■ 簿記を勉強しないでも決算書が読めるという本を書いている人は簿記を勉強したことがあるのか?
断言します。
決算書(財務諸表)は、簿記を勉強しておかないと、本当のことは理解できません。
そもそも、「簿記知識が無くても決算書が読める!」という類の本を書いている著者自身は、程度の差こそあれ、必ず簿記を勉強しているはずです。そうでないと、「決算の読み方」という類の本は書くことができません。
世の中には、甘言を弄して本を売ろうとしている人が多くて大変困ります。
「食べるのを我慢しないで、○○日で成功するダイエット」
「必ず儲かる、これから急騰するおススメ株はこちら!」
「誰でもやればできる、副業で○○○万円の収入を得る方法」
必ず儲かる株を知っているのなら、本を書いている間も惜しんで、資金繰りを必死にやって、自分でがっぽり買い込んで、人知れず大儲けしていればいいじゃないですか。わざわざ、おススメ株を書物で紹介することに何の意味があるんでしょう? もし儲からなかったら、損失補填でもしてくれるのでしょうか?
話を「簿記」と「決算書」の関係に戻しますと、企業を取り巻く諸々の経済的取引のうち、会計的取引になるものを抽出し、簿記のルールに従って、「仕訳」という会計素データをちまちまと作成してきます。それから「仕訳」を、整理して、決算書(財務諸表)のフレームワークにはめていきます。
①「費用」と「収益」のカテゴリに入ったデータを「損益計算書」へ
②「資産」「負債」「資本(純資産)」のカテゴリに入ったデータを「貸借対照表」へ
③「現金同等物」の増減データを「キャッシュフロー計算書」へ
④「株主資本」の増減データを「株主資本等変動計算書」へ
極論的にシンプルな説明をさせてもらうと、
去年と今年の「貸借対照表」がまずあって、「貸借対照表」に記載されている「当期純利益」の今年1年間の増減理由を記しているのが「損益計算書」で、「現金同等物」の今年1年間の増減理由を記しているのが「キャッシュフロー計算書」で、「株主資本」の今年1年間の増減理由を記しているのが「株主資本等変動計算書」です。
こう説明されても、簿記の知識がないと、「へぇ~、そうなんだ」で終わってしまいます。よく、決算書を読むのに簿記の知識が必須かどうかの議論をするときに、「自動車のエンジンの構造や製造方法を知らなくても、自動車を運転できるように、複式簿記を知らなくても、決算書は読めるようになる」という比喩を使う人がいます。でもね、内輪差とか、ポンピングブレーキとかの知識がないと、運転自身が危なっかしくなるでしょ。簿記の知識ってそういうレベルのものです。
私は、学生時代に独学で日商簿記4級にチャレンジした際、「貸方」に「借入金」という勘定科目が記載されているのを発見して、すぐに誤植だと思い、出版社に問い合わせたほどの素人から会計人生を始めました。当然、簿記4級の独学は挫折してしまい、1年後、会計専門学校に通い始め、ようやく簿記1級を取得しました。
「貸方」って、銀行が企業に貸し付けをする際に、銀行側から見た定義からくる用語で、銀行が貸すお金は当然企業から見れば「借入金」なのですよ。こういう解説をしてくれる本こそ本当に会計初学者に必要なんだろうと思います。
そういう私は、実は、学生時代に運転免許を取った後、ほとんど自動車の運転をしたことが無い超ペーパードライバーなんです。簿記とエンジンの話をする資格ないじゃん!
m(_ _)m
(それでも、簿記知識がなくてもてっとり早く決算書の構造と、財務諸表間の関係を知りたい方は、筆者の「会計(基礎編)」のシリーズを読んでみてください。でも少しでも、説明についていけないと感じたら、その時こそ、あなたにとって簿記の勉強が本当に必要なんだと実感できた瞬間だと思いますよ。)
コメント
個人的にはそれでも簿記という概念無しにBSを理解する、或いは理解させることはできると思います。正確に理解といわれますが、内部留保だけを理解するのに簿記を出さずに素人に理解してもらう方法を考えるのがプロの人だと思いますが。
小生は実際に会計入門セミナーでBS、PLとCFとは何かを簿記概念無しに説明しております。相手は簿記の知識のない素人に教えておりますよ。
コメントありがとうございます。
その通りだと思います。簿記知識なしで、財務諸表を教えるのは、苦労と工夫と手間が相当かかりますよね。そのうえで、簿記知識も併せて学習して頂ければ、財務諸表を構造的にも理解してもらえて、一人でも多く、もっと頭に染み入るように捉えられるようになる人が増えるといいなと考えています。