制度会計と管理会計(1)「比較」するという視点からは共通の性質を持っている!

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■ 「制度会計」と「管理会計」の共通点は「比較」の視点

このテーマは、筆者としてはコラム風にしておかないとシャレにならないので、つらつらと口語的に連載していきたいと思います。この新年度でビジネスパーソンの仲間入りをしたフレッシュな方々にも、会計とは、を語る機会が多く、本ブログでも思いを記しておこうと思います。

「制度会計」と「管理会計」。

どちらも「制度」とか「管理」とか、おどろおどろしく、堅苦しい枕詞が付されています。どっちが好きか? と問われれば、好みだけでいうと、「管理会計」の方です。しかし、どっちの方が正しいとか、重要かという問いにはあえて答えないようにしています。

どちらも、「比較」という点では共通する性質を持っている、というと、意外に思われるでしょうか?

まずは制度会計から。

制度会計は、会計基準に則り、会社業績を財務諸表でステークホルダーに開示することを目的にしています。一つの規範性のある会計ルールでもって、どの企業でも等しく、同じ企業活動なら同じ会計処理を適用することによって、同じ財務数値が計上されるように担保されています。

これは、投資家が、トヨタ自動車と日産自動車のどっちに株式投資しようかなと考えた時、同じ会計ルールで財務諸表が公開されているからこそ、財務諸表の数字を相互に比較して、ここはトヨタの方がいい、こっちは日産の方がいい、という風に投資判断に活かすことができるのです。つまり、2つの会社を比較するための基準になるのが制度会計ルールと、制度会計ルールに従って作成された財務諸表(決算書)ということになるのです。

注)ここで、IFRSと日本基準は異なるとか言い出さないでください。それはまた別途説明しますから。(^^;)

また、会社業績を分析するときに、昨年と今年を比べたりもします。よって、会社の成長性や収益性の変動を吟味するためにも、毎年同じ会計ルールで財務諸表が作成されて、異時点間の比較性が担保されていることが重要になります。

この点においては、「継続性の原則」という一般原則があり、違う会計年度同士の数字が比較分析できるように会計ルールはみだりにそうやすやすと変更してはいけないとされています。

⇒「企業会計原則(7)継続性の原則とは(前編)相対的真実を守りつつ、比較可能性と信頼性のある財務諸表にするために
⇒「企業会計原則(8)継続性の原則とは(後編)変更できる正当な理由とは? 過年度遡及修正と誤謬の訂正の関係まで説明する

 

■ 一見、自由そうに見える「管理会計」が持つ「比較」の視点とは?

そもそも、管理会計は「比較」することが前提で、仕組みが作られています。

⇒「管理会計的思考 それは『比較』

例えば、所期の目標利益を達成するのに、

① 売上を増大させるか?
② コストを削減するか?
③ 投入資本を増加させるか?

どの打ち手が最も効果的かを比較分析して、最大の利益をもたらす選択肢を選ぼうとします。

これは、管理会計の一分野の「意思決定会計」というものにカテゴライズされます。

例えば、今期の業績がいいのか悪いのかを知るために、

① 前年実績と比較して良いのか?
② 当年予算と比較して良いのか?
③ 同業他社と比較して良いのか?

相対的な業績水準のレベルがどの辺かを探ります。ライバルと比較して、去年と比較して数字がよくなっているのなら、単に景気がよくなっただけではなく、経営努力がきちんと実を結んだ成果であると結論づけることができます。

こういう考え方は、管理会計の一分野の「業績管理会計」」というものにカテゴライズされます。

 

■ すなわち比較のためのフレームワークを形成する考え方の相違にすぎない

「制度会計」は、財務諸表をベースに、企業外のステークホルダーが分析対象会社とその他の比較対象会社の業績比較の正当性を担保するために、きちっとした会計基準でもって会計数値を作成する姿勢が重要になります。これが、制度会計における比較のためのフレームワークの考え方です。

長さを測るのに、メートルなのかヤードなのか、測定のための基準を等しくしましょう、というものです。

「管理会計」は、

(1)意思決定会計
最適な経営判断を下せるように、企業内の計数管理担当者がA案とその対案であるB案を適切に比較できるように、比較基準からお手製で作り上げます。このとき、最良の経営判断を下すことができる、という目的にどれだけ整合する計算ルールであるか。これが意思決定会計上の選択肢の比較のためのフレームワークの基本的な考え方です。

例えば、在庫に含まれる固定費も全て当期の期間費用扱いし、CVP分析にて、売上高がどれだけ損益分岐点を超えられるか、限界利益率をどれだけ大きくすることができるか。その2点だけを注視していれば、結果として、自ずと期間利益目標は達成できるという管理を行なうというものです。

(2)業績管理会計
利益で業績を管理する場合、制度会計ルールが提供する段階利益概念ではなく、貢献利益や限界利益という指標を用いるとか、制度会計では作成の義務付けがない、予算を作成し、それを実績と比べて、予実差異分析を行うという手法を採ります。

これも、どういう視点や定量基準で己の業績を測定されると人はやる気を出して仕事を全うするのか(難しく言うと会計責任を果たすのか)、または、業績向上のために適切な措置とその結果がもたらす会計へのインパクトの関係づけを理解できるのか、という視点から評価指標を選び出してくるのです。目標と実績、事前予想と事後効果。それらも広義では比較がなせる業なのです。

ということで、広く世の中では、とかく対立しがちな「制度会計」と「管理会計」。

「比較」する、という視点では意外に共通する性質を持つものだということを新社会人の方々に印象付けることができたでしょうか?

(連載)
⇒「制度会計と管理会計(1)「比較」するという視点からは共通の性質を持っている!
⇒「制度会計と管理会計(2)制度会計は過去、管理会計は未来を見ているはもう古い!

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小林 友昭
小林 友昭
現役の経営コンサルタントです。経営管理の仕組み構築や経営戦略の立案、BIシステムを中心としたIT導入まで手掛けております。
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