金融法制 機能別に IT進展、業態別に限界 金融庁が中間整理案 - 潮目が業態破壊・新規参入前提に変わった!

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■ 金融業における業法の制度疲労が目立っている件について

経営管理会計トピック

業法の体系が変わる! 業態(業界)を御することから、機能・サービス視点で法整備がなされることになりました。

2018/6/19付 |日本経済新聞|朝刊 金融法制 機能別に IT進展、業態別に限界 金融庁が中間整理案

「金融庁は18日、金融法制度の再編に向けた中間整理案をまとめた。金融とIT(情報技術)を融合したフィンテックの普及をにらみ、銀行は銀行法、送金業者は資金決済法といった業態ごとの規制を機能別・横断的に見直すのが柱だ。手がける金融サービスやリスクに応じたルールに衣替えし、技術革新と利用者保護の両立を目指す。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

(下記は同記事添付の「金融規制を「業態別」から「機能別」に見直す」を引用)

20180619_金融規制を「業態別」から「機能別」に見直す_日本経済新聞朝刊

業界法は、免許制・登録制など、規制形態は様々ですが、同質的なサービス・機能を担う法人を一括りにして管理・監督することができるので当局にも利便性があること、事前にこういう業態・サービスでということが昭になっていることから法的安定性も確保できるメリットがありました。

金融審議会の基本精神は「同一の機能・同一のリスクには同一のルールを適用する」。これは現状、銀行でも新興フィンテック企業でも送金サービスを担うことができるのですが、

・銀行の最低資本金は20億円なのに対し、資金移動業者には明確な基準が設けられていない
・銀行は免許制、資金移動業者は登録制

という法的制約が異なってしまっているのです。つまり、貸金業、資金移動業、第2種金融商品取引業として、それぞれの業法下で登録すると、緩い規制のもとで実質的に銀行と似た機能を持つことができるようになってしまいます。これは、業界ごとに規制をかけている立法趣旨を逸脱する業者に抜け穴を用意してしまうことになり、業界単位の法規制のよって立つ基盤が揺らいでしまっていることを意味しているのです。

 

■ 金融業において業法が意味をなさなくなった理由について

記事では次のように解説されています。

「ITが一段と進展し、業態の垣根はこれまで以上に低くなっている。中間整理では、銀行法や資金決済法といった各業法に金融機関を押し込めるのではなく、「各プレーヤーが自由にビジネスモデルを選んだ上で、その機能やリスクに応じてルールを過不足なく適用することが重要だ」と強調した。」

月並みな言い方ですが、IT(ICT)分野におけるテクノロジーの進歩が業界の垣根を破壊しているようには思えません。どこまでいってもテクノロジーは人間と社会が使いこなすものであって、テクノロジーに人間や社会が支配される性質のものではないからです。世の中の金融サービスに求める利便性とか、サービスの多様性が現存の業態の枠に合わなくなっただけのことです。

新しい酒は新しい革袋に盛れ

新しい酒は新しい革袋に盛れとは、新しい思想や内容を表現するには、それに応じた新しい形式が必要だということ。

『新約聖書』マタイ伝第九章の一節に、「新しき葡萄酒を古いき革袋に入るることは為じ。もし然せば袋張り裂け、酒ほとばしり出てて袋もまた廃らん。新しき葡萄酒は新しき革袋に入れ、かくて両つながら保つなり(新しいぶどう酒は古い革袋には入れない。そんなことをすれば革袋が破れて酒が漏れるし、袋もだめになる。新しいぶどう酒は新しい革袋に入れれば、ぶどう酒も袋も両方が保たれる)」とあるのに基づく。
ここでの「新しき葡萄酒」は、それまでのユダヤ教に代わるキリスト教の教えをさす。

(出典:故事ことわざ辞典

「機能別・横断的な法制にすることで、こうした規制の隙間を埋めるようにする。同時に、業態の壁にとらわれないビジネスモデルを持つ企業が参入しやすい環境を整備することをめざす。」

ともあり、新規参入をしやすい環境づくりとありますが、従来の業法による規制は、新規参入の壁を高くし、規模も業務品質も同質的な法人で業界を囲って、法的安定性を求める手法だったのではないでしょうか。これは、金融業界に限らず、日本の当局の産業規制の在り方全般における姿勢が変わる嚆矢となるのか注目される所です。

ITの進化という受け身の理由ではなく、新規参入の壁を低くすることで、金融業の競争力を高める攻めの理由である、というのが筆者の理解です。

 

■ 日本の金融業における新規参入の壁の高さはどう実感されているか?

