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カーナビで100万曲聴き放題 パイオニア、年3000円 レコチョクと組みスマホ活用、主力事業テコ入れ

経営管理会計トピック 会計で経営を読む
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■ カーナビ各社のサバイバル戦略

経営管理会計トピック
カーナビ製造各社は、カーナビ端末本体の機能強化、または他ネットワークサービスの取り込み、いずれかの方法で生き残りを図ろうとしています。果たしてそうした製品戦略は消費者に受け入れられ、専用端末メーカーとして生き残ることができるのでしょうか。今や、インターネットプロトコル全盛時代。その上で、わざわざ専用端末でそうしたネットにアクセスせずとも、汎用端末(スマホやタブレットなど)で十分な使用価値を提供できる時代になっています。

2015/5/9|日本経済新聞|朝刊 カーナビで100万曲聴き放題 パイオニア、年3000円 レコチョクと組みスマホ活用、主力事業テコ入れ

注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「パイオニアはカーナビゲーションシステムを使った音楽配信サービスを5月下旬に始める。音楽配信大手のレコチョク(東京・渋谷)と連携し、100万曲以上を年3000円で聴き放題にする。パイオニアはカーナビを中心とした自動車分野に特化する戦略だが、スマートフォン(スマホ)を使ったナビの普及など環境は厳しい。サービス面の充実で新しい価値をアピールし、顧客を確保する。」

(以下、同記事で掲載された図表:国内市場の推移)

経営管理会計トピック_市販カーナビの国内販売推移_日本経済新聞朝刊2015年5月9日掲載

上記のように、国内の市販カーナビの市場は縮小傾向にあります。まず、顧客接点からカーナビ市場を見てみると、

① 純正カーナビ(購入する車に既にプリセットされている)
② ディーラーオプションナビ(ディーラーを介して車購入時に合わせて購入)
③ 市販カーナビ(車購入後に別の販売店で購入)
④ スマホナビ(厳密にはナビアプリ)(車購入後に別の販売店で購入)

ここでメリット・デメリットを論じるなら、

① 純正カーナビ
車種・グレードによるものの、インパネのデザインにビルドインされていることが多いことから、フロントの見た目のデザイン的に美しい、センターコンソールなどの運転席周辺に専用の操作ボタンやコマンダーを設けるなど、操作性もよく考えられている、わざわざ後からショップに持ち込んで取り付ける手間が省ける、自動車ローンに支払いが含まれているので代金支払いの煩雑さがない、通信機能を持つタイプのもの(トヨタのG-BOOKやニッサンのカーウイングス、ホンダのインターナビなど)は、お店情報や渋滞情報の取得ができる、というメリットがあります。

一方で、交換が困難・煩雑だったりするので、故障した時の対応が面倒だったり、余計なコストがかかったり、急速な技術進歩によってすぐに陳腐化するリスクを負ってしまうというデメリットがあります。

②ディーラーオプション、および③市販カーナビについては、ほぼ①純正ナビのメリット/デメリットと逆転します。
・デザイン性(デザイン価値)
・操作性(ユーザビリティ)
・幅広いバリエーション(選択の自由性)
・取り付け工事の有無(販売)
・代金決済の煩雑さ(決済)
・通信機能の有無(通信サービス:サービス付加価値)
・修理対応コスト(デュラビリティ担保コストと反比例)
・陳腐化リスク

製品開発する場合は、上記の各視点をポイント制にし、ポイント1単位の顧客認知価値と、それを提供するために犠牲にする経済的価値(供給者側から見ればコスト)の差分を、顧客目線・メーカー目線で最大にすることを目標にして、製品モデルとバリエーション(オプション)を選択し、販売・サービス手法を開発します。

従来は、「純正カーナビ」との勝負に集中して、上記の8つのポイントについて検討していればよかったのですが、ここにきて「スマホナビ」との競争も激しくなり、ますます競争条件が厳しくなってきています。

 

■ スマホナビとの競争ポイントは?

ここにきて、「スマホナビ」が台頭してきており、市販カーナビ各社も、純正ナビだけでなく、スマホナビ(ナビアプリ)にも対応策を考える必要がますます出てきました。

(以下、同記事で掲載された図表:カーナビ各社の取り組み)

経営管理会計トピック_カーナビ各社の取り組み例_日本経済新聞朝刊2015年5月9日掲載

各社の取り組みを見てみると、
1.スマホとの連携も含めて、通信サービス機能の強化
  パイオニア、クラリオン
2.専用端末としての機能強化
  パナソニック、JCVケンウッド、富士通テン、アルパイン
の2つの方向性に大別することができます。

1.はスマホアプリ・汎用端末との協調的製品戦略であり、2.は対立的製品戦略となります。

新聞記事からパイオニアの製品戦略を抜粋すると、次の3つ。

「■大型画面で操作性高く 5月下旬に発売する上位機種「サイバーナビ」(15万~25万円程度)向けにサービスを始める。専用アプリ(応用ソフト)を入れたスマホとサイバーナビを近距離無線規格「ブルートゥース」でつなぎ、ストリーミング再生する。スマホに数曲分を記憶させ、トンネル内などでも再生が切れないようにした。」

「楽曲はレコチョクが提供する100万曲以上から自由に選べる。カーナビの大型画面で選曲できるため、スマホなどに比べて操作性が高くなるという。」

「■気分入力すると楽曲推薦 パイオニアが独自開発した楽曲推薦技術も搭載する。「明るい気分」「ナイトクルーズ」など気分や好みを入力すると、曲調の合った楽曲が出てくる。最新のヒット曲をランダムに再生したり、カラオケモードにしたりすることも可能だ。」

