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こだわり野菜をもっとニッポンの食卓へ! ~進化し続ける野菜宅配ビジネス~ らでぃっしゅぼーや社長・国枝俊成 2016年7月14日 TX カンブリア宮殿

TV番組レビュー
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■ 家族みんなが大絶賛! おいしい野菜のヒミツ

コンサルタントのつぶやき_アイキャッチ

有機栽培の野菜の宅配サービスを提供しているのが「らでぃっしゅぼーや」。注文はネットやカタログを使って。そこには全国の契約農家が低農薬・有機栽培で育てた野菜が溢れている。肉やお魚、調味料まで取り扱っている。注文は1品からでも可能。中でも一番人気が「ぱれっと」と呼ばれる、野菜詰め合わせセットで、中身は「らでぃっしゅぼーや」にお任せ。中身を自分で選択できない子とは何ら苦痛にはならず、むしろ1週間で届いた野菜を使い切ることが習慣になっているお客もいる程だ。

旬がギュッと詰まった野菜の宝物 夏野菜のおまかせセット「ぱれっと」「色々な野菜が届いておもしろい。」「料理するのが楽しい。」「子どもが野菜好きになった。」

とある契約農家を尋ねる。「らでぃっしゅぼーや」が契約する農家は全国に2600軒。ここでは有機栽培でトマト(華クイン)を作っている。有機栽培とは、化学肥料を使わない農法のこと。さらに無農薬か最低限の農薬に抑えるのが「らでぃっしゅぼーや」のルール。農産部のスタッフ25人が全国の農家を回ってチェックを行う。農家出身で野菜のスペシャリストでもあるスタッフも在籍し、契約農家と一緒によりよい栽培法について議論を交わす。

(農産部スタッフ)
「毎年、どうしたら一番手間がかからず、病気が出づらいか、受精が落ちないかなど、そういう栽培がどれかという話をする。」

(契約農家)
「すごく頼りになるので、ありがたい。」

こうして農家と「らでぃっしゅぼーや」がタッグを組み、安全・安心でおいしい野菜をお届けする。

収穫した野菜は、農家から直接全国5か所の配送センターまで直接運ばれ、新鮮なまま箱に詰められ、いよいよ出荷となるのだが、なにやら紙が挟まれた。実はこれが重要。書かれているのは農薬の使用状況、生産農家の名前に住所の番地まで載っている。野菜の宅配サービス会社でここまでやっているのは「らでぃっしゅぼーや」だけだという。野菜は脳かを出てから36時間以内に利用者まで宅配される。

自分の住所まで公開されることについて、1人の生産農家に尋ねてみると、

「プレッシャーはある。プレッシャーが「いいものを作ろう」という努力につながる。食べた方からのお礼状も届く。(これまで)消費者から直接の反応をもらうのは皆無だったので、「おいしい」という一言に勝るものはない。」

らでぃっしゅぼーや社長、国枝俊成。

20160714_国枝俊成_カンブリア宮殿

番組公式ホームページより)

いまや会員数16万人。野菜の宅配サービスではトップを走る「らでぃっしゅぼーや」を率いる国枝の信条は?

「“独自性”を生かして伸びていけば、安心・安全な食材がより日本に広がっていくのではないか。」

 

■ 全国のお宝野菜を発掘! あなたの食卓へお届け

国枝のいう独自性のある取り組みとは? 

そのひとつがこれ。一部の地方で古くから栽培されてきた各地の“伝統野菜”は、地域限定で全国規模の流通にはほとんど乗らない。「らでぃっしゅぼーや」は、それらの伝統野菜を発掘してきて、日本全国の伝統野菜を「いと愛(め)づらし」シリーズとして販売している。札幌大球(大玉のキャベツ)や亀戸大根など。そんな野菜が100種類。

知る人ぞ知る名菜を全国に広げたい 伝統野菜「いと愛づらし野菜」

 

担当の潮田さんは、伝統野菜の発掘のために年間400軒の農家を回る。誰が呼んだか「らでぃっしゅぼーや」の“珍野菜”ハンター。

(潮田)
「消えかかってきたけれども実はおいしい。それを説明して届ければ、「地方にはこんなおいしい野菜がある」とアピールできると思った。」

こだわり野菜の人気はじわじわと上昇。今や主な有機野菜宅配会社で売上高、会員数でトップに立つ。

                                売上高      会員数
らでぃっしゅぼーや 223.0億円 16.1万人
オイシックス       201.5億円 11.1万人
大地を守る会    135.7億円    9.9万人

『安全・安心な野菜でニッポンを元気に! こだわり野菜をもっと食卓へ! 進化し続ける野菜宅配サービス』

 

■家族みんなが大絶賛! おいしい野菜のヒミツ スタジオにてインタビュー

「ばれっと」の中身はどうやって選ぶんですか?