同記事では、

「米アマゾン・ドット・コムは日本で銀行業に参入できるが、邦銀がアマゾンのような電子商取引(EC)を手がけることはできない。」
「金融と非金融の境界線が曖昧になるなか、現在厳しく制限されている銀行の業務範囲をどこまで広げるべきかも重要な論点にあげた。」

という論点が話されたとあります。

2018/6/15付 |日本経済新聞|朝刊 「アマゾン銀行」認めるか 金融庁、異業種参入を議論 銀行の商業進出も焦点

「米アマゾン・ドット・コムが日本で銀行業を始めたいと言い出したら、金融庁は認可するのだろうか。米国は規制の壁が厚く、異業種参入を事実上禁止。一方、日本はセブン銀行や楽天銀行など参入を認めている。商業と銀行の融合が新たな金融リスクを招くのか否か。金融庁も将来起こり得るシナリオと見て、認めるか見直すか議論を始めた。」

(下記は同記事添付の「異業種から銀行へは参入しやすい」を引用)

20180615_異業種から銀行へは参入しやすい_日本経済新聞朝刊

同記事では、「楽天は銀行を経営できるが、銀行は楽天を経営できない」というフレーズを紹介して端的に状況を言い表しています。銀行は財務の健全性を保つ目的で、業務内容を厳しく制限され、事業会社に5%までしか出資できないため、フィンテックを手掛けるITベンチャー買収も思うようにいかず、自由に多角化できません。

その一方で、異業種が銀行を買ったり設立したりする場合、「主要株主認可制度」という金融庁が認可する仕組みがあり、

「1990年代後半、インターネット銀行の設立に向けた動きが出始め、金融当局が2000年5月に銀行参入の目安を示す監督指針を出した。これが事実上解禁されたと映り、後のセブン銀行も誕生した。楽天がイーバンク銀行を買収し、楽天銀行にしたり、イオン銀行が破綻した日本振興銀行を吸収するなど、既存銀行を異業種が買うことも、日本では免疫ができた。」

という状況下にあるのです。

冒頭の記事に戻ると、

「ただ三菱UFJフィナンシャル・グループがデジタル通貨「MUFGコイン」を発行すれば、例えばスマートフォン(スマホ)の配車アプリで呼んだタクシーの料金を同コインで支払うなど利用者のニーズは派生的に広がる。銀行とそれ以外の規制のイコールフッティング(公正な競争条件)の確保も大きな論点になる。」

とあるように、アマゾンやグーグル、メルカリが銀行を買いたい、つくりたいと申請したら、許可せざるを得ない状況で、同時にメガバンクや都市銀行・地銀でも、フィンテックへの投資を自由にできるようにするに制度変更しないと、日本の金融サービス業界も海外プラットフォーマーの目の前に投げ出された美味しい餌に成り下がってしまいます。

 

■ 業法の法的安定性と利便性追求のバランスについて

翻って、米国の金融行政は至って毀誉褒貶が激しく、目まぐるしい変化で制度変更を追っかけていくだけでも本当に大変です。(^^;)

1929年の世界恐慌をきっかけにグラス・スティーガル法が制定されてから銀行による証券業務が制限(銀証分離)されたかと思いきや、次第に骨抜きにされ、グラム・リーチ・ブライリー法(1999年金融サービス近代化法)で決定打が打たれ、世界金融危機(サブプライムローン問題(サブプライム住宅ローン危機)を発端とした2007年のアメリカの住宅バブル崩壊から連鎖的に発生した2008年のリーマン・ショック等を含む、一連の国際的な金融危機)を招きました。

今度はドッド=フランク法(2010年)で金融サービスの透明化を図るとして各種の規制を強化し、やがて金融危機からの傷が癒され始めると、中核的存在だったボルカールールは、最近、自己勘定での自社の運用資産の高リスク取引を条件付きで一部解禁することが決定されました。

歌は世につれ世は歌につれ

日本政府は、米国からの圧力により、「規制緩和」が正義であるかのように信じ込まされ、いろいろな施策を導入していますが、本家の米国金融業界は、規制強化と規制緩和をその時々の経済事情から後追いでバランスさせています。まあ、そのバランスがうまくいっている、金融行政がうまくコントロールされているとは見受けられませんが。とりあえず、アングロ・サクソン流の環境の変化に合わせた柔軟な対応は見事と言わざるを得ません。

今回の業法見直しも、IT領域のテクノロジーの進化が真因ではなく、金融サービスの多様化が現在の業界絵図では対応しきれない、新しい革袋が必要になったのだということに気づいてもらい、真剣に変化への対応を議論してもらいたいものです。

おっと、これは会計業界にも言えて、ICOに纏わる会計基準を決めることを回避せずに積極的に取り組む、仮想通貨・暗号通貨の時価・簿価評価方法を合理的に設定するなど、課題は山積ですよね。(^^)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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