■ 型を持ち、型にこだわらない!
平成27年の初場所で、歴代最多優勝記録を塗り替え、次なるステージに臨む白鵬。決して順風満帆な春場所ではなかった白鵬に密着取材で本音を引き出す。
白鵬曰く。
「嘘のない稽古をする」(何が自分を強くするか、自分がよく分かっている)
「型を持ち、型にこだわらない」
白鵬の稽古は、1時間ほどの基本動作(四股、鉄砲、すり足など)から始まる。基本に常に忠実に。しかし、勝負師たるもの、勝負にこだわった稽古も怠らない。
弟弟子(誤字ではありませんよ、「おとうとでし」)に、本場所で当たる可能性のある幕内上位者の取り口を再現させて、全ての相手との立会いを研究する。
「勝負師というのはあらゆる手を使って勝ちに行くというのが大事ですよね。もし、ひとつでも足りなければ優勝を手にすることはできないと思うね。」
本場所に臨むにあたっての心構えを聞いてみると、
「稽古であんまり自信がついてもよくないんですね、空回りするから。だから、あえて調子が悪い状態でいく。だいたい最高の調子の6、7割くらいの時がものすごくいいものを達成するんです。」
自分に不安感が多少なりとも残っていた方がいいそうです。その方が本場所で気を引き締められるから上手くと。場所前の稽古で完璧に仕上げると慢心が生じるそうで。
■ 最大の敵は、自分の弱いココロ
「最大の敵は、自分」
弱い自分の心、常に揺れ動く感情をコントロールして、勝利をつかむために。
「最終的には自分自身ですよ。一番のライバル、敵というのは。自分の弱点、自分の弱いところがあるからこそ頑張れるし強くなりたいし、そこに打ち勝って勝利していくんでしょうね」
そして、横綱に上がった時に、大鵬親方に横綱の心構えや取組前の心境を伺ったそうです。
取組前の境地としては、
「多少、対戦相手をなめる。対戦相手を見下ろすような気持ちに自らを誘う。そうすることで、気負う気持ちが抑えられ、周囲を冷静に見渡すことができるようになり、いい結果に繋がる」
横綱の心構えとしては、
「横綱は宿命である」
「綱を張った時から、決して負けられないという気持ち。常に引退の二文字と背中合わせ」
相手を見下ろしたり、引退を意識して自分を追い込んだり、いかに力士というのは「心」との向き合い方が重要か、道を究める人達に共通の心境なのかもしれませんが、私も含め、凡人にはなかなかしんどい生き方です。(^^;)
■ プロとしての美学と特別な場所としての土俵
白鵬は、お客を楽しませるために、徹底的に自分の体調をケアする。
3年前からは専属のトレーナーをつけて稽古や取組後は毎回欠かさずに身体のケアを行う。その成果なのか、横綱になってからの8年間で1日も休場していない。白鵬は土俵に上がる際にできうる限りサポーターやテーピングをしないことにずっとこだわり続けている。
「プロである限りは、きれいな身体で土俵に上がりたいんです。毎日、同じ人が15日間来るわけではないからね。その日、1日の為に何時間もかけて来る人もいるわけですから。そういう人たちの為にも身体のケアをする為だったら何でもするっていうね。それがプロの意識であり、お客様に対する感謝であり、常識であると思いますね。」
白鵬は、土俵に上がる際に自分の弱さを見つめ直す。
「強い人はいないんだよ。人生は敵と戦うより難しい。土俵に上がれば自分しかいないから。土俵は特別なところ。人を成長させたり、人を試したり、人を笑わせる、悲しませる。いろいろなものがあるんだよね。自分との戦いでありながら成長するところなんですよね」
プロフェッショナルとは?
「型を持って、型にこだわらない人間がプロフェショナルだと思います」
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→再放送:5月9日(土)午前1時10分~午前2時(金曜深夜)
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