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(大機小機)相談役・顧問制度の役割 - オープンマネジメントはどこまで有効なのか?

経営管理会計トピック 会計で経営を読む
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■ 経営の透明性を求めるコーポレートガバナンス改革の一環の中で

経営管理会計トピック

やれコーポレートガバナンス・コード、やれスチュワードシップ・コードと、何でも可視化して、公明正大にマネジメントを進めるべきと。一見正論なのですが、経営の成熟度は、何もオープンマネジメントだけがその最上位に君臨しているわけではなく。。。

2018/4/26付 |日本経済新聞|朝刊 (大機小機)相談役・顧問制度の役割

「相談役・顧問制度への批判的な見方が強まっている。主な批判は2つだ。
1つは、目に見える貢献が乏しい点だ。貢献が乏しい人々への報酬の支払いは無駄遣いだという批判である。
もう1つは、OBが隠然とした影響を及ぼすことのマイナスに注目した批判である。過去の戦略に固執する人が影響力を持てば、大胆な戦略転換ができなくなる。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

こうした動きは、すでに1月から始まっています。

 

2018/3/6付 |日本経済新聞|朝刊 相談役らの業務・報酬 株主説明が不可欠

「企業がガバナンス改革を進めるうえで、新たな悩みどころになりそうなのが、相談役・顧問に関する情報開示だ。1月から東京証券取引所で相談役・顧問の氏名や業務内容、報酬の有無などの開示が始まった。企業統治の透明性を高める狙いだ。3月期決算企業の株主総会シーズンである6月に向け、株主への説明の準備も必要になる。」

政策投資株式(持合株式)と共に、相談役・顧問制度が、海外機関投資家を中心に、批判の声が大きくなり、冒頭の2つのコードを設定し、各社もそれらに準じた対応を順次表明しています。

 

2018/3/6付 |日本経済新聞|朝刊 顧問・相談役、廃止相次ぐ 実態公表は37社 ブリヂストン、月内開示 海外投資家、院政に懸念

「顧問や相談役を廃止する企業が相次いでいる。勤務の実態や報酬などを公表する動きも広がり、5日までに野村ホールディングスや日本航空(JAL)など37社が開示。ブリヂストンは月内に相談役の詳細を公表する。顧問や相談役に社長、会長の経験者が就く企業は多く、海外の投資家からは院政を懸念する声もある。企業統治の位置づけをはっきりさせ経営の透明性を高める。」

(下記は同記事添付の「相談役・顧問がいる企業は全体の6割」を引用)

20180306_相談役・顧問がいる企業は全体の6割_日本経済新聞朝刊

企業が顧問や相談役を見直すようになったきっかけのひとつは、2015年に明らかになった東芝の不適切会計に端を発したガバナンスの透明さを求める動きです。それを受けて、東京証券取引所は2018年1月、「コーポレート・ガバナンス報告書」で顧問や相談役の詳細を記す欄を新たに加えました。現時点で義務化はされていませんが、顧問、相談役の氏名や経歴、常勤・非常勤といった勤務形態、報酬などの開示を促しており、これに応じる形で、自主的に開示する企業が相次いでいます。

(下記は同記事添付の「顧問・相談役について開示した主な企業」を引用)

20180306_顧問・相談役について開示した主な企業_日本経済新聞朝刊

 

■ 自主的な情報開示から制度廃止まで – 目の敵にされている顧問・相談役制度

いきおい、そうした動きは徐々に加速し、相談役・顧問制度の廃止の動きも活発化しています。

2018/4/21付 |日本経済新聞|朝刊 相談役や顧問 廃止の動き 三菱商事など、経営関与透明に

「三菱商事が特別顧問と相談役制度の見直しを決めた。相談役や顧問は意思決定への関与が不透明として海外投資家からの批判が高い。見直す企業が相次いでおり、その動きが波及した形だ。多岐にわたる業務を手がける大手商社は各分野の知見を持つ相談役や顧問を多く抱える日本的慣習の本丸といえるが、改革の流れが風穴を開け始めた。」

(下記は同記事添付の「相談役・顧問の就任状況」を引用)