「わが社の農産部にプロがいて、バランスよく根菜、果菜それから葉物を、毎週同じものが続かないように、なるべく旬の野菜を入れるようにしている」

見たことも聞いたこともない野菜が売れるんですか?

「調理の仕方をレシピにして配送するので、食べてもらえる。」

(村上氏)
「西洋野菜に押されて、かつ流通にも乗らなかった伝統野菜を、今でも地元の方が少しずつ作っているわけですが、それが途絶えたら消滅するんですよね。発見したり発掘してまた流通に乗せるというのは大事なことだと思う。」

(村上氏)
「自分の妹が北海道で農業をやっていて、言っていたのが、完全無農薬というのは合理的でない部分もあるということ。「らでぃっしゅぼーや」は完全無農薬でないとダメっていうポリシーではないですね。」

「“完全無農薬”にして作物を育てようと思うと、手間暇がものすごくかかるし、不可抗力的に害虫の被害も受ける。」

<「らでぃっしゅぼーや」の農薬に対する考え方>
・人が病気の飲む薬のように「仕方なく」使う
・生産者は、より農薬を減らす努力
・使う場合は報告し、情報を公開
・環境や人体に影響が大きい農薬は使わない(除草剤など)
・地中の微生物が死滅する土壌消毒は禁止

「日本の高温多湿の気候風土などを考えると、農薬は使わないに越したことはないが、できるだけ少ないながらも少しだけ使う。“低農薬”というのはバランスの取れた考え方だと思う。やむを得ず農薬を使った場合は、お客さんにお知らせする。それはしっかりやっている。」

 

■ ドコモ×野菜宅配 知られざる改革の舞台裏

ここは携帯電話のドコモショップ。その店内に「らでぃっしゅぼーや」の展示パネルが。実は4年前からNTTドコモグループに入った。だから、ドコモの通販サイトからでも「らでぃっしゅぼーや」の野菜が買えるようになり、客層が広がったという。しかし変わったのはそれだけではない。

「らでぃっしゅぼーや」は1988年、市民団体を母体に誕生。順調に会員数を伸ばしていった。しかし人口の減少やライバルの出現で2009年頃から売り上げはじり貧となっていく。そんな中、2012年、NTTドコモに買収された(TOB:株式公開買付け)。国枝が社長に就任したのはその2年後の2014年。若い時は、NTTのエンジニアとして通信設備の設計などを行っていた。その後はNTTドコモ支社長などを歴任。農業は全くの門外漢だった。

「新しい組織に来たので、社員がどういう思いで仕事をしているのか、どういう課題認識を持っているのか、一番知りたかった。」

社員の意識を探るため、自ら様々な現場を回った国枝。ある日、配送センターの箱詰め作業を見て驚いた。明らかに低品質の野菜(大きさが不揃い、虫がついているなど)で、無農薬野菜の基準を満たしていないものが詰められていた。しかし、現場の人たちの意識は生産者の方に傾き、せっかく生産者が作ったものだから、これくらい許されるだろうという感覚。そこには「顧客の視点」が全く欠けていた。

そこで国枝は、「顧客目線」を社内に取り入れようと、月一回、役員を集めて、ひたすら顧客からのクレーム電話の録音音声をひたすら聞いて検討する会議を開くようにした。市場競争が激しい通信業界からやってきた国枝、顧客目線を社内に取り入れようとして、この取り組みを始めた。紙での報告を受けるのではなく、生の音声を聞くことにこだわっている。

「日々の業務にもう少し“顧客志向”の要素を取り入れてほしい。」

現場の隅々にまで”客の声“を共有し、いち早く顧客要望に応えるような組織(現場)作りを心掛ける。会社の体質から変えようとしている国枝。もう1つの”改革“がある。

「配送クルーの皆さんが、まさに「らでぃっしゅぼーや」の顔。毎週、対面してクルーの応対が評判につながっている。非常に重要な存在」

客と直接対面する配送クルーは、約300人全員が「らでぃっしゅぼーや」専属で働いている。クルー向けの野菜勉強会を生産者を招いて開催し、クルーはどんどん野菜に詳しくなっていく。ひとつひとつの品種の味の違いも分かるようになり、それが日々の営業につながる。注文が取れれば、その一部が配送クルーに分配される。その割合もアップさせた。配送クルーのモチベーションも上がり、それに比例して会社の売上も上がる。さらに、社内表彰制度を設置し、高い接客技術も評価されていく。そうすることで、現場のクルーたちの接客技術があがるとともに、顧客からの信頼度もアップ。

具体例)
・傷みやすいトマトは新聞紙にくるんで渡す
・ダンボールから買い物籠に野菜移し換えてあげることで、家庭で出るごみを削減
→接客術で表彰されたクルー曰く。「自分がやってもらってうれしいと思うことをやっているだけ」

クルーのモチベーション向上が会社業績を立て直した。国枝が社長に就任後、業績はV字回復を果たす。

クレームの音声を直接聞くことがそんなに大事なことなのか?