スマホが社内に存在することを前提にした通信(音楽)サービス機能となります。

パイオニアとしては、
「パイオニアはこれまで技術面を前面に出してきたが、スマホアプリとの明確な違いを出すのは難しくなりつつある。大舘諭執行役員は「スマホと争うのでなく、車内にスマホがあることを前提に音楽という新しい付加価値を訴求したい」と話す。今後は走行状況に応じた音楽を流すなどさらに独自性のある製品を開発したい考えだ。」
として、スマホありきの通信(音楽)サービスで自社開発の専用端末による商売を諦めていない形となっています。

しかしながら、「全てがネットつながる世界」に徐々に移行しているこの先、どれだけ高機能化・独自機能化にまい進し、専用端末の購入を消費者にアピールしたとしても、この先は大変厳しい現実が待っていることでしょう。

据置型ゲーム端末のメーカーである任天堂が、DeNAとアプリゲーム共同開発を視野に入れて資本業務提携するニュースは記憶に新しいと思います。

2015/3/18|日本経済新聞|朝刊 任天堂、スマホ開拓へ転換 DeNAと資本提携、苦境打開「マリオ」解禁

「任天堂がディー・エヌ・エー(DeNA)と提携し、これまで一貫して距離を置いてきたスマートフォン(スマホ)向けのゲームに乗り出す。「マリオ」など任天堂の人気キャラクターも聖域を設けずスマホゲーム向けに提供する考えで、大きな方針転換といえる。だが両社で新たに開発するというゲームがどこまで収益改善につながるか。家庭用ゲーム機との自社競合の懸念などリスクを抱えた賭けになる。」

まあ、DeNAもスマホ用アプリゲームが大得意というわけではなく、ガラケー(モバゲー)での成功体験から脱出するのに時間がかかっていますので、どちらかというと、両社ともかなり追い込まれてからの提携話となったのではないかと推察しています。

 

■ 管理会計(損得計算)的にスマホアプリに傾斜していくことのメリットは?

本ブログは「経営管理会計」がメインですので、テクロノジー偏重ではなく、経営的(ビジネス採算的)に、採り上げた企業の損得計算がどうなのか、という視点で分析を常に心がけております。

そういう視点では、スマホアプリでソフトを開発し、端末も汎用機を使用することのメリットを説明したいと思います。

① 先行開発コストの回収
専用機の場合、自社固有技術の開発が高くつき、汎用品より高いマージンが取れないと、先行投資分のR&Dコストを回収することは困難になります。一般消費者が手軽に手に入る汎用端末(スマホやタブレット)上で、享受できる技術プラスアルファの欲しいと思わせる機能を高く買わせることに成功しないと、独自開発戦略はビジネス的(損得計算的)には上手くいったとは言えません。最高の技術の製品を開発した。それだけだと、開発者の自己満足に過ぎません。

② 製造コストの節約
汎用機の場合、その上で動くソフトの開発者の数が多く、自ずと技術者間の競争も激しくなり、開発単価が下がる傾向にあります。さらに、利用者が多く、時には枯れた技術を使用するため、開発環境を準備するコストも廉価で済むことが多々あります。

③ 陳腐化リスクの回避
常に最新かつ便利なIT技術を享受しようと一般消費者は大変貪欲になってきているのが現状です。消費者はいち早く最新アプリを更新して、常に流行の先端をいくサービスを享受することを希求しています。そのスピードに常時対応していくには、自社独自技術にこだわっていては、時代遅れになる可能性大です。よってたかって、オープンソースのモノをコミュニティで常に改良され続ける、サービスも長期にわたって受けられる保証が高くなる、これが最近の潮流です。Linuxからこっち、ソフトの世界は様変わりしてきました。

④ モノの購入に関する消費者行動への適応
その昔は、「壊れない」「長く使用できる」というのは、消費者にとって、お金を出す価値があることでした。しかし、これほど技術進歩のテンポが速くなった昨今、「壊れたら細心のものを買い直す」ということが平気になってきました(昭和生まれの筆者としては考えられないことですが、、、)。したがって、耐久性の高い専用端末というだけで、お金は払ってくれない時代になったというのは、開発者が忘れてはいけないことです。これは、修理するより買い直す方が安い、という姿勢も同根といえます。

今回も、カーナビを含めた車載情報システムの分野には、アップルが「カープレイ」を持ち込み、iPhoneアプリを社内でも使用可能にし、iPhone内の音楽も再生できれば、メールや電話もできるようになる、さらに、グーグルも「アンドロイド・オート」を開発し、ホンダなどが2015年中には対応車種を投入予定、と記事内でも紹介されています。

「パイオニアは据え置き型カーナビの国内最大手。すでにAV(音響・映像)機器事業を分離しており、今後はカーナビを中心とした自動車分野に集中する。17年3月期には車載機事業の売上高を14年3月期比13%増の約4000億円に引き上げる計画だ」

最大手であるパイオニアにも当然勝算あってのことだと思います。車内で音楽を聞くときに「カーナビ」である必要性は?「ガラケー」のように、携帯電話各社が撤退、、、ということの二の舞にはならないことを、心の底から願いつつ、その経過を観察してきたいと思います。

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