20180421_相談役・顧問の就任状況_日本経済新聞朝刊

本記事によりますと、

・2017年にJ・フロントリテイリングや日清紡ホールディングスが相談役制度の廃止を決定。資生堂も相談役・顧問制度を廃止
・2018年に入ってパナソニックが相談役を、富士通や三菱UFJフィナンシャル・グループも相談役・顧問の廃止を表明

という動き。

一方で、

2018/1/5付 |日本経済新聞|朝刊 役員退任後に相談役・顧問 トヨタ、慣例廃止 社外取締役らが起用審査

「トヨタ自動車は相談役と顧問の制度を見直す。これまでは役員が退任した後、慣例で一定期間、相談役や顧問に就いていた。今後は社外取締役らが職務や権限、報酬の必要性などを審査したうえで起用するかどうかを判断する。現在は計約50人が相談役または顧問に就いているが、今年6月に東京証券取引所に提出する報告書から相談役などの情報を記す。」

さすがトヨタですね。他社とは一線を画する対応を見せています。こういう世間の風潮に迎合せず、信念を貫いて、自社の経営の在り様をきちんと説明していく。こういう態度を見せる方が、株主をはじめとするステークホルダーに受け入れられやすいのではないでしょうか。

 

■ 本当に相談役・顧問制度は無意味で、百害あって一利もないのか?

本テーマを取り上げたのは、冒頭のコラム「大機小機」の相談役・顧問制度に積極的な意味を見つけようとする説明に筆者が賛同したからです。

論旨は下記の通りです。

相談役・顧問は、報酬の後払いの性格があるとします。つまり、相談役・顧問の報酬は、その役に就任した後の働きによったものではなく、就任前の、まさにその役を拝命するに値する働きを現役時代に示した者への追加報酬という建付けです。そこからくる制度的なメリットとして、

1)「長期的な成果がないと報酬が得られないため、長期的な視野で経営を行わせる効果」
不祥事で退任した役員は顧問や相談役に就けず、結果として後払い報酬を受け取れません。そうすると、現役時代の内に、精勤しようというインセンティブになりますし、視野が長期的になり、短絡的な施策提案をしなくなります。だって、後払い報酬を払ってくれる会社が永続的で高収益性を維持していないと、後から報酬をとりっぱぐれますからね。

海外の機関投資家などは、取締役や経営陣には業績に連動した成果主義の報酬を支払うべきだという声が強くあります。しかし、このような報酬制度は、受け取る人々の短期業績への過度な傾注を生み出しがちです。株主も短期主義(ショートターミズム)に陥り、経営陣も短期主義になれば、おそらく、その株式会社の中長期的な成長と企業価値創出は毀損するものと断言します。

2)「現役時代の報酬を低く抑えられる効果」
これには2つのメリットが同居しています。まずはトップマネジメントの現役時代の報酬を低く抑えることができます。そうすると、相対的にミドルの給与上昇も抑制することができ、全社的な人件費の節約ができます。まあ、働かされる立場としてはあまりうれしくはありませんが(笑)。

もうひとつは、世界標準の高額なトップマネジメントの給与水準とミドルの給与水準の乖離幅を小さくすることで、全社の一体感を醸成することができることです。

3)「役員の地位への執着を弱める効果」
これは、院政云々という話と裏腹なのですが、退任後も一定の報酬を受け取れる期待があれば、潔く現役を引退する決意ができて、さっさと退任するという道を選びやすくなるという効果があることです。

同コラムはここまでの記述なのですが、筆者独自の視点を下記に加えます。

4)「会社の知的財財産や営業秘密を内に抱えて漏洩を防ぐ効果」
長年、機密事項に触れてきた重要人物を、顧問契約他で会社の内に留め置くことができていれば、人生100年時代、第二の人生をコンペチタ―の顧問や経営者として、自社に立ち向かってきて、競争条件を悪化させるくらいだったら、ある程度の人件費を負担して、言い方は悪いですが、“飼い殺し”にしておけば、有利に市場競争を展開できるというものです。

実は、本音の所、この第4のメリットが結構大きいのかなと密かに思っています。こういうのは、日刊紙はコラムといえども、大っぴらにかけませんからね。(^^;)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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