「社長・役員自ら消費者の声を直接聞いて、今、会社が何をすべきなのかを知ることは一番重要。クレームで「電話しよう」と思う人は、長年「らでぃっしゅぼーや」の会員で、「こういうことがあってはいけないから電話するんです」と。」

(村上氏)
「年商4兆円のドコモから年商200億円の会社に親会社から社長として入ったわけですよね。社内のプロパーから反発は無かったのか?」

「新しいビジネスに対して好奇心もあり、「中に入って知ろう」というスタンスを取った。エンジニアは現場が重要。1+1が2になることを自分で確かめにいく。机上だけではダメ。」

(村上氏)
「通信会社のエンジニアから野菜宅配会社の社長へ転身など、環境の変化を乗り切るために必要なものとは?」

「時代はどんどん変わっていくから、業種が違っても耐えられるような柔軟性や、変化への適応力を養うことが重要。」

 

■ 忙しいママを応援! 10分で本格野菜料理

子育てから手が離せず、料理の時間を短縮したい、子供がぐずってもすぐに調理の火を止められないから、という声に応えて、「10分料理セット」:季節ごとに10種類を販売(2人前 980円~)を販売し始めた。

セットに入っている野菜・肉・調味料など、全て「らでぃっしゅぼーや」の基準をクリアしたものだけ。商品部がこのセットを開発した。

(商品部:東海林さん)
「時間がない人が多い。しかし、いかに手軽にできるだけ完全加工品ではなく、少しでもお母さんの調理が加わったものというところから商品企画がスタートした。」

工場のキッチンで試作メニューを作ってみる。セットを一緒に炒めたりして、火を通すのだが、異なる種類の野菜にまんべんなく火が通るように、火の通りやすさに合わせて野菜の大きさを違えてカットする。にんじんなんかは、パック前に軽く茹でておくなどの工夫が施されている。

 

■ ニッポンの食卓に もっと有機野菜を!

(村上氏)
「日本のオーガニック(有機野菜)市場は小さい?」

「ヨーロッパは北米では4~5兆円の市場がある。人口対比からすると、日本の有機野菜市場は1兆円なければおかしい。ただし、現状は1500億円くらい。日本の市場が小さいのにはいろんな理由が考えられるが、日本のような高温多湿の気候の中で有機野菜を作るのはコストが割高。もうひとつは業界としてまだまだPR不足。業界として、もっと有機野菜をPRしなくてはいけない、これが一番。」

「らでぃっしゅぼーや」の国枝社長と、「オイシックス」の高島社長、「大地を守る会」の藤田社長の3人が集結して打ち合わせを始めた。しのぎを削るライバル会社のトップとの打ち合わせだ。商売敵のライバル相手に国枝が切り出したのは、

「オーガニック(有機野菜)の業界をもっと大きくしようという趣旨で、業界団体全体に共通するようなプラットフォームをつくったらどうか。」

実はこの3社、それぞれ独自の基準で有機野菜を作って販売している。この基準を統一し、消費者に分かりやすいものにする。協力し合って、市場をより大きくするという提案なのだ。

(高島オイシックス社長)
「3社が同じような努力をしているところは、一緒にやった方が効率が良くなる。是非参加させて頂ければ。」

(藤田大地を守る会社長)
「協力して市場を拓いていくことには大賛成。」

日本の食卓にもっと有機野菜を。その種が蒔かれた。

 

■ 編集後記

「らでぃっしゅぼーや」の成果の象徴、それが「いと愛づらし名菜百選」ではないかと思う。
地方・地域の、希少な伝統的野菜を紹介し販売する。
生産そのものが困難になりつつある野菜をよみがえらせる、それは貴重な資源の再発見と維持につながる。
野菜は「生き物」で、生産が止まると、その種は絶えてしまう。
国枝さんは元エンジニアだが、有機農法へ正統な敬意を抱き、その重要性を正確に把握している。
領域は違っても、優れた技術は、人々の幸福に貢献することを熟知しているからだろう。

有機を守る勇気
村上龍

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