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コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(24)ゴーマン法則③ - コンサルタント業務におけるゴーマン法則は立派なサービスなのだ!

本レビュー
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■ コンサルタントにとってゴーマン法則はコンサルタントサービスそのものに仕立て上げなければならない!

このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、著者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、私のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。

G.W.ワインバーグ氏の公式ホームページはこちら(英語)

本書P48-49には、ワインバーグ氏自らが体験したゴーマン法則が語られています。

ゴーマン法則は極めて利己的な手法ですが、利己的であることに反発しすぎて、クライアントへのサービス向上につながる可能性まで否定することはもったいないことです。

ワインバーグ氏は、とあるIT会社のコンサルティングの依頼を受けました。その会社では、プログラマーがプログラムのバグ出しのために、プログラムテスト(単体テスト)を行うのですが、テストデータをコンピュータに投入してからテスト結果がプログラマーの手元に戻るまでの時間(これを本書では、ターンアラウンド・タイムと呼んでいる)が長すぎるというのです。

それゆえ、納期に追われている多忙なプログラマーが自己の判断で、十分にバグ出しをせずに、めいめい勝手の判断でプログラムを納品・出荷してしまい、客先からクレームが出て、もっと高い改修コストをかけざるを得ないという状況だったのです。

ワインバーグ氏がその会社のコンサルティングを受けて調査したところ、100万ドル(80年代の為替レートで金額を想像してください)かけて新しいプログラム開発環境を構築しないのなら、ターンアラウンド・タイムはせいぜい2,3分しか短縮しないことが判明したのです。

 

■ 嬉々としてプロコン問題を解き始めるコンサルタント達への警鐘!

おそらく、この時点で私を含めて並みのコンサルタントならば、新しい開発環境を構築するための追加投資にかかるイニシャルコストが、改善された高い生産性により、どれくらいかけて回収できるのか、嬉々として計算し始めることでしょう。そしてクライアントに対して、

A案)新しい開発環境を構築する案
B案)現状維持案

の選択肢のプロコンを意気揚々とクライアントに説明していることでしょう。おそらく、私の場合は、機会コストを持ち出して、採算性の面からクライアントを説得しているに違いありません。

しかし、ワインバーグ氏は違いました。

彼は、「ターンアラウンド・タイム」を「考慮時間」と改名し、真の問題は、ターンアラウンド・タイムが長いことではなくて、バグが発生することの方だと発想を転換させたのです。そして、この「考慮時間」を有効活用して、バグをいかに少なくするかの方法論を解説し始めたのです!

その結果、プログラマー達は、見つけなければならないバグそのものの数を減らすことに成功したので、バグ出しのためのテストプログラムの実行の回数が激減しました。それは、つまるところ、テストプログラムの実行にかかるターンアラウンド・タイムが長いという問題をそれほどの問題ではなくしてしまったことを意味しました。

逆に、薬が効きすぎて、そもそもバグを出さないプログラム方法を習得中のプログラマーから、テスト結果が返ってくる時間(従前問題視されていたターンアラウンド・タイム)が短すぎて困る、という苦情まで出る始末だったのです。

⇒「コンサルタントが顧客からプロコン問題・選択肢問題を突き付けられたときの正しい態度とは?

 

■ プロコン問題となった真因を問題にはならないように変化させるゴーマン法則の無双!

A案が持っている問題に目を瞑り、そのままA案を採用し続けるか、抜本的にA案の欠点を解消するための多大な労力とコストを払って抜本的解決策としてのB案を選択するか、二者択一は非常に分かりやすく、対立構造にすると問題も早く解決すると思いがちです。

しかし、一番いいのは、これまで課題だと思っていたことを、それほど手間暇かけずに課題にならないように創意工夫で何とかして見せることが最上の策のように思えます。その秘中の策のひとつが「ゴーマン法則」なのかもしれません。

確かに、ワインバーグ氏が行った「ターンアラウンド・タイム」を「考慮時間」と改名して、その時間の位置づけそのものを変えてしまったことは、「ターンアラウンド・タイム」をどうにかしてくれ、とワインバーグ氏を頼ってきたクライアントの期待を裏切ったもので、コンサルタントの利己的でかつ保身のための行動だったかもしれません。

しかし、こういう言い方もできます。コンサルタント業務の目的は、コンサルタントを利口に見せるためでも、コンサルタントを馬鹿であるかのように見せることでもないのです。また、コンサルタント業務は、コンサルタントに課せられた試験などでもないのです。

とどのつまり、クライアントの本当に困っていることを解決することなのです。

私は、若手コンサルタントに、顧客満足のレベルに三段階あると口を酸っぱく言っていることがあります。

コンサルティング1.0は、「クライアントからの依頼をそのまま解決する」
コンサルティング2.0は、「クライアントからの依頼を期待値以上で解決する」
コンサルティング3.0は、「クライアントからの依頼を、クライアントが気付かなかった真因を取り除くことで解決する」

そのためには、クライアントからの依頼の口上の背景をつかんだり行間を読む力をつけたりする必要があります。言われたことだけしかできない人のことは、普通はコンサルタントとは呼ばないのですよ!(^^;)

⇒「コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(22)ゴーマン法則① - なおせなかったら機能にしてしまえ
⇒「コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(23)ゴーマン法則② - いろんな業界のゴーマン法則を集めてみました

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