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「10人に1人が欲しい」なら発売! キングジム・宮本彰 2015年5月8日OA TX カンブリア宮殿

TV番組レビュー
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■ 面白文具の型破り開発術!

コンサルタントのつぶやき

「非常識な人が新商品を開発することができる」

「10人に1人が欲しいと思えば世に出す」というのがキングジムの経営方針。

ユニークなデジタル機器やアイデア文房具を次々と発売しているキングジムの商品開発の秘密に迫る!

商品企画会議で10人の役員のうち、ひとりでも賛成すれば商品化できる社内ルールを徹底しています。ねらうは1割の人の心に刺さる商品。万人が何となく買いたい商品より、1割の人が絶対に買いたい商品を作ることを心がけています。これがキングジムの勝利の方程式だそうです。

目からウロコの商品開発方法 - キングジムの掟とは?

① 1割のお客様の心に刺さればよい
② 市場調査はしない
③ “居心地のいい”ニッチを狙う
④ ダメ出しされても自分を信じる

①については、社長がふと気がついたそうです。日経新聞に掲載される「今年のヒット商品番付」に掲載されている商品を持っていないことを。つまり、現代のヒット商品とは、万人が買うものではない。本当に欲しい人たちの層が集中的にそれを買うことを。

②については、「ポメラ」の販売方法について実際に市場調査した経験談をお話いただきました。電子文具は20~30代の若者の方が圧倒的に情報量と関心を持っている、どうにかして若者に買ってもらう方法は無いか、と思案していたそうです。しかし、ユーザアンケートで明らかになったのはメインの購買層は、なんと40~60代の男性だったそうです。確かにメインターゲットと想定していた若者は、買いたいものがたくさんある。だけど、欲しいもの上位から順に購買していくから、12位ぐらいに位置する「ポメラ」を買うところまでおカネが回ってこないとか(12位というのが実際に調査をした、という生々しさが感じられますね)。

それに反して、おじさんたちは、若者たちより多少お金を持っていて、それでいて今さら欲しいものがそれ程無い。そうすると、「ポメラ」の購買順位が高くなることが分かったとか。だからありきたりの市場調査は信用しないんだそうです。経験談は強し!

③については、競合がいなくて、技術的に簡単に商品が作れる市場がねらい目なのだそうです。市場規模にして数十億円/年だとか。年間で50億円を超える市場規模になってくると、大手企業が出張ってくるそうです。そうすると、価格競争が起きて、マージン率が低下し、儲からないビジネスになるそうです。ここでも、50億円とか具体的な数字が出てきて実感が湧いてきます。

④については、次々章で。

 

■ 第2創業。電子文具への進出!

年賀状ホルダー(アドレス帳)がヒットして文具市場に乗り出したキングジム(当時の社名は、名鑑堂)。2穴のパイプファイルを5億冊売って大きく飛躍した。現社長の祖父だった創業者のモットーは、「ひとと同じでは楽しみが無い」「会社が小さくても世に無いものを作ろう」

しかし、1980年代に入って、オフィスにコンピュータが登場・浸透し始め、オフィス唐紙が無くなる→文具が売れなくなる、と社内で危機感が高まった。そこで、これまで世に無いものを出そうと、「電子文具」の企画に取り組んだ。しかし、「うちは文具屋ですよ。いきなり電気文具は無理だ、リスクが高すぎる」と社内では反対の声が。そしてなにより電子文具を作れる技術者が社内にはいなかった、、、

現社長の宮本さんは1年をかけて電子文具を製造してくれるメーカーを発掘。そこで誕生した「テプラ」が結果として会社を救うことになりました。

宮本さんいわく、「3年間の開発プロジェクト期間は社内で肩身が狭かった。当時は主力商品のファイルが結構売れていて、競争も激しく社内も繁忙を極めていた。ただ飯食らい扱いされて、辛い日々を経験した」

 

■ キングジム流「発想術」とは!

前々章の④から。

「ファイル屋ができることをやろう」 新しい、世に無いものを作り出すことを目標にしますが、社業に合っているもの、会社が持っている、知っているものを手掛かりに開発するのだそうです。社長から開発メンバへのメッセージ。「誰の言うことも聞くな!」「本当に自分が欲しいと思ったものを作れ!」そこには、キングジム流発想術のTIPSがある。

1.機能を極端に絞り込め!
「ポメラ」や「スマホ用プリンター」は、今ある技術を削ぎ落としてシンプルな機能に絞り込むことで商品の大きな特徴になり、消費者の心をつかんでいる。

2.組み合わせろ!
既存の商品を組み合わせることで今までにない商品を作り出す方法。たとえば、「オリガミノート」など。一から生み出される商品は皆無。「マウス型スキャナー」は「マウス」+「スキャナー」。「デジタル名刺ホルダー」は「名刺入れ」+「デジカメ」。

既存技術の組み合わせで少ない投資で実を取る。俗に言う「「枯れた技術」「使い古された技術」を掘り起し、ちょっと方向を変えたり、組み合わせたりして新商品にする。これは、機能を削ぎ落としてシンプルな商品にして全く新しい別のものに仕立てる、という考えにも共通する。

小池栄子さんが社長に聞いてみる。
「次々の新商品を生み出す開発者は何か特別な訓練をするんですか?」

それに対する社長の回答は、
「自分が欲しいものを作ることが大事。なんだかんだ勉強するよりずっといい。」

 

■ キングジム流「人の育て方」とは!

ユニークな開発者を育てるため、早くから若手に開発を任せているそうです。

「商品開発の発想力は若い人の方が高い。年を取ると、いろいろなことが分かりすぎて固定概念で『こういうものだ』と思い込みがち。電子文具のアイデアを出すのは理系よりも文系の方が多い。知らない方がよいことが結構ある」

いやあ、もうすでに年を食ってしまった私なんぞからは、逆立ちしても、もう何も出てきません!

「商品の売り上げが悪くても開発者が責任を取ることは決してない。10個に1個売れればいいと考えているから。ある意味売れない方が当たり前。売れないことに慣れている。売れないということは、決して恥ずかしいことではない。ヒットへのいい勉強をしたということ」

こういってくれるリーダの元では、開発者もやる気が出ますよね。

「未来のキングジムがどういう会社になっているかは正直分からない。現時点でも文具以外にもいろいろ手を出している。それが売れるようになったらそれを作るメーカーになっているかもしれない。モノマネはしないで世の中に無い新しいものを作って、皆さんに喜んでもらえればキングジムらしさは常に生き続けられる」

自発的イノベーションの仕掛けが内在化されている組織は強いですね。

最後に、村上龍氏の編集後記からぐっときた言葉を抜粋して終わりにします。
「そもそも「独創性」とは何だろうか。突拍子もないことを考える?奇抜なアイデアを探す?そうではない。独創性とは、それまで存在しなかった「組み合わせ」について考え抜く力だ。そして、新しい組み合わせを発見したときの興奮と高揚をイメージすることで、わくわくする気持ちが生まれる。宮本さんが祖父から受け継ぎ、キングジムという会社に充ちているのは、類い希な、わくわく感である。」

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