■ キャッシュ・コンバージョン・サイクル とは?
日立製作所が新しい経営指標を導入したという記事が掲載されました。
2014/9/6付|日本経済新聞|朝刊
運転資金1500億円圧縮 日立、投資余力を高める
日立が「キャッシュ・コンバージョン・サイクル(Cash Conversion Cycle:CCC)」を新規導入したということですが、ここでは一般的な計算式をおさらいしておきます。
この計数の単位は「日数」。仕入れ→販売→現金回収までにかかる日数を表しており、短ければ短いほど資金繰りが楽になる、という見方をします。
資金繰りを楽にするためには、計算式の右辺にあるように、3つの変数を管理します。
- 在庫回転日数 :どれだけ在庫(たな卸し資産)の保有金額を少なくするか
- 売上債権回転日数:どれだけ販売時点から現金回収までの期間を短縮するか
- 仕入債務回転日数:どれだけ支払い条件を緩和してもらってつけ払い期間を延ばすか
■ この指標が本当に経営管理目的に有効か?
この指標そのものが有効かどうかはそれ自体では議論できません。ターゲットとする経営管理目的に即しているかどうかを問題視すべきです。記事によりますと、日立は、「運転資金を圧縮し、浮いたお金で設備投資をし、売上高営業利益率を7%超にする」という経営戦略の実現に向けて社内を管理するための指標として使用するとのこと。
日立が意図するシナリオを財務諸表で表現するとこうなります。(あくまで筆者の推論です)
<留意点>
- 運転資金を設備投資資金に回すことで、短期と長期の資金調達バランスが崩れること
- 運転資金の資本コストが本当に最安か、資金調達戦略の観点から検証が必要なこと
- 3つの営業利益増大の施策につながる設備投資ができるかどうかが重要であること
- CCCの計算式に算入する勘定科目の選別(未払金等)や平残計算の方式次第では管理数字が異なってしまうこと
- 上場会社なのでせっかく作成しているキャッシュフロー計算書の「営業キャッシュフロー」の数値を経営管理に有効活用した方が内部管理コストを削減できるかもしれないこと
<良い点>
- 製造現場や営業現場の担当者にとっては、「日数」による管理指標の方が、通常業務で意識しやすくなること(手形のサイト設定等)
- キャッシュフロー計算書の作成が義務付けられていない会社では二重管理にならないこと
皆さんも、ご自身の企業で業績評価指標を新たに導入される場合は、どうぞ光と影、両面からご検討ください。
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