル・フレームワークも教えろよ!

偉大な先達による著作詳解(紹介)は次稿以降でも続けるとして、ここは小休憩として、筆者のビジネスモデル・フレームワークをちらっとご紹介します。筆者は最初から不毛な論戦から降りていますので、どっちのフレームワークが適切か、合理的か、普遍的か、生産的か、といった類の主張は一切しないことにしています。

下記は、筆者が、ビジネスモデルについて思考するために、具体的にどのポイントから最初に分析や思考を切り込ませるか、について図示したものです。したがって、これでビジネスモデルの全体像を全て網羅しているとか、このフレームワークでビジネスモデル分析をすると必ず成功する(儲かるビジネスモデルを身に着けることができる)ということを保証するものではありません。

ビジネスモデル(入門編)とあるビジネスモデル・フレームワーク(仮)

これは、筆者がこれまで、経営管理、事業計画、ビジネスシステム設計、業務プロセス設計のコンサルティングを受託した際に、頭の中にある論点整理フレームワークです。矢印がプロットされていますが、どこから始まっても構いませんし、絶対この順番でサイクリングされていると強弁するつもりもありません。

1)Cash
ビジネスは儲かってなんぼなので、最後は収益化、マネタイズされることが大事です。しかしながら、収益または収入としてお金が企業に入ってくる前に、多額の先行投資が長期にわたって必要になることもしばしばです。そういう場合は、資金繰りとか、事業価値評価を行ったうえでの資金調達戦略などもここに含まれます。

2)人
企業は組織。組織は人なり。個人事業ではやれないから、人は仕方なく(あるいは必然的に)群れて組織を形成するのです。分業のメリット、規模の利益、共有知の活用など、人と組織と学習に関することがここに含まれます。「人」という言葉には、「知的財産(IP:Intellectual Property)」も含意としています。資本主義から知本主義経済へ。本気でそう思っているので。

3)R&D(Research and development)
ここには3つの開発が含まれています。

① 基本技術開発(要素技術開発)
② 商品開発
③ 生産技術開発

海のものとも山のものとも分からない研究、イノベーションのジレンマを回避するために、グーグルの20%ルール(従業員は工数の20%は自由な研究に充てていい)、その他、HP、3M、YAHOO!等も導入していますが。まずは、企業の基礎体力としての競争優位的な基礎技術層を厚くしておく必要があります。そこからいかに訴求力が高い商品を生み出すか、またはより高いQCDを保証する生産方法を編み出すか。プロダクト・イノベーションと、プロセス・イノベーションという後続バッターにつないでいくか。そのオーケストレーション力が問われます。ここには、昨今着目度が高くなっているオープンイノベーション戦略も含まれています。

4)マーケティング
「顧客の創造」はすべての営利企業が絶対に避けられない課題の一つです。

昨年、4分の1インチ・ドリルが100万個売れたが、これは人びとが4分の1インチ・ドリルを欲したからでなく、4分の1インチの穴を欲したからである
(T・レビット博士著『マーケティング発想法』より)

企業は、4分の1インチの穴をだれがどれくらい欲しているのかを常に把握しておく必要があります。企業は、4分の1インチの穴をどうすれば一番効率的に自社が提供できるかを考えて準備しておく必要があります。企業は、4分の1インチの穴を効率的に提供している顕在的または潜在的なコンペチタ―の強み・弱みを把握しておく必要があります。企業は、4分の1インチの穴を提供することで、どれくらい儲かるかをあらかじめ知っておく必要があります。

これが、フレームワークというには大げさかもしれませんが、筆者が最重要視するビジネスモデル分析ポイントとストーリー順になっています。ご参考になれば。

ビジネスモデル(入門編)ビジネスモデル入門(1)ビジネスモデルの教科書の読み方① フレームワークが先かビジネスケースが先か。それが問題だ!